もんむす・くえすと! 勇者ルカと仲間たち   作:J・チェプナクル

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第33話 セントラ大陸へ出港準備

イリアスポートに戻ってきた僕達。

ジョージ「ラクト殿、服を直してもらい感激でござる。」

ラクト「もういいって、改めてお礼なんてよ。」

先日の戦闘でボロボロにジョージの服は、帰る途中の野営でラクトに直してもらっていた。

ラクトは裁縫が得意なようだ。

ルカ「それじゃ…さっそく港へ行って、船を出してもらうとするか。」

町に着いた僕達は、港に向かって歩き始めた。

 

 

ルカ「僕…イリアス大陸の外に出るのは初めてなんだよな。」

港への道を行きながら、僕はみんなにそう告げる。

ルカ「みんなは、セントラ大陸から来たんだよな。」

ラクト「なんなら俺はセントラ大陸出身だぜ。」

カムロウ、ラクト、パヲラ、ジョージ、マモル…

少なくとも、この5人はセントラ大陸から渡ってきたのだ。

するとチリが、空を見ながらこう呟いた。

チリ「セントラ大陸、久々に帰るなぁ…」

ラクト「え!?お前、イリアス大陸に住んでたんじゃねぇのかぜ?」

チリ「あぁ…私、セントラ大陸出身なの。」

ルカ「初めて聞いたな…」

チリ「ごめん、言ってなかったっけ?」

なんてこった、セントラ大陸組が6人に増えた。

 

アリス「余も、セントラ大陸の地を踏むのは初めてだ。」

ということは、初セントラ大陸組は僕とアリスだけのようだ。

アリス「上空を通過したことなら、何度かあるのだがな。」

チリ「上空!?」

ルカ「アリスが旅に出たのは、つい先日って言ってたよな?」

アリス「その通り。魔王城を出てから、まず最初にイリアス神殿へと飛び、その後、不慮の事故があって貴様に出会ったというわけだ。」

ルカ「不慮の事故…か。」

あの、突然の墜落。一体何があったのかは、何度も聞いたが教えてくれない。

ルカ「まさか飛んでる最中に居眠りして、落ちたんじゃないだろうな…」

ラクト「いやまさか。そんなヘマするような奴じゃないだろ。」

 

それはともかく、港へ着いた。

暇そうな船乗り達が、生活の糧とするべく魚釣りをしているようだ。

交渉するなら、なるべく偉そうな人がいい。

そういうわけで、船長らしい身なりの男性に声をかけた。

ルカ「あの…船を出してほしいんですけど。」

船長「あん?冗談言うな、若いの。ここを出た船が、どうなるか知ってるだろ?」

ルカ「それがですね、この「海神の鈴」を舳先じくさきに吊るしておけば大丈夫なんですよ。」

ルカはカバンから鈴を取り出して見せる。

船長「…寝言は寝て言え。こんな汚い鈴で、嵐が避けられたら苦労しないぜ。」

ラクト「まぁ確かに…俺もあんまりその鈴、信用してねぇんだよな。古そうだし。」

船長は、全く取り合ってくれないようだ。

ルカ「実際に、試してみれば分かるんですよ。どうか、騙されたと思って船を…」

チリ「悪徳商法みたいな言い方になってる…」

船長「おととい来な。ガキの戯言に付き合ってられるほど暇じゃねぇよ…」

船長「暇だけど。」

ラクト「暇じゃねぇかっ!」

やはり、全く耳を貸してくれないようだ。

ルカ「さて、どうしたものか…」

アリス「…どいてろ、ルカ。」

不意に、アリスは船長の前に進み出た。

船長「おお、いい女。あんたなら、特別に乗せてやっても__」

アリスの眼が怪しく光った!

ラクト「うおっ眩しっ!!」

ラクトは慌てて目を伏せる。

アリス「余の意に従え。」

すると船長は、たちまちびしりと姿勢を正した。

船長「はい!何なりとご命令を!」

アリス「我々をセントラ大陸に乗せていけ。すぐに準備をしろ。終わり次第、出港だ。」

船長「了解しました!ただちに!」

 

船長「おい、てめぇら!魚釣ってる場合じゃねぇ!出港の準備だ!」

船乗り達「え…?は、はい、了解っす!」

船乗り達は当惑しつつも、慌ただしく準備を始めたのである。

ルカ「アリス…魔眼を使ったのか?」

ラクト「お前なぁ!使うなら先に言えよ!」

今まで遭遇したモンスターにも、こういう技を使う奴はいた。

魔王であるアリスが、それを使えるのも当然だろう。

アリス「くくく…これこそ、高位妖魔の眼に備わった魔力よ。余ほどになれば、魅了、石化、混乱、気絶…なんでも思いのままなのだ。」

ルカ「そりゃぁ便利だな…まさに、歩くステータス異常。」

 

後ろを見てみると…

パヲラとジョージとマモルはバカンスにでも行くような、かなりラフな格好に着替えていた。

パヲラはサンバイザーを被り、片手でビーチチェアを持っている。

ジョージはサングラスをかけ、ビーチボールを持っている。

マモルは麦わら帽子を被り、上下ともにアロハ姿だ。

パヲラ「全く、落ち着きないんだから。」

ジョージ「何事も冷静にならねば、足元をすくわれるでござるぞ。」

マモル「リラックスは大事ですよぉ兄サン。」

ラクト「なんで旅行気分になってんだよお前らはっ!」

 

ルカ「ともかく、助かったよ。ありがとう。」

アリス「ふん…勘違いするな。うだうだやっているのが面倒だっただけだ。」

僕の手助けはしないと言いつつ、結構色々と助けてくれる気がする。

なんだかんだ言いつつ、タダ飯食らいではないようだ。

船長「準備が終わりました!さあ、乗って下さい!」

船乗り「船長、この連中をどっかに送るんすか?こいつら、誰なんです…?」

船長「馬鹿野郎、この方々になんて口を利きやがる!この方はなぁ…どなただろう?」

アリス「何でもいいから乗るぞ。」

ルカ「…お世話になります。」

こうして僕達は、見ず知らずの船に乗り______

 

 

???「___待ってほしいでありますーー!!!」

誰かが遠くから、土埃を巻き上げながら猛ダッシュで走ってくる。

それは、秘宝の洞窟で助けた探検家の少女、フラドリカだった。

背中にはいつもの大きなリュックと宝箱やらなんやらの荷物を背負い、スライディングをしながら僕達の前に立ち止まる。

フラドリカ「ま、待ってほしいであり…うぇ、待って…うぇ、ま…」

ぜぇぜぇと息切れをする。

ラクト「待つから落ち着けっ!」

 

フラドリカは僕達に向かって敬礼をした。

フラドリカ「ワガハイもセントラ大陸に渡らせて欲しいであります!」

そう言えば、この子もセントラ大陸に行きたいと言っていたな。

この船はそこまで小さくない船だ。もう一人乗るくらい、何も問題もないだろう。

ルカ「アリス、この子もいいか?」

アリス「いいだろう。おい、一人追加だ。」

船長「はい!一人追加ですね!!」

フラドリカ「いえ、正確に言うと…二人であります。」

ルカ「二人…?」

そう言うとフラドリカは、背中の荷物にあった宝箱を見せてくる。

フラドリカ「紹介するであります。ミミック娘のヴェニア殿であります。」

すると、いきなり箱の隙間から、血走った目が覗いてきた!

ヴェニア「オオオオォォォ…」

チリ「ひぃ!」

ラクト「ひぃ!」

ルカ「うわっ怖っ…」

フラドリカ「申し訳ないであります…ヴェニアは人見知りだそうで…」

チリ「その見た目でっ!?」

ルカ「にしても…一体、どういう経緯でミミック娘と一緒にいるんだ?」

フラドリカ「実は、秘宝の洞窟から帰還する途中、ばったり出くわしたでありまして…その後、意気投合して、我がフラット探検団に加入させることにしたのであります!」

ヴェニアは箱の隙間から手を出してサムズアップする。

ルカ「よく意気投合できたな…」

フラドリカ「加入目的は一獲千金であります。」

ラクト「がめついなぁおいっ!」

 

ヴェニア「オオオオォォォ…」

ヴェニアは隙間から手を伸ばして、フラドリカを手招きする。

フラドリカ「ヴェニア殿、何でありますか?…ふむふむ。」

フラドリカ「今後ともよろしく…とのことであります。」

ラクト「律儀だなっ!」

フラドリカ「それでは…ルカ殿のご厚意に甘えて、フラット探検団、乗船するであります!短い間ではありますが、よろしくお願いするであります!」

フラドリカは僕達に敬礼をすると、ヴェニアを背中の荷物に乗せ、船に乗っていく。

ルカ「それじゃあ、僕達も…」

アリス「ああ、さっさと乗るぞ。」

フラドリカの後を追うように、僕達も船に乗る。

パヲラ「日焼け止めヨシ…チリちゃん、日焼け止め持った?」

チリ「持ってますけど…え?日焼け止め?」

ジョージ「飲み物、あるでござろうか…」

マモル「あるんじゃない?こんな大きい船だしなぁ。」

ラクト「カムロウ、行くぞ…何見てんだ?」

カムロウはしゃがんで何かを見ていた。

カムロウ「フナムシみてた。」

フナムシ「わきわきわきわきわき。」

フナムシ「わきわきわきわきわき。」

フナムシ「おれ、ふなむし。」

フナムシ「わきわきわきわきわき。」

ラクト「おい一匹だけ喋るフナムシいるぞ…」

 

こうして僕達は、見ず知らずの船に乗り込んだのだった。

いよいよ、船旅の始まり。

といっても、セントラ大陸まではわずか1日ほどで着くのだが。

だいたい明日の正午には、対岸の港町ナタリアポートに到着するはずだ。

 

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