もんむす・くえすと! 勇者ルカと仲間たち   作:J・チェプナクル

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第31話 秘められた力と暴走する力

___七尾が、ルカに止めの一撃をしようとするその刹那。

地に付し、身動きもとれないカムロウの脳裏にモノクロのビジョンが浮かぶ。

 

あの日、村が魔物の襲撃に遭った日、母親が自分を庇って重症を負った、あの夕焼けの出来事。

自分を庇って、攻撃の波に飲みこまれたラクトの姿。

 

ぼくは手を伸ばそうとしても、届くことはなかった。助けることが出来なかった。

結局____

 

__ぼくは、だれも守れない人間なのだろうか…?

 

___今、目の前で友達が殺されかけているのを…

 

____ただ何もできずに、助けることもできずに、眺める事しかできないのか…?

 

 

 

_____そんなの、嫌だッ!!!

 

 

カムロウは心の底から叫んだ。

 

カムロウ「___やめろーーーッ!!!」

 

すると、次第に体の底から、何かが沸き上がってくる。

ドロドロした感覚が煮えたぎるような、迸るような、暴れるような、不思議な感覚だ。

それは心の底からこう轟き喚く。

 

力を欲するのならば、

叫べ。心に従うのだと。

揮え。力に従うのだと。

お前にとって仇をなす存在を、排除するために__

__本能を、暴走させるのだと。

 

カムロウ「アアアアアアアアッ!!!」

 

カムロウの体に異変が訪れる。

体から稲妻が迸り、カムロウを中心に風が吹き荒れる。

すると、口から牙が、頭から角が突き生える。

腕と足が、膨張し、太く鋭い爪が生える。

背中からコウモリのような羽が伸び、尻から長い尻尾が突き出る。

体全体の筋肉が膨張し、全身に鱗が生え揃う。

それはまさに、ドラゴンと呼べる姿であった。

人の声から怪物の声に変化し、洞窟内に竜の雄叫びが響き渡る。

 

カムロウはドラゴンに変身したッ!!!

 

ドラゴンは咆哮が終わると、地面に四足で立ち、七尾を睨む。

鼻から勢いよく息を吐き出し、翼をはためかせ、尾を勢いよく地に叩く。

七尾「!?」

ルカ「なん…だ…!?」

ラクト「は…はぁっ!?」

七尾はルカにとどめを刺すのを止め、その一部始終を見ていた。

それだけではない。その場にいる全員が、動きを止めてその変身を目撃したのだ!

七尾「ど…どういうことです!?なぜ人間が(ドラゴン)に!?」

ルカ「あ…あれ…カムロウなのか…!?」

ラクト「なにが…なにがどうなってんだよ!?」

 

ドラゴン「グオオオォォォ!!!」

ドラゴンは雄叫びをあげながら、七尾に突進し、七尾の巨体が吹き飛ばされる!!

ルカ「えっ…!?」

マモル「あの巨体を…吹き飛ばしたぁ!?」

みんなが総攻撃をしても、ビクともしなかった岩のような巨体が、いとも簡単に吹き飛ばされたのだ。

そしてドラゴンは、鋭い爪を振り下ろす!

七尾「くっ…!!」

七尾は手で、ドラゴンの腕を掴んで攻撃を中断させる。すると、今度は首を伸ばして七尾の腕に噛み付いた!

鋭く凶暴な牙が七尾の腕に深く突き刺さり、そこから血が流れる。

七尾「おのれっ!」

七尾はドラゴンの顔をぶん殴る。

しかし、何度も顔を殴っても、ドラゴンは全く動じなかった。

七尾「なっ!?」

驚いている隙に、ドラゴンは体ごとぶつかって七尾を突き倒し、七尾はドラゴンに組み敷かれる!!

ドラゴン「オオオォォォ!!!」

ドラゴンは口から灼熱の炎を吐き出した!

周囲は炎で燃え上がり始め、ルカたちも巻き込まれそうになる!

ルカ「わわっ…!」

チリ「ルカ!こっちに!」

炎が迫りくる寸前に、ルカの元にチリが駆け付ける。

ルカはチリに肩を組んでもらって、炎が届かない場所に移動した。

 

ジョージの方にも、炎が広がる。

マモル「大太法師(デイタラボッチ)!」

マモルの影がジョージの前に立ち、壁になった!

マモル「お前さん、早く来なぁ!」

ジョージ「いつも、世話をかけるな…」

ジョージはマモルの影にしがみついて引き寄せられる。

 

パヲラ「ティー(シャ)ッ!ワイ(シャ)ッ!」

ラクト「ウインド!」

パヲラは衝撃波を、ラクトは風の魔法を放ち、炎が自分たちのほうに来ないようにしていた。

パヲラ「あれ、本当にカムロウちゃんなのかしら!?」

ラクト「分かんねぇよ!あの野郎、俺たちなんてお構いなしに暴れやがって!!」

 

七尾「このっ…離れなさい!!」

七尾「二つの月!!」

ドラゴンを二本の尻尾で突き飛ばす!

吹き飛ばされたドラゴンは四本の足で着地する。

あの七尾の重い剛撃が、まるで効いてないように見える。

ドラゴンは再び咆哮をあげる!

七尾「まだ暴れ足りないのですか!!」

ドラゴンは暴れながら、七尾に攻撃を仕掛ける!

七尾も負けじと、それに応戦する!

2体の激しい攻防に、洞窟全体が揺れる!

すると、天井が一部、崩壊して瓦礫が降り注いだ!!

ルカたちにも瓦礫が降り注ぐ!

ジョージ「マモル、結界はまだ張れるか?」

マモル「さっきので紙がなくなっちまったよぉ…」

ジョージ「ならば…」

ジョージは刀を構えた!

ジョージ「禍津(マガツ)!!!」

右腕が赤黒く、禍々しく変化し、ジョージの力を増幅させる!

瓦礫を一閃して両断し、衝突を防ぐ。

ジョージは瓦礫がルカたちを避けて落下したのを確認すると、右腕を押さえる。

マモル「もうやめときなぁ…お前さんが死んじまうよぉ。」

ジョージ「あ、あぁ…」

 

不意に、ドラゴンの口から光が溢れ始めた!

ルカ「ひ…光!?」

七尾「まさか…!?」

ドラゴンは口から群青に輝く光線を放った!

 

___破壊光線(ドラゴンブレス)!!!

 

七尾「こんな…デタラメな…!」

七尾は尻尾を前に出して防御した!

群青の光線は止まることなく放たれ、徐々に押され始める!

七尾「こ、この技を、二度も使うとは…!」

七尾は防御しながら魔力を集中し、必殺技を放った!!

七尾「七つの月!!」

7本の尻尾による、重い連撃。

ドラゴンの体に次々と、剛撃が突き刺さる!

ドラゴン「オオォォ…」

連撃がドラゴンに当たるたびに光線は細くなり始め、やがてドラゴンは地に付し倒れた。

…と思いきや、ドラゴンは再び立ち上がり、やたらめったに光線を吐き出しながら暴れ始めた!

しかし光線は、目標を失ったかのように、壁、床、天井に当たる!

チリ「あ…暴れ始めたぁぁ!!」

ルカ「どうすればいいんだ…このままだと、この洞窟が持たないぞ!?」

光線が放たれるたびに、洞窟の崩落は酷くなる。

ラクト「あいつ…!!」

ラクトはいきなり走り出した!

パヲラ「ちょっ!!どこに行く気よ!?」

ラクトはドラゴンの前に立ち、自分の存在を認知させるよう大きく手を振り呼び掛ける。

ラクト「おい!カムロウ!もう止めろ!」

ドラゴン「オオオォォォン!!!」

しかし、ドラゴンは気に留めずに暴れ続ける!

ラクト「俺だ!俺が分かんねぇのか!?」

ドラゴン「グオオオォォォ!!!」

ドラゴンは口に光を蓄え始める!

ラクト「聞こえてんなら返事しろよ!!相棒!!!」

ドラゴン「グオオオォォォン!!!」

次第に口から淡い光が漏れだした!

パヲラ「危ないのがわからないの!?ほら行くわよ!!」

パヲラはラクトに近付き、無理矢理ラクトを肩に担ぎ、急いでその場を離れる。

ラクト「離せ!離しやがれ!」

パヲラとラクトがその場を離れたと同時に、

再びドラゴンは口から、全てを破壊する光線を放った!

 

_____破壊光線(ドラゴンブレス)!!!

 

七尾「くぅぅぅ……!」

七尾はもう一度防御し、光線を受け止める。

七尾「か…かくなる上は!」

七尾の瞳が妖しく輝いた!

チリ「ま…魔眼!みんな伏せて!」

ルカ「えっ___」

辺りが一瞬、妖しい光で照らされる。

すると、ドラゴンは動きを止め、その場で倒れて眠り始めた。

倒れた衝撃で、地面が揺れる。

すると体がどんどん縮んでいき、元の姿に、カムロウの姿に戻った!

カムロウは眠っているようだ。

チリ「眠りの魔眼…」

ラクト「あぶねぇ…けど…」

七尾「お…終わったようですね……」

七尾は肩で息をしていた。ドラゴンとの闘いで体力を消耗したようだ。

 

七尾「不測の事態でしたが…後は…あなた達だけです。」

呼吸を整え、勇者一行の前に再び立つ七尾。

ラクト「まだ戦う気かよ…!」

パヲラ「そうよねい…まだこっちが終わってなかったわ…!」

ジョージ「し、しかし…」

マモル「今のアッシらで勝てるんですかぃ!?」

今のルカたちの体力はもう限界だ。

予期せぬ事態で七尾の体力が削れたといっても、勝てる見込みがあるかどうか分からないのだ。

ラクト「おいルカ、どうする___」

ルカに話しかけようとしたが、姿が見当たらない。

ラクト「…ん?ルカは?」

辺りを見渡すと、すぐ横にルカがいるのを確認できた。しかし__

 

ルカ「__Zzz…」

 

マモル「こりゃぁ…」

ジョージ「寝てる…」

パヲラ「寝てる…!」

ラクト「寝てる…!?」

チリ「寝てるーッ!!?」

ルカは眠ってしまっていた!

 

チリ「もしかして…さっきの魔眼、見ちゃったの!?」

ラクト「おいルカ!起きろ!」

…返事がない。ただぐっすり眠っているようだ。

ラクト「いや起きろよっ!」

 

七尾「勝機…!先に片付けましょう!」

ジョージ「勇者殿…!」

パヲラ「だめ…もう間に合わない…」

棚からぼたもち。

好都合と言わんばかりに、七尾はルカに尻尾を叩きつけた!

 

ルカ「むほう…」

ルカはひらりとかわした!

 

七尾「なんですって…!?」

パヲラ「はぁっ!?」

ラクト「あいつ…今、何した!?眠ってるよな!?」

ルカ「アリス…雑草なんて食べちゃだめだよ…むにゃむにゃ。」

ラクト「いやどんな寝言だよっ!]

ルカはぐっすりと眠っている。

 

七尾「今のは、偶然…!?」

七尾の尻尾が、再びルカに迫った!

ルカ「にして…」

しかし、ルカはひらりとかわした!

ルカ「Zzz…」

ルカはぐっすりと眠っている!

 

七尾「まさか、私を愚弄しているのですか…!?」

ルカ「むにゃむにゃ…ラクト…キノコ残しマフラー…」

チリ「夢でラクトを愚弄してる…」

ラクト「悪かったなっ!嫌いなんだよキノコ!!」

ラクト「…いやキノコ残しマフラーってっ!!!」

 

七尾「いや…間違いなく眠っているはず…」

ルカ「Zzz…らせつのあぎと…」

ルカは鼻提灯を出しながら立ち上がった!

ルカ「はぐんにいたりてじゃをはらう…それ、いっくぞ~!」

ルカは、踊るような剣技を繰り出し、七尾に強烈な乱撃を叩き込んだ!!

あまりの威力に、嵐のような突風が吹き荒れる!

ラクト「こ…今度は一体何なんだよぉぉぉ!?」

パヲラ「た…退却!一時退却!」

チリ「わ、分かった!みんな、走れる!?」

マモル「一応、走れまっせぇ。」

ジョージ「パヲラ殿、カムロウ殿を…」

パヲラ「ええ!」

パヲラはカムロウを抱きかかえ、一行はその場から避難した!

 

七尾「ぐっ…!ば、馬鹿な…!まるで、人が変わったように…!」

乱撃を食らった七尾は思わずのけぞる。

七尾「ならば、これはどうです…!?」

七尾「二つの月!!!」

七尾の尻尾2本が迫ってきた!

ルカ「むじょう…」

ルカはひらりとかわした!

七尾「さっきまで…こんな動きはしなかったはず…!?」

 

ルカ「おなかいっぱい…すべてのいのち…」

ルカは鼻提灯を膨らましながら片手を突き出した!

ルカ「ははなるそらにかいきせよ…むにゃむにゃ…」

鼻提灯が割れると同時に、ルカは魔力を凝縮させ、爆発させた!

七尾「こ、この魔力はいったい…!?」

洞窟内が、爆発で消し飛ばされる!

 

____瓦礫の雨。

七尾は瓦礫をどかして再び立ち上がる。

七尾「はぁ…はぁ…!」

その顔は苦痛の表情を浮かべていた。

七尾「こうなれば…全力で葬り去るのみ…!!」

ルカ「むにゃ…ダメだよぉ…」

七尾「受けなさい!私の奥義を!!」

七尾の7本の尾が、一斉に迫ってくる!

ルカ「わがはは…は…」

ルカの体が輝き始めた!

ルカ「あけのみょうじょう…」

すると迫りくる七尾の尾を一瞬で切り倒し、

ルカ「あけぼののこ…」

七尾の目の前に接近した!!

ルカ「ちになげおちたほし…」

ルカの体から光が迸る!!!

ルカ「しょうりをえるもの…」

__眩い星は冥府に堕ちる!!!

七尾「ま、まさか…こんな____」

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