もんむす・くえすと! 勇者ルカと仲間たち 作:J・チェプナクル
___七尾が、ルカに止めの一撃をしようとするその刹那。
地に付し、身動きもとれないカムロウの脳裏にモノクロのビジョンが浮かぶ。
あの日、村が魔物の襲撃に遭った日、母親が自分を庇って重症を負った、あの夕焼けの出来事。
自分を庇って、攻撃の波に飲みこまれたラクトの姿。
ぼくは手を伸ばそうとしても、届くことはなかった。助けることが出来なかった。
結局____
__ぼくは、だれも守れない人間なのだろうか…?
___今、目の前で友達が殺されかけているのを…
____ただ何もできずに、助けることもできずに、眺める事しかできないのか…?
_____そんなの、嫌だッ!!!
カムロウは心の底から叫んだ。
カムロウ「___やめろーーーッ!!!」
すると、次第に体の底から、何かが沸き上がってくる。
ドロドロした感覚が煮えたぎるような、迸るような、暴れるような、不思議な感覚だ。
それは心の底からこう轟き喚く。
力を欲するのならば、
叫べ。心に従うのだと。
揮え。力に従うのだと。
お前にとって仇をなす存在を、排除するために__
__本能を、暴走させるのだと。
カムロウ「アアアアアアアアッ!!!」
カムロウの体に異変が訪れる。
体から稲妻が迸り、カムロウを中心に風が吹き荒れる。
すると、口から牙が、頭から角が突き生える。
腕と足が、膨張し、太く鋭い爪が生える。
背中からコウモリのような羽が伸び、尻から長い尻尾が突き出る。
体全体の筋肉が膨張し、全身に鱗が生え揃う。
それはまさに、ドラゴンと呼べる姿であった。
人の声から怪物の声に変化し、洞窟内に竜の雄叫びが響き渡る。
カムロウはドラゴンに変身したッ!!!
ドラゴンは咆哮が終わると、地面に四足で立ち、七尾を睨む。
鼻から勢いよく息を吐き出し、翼をはためかせ、尾を勢いよく地に叩く。
七尾「!?」
ルカ「なん…だ…!?」
ラクト「は…はぁっ!?」
七尾はルカにとどめを刺すのを止め、その一部始終を見ていた。
それだけではない。その場にいる全員が、動きを止めてその変身を目撃したのだ!
七尾「ど…どういうことです!?なぜ人間が
ルカ「あ…あれ…カムロウなのか…!?」
ラクト「なにが…なにがどうなってんだよ!?」
ドラゴン「グオオオォォォ!!!」
ドラゴンは雄叫びをあげながら、七尾に突進し、七尾の巨体が吹き飛ばされる!!
ルカ「えっ…!?」
マモル「あの巨体を…吹き飛ばしたぁ!?」
みんなが総攻撃をしても、ビクともしなかった岩のような巨体が、いとも簡単に吹き飛ばされたのだ。
そしてドラゴンは、鋭い爪を振り下ろす!
七尾「くっ…!!」
七尾は手で、ドラゴンの腕を掴んで攻撃を中断させる。すると、今度は首を伸ばして七尾の腕に噛み付いた!
鋭く凶暴な牙が七尾の腕に深く突き刺さり、そこから血が流れる。
七尾「おのれっ!」
七尾はドラゴンの顔をぶん殴る。
しかし、何度も顔を殴っても、ドラゴンは全く動じなかった。
七尾「なっ!?」
驚いている隙に、ドラゴンは体ごとぶつかって七尾を突き倒し、七尾はドラゴンに組み敷かれる!!
ドラゴン「オオオォォォ!!!」
ドラゴンは口から灼熱の炎を吐き出した!
周囲は炎で燃え上がり始め、ルカたちも巻き込まれそうになる!
ルカ「わわっ…!」
チリ「ルカ!こっちに!」
炎が迫りくる寸前に、ルカの元にチリが駆け付ける。
ルカはチリに肩を組んでもらって、炎が届かない場所に移動した。
ジョージの方にも、炎が広がる。
マモル「
マモルの影がジョージの前に立ち、壁になった!
マモル「お前さん、早く来なぁ!」
ジョージ「いつも、世話をかけるな…」
ジョージはマモルの影にしがみついて引き寄せられる。
パヲラ「ティー
ラクト「ウインド!」
パヲラは衝撃波を、ラクトは風の魔法を放ち、炎が自分たちのほうに来ないようにしていた。
パヲラ「あれ、本当にカムロウちゃんなのかしら!?」
ラクト「分かんねぇよ!あの野郎、俺たちなんてお構いなしに暴れやがって!!」
七尾「このっ…離れなさい!!」
七尾「二つの月!!」
ドラゴンを二本の尻尾で突き飛ばす!
吹き飛ばされたドラゴンは四本の足で着地する。
あの七尾の重い剛撃が、まるで効いてないように見える。
ドラゴンは再び咆哮をあげる!
七尾「まだ暴れ足りないのですか!!」
ドラゴンは暴れながら、七尾に攻撃を仕掛ける!
七尾も負けじと、それに応戦する!
2体の激しい攻防に、洞窟全体が揺れる!
すると、天井が一部、崩壊して瓦礫が降り注いだ!!
ルカたちにも瓦礫が降り注ぐ!
ジョージ「マモル、結界はまだ張れるか?」
マモル「さっきので紙がなくなっちまったよぉ…」
ジョージ「ならば…」
ジョージは刀を構えた!
ジョージ「
右腕が赤黒く、禍々しく変化し、ジョージの力を増幅させる!
瓦礫を一閃して両断し、衝突を防ぐ。
ジョージは瓦礫がルカたちを避けて落下したのを確認すると、右腕を押さえる。
マモル「もうやめときなぁ…お前さんが死んじまうよぉ。」
ジョージ「あ、あぁ…」
不意に、ドラゴンの口から光が溢れ始めた!
ルカ「ひ…光!?」
七尾「まさか…!?」
ドラゴンは口から群青に輝く光線を放った!
___
七尾「こんな…デタラメな…!」
七尾は尻尾を前に出して防御した!
群青の光線は止まることなく放たれ、徐々に押され始める!
七尾「こ、この技を、二度も使うとは…!」
七尾は防御しながら魔力を集中し、必殺技を放った!!
七尾「七つの月!!」
7本の尻尾による、重い連撃。
ドラゴンの体に次々と、剛撃が突き刺さる!
ドラゴン「オオォォ…」
連撃がドラゴンに当たるたびに光線は細くなり始め、やがてドラゴンは地に付し倒れた。
…と思いきや、ドラゴンは再び立ち上がり、やたらめったに光線を吐き出しながら暴れ始めた!
しかし光線は、目標を失ったかのように、壁、床、天井に当たる!
チリ「あ…暴れ始めたぁぁ!!」
ルカ「どうすればいいんだ…このままだと、この洞窟が持たないぞ!?」
光線が放たれるたびに、洞窟の崩落は酷くなる。
ラクト「あいつ…!!」
ラクトはいきなり走り出した!
パヲラ「ちょっ!!どこに行く気よ!?」
ラクトはドラゴンの前に立ち、自分の存在を認知させるよう大きく手を振り呼び掛ける。
ラクト「おい!カムロウ!もう止めろ!」
ドラゴン「オオオォォォン!!!」
しかし、ドラゴンは気に留めずに暴れ続ける!
ラクト「俺だ!俺が分かんねぇのか!?」
ドラゴン「グオオオォォォ!!!」
ドラゴンは口に光を蓄え始める!
ラクト「聞こえてんなら返事しろよ!!相棒!!!」
ドラゴン「グオオオォォォン!!!」
次第に口から淡い光が漏れだした!
パヲラ「危ないのがわからないの!?ほら行くわよ!!」
パヲラはラクトに近付き、無理矢理ラクトを肩に担ぎ、急いでその場を離れる。
ラクト「離せ!離しやがれ!」
パヲラとラクトがその場を離れたと同時に、
再びドラゴンは口から、全てを破壊する光線を放った!
_____
七尾「くぅぅぅ……!」
七尾はもう一度防御し、光線を受け止める。
七尾「か…かくなる上は!」
七尾の瞳が妖しく輝いた!
チリ「ま…魔眼!みんな伏せて!」
ルカ「えっ___」
辺りが一瞬、妖しい光で照らされる。
すると、ドラゴンは動きを止め、その場で倒れて眠り始めた。
倒れた衝撃で、地面が揺れる。
すると体がどんどん縮んでいき、元の姿に、カムロウの姿に戻った!
カムロウは眠っているようだ。
チリ「眠りの魔眼…」
ラクト「あぶねぇ…けど…」
七尾「お…終わったようですね……」
七尾は肩で息をしていた。ドラゴンとの闘いで体力を消耗したようだ。
七尾「不測の事態でしたが…後は…あなた達だけです。」
呼吸を整え、勇者一行の前に再び立つ七尾。
ラクト「まだ戦う気かよ…!」
パヲラ「そうよねい…まだこっちが終わってなかったわ…!」
ジョージ「し、しかし…」
マモル「今のアッシらで勝てるんですかぃ!?」
今のルカたちの体力はもう限界だ。
予期せぬ事態で七尾の体力が削れたといっても、勝てる見込みがあるかどうか分からないのだ。
ラクト「おいルカ、どうする___」
ルカに話しかけようとしたが、姿が見当たらない。
ラクト「…ん?ルカは?」
辺りを見渡すと、すぐ横にルカがいるのを確認できた。しかし__
ルカ「__Zzz…」
マモル「こりゃぁ…」
ジョージ「寝てる…」
パヲラ「寝てる…!」
ラクト「寝てる…!?」
チリ「寝てるーッ!!?」
ルカは眠ってしまっていた!
チリ「もしかして…さっきの魔眼、見ちゃったの!?」
ラクト「おいルカ!起きろ!」
…返事がない。ただぐっすり眠っているようだ。
ラクト「いや起きろよっ!」
七尾「勝機…!先に片付けましょう!」
ジョージ「勇者殿…!」
パヲラ「だめ…もう間に合わない…」
棚からぼたもち。
好都合と言わんばかりに、七尾はルカに尻尾を叩きつけた!
ルカ「むほう…」
ルカはひらりとかわした!
七尾「なんですって…!?」
パヲラ「はぁっ!?」
ラクト「あいつ…今、何した!?眠ってるよな!?」
ルカ「アリス…雑草なんて食べちゃだめだよ…むにゃむにゃ。」
ラクト「いやどんな寝言だよっ!]
ルカはぐっすりと眠っている。
七尾「今のは、偶然…!?」
七尾の尻尾が、再びルカに迫った!
ルカ「にして…」
しかし、ルカはひらりとかわした!
ルカ「Zzz…」
ルカはぐっすりと眠っている!
七尾「まさか、私を愚弄しているのですか…!?」
ルカ「むにゃむにゃ…ラクト…キノコ残しマフラー…」
チリ「夢でラクトを愚弄してる…」
ラクト「悪かったなっ!嫌いなんだよキノコ!!」
ラクト「…いやキノコ残しマフラーってっ!!!」
七尾「いや…間違いなく眠っているはず…」
ルカ「Zzz…らせつのあぎと…」
ルカは鼻提灯を出しながら立ち上がった!
ルカ「はぐんにいたりてじゃをはらう…それ、いっくぞ~!」
ルカは、踊るような剣技を繰り出し、七尾に強烈な乱撃を叩き込んだ!!
あまりの威力に、嵐のような突風が吹き荒れる!
ラクト「こ…今度は一体何なんだよぉぉぉ!?」
パヲラ「た…退却!一時退却!」
チリ「わ、分かった!みんな、走れる!?」
マモル「一応、走れまっせぇ。」
ジョージ「パヲラ殿、カムロウ殿を…」
パヲラ「ええ!」
パヲラはカムロウを抱きかかえ、一行はその場から避難した!
七尾「ぐっ…!ば、馬鹿な…!まるで、人が変わったように…!」
乱撃を食らった七尾は思わずのけぞる。
七尾「ならば、これはどうです…!?」
七尾「二つの月!!!」
七尾の尻尾2本が迫ってきた!
ルカ「むじょう…」
ルカはひらりとかわした!
七尾「さっきまで…こんな動きはしなかったはず…!?」
ルカ「おなかいっぱい…すべてのいのち…」
ルカは鼻提灯を膨らましながら片手を突き出した!
ルカ「ははなるそらにかいきせよ…むにゃむにゃ…」
鼻提灯が割れると同時に、ルカは魔力を凝縮させ、爆発させた!
七尾「こ、この魔力はいったい…!?」
洞窟内が、爆発で消し飛ばされる!
____瓦礫の雨。
七尾は瓦礫をどかして再び立ち上がる。
七尾「はぁ…はぁ…!」
その顔は苦痛の表情を浮かべていた。
七尾「こうなれば…全力で葬り去るのみ…!!」
ルカ「むにゃ…ダメだよぉ…」
七尾「受けなさい!私の奥義を!!」
七尾の7本の尾が、一斉に迫ってくる!
ルカ「わがはは…は…」
ルカの体が輝き始めた!
ルカ「あけのみょうじょう…」
すると迫りくる七尾の尾を一瞬で切り倒し、
ルカ「あけぼののこ…」
七尾の目の前に接近した!!
ルカ「ちになげおちたほし…」
ルカの体から光が迸る!!!
ルカ「しょうりをえるもの…」
__眩い星は冥府に堕ちる!!!
七尾「ま、まさか…こんな____」