もんむす・くえすと! 勇者ルカと仲間たち   作:J・チェプナクル

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第3話 少しのお金とほんの気持ち

日が沈んだくらい森の中で、カムロウとラクトは焚き火の周りに座っていた。

ラクト「この調子でいけば、明日辺りには街道に出るはずだ。」

そこからナタリアポートは目と鼻の先だとラクトは、カムロウにわかりやすいようかみ砕いて説明していた。

カムロウ「ナタリアポートってどんなところ?」

ラクト「まぁ大きい港町なのは確かだぜ。貿易も盛んだから活気もある。」

船もずらりと並び、潮風漂う港町と簡潔に言った。

カムロウはそれを聞いてますます期待を膨らませた。

ラクト「おまけに美人な人魚もたっくさんいるぜ。」

カムロウ「に…人魚?」

ラクト「あぁ、上半身は美女!下半身は魚の姿をしたそれはそれは美女という名にふさわしい女たちがたくさん…」

 

カムロウ「人魚ってこんなの?」

カムロウが思いついた人魚の姿のビジョンが浮かび上がる。

とても美女とはいえない、魚の胴体に人の顔をした生物が思い浮かんでいた。

ラクト「俺いま美女って言ったよな?」

 

カムロウ「人魚ってことは…人じゃないんだよね?なんでたくさんいるの?」

ラクト「住人として迎え入れてるのさ、悪さをするわけじゃないからな。」

ラクト「特にマーメイドの真珠のネックレスは高く売れるんだよな…おっとなんでもない。」

カムロウ「えっと…キョウゾン…してるの?人じゃないから魔物なんだよね?」

ラクト「ああそうさ。人間とお互い共存してるのさ。」

魔物と人が争わず仲良く暮らしている。

カムロウにとっては非日常なことだった。

いままで魔物は敵だと認識していたからだ。村を襲うおぞましい化け物だと。

ラクト「ま、明日着くわけだから、その目で見ればわかるぜ。」

ラクト横になり寝る準備をしながらそう言った。

それを見たカムロウも寝る準備をし始めた。

人生で初めて、見たことない世界を夢見ながら…。

 

 

 

 

翌日、朝を過ぎて、お昼くらいだろうか。

やっと森を抜けた。抜けたと思ったら、目の前に砂浜が広がっていた。

さざ波が聞こえ、しょっぱい匂いがする。

カムロウ「…これが街道?」

ラクト「この砂浜が街道のルートの一部だ。このまま砂浜沿いに行けば、すぐに着くぜ。」

砂浜を歩きながら、ラクトとそう話していた。

砂に足を取られそうになる。歩きずらい。こんなに大量の砂の上を歩くのははじめてだ。

ラクトはカムロウのペースに合わせて歩いていた。

ラクト「(まぁこうしてみると弟みたいなものか…)」

ラクトはカムロウを見ながらそう思っていた。昔よくこんな感じでよく散歩をしたものだと。

そう考えていると、カムロウとラクトの目の前に人影が現れた!

 

ラフレシア娘が現れた!

 

ラクト「うげぇ!なんで森の魔物がここにいるんだよ…!」

ラフレシア娘「気分転換に来てみたら好都合ね…」

ラクトはカムロウに近づき、後ろに回った。

ラクト「早速出番だぜ相棒!叩きのめしてやれ!」

カムロウ「う…うん!」

剣を抜いて臨戦態勢になった。そうしているとラクトは

ラクト「できればよ…花弁をよ…切り落としてくんねぇかな?」

カムロウ「えっ?」

ラクト「用件は伝えたぜ!あとは頑張れよ!」

砂埃を上げながら一目散に逃げだした。もう姿は見えない。

ラフレシア娘「あら…お友達にげちゃったわよ?」

そういうと魔物はカムロウの目の前に立ちはだかった。

 

カムロウは目の前の魔物を注視した。

この前のスライム娘とは違い、攻撃が通用しそうだ。

足に力を込め、走り出そうとした…が。

カムロウ「あれっ!?」

思わず転びそうになる。まだ砂の感触になれていないからだ。

その隙に、ラフレシア娘の触手が伸びてきた。

迫りくる触手を剣や盾で防いだり斬ったりしてその場をしのぐが、長くは続かなかった。

ラフレシア娘「はいつかまえた!」

体を触手で巻き取られ、身動きを封じられた。もがいても離れそうにない。

ラフレシア娘「さてどうしようかしら…」

じわじわと距離を詰められる。どうしよう…、必死に思考を回転させる。

…!よく見たら右腕は少しだけ動かせそうだ!

カムロウ「はああああ!」

乱雑に剣を振り回す。空振りしたり斬れたりした。

ラフレシア「きゃっ!?」

どうやら体に少し当たったようだ。少量の花びらが舞う。

だが決め手となったわけじゃない。続けて攻撃をしかける。

カムロウ「風薙ぎ(かぜなぎ)!」

風の衝撃波を当てた。スライム娘だとかなり効いた技だけど…。

ラフレシア娘「なかなか…強い子どもね…?」

カムロウ「体が丈夫なのかな…?」

スライム娘の体と違って、液体ではない。肉も骨もあるのだ。

どうやって倒せばいいんだろう…、そうだ!

相手は植物なんだ!火が弱点なのは当たり前だ!

ラフレシア娘に向かって人差し指を向ける。

カムロウ「ファイアーボール(火玉魔法)!」

指から小さい火の玉が飛び出した。

元々お母さんが囲炉裏に火をつけるときに使っていた魔法だ。わがまま言って教わったんだ。

ラフレシア娘「あ…危ない!火は危ない!」

魔物は火を避けながら慌て始める。やっぱり弱点だ!

カムロウ「ファイアーボール(火玉魔法)ファイアーボール(火玉魔法)!」

これでもかと言わんばかりに連発する。

ラフレシア娘「ちょ…降参!降参するわよ!だから火はやめて!やめてってば!」

そういうと魔物は逃げ出した。

カムロウは息切れしながらそれを眺めていた。

慣れない魔法を連発するのはこれっきりにしとこう…。

 

 

 

ラクト「さすがだぜ相棒!」

後ろからラクトが歩きながら現れた。

カムロウ「そ…そうかな?…あっそうだ、花弁…。」

無我夢中で戦ってたから、花弁を斬ったかどうかなんて覚えてない。

ラクト「あぁ、ちゃんと回収してあるぜ。」

手に数枚の花びらを見せてくれた。どうやらちゃんと斬っていたらしい。

カムロウ「それもお金になるの?」

ラクト「もちろんだぜ。」

カムロウ「すごいなぁ…なんでもお金になるんだね。」

ラクト「全部が全部ってわけじゃないけどな…需要ってもんがあんだ。」

ラクト「(うーん…こいつは金について全く知らないんだな。)」

カムロウはお金の使い方はおろか、物の売買に関しても全く知らないことをラクトは見抜いていた。

しかし、これから行くであろう町だとお金は必需品だ。

ラクト「(会った時から、こいつは一銭も金を持っていなかった。さすがにお金持ってないなんて、通用しないよなぁ…)」

これから社会という場所に行くわけなのだ。礼儀だか作法だが、そんなことが常識になっている所に、右も左もわからない子どもを置いていくわけにもいかないとラクトは思った。

ラクト「おいカムロウ、これ持っとけ。」

財布からお小遣いと言えるほどのお金をカムロウに手渡す。

もし俺がいないときの保険ってやつだ。

カムロウ「えっこれ…いいの?」

ラクト「いいんだいいんだ。お前も少しは持っといたほうがいい。」

ラクト「それに宿とか、値の張るようなもんがあったら俺にまかせな!」

カムロウ「わかったよ!」

ラクト「(よし…これでお財布事情は俺様のものだな。)」

ここはお金の管理がわかる俺が管理しといたほうがいい…。

ラクトはそう考えながら、カムロウと共にナタリアポートに向かった。

 

 

 

 

二人はナタリアポートに到着した。

大通りは人で賑わい、遠くからさざ波がかすかに聞こえる。

カムロウ「わぁ…人がいっぱいいる!」

カムロウは小さいころに家族のみんなと来た以来、ナタリアポートに来たことはない。

母親に抱きかかえられながらのはっきりとしない記憶でしか覚えていない。

こうしてここにいることは新鮮だった。

ラクト「カムロウ、ちょいと用がある、しっかり俺に付いて来いよ!」

町の熱気に胸を躍らせていると、ラクトが呼び掛けてきた。

ラクト「俺から離れるなよ?こんなに大きい町だと、探すのが大変だからな。」

カムロウはラクトから離れることがないよう、しっかりと彼の後ろを付いて行った。

カムロウ「用って?」

ラクト「持ち物売って金にするんだ。」

いままで手に入った物を売りに行くらしい。

 

ラクト「ここで待ってな。」

マーメイドが経営している露店の近くで待っているよう言われた。

カムロウは初めて見るマーメイドに目を奪われていた。

本当に下半身が魚で、きれいな人だ。

でも魚なのに陸に上がって、平気なのだろうか?

 

そう思いながら眺めていると、今度は遠くから笑い声が広場のほうから聞こえてくる。

目線をそっちに移す。

広場の噴水前で、派手な服を着た一人の男がいた。

服はピエロが来ているような服だが、女性が着ているようなミニスカート付きのデザインをしており、黒の網タイツを履き、靴は赤いヒールだ。男なのに。

そんな服装をした男が口から火を吹いている…えっ!?口から火を!?

そう驚いていると今度は一つのボールを持って投げ始めた…。

もう一つ、またもう一つ、…全部で3つのボールでジャグリングをし始めた。

ラクト「お、大道芸じゃねぇか。」

用事を済ませたラクトが来た。

カムロウ「ダイドウゲイ?」

ラクト「あれみたいな芸をいくつか持っていて、それを見せて金貰ってる人たちだ。」

ラクト「それにしてもなんだあの服装は…ずいぶん奇抜というか…画期的というか…」

その時、大道芸人は投げ続けているといきなり全部上空に投げ放った!

………投げたボールは上空にはなかった。

投げた本人もどこ行った?みたいな反応だ。それをみていた観客も周囲を見渡し始める。

その瞬間、投げたボールが大道芸人の頭に直撃した!しかも3回連続!それを受けて目を回している…。

それを見てどっ…と笑い声が沸き上がった。

目を回して倒れ始める…と思いきや、片手で逆立ちをし始めた!

そして急回転し始めた!ピタッと止まると、口にバラをくわえて立っていた!同時に拍手が巻き起こる。

ラクト「はははっ!ありゃぁ面白れぇ!」

ラクトもそれを見て笑いながら拍手していた。

カムロウはそれを見て唖然としていた。同時に楽しんでいた。何が起こるかわからない芸を見て。

 

 

夕焼けが広場を照らす。一通り芸を披露し終え、深々とお辞儀をしてショーは終わった。

周りから称賛の声があがる。

ラクト「どうやらあれで終わりらしいな。」

ラクト「すげぇ芸だったな…んん?」

ラクトが違和感に気付く。

カムロウ「どうしたの?」

ラクト「あいつ…投げ銭をしないのか?」

カムロウ「?」

ラクト「ああいう道端で芸を見せるような大道芸人ってのは、金を払えるように箱とか、帽子とかが置いてあったりするんだ。」

言われてみると確かにそうだった。箱らしきものも置いてないし、当の本人は小道具をしまい始めていた。

ラクト「珍しいな、金を要求しない芸人ってのは。」

カムロウ「本当はお金、渡すべきなの?」

ラクト「金を払うのは任意だな、楽しめたなら払う、楽しめなかったら払わない。結局それも個人によるがな。」

カムロウ「ふーん…。」

ラクト「ま、本人が金をもらわないってんなら、それはそれで放っておくか。」

ラクト「俺たちは宿でも探すか。」

そういって宿を探し始めようとしたが、カムロウは動こうとしなかった。

ラクト「?…カムロウ?」

歩みを止め、カムロウを呼んだ。それでも動かなかった。

ラクト「どうした?」

カムロウ「ごめん、ちょっと待ってて!」

そういうとカムロウはカバンから何かを取り出しながら、大道芸人に近づいた。

 

カムロウ「あ…あの…。」

大道芸人「…あらら?」

片付けをしている最中に、後ろから声をかけられた大道芸人は振り返る。

そして目線をカムロウと合わせるように屈んだ。

大道芸人「あら…どうしたの坊や?」

カムロウ「その…こ…これ!どうぞ!」

手からラクトから渡された少ししかないお金を差し出す。

大道芸人「あらやだ!あたしにくれるの?とっっっても嬉しいわ!」

それを見て大道芸人は嬉しそうにした。しかし、差し出されたお金を受け取ろうとしなかった。

大道芸人「坊やには悪いけど…それは受け取れないわ。」

そしてカムロウの手を優しく握りながらこう言った。

大道芸人「受け取るのはそのキ・モ・チ。ありがとうね、心優しい坊や。」

彼は微笑みながら頭をなでてくれた。カムロウは少し恥ずかしい気持ちになった。

 

 

 

 

夜になって、ラクトとカムロウは宿のベッドに座っていた。

ラクトは寝る前に、カムロウに理由を聞いていた。

ラクト「なんで、あの芸人に金を渡そうとしたんだ?」

カムロウ「楽しかったから。」

カムロウ「楽しかったんだ!あんなにすごいの見たの!初めてだったんだ!」

そう興奮しながらラクトに自分が感じた気持ちを伝えた。

ラクト「へぇ…。」

ラクトは感心した。自分じゃ絶対金を払わなかった。周りにいた人たちもそうだった。

こいつは、そんな常識をものともせずに、ただ自分が良いと思ったからそうしたのだ。

カムロウ「また見れるのかな…。もう一度みたいなぁ…。」

カムロウはまだ熱が冷めないのか、落ち着こうとしなかった。

ラクト「色んな町に行けば、ああいうのがまた見れるかもよ?」

カムロウ「本当!?」

ラクト「また見たければ、早く寝るんだな。歩き疲れたろ?体を休ませないとな。」

大道芸を見ていたがために、港にイリアス大陸行きの船があるか確認することを忘れていた。

明日一番に確認するために早起きするのだ。

カムロウはまだ興奮していた。それを横目に、弟という存在に懐かしみを感じながらラクトは横になった。

少し時間が経ったころ、部屋は寝息しか聞こえなくなった。

 

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