もんむす・くえすと! 勇者ルカと仲間たち 作:J・チェプナクル
空は快晴、眩しい日差し、吹く潮風。
港はもう遠くに、ぽつんと小さく見える。
そして、やや揺れる船上で…ビーチチェアに寄りかかる2人と、ポーカーに興ずる人達がいた。
ジョージ「私の「魂」を賭けよう。」
ヴェニア「(箱の隙間から手を伸ばし、良いだろうと手で表現している。)」
双方、場に出された手札は…
ジョージはツーペア。
ヴェニアはフルハウス。
よってポーカー勝負は、ヴェニアの勝ちだ。
マモル「お前さん、また負けたのかぃ?」
ジョージ「ヴェニア殿は強いでござるなぁ。」
ヴェニア「(喜びの舞。)」
三人がポーカーに熱中している中、アリスとパヲラはサングラスをかけてビーチチェアでくつろいでいた。
…いやいやいやいや。
ルカ「おいちょっと待て!!」
ラクト「気、緩みすぎじゃねぇかお前ら!?」
パヲラはダルそうにサングラスを外す。
パヲラ「うるさいわねい…何よ?」
ルカ「いいか?この先で嵐を起こして、航路を中断させてるのは四天王の一人なんだぞ!」
ラクト「その海域に入るってことは、また四天王と戦うことになる可能性が十分ある!トランプなんかで遊んでる場合じゃねぇだろ!?」
マモル「……あぁ、そっかぁ。」
ジョージ「確かにそうでござるが…」
パヲラ「まぁ、問題無いでしょ。」
ルカ「なわけあるか!!」
ラクト「大問題多有りだっ!!!」
するとチリが、コップを複数個持ってきた。
チリ「オレンジジュース飲む人ー?」
「「「はーい!」」」
その場でリラックスしている人達全員が返事をした。
ラクト「な…なんてこった…最悪だぜ…」
ルカ「チリまであっち側に…」
アリス「ドアホめ…少しはこいつらを見習ったらどうだ?」
アリスはサングラスをしたまま、喋り始めた。
アリス「今の貴様らは平常心が足りん。」
アリス「気が動転して体を休める事も出来ない人間に比べたら、たとえ恐怖に慄きながらでも休むことができる人間の方が、生存確率は高いぞ。」
ルカ「それにしてはリラックスしすぎじゃないか!?」
するとチリが会話に割り込んだ。
チリ「でもねルカ、束の間の休息ってよく言うけど…私、そういう時ぐらいうんと休みたいし。」
チリ「ほら、最近はこうやって休むこともできないことが多かったし…ルカも休んだらどう?」
そう言うと、チリはビーチチェアに座る。
ルカ「そう言われても、すぐには休めないよ…なぁ?ラクト__」
そしてラクトの方に視線を移すと…なんと麻雀をしていた。
ラクト「__ロン!!」
ジョージ「なんと!」
マモル「いやぁまいったまいった!」
ヴェニア「(隙間から手を出して、ラクトに向かって拍手している。)」
ルカ「
ルカ「…そういえば、カムロウとフラドリカは?」
ミミック娘のヴェニア、こうして平然とジョージ達と賭け事で遊んでいるが、団長であるフラドリカはどこに行ったんだろう。
カムロウもそうだが、出航してから姿が見当たらない。
するとヴェニアは、箱の隙間からスケッチボードとペンを出し、何かを書き出してこちらに見せてきた。
ヴェニア「(団長は船酔い。)」
ルカ「えっ…船酔い!?」
ヴェニア「(バケツ持って客室に引きこもってます。)」
ルカ「………」
おいおい…探検家が船酔いなんて、冗談じゃないぞ。
この先が思いやられるな…
チリ「カムロウも客室で寝てたよ。」
ルカ「カムロウも?船酔いか?」
ラクト「…いや、違うかもな。」
そうなると…おそらく、先日の一件を思い詰めてるのだろう。
カムロウだって、その気でドラゴンになったわけでもない。彼に責任はないのだ。
それでも、本人にとっては重大な悩みになってしまったようだ。
アリス「ルカも休め、特訓は夜からするぞ。」
ルカ「あ…あぁ、わかったよ。」
出来れば今すぐやりたいけど…
その言葉を押し殺し、僕も休むことにした___
__ビーチチェアに寄りかかって休んでいると、ルカの頭に、ある疑問が通り過ぎた。
ルカ「__そういえばだけど…みんなはどうして魔法が使えるんだ?」
アリスはともかく、カムロウ、ラクト、パヲラ、チリ…この4人が魔法を使える理由を詳しくは知らない。
人間は魔物のように、簡単に魔法を使えるわけではない。
大魔導士だとかそんな人物はいたりもするけど、そこまで多くはない。
長い鍛練を積んでも、年寄りになる頃にやっと扱えるようになるって話もあるほどだ。
ラクト「あー…そういや教えてなかったな。」
ラクト「俺の「ルーン魔導」ってのは、描かれた
ルカ「代替え…?ラクトの魔力で魔法を使ってるんじゃないのか?」
ラクト「実際に魔力を消費してんのは、
ラクト「俺だってそこまで多くの魔力を持っている人間じゃねぇ。こんな広い海に対して、このコップ一杯分の魔力しか持ってないって言えば、なんとなく分かるだろ。」
その後のラクトの話によれば、描かれた
…あんまり僕にはピンとこなかったが、分かったことがある。
ルカ「…ってことは、
ラクト「ああ、そうだぜ。」
ルカ「じゃあ、僕でも扱えるのか?」
ラクト「
…それはめんどくさそう。
アリス「ふむ…人間にしては面白い技術だな。どんな人間が考えたのだ?人生に魔法を費やした、老いた大魔導士とやらか?」
ラクト「おっ!いいとこ突くな!最高だぜ!」
ラクトは自信満々な顔をして語り始めた。
ラクト「これな、カイっていう、俺が尊敬する魔法使いが開発した魔導技術なんだよ!しかも特許持ち!」
ルカ「と…特許!?」
パヲラ「魔法使いカイ?特許持ち?聞いたことないわね…発表したのそれ?」
ラクト「大々的に発表はしてねぇらしいんだ。なんでも完成した年は別の魔導技術の開発で忙しかっただとかで…」
パヲラ「あぁ…そうなのねぃ。」
ルカ「じゃあ、ラクトのようなルーン魔導を使わないカムロウは…」
カムロウは魔法を使うとき、文字を描くこともしなかった。
何不自由無く魔法を扱えてた。だとするとやはりカムロウは…
アリス「ああ、もしかするとだが、カムロウはただの人間ではないかもしれん。」
ルカ「やっぱりそうなのか…?」
アリス「だが、確証がない。あの時はただ変身しただけだ。それが自由に魔法を扱うことができるという証拠になったわけではない。」
ラクト「だとしても。気になるな…」
アリス「…カムロウが自ら、自分が何者なのかを知りたくなるまで待つのだな。」
ルカ「そうだな…」
カムロウは今、傷心中だ。
あまりそういった話をするのは良くはないだろう。
カムロウが聞いてくるまでそっとしておこう。
ラクト「__んで、
チリ「えっ!?私!?私は元々、魔法は得意で…」
急に話を振られた衝撃なのか、チリは慌ててそう言った。
ラクト「得意だなんて羨ましいなぁ。俺、苦手なんだよ…」
チリ「えっと、パヲラさんはどうなの?」
パヲラ「あぁ、あたし?」
パヲラ「あたしの魔導拳は体内の魔力を練り上げて身体能力を高めてるの。練気だとかオーラだとかそんな感じよん。だから、魔法使いみたいな大量の魔力は必要じゃないの。少なくても十分。」
ルカ「練り上げ…そういえば魔導拳は独自で編み出したって言ってたな。」
魔法と格闘術の融合。確かそんなことを言っていたような。
するとパヲラは昔話を始めた。
パヲラ「あたしが幼いころね…グランドノアのコロシアムでチャンピオンだった英雄がいるの。その名もネビュラ。あたし大ファン。」
ルカ「コロシアムのチャンピオン…!?」
パヲラ「元…ね。15年前に凄腕の出場者に負けちゃったのよ。」
パヲラ「それで…
ルカ「へぇ…そうなのか。」
元チャンピオン、ネビュラ。
そして彼の
真似事…ということは、彼も魔法と格闘術を組み合わせていたのだろうか。
僕も一目見てみたいと思った。15年も前となると、願っても叶うことはないだろうけど。
ラクト「そうか…その英雄に憧れた結果、お前はそんなオネエ口調の奇抜なバケモノになっちまったってワケか…」
パヲラ「誰がバケモノよ!」
パヲラはビーチボールをぶん投げた!
ラクトの顔面にビーチボールが命中した!
ラクト「痛ってぇなてめぇ!俺様のルーン魔導でぶっ飛ばすぞ!!」
パヲラ「上等じゃないの!あたしの魔導拳、見せてあげるわ!!」
チリ「他所でやれ!!!」
チリはハンマーで二人を空の彼方にまで吹っ飛ばす。
ラクト「あああああああ!!!」
パヲラ「あああああああ!!!」
二人は遠くの海面に落ちた。
ルカ「…あの二人、この船に戻って来れるのか?」
チリ「大丈夫でしょ、あの二人なら。」
ルカ「………」
…遠くから怒声が聞こえる。
パヲラ「お前を海の藻屑にしてやろうか!!!」
ラクト「お前もその仲間に入れてやろうってんだよ!!!」
豆のように小さいが、わちゃわちゃと喧嘩し合ってるのが見える。
まぁ、あれほど生きが良いのなら大丈夫そうか。
さっき、ラクト含め4人で麻雀をしていたジョージが寂しそうな顔をした。
ジョージ「むぅ、プレイヤーが一人減ってしまったぞ…」
マモル「しょうがないねぇ、またトランプでもやるかぃ?」
ヴェニア「(ルカさん、一緒にブラックジャックでもしませんか?私、ディーラーをするんで。)」
ルカ「…じゃあ、僕もやろうかな。」
こうして僕は、夜になるまで束の間の休息を満喫することにした。