もんむす・くえすと! 勇者ルカと仲間たち 作:J・チェプナクル
イリアスポートから、「海神の鈴」があるといわれる秘宝の洞窟に行く途中の、その日の夜。
秘宝の洞窟への道のりは短くなく、途中で野営するハメになってしまった。
ルカ「意外に、距離があったんだな。こんな事だったら、イリアスポートで一泊すれば良かったよ…」
ラクト「最悪だぜ…
数時間ほどで着くと思ったのに、大間違いだったようだ。
ちなみに今夜のメニューは、焼き魚と焼きマシュマロだ。
アリス「全く、無計画な奴め。さて、剣を取るがいい。今夜も特訓だ。」
今日は新しい技を教えてはもらえず、基礎訓練のみ。
もっとも、そんなに次々と技を教わっても覚えきれるものではないが。
アリス「カムロウ、チリ、ラクトも、ルカと共に修行しろ。」
カムロウ「わーい!」
チリ「わーいって…絶対キツイやつだよこれ。」
ラクト「えっ…俺!?」
マモルから何かを教わっていたラクトは驚いて跳ね上がる。
アリス「なんだ…しないのか?」
ラクト「なんで俺たちなんだ?ジョージとか
今この場に、ジョージとパヲラはいない。二人で鍛錬をしに行った。
アリス「そいつらはすでに、基礎体力を鍛え上げている。今、鍛えないといけないのは貴様らの方だ。」
アリス「貴様らは全体的に、身体能力がまだ足りん。今ここで基礎体力を鍛えておかないと、セントラ大陸のモンスター共に勝てんぞ。」
並みの戦士が戦えるのは、このイリアス大陸北方まで。
セントラ大陸だと、ベテランの戦士でもないとまともに戦えないらしい。
ラクト「分かったよ…特に
ラクトは重い腰を上げる。
ルカ「よし!頑張るぞ!」
こうして就寝までの数時間、アリスを相手に修行に励んだである__
ルカ「せいっ!」
アリス「遅い!もっとだ!」
ルカは剣の突きの練習。アリスに向かって何度も突きを繰り出していた。
アリス「あまり体に力を入れるな!極限までリラックスした状態から、一気に力を入れろ!無駄な体力を浪費するだけだぞ!!」
ルカ「せいっ!はあっ!!」
…もっとも、全部避けられてしまっているが。
カムロウは、基本的な動き。剣、盾、回避といった動作全般の鍛錬だ。
アリスが放つ無数の衝撃波を避けながら、攻撃を仕掛ける。この繰り返しだ。
カムロウは盾で、衝撃波を受け止めていた。
カムロウ「うっ…」
アリス「受け止めるか受け流すか使い分けろ!盾は、なんでもかんでも受け止めるためにあるのではない!力任せで受け止めてしまえば、盾が持たんぞ!」
アリス「カウンターを狙うのなら、盾は受け止めるのではなく受け流すようにしろ!」
カムロウは言われた通りに動こうとする。…が、慣れてないのかその動きは軽やかじゃなかった。
チリも同じく基本的な動きの鍛錬だ。その体よりも大きなハンマーを、もっと速く振り回せるために。
アリス「お前は隙が大きい!ハンマーを構える間が長すぎる!」
アリス「一発よりも連発だ!流れるように動かせ!!」
チリ「ひ…ひぃぃ…!!!」
チリは半泣きになりながらも必死にハンマーを振り回している。
ラクトは魔法の鍛錬。
アリスが放つ攻撃魔法を、相殺させるという内容だが…
アリス「どうした!動きが遅れているぞ!」
ラクト「うるせぇっ!!情報量がっ!!多いっ!!」
避けた先に魔法を撃ち込まれ、相殺してもまた魔法を撃ち込まれている。どうやら、ラクトの身体能力の強化も兼ねているようだ。
アリス「そもそもお前は、後衛が良いなどと甘えて!!」
ラクト「それはそうだったけどっ!ぜぇ…ぜぇ…」
もはや息も絶え絶えだ。
アリス「この鍛錬が厳しいと感じるは、いままで鍛えてこなかった分のツケだと思え。今のお前の身体能力は他の奴らよりも低いのだからな。」
アリス「ちなみに今の貴様らの身体能力を順位付けするとこんな感じだ。」
\ドンッ!/
1位パヲラ
2位チリ
3位カムロウ
4位ラクト
5位ルカ
ルカ「僕最下位かよっ!!」
アリス「
ラクト「へへーん。どうよ?」
アリス「褒めてない。逃げ足抜きだとルカに負けるぞ。」
ラクト「はい…」
アリス「良いものをやるぞ!」
アリスはバランスボールほどの、特大サイズの火球を5連発放った!
ラクト「いやこれは無理があるだろ!!」
あまりの数と大きさに、目を飛び出すくらいの勢いで驚く。
相殺しきれず全部食らってしまう。
ラクト「あっちちちちち!!!」
消火するために体をぐるぐるぐると転がる。
やっと火が消えたが、体中真っ黒こげになる。
ラクト「はぁ、はぁ…殺す気かっ!!俺様のマフラーまで燃え尽きるところだったぞ!!!」
アリス「そのまま燃え尽きてしまえ。」
ラクト「なんだとてめぇ!!!」
…数時間後。
ルカ「はぁ、はぁ、はぁ……」
カムロウ「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ……」
チリ「…もう、限界。」
ラクト「燃え尽きた…何もかも…」
全員、ぐったりしていた。
体力も気力もすっからかんだ。
アリス「やれやれ…貴様らの動きには無駄が多すぎるな。その無駄が速度を鈍らせ、威力を殺し、技を駄する事になるぞ。」
ルカ「そんな事言われても、剣を振るので精一杯なんだ…」
チリ「ハンマー振り回すのに精一杯です…」
アリス「その動きに風を宿し、その身に土を宿し、その心に水を宿し、その技に火を宿す。」
ルカ「?」
カムロウ「?」
アリス「それこそが、戦いの極意。これを体得しなければ、魔王を打ち倒すことなど夢のまた夢だ。」
カムロウ「???」
ルカ「その…悪いけど、なにがなんだか分からないよ…そんな禅問答みたいなことを言われても…」
アリス「やれやれ、
ルカ「うぇぇ…こういうのは苦手だなぁ…」
ラクト「もう終わってくれよ…」
文句を言いつつ、疲れた体を引きずって座禅を組む。
アリス「ぶつくさ言うな。堕天使エリゴーラは、瞑想で己の傷をたちどころに癒したという。」
ラクト「ほーん。」
アリス「さすがにそれは眉唾だろうが、瞑想における精神統一で得るものは多いはずだ。」
その場で、全員座禅を組む。
静かで、長いような短いような時間が流れる。
ルカ「………」
ルカは静かに瞑想した……
ルカの体力が回復した!
ルカ「ほ、本当だ…!傷が治ったぞ…!!」
カムロウ「?」
ラクト「なにぃ!?」」
チリ「えっ!?」
アリス「な、なんだと…!?」
アリス「そんなわけあるか!貴様、どういう体をしているのだ…?」
ルカ「…変なのか?堕天使なんとかは、瞑想で傷を癒したってお前が言ったんじゃないか。」
チリ「言ってたけどさぁ!そうじゃないんだよ!!」
アリス「そんなの、普通に考えればデマカセの類だろうが!瞑想して怪我が治るなど、物理的におかしいぞ…!」
カムロウ「ぼく、できないよ?」
チリ「それが普通なの!ルカがおかしいの!」
ルカ「で、でも…」
ルカは静かに瞑想した……
ルカの体力が回復した!
ルカ「ほら、出来たじゃないか。」
ラクト「いやいやいやいや…」
チリ「ほら出来た、で出来る事じゃないよ…」
アリス「何それ、こわっ…」
ルカ「ちょ、ちょっと…引かないでくれよ…!」
なんだかよく分からないが、新しい技を覚えてしまったようだ。
ルカは「瞑想」を習得した!…のかな?
ラクト「…お前ら、今度からルカに回復魔法かけるのやめような!!」
チリ「わかった!」
カムロウ「?わ、わかったよ?」
ルカ「なんで!?ひどくないか!?」
アリス「………わけの分からん奴だ…」