もんむす・くえすと! 勇者ルカと仲間たち   作:J・チェプナクル

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第23話 遭遇、二人の来訪者との野営

そして、その夜の野営__

今夜はバーベキュー。主なメニューは、牛肉、豚肉、鶏肉に軽く塩コショウをまぶしたものと、玉ねぎ、ピーマン、ナス、カボチャといった野菜類だ。

サムライ「美味いっ!美味いでござる!」

青年「いやぁまいったまいった…美味いでやんすねぇ…!」

チリ「ああっアリスさん!私の分、取らないで!」

ラクト「アリス!それは俺のだ!おい、頬張るな!!」

アリス「むむむむむむむっ!!(全部、余のだ!)」

パヲラ「カムロウちゃん、野菜も食べなきゃだめよ。」

カムロウ「はーい。」

みんな、バーベキューを楽しんでいるようだ。

…だが、一つ疑問点がある。

アリスは人の姿になっておらず、下半身は蛇のままなのだ。

サムライと青年はそれに気付いているのかは知らないが、全く気にしてないのだ。

思わず、アリスに聞いてみる。

ルカ「なぁ、アリス。人の姿にならなくていいのか?」

ラクト「確かに…なんでだぜ?」

チリ「そうですよ。大丈夫なんですか?」

敵対していないとはいえ、人と魔物が一緒にいるなんて、普通は騒ぎになるはずだ。

アリス「ふむ…そういえば、貴様らは知らないのだったな。」

アリス「あの二人は東方出身だ。東方は、動植物全てに…万物に神が宿るという考えの風習がある。つまり、魔物でも縁起の良い神として拝むのだ。そうだろう?」

青年「ええ、その通りですぅ。蛇神様と一緒だなんて縁起が良いもんですよぉ。」

どうやら、人の姿にならなくても問題ないようだ。

ルカ「へぇ…そんな文化もあるんだなぁ。」

ラクト「まぁ…問題ないなら、別にいいか。」

 

ルカ「あの…お二人はなぜ旅を?」

サムライ「うむ、モグモグ…拙者らは、モグモグ…ある男を、モグモグ…」

ラクト「一旦、食うのやめろ!!」

青年「ああ、アッシが説明しやす。」

 

青年「アッシら、ある男を探して諸国を旅しているんでやんすぅ」

そう言いながら、懐から面相書きを出す。

右目に切り傷がある男だ。

パヲラ「これ、あたしたちにも見せてきたわよね。」

ルカ「この人を探しに、わざわざイリアス大陸まで?」

青年「ええ、そうですぅ。見つからないものなんで、ここにいるんじゃないかと思ってぇ…」

それを聞いたルカに一つの疑問が思い浮かぶ。

ルカ「ん?…お二人は、いつからイリアス大陸に?」

青年「ちょうど3日ですなぁ。」

ルカ「えっ!?確か、船の往復便は出てないはず…」

カムロウ「どうやってここに来たんですか?」

青年「大砲で飛んで来たんですぅ。」

それを聞いて唖然とした。

ルカ「えっ?」

チリ「えっ?」

ラクト「んんっ!?」

ラクトは口の中にあったものを吹き出しそうになる。慌てて飲み込んで喋り始めた。

ラクト「ちょ…ちょっと待て?大砲で?飛んだ?」

青年「港の船乗りサンから、そうやってイリアス大陸に渡った人がいるって聞いたんで、真似したんですよぉ。」

カムロウ「それって、パヲラさんのことじゃ…?」

パヲラ「はーい!あたしでーす!」

サムライ「なんと!お主でござったか!なんと型にとらわれない奇天烈な発想を…」

パヲラ「そう?でしょ?でしょ?画期的でしょ?」

サムライとパヲラは和気あいあいと話し始めた。

ラクト「…なんで分かり合えてるんだこの二人は。」

 

青年「それでぇ、大方、聞きまわったんで戻ろうかとなって、イリアスポートに向かっていた途中で…」

ルカ「食料を買い忘れたことに気付いて立ち往生をしていたところを、僕たちと出会ったと…」

青年「そうです、そうですぅ。」

ルカ「でも…今、セントラ大陸への船が出てないんですよ?イリアスポートに一体、何をしに…?」

サムライ「ああ、セントラ大陸には泳いで帰ろうかと。」

ラクト「無理だろ!!」

パヲラ「…じゃあ、大砲で?」

ラクト「もっと無理!!」

チリ「私も無理!」

アリス「余も…大砲で飛ぶなど…」

カムロウ「え~、あれ面白いのに~」

ルカ「面白いのか…?」

 

すると青年は、ハッと何かに気が付いたようだ。

青年「…アッシら、名前、言ってなかったですよねぇ?」

ルカ「ああ、そういえば…」

本当に今更だった。僕たちお互い、名前すら知らなかった。

サムライ「む…恩人の名も知らずに飯を喰らうのは無礼でござった!」

サムライと青年は食う手を止め、名乗りを挙げた。

サムライ「改めて、拙者、名はジョージと申す。生国と発しますは、セントラ大陸の東方の地、ヤマタイでござる!」

青年「アッシはマモルと申します。同じく生国はヤマタイでございますぅ。」

そう言うと二人はルカに向かって土下座をした。

ジョージ「そして、この御恩!!かたじけない!!!」

マモル「いやぁ、本当にありがとうございやす!」

ルカ「いやそんな…顔を上げてくれませんか?大したことはしてませんよ。」

ジョージ「あの時、勇者殿に会わねば、拙者たち、無念を残して消える運命でござった!!!」

ジョージ「この御恩…生涯忘れぬ!!」

そう言うと、また深々と土下座をする。

…これも東方の文化なのだろうか?

ルカ「…あ、お肉、焼けましたよ。ジョージさん食べます?」

ジョージ「いやぁ!これ以上の御恩ぉぉ!!頂くわけにはぁぁぁ!!!」

ジョージは歌舞伎口調になった。

ラクト「うるせぇ!食べ足りねぇならもっと食えよ!!」

ルカ「おかわりはまだありますから!!」

 

マモル「それでぇ…この御恩、どう奉公すればいいんですかぃ?アッシら、ちょうど旅費もないもんなんで…」

マモルは腕を組んで悩みはじめた。

ルカ「じゃあ…イリアスポートまでの間、僕たちと一緒に行きませんか?ちょうど、イリアスポートに行くところなんで…」

ジョージ「うむ!拙者、この御恩を返すためならば、この身、滅びようとも成し遂げる所存でござる!」

ルカ「いや…そんな重く受け止めなくても…」

対応に困っていると、食べ物が焼けるのを待っているアリスが口を挟んだ。

アリス「ふむ…ルカ、面白い話をしろ。」

ルカ「えっ!?いきなりそんなこと言われても…」

アリス「余は、重い空気の中で食事するのは嫌いだ。」

ラクト「おっいいねぇ。なんか話せ!」

ルカ「お前なぁ!他人事だからって!」

カムロウ「それでルカ、何を話すの?」

ルカ「えーと…じゃあ__」

ちょうど思い浮かんだ話をする。

今から500年前の話、伝説の勇者ハインリヒの物語。

小さい頃から、絵本で何度も何度も読んだ話だ___

 

 

ルカ「こうして勇者ハインリヒは魔王を打ち倒し、世界に平和が訪れたんだよ…めでたしめでたし。」

カムロウ「わぁ…」

ジョージ「なんと…なんと…」

パヲラ「おうっ…おうっ…」

ジョージとパヲラはぼろぼろと涙を流していた。

チリ「そんなに泣くほど?」

ラクト「感動しすぎでは?」

マモル「すみませんねぇ。うちの連れ、こんな奴なんですよ。」

ラクト「いやいや…こっちの連れも変人なものなので…」

パヲラ「…誉め言葉?」

ラクト「違ぇよバカ!!」

 

アリス「…どこがめでたいのだ、ドアホめ。」

アリスは焼き肉の刺さった串をかじりながら、冷たく言い放った。

ラクト「お前なぁ…面白い話をしろって言ったのお前じゃねぇかよ?」

確かにそうだ。面白い話をしろと言われた揚げ句に、ドアホ呼ばわりとは…

アリス「余は魔族だぞ。魔族に対して、昔の魔王が退治された話を嬉し気に語る馬鹿がいるか。人間の王が魔物に殺された話を聞かされて、貴様は愉快なのか?」

カムロウ「あー…そっか…」

ルカ「あ…確かにそうだね…」

アリス「貴様は人間と魔物が共存する世界を築くなどと抜かすが…そこら辺のデリカシーに欠けているようだな。」

ルカ「ご、ごめん…」

チリ「ま、まぁ…次からはちゃんと配慮しよっか?ね?」

確かに、いくら昔の話とは言え、魔族のアリスが聞いて愉快な話でもなかったはず。

アリス「まあ…ハインリヒに倒された当時の魔王は、決して褒められるべき者ではなかったがな。」

アリスは、実に意外な感想を口にした。

アリス「支配欲のままに力を振るい、多大なる破壊と混乱をもたらした。人間の勇者に倒されたとて、自業自得かもしれん。」

ルカ「自業自得か…意外に辛辣なんだな。」

アリス「力で他者を支配しようとするなど、野蛮な行為だろうが。蛮行には報いがある、当然の話だ。」

ルカ「確かにそうだね。今の魔王は、どうなんだろうな…?今、魔物達を統率しているという魔王って、謎に包まれた存在なんだよな…」

チリ「姿を見た人間も、ほとんどの魔物も会った事がないって噂だし…」

ただ絶大な魔力を誇り、歴代の魔王の中でも最強という話だが…

ルカ「やっぱり、人間との全面戦争を宣言したんだから…悪党なのかなぁ。こちらの話を聞いてくれる相手なら、対話も通じるだろうけど…」

ラクト「無理だろ。相手は魔王なんだぜ?」

耳も貸さない悪党なら、退治するより他にない。

今のところ、その魔王が人間と魔族の仲を引き裂く元凶なのだ。

ルカ「「レミナの虐殺」も、その魔王の指示なんだろうし…やっぱり、ひどい奴なのかな。アリスはどう思う?」

魔族のアリスにしてみれば、自分たちのご主人様のはずである。

アリス「…さあな。」

アリスは、不思議な表情で夜空を見上げた。

アリス「ただ…魔王は、迷っているのだ。人間が滅ぼすべき存在なのかどうか。」

ルカ「アリス…魔王を知っているのか!?まさか、見たことがあるとか…?」

チリ「嘘!?魔王城にいる最高クラスの重鎮しか見たことないって噂なのに!?」

それこそ、あの四天王くらいしか魔王の顔を知らないはずなのだが…

アリス「ああ…魔王なら知っているぞ。案外、貴様の近くにいるのかもな…」

ルカ「僕が?そんなわけないだろ、僕は田舎育ちだよ。魔物だって、つい最近初めて見たんだから。」

アリス「やれやれ、貴様は本当に鈍いドアホだな。」

そう言って、アリスは食事を終える。

パヲラ「(…やっぱりアリスちゃん。まさか…)」

アリス「さて、それはともかく__」

しばし夜空を眺めていたアリスは、不意に腰を上げた。

アリス「さて、剣の稽古をつけてやる。あのヒョロヒョロ突きを見て、余は失望したぞ。魔王から見れば、当たる方が難しい情けない技だろうな。」

チリ「ひょ…ヒョロヒョロ…」

ルカ「何も、そこまで言わなくても…」

アリス「さあ、剣を取れ!余が、本当の突きというのを教えてやろう!」

ラクト「へぇ…俺、見学しようかな。」

チリ「私も見たい!」

カムロウ「ぼくも!」

マモル「アッシもそうしますかっとぉ…」

ジョージ「パヲラ殿。この後、共に鍛錬を…」

パヲラ「ええ、いいわよん。あたし、東方の技、気になってたのよん。」

こうして、今夜もそれぞれ特訓になだれ込んだのだった。

 

 

アリス「そうだ、上半身を安定させろ。踏み込みは深く、体の上下動は控えるのだ。」

ルカ「こ、こうかな。」

駿足で踏み込み、素早く突きを繰り出す。なんとか使えそうだ。

アリス「ふむ、一応、形は覚えたようだな。後は実戦でモノにするといい。」

アリス「この技は、まさに雷鳴のような突き。最も効果を発揮するのは、戦闘における初手だ。先手を取れた時に使うと良いだろう。」

ルカ「初手?それ以外だとだめなのか?」

アリス「それでも、普通に攻撃するよりマシだろうが…最大限の威力を出すなら先手だ。」

ラクト「出会い頭の一発…ってとこか?」

アリス「そうだな。そう思って使うと良い。」

ルカ「あ、ありがとう…凄い技だよ、これ。」

アリス「疾風の魔剣を使いこなしたという「血塗れのフェルナンデス」が得意とした、血裂雷鳴突き。この技によって大地に撒かれた敵達の血は、大きな湖となるほどだったとか。」

ラクト「なんでお前はそんな物騒な技しか教えねぇんだよ!!」

ルカ「すごく胡散臭くて、血生臭い技だな…」

血裂雷鳴突き、僕が使うときは、血裂の部分を省略して「雷鳴突き」としよう。

 

ルカは「雷鳴突き」を習得した!

 

ジョージとパヲラが、鍛錬を終えたのか戻ってきた。

パヲラ「ふぅ…鍛錬終わったわよん。」

アリス「では、今日の稽古は終わるとしよう。明日に備えて、とっとと寝るぞ。」

ルカ「そうだね。みんな、お休み。」

カムロウ「うん、おやすみ。」

こうして、本日の特訓は終わった。確かな満足感を胸に、僕たちは眠りに就いたのである。

 

 

 

 

 

 

 

???「ルカ…勇者ルカ…」

ルカ「う…ん…」

どこからか、僕を呼ぶ声がする。ここは__

イリアス「魔王を討つのです、ルカ…」

ルカ「は、はい…」

イリアス「いいですね、魔王を討つのですよ__」

 

目を覚ます僕を迎えたのは、柔らかな朝の光。

ルカ「イ、イリアス様!?」

ラクト「うおおっ!!びっくりしたぁ!!」

何かを作っていたラクトはびっくりした。

飛び起きたまま、周囲をきょろきょろと見回してしまう。

カムロウ以外はもう起きていたようだ。

ジョージ「ふむ…あの起き方、私も真似を…」

マモル「やめときなぁ、腰痛めるよぉ。」

アリス「相変わらず、貴様は朝から騒々しいな…」

ルカ「ああ、イリアス様。啓示を与えて下さって、ありがとうございます…!」

アリス「起き抜けに祈るな。ジジ臭すぎるぞ、お前は…」

ルカ「イリアス様に感謝の念を捧げるのに、老いも若いも関係ないだろ。さあ、みんなも一緒にどうだい?」

ラクト「さわやかに祈りに誘うんじゃねぇ!」

チリ「さわやかに祈りに誘わないで!」

アリス「さわやかに祈りに誘うな!」

アリス「だいたい、余は魔族だぞ!神に祈るか!」

ルカ「やれやれ、朝から騒がしい奴だ。」

ラクト「お前だよっ!」

チリ「お前だっ!」

アリス「貴様のほうだっ!」

 

そんな朝の騒動も終え、僕達は、再びイリアスポートへの旅路を進めたのだった。

 

 

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