もんむす・くえすと! 勇者ルカと仲間たち   作:J・チェプナクル

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第37話 襲撃後の休息

アルマエルマの襲撃から少し経ち、僕達は客室にいた。

もう夜も遅いのだ。明日のために休息を…と思ったら、

…どういうわけか腕相撲大会が開催されていたのだ。

今、机の上で激闘を繰り広げているのはパヲラとジョージだ。

パヲラ「ぬおおおぉぉぉ…!」

ジョージ「ぬうううぅぅぅ…!」

ちなみに僕は、カムロウに瞬殺された。

僕は席を立つ。瞬殺されたとはいえ熱くなり過ぎた。

少し外に出よう。

チリ「ルカ。どこに行くの?」

ルカ「気分転換に外の空気を吸ってくる。」

 

気分転換に甲板に出ると、なんとそこにはラクトがいたのだ。

ラクトは船のへりに寄りかかりながら、何か歌のようなものを口ずさんでいた。

それは子守歌のようにも聞こえる。

ルカ「良い歌だね。」

そう呼び掛けると、ラクトはこちらに気付き視線を向ける。

ラクト「…ん?ルカか。俺、今歌ってたか?」

ルカ「がっつり歌ってたよ。子守歌みたいだったけど…まさか、自覚ないのか?」

ラクト「…マジ?」

そう言うと、ラクトは目を丸くして驚く。

そしてすぐに、はいはいと納得したような表情になる。

ラクト「あー…なんか、無意識に歌ってるっぽいんだよなぁ。悪ぃ悪ぃ。」

それはそうと、ラクトはここで何をしてるんだ?

ルカ「もしかして、寝れないのか?」

ラクト「あぁ…寝れなくてな。バカ共があんなに騒いでるのと…」

ゴロゴロと、雲に稲妻が走った。

ラクト「…空がこんなに不機嫌だとな。」

ルカ「雷が苦手なのか?」

ラクト「そう。こういう雷が苦手なんだよ。ガキのころ色々とあってな。うるさくって眠れもしねぇ。」

ラクトは全くやれやれだと、呆れる。

 

ラクト「ところでよぉ…ナタリアポートに着いたら、次、どこに行くんだ?」

ルカ「ナタリアポートの西にあるサン・イリア城に行きたいんだけど…まずはカムロウの住んでいた村に行かないとね。」

カムロウの旅の目的は、重症の母を治癒できる方法を探すこと。

それは、イリアスベルクのゴブリン娘のおかげで見つけることができたのだ。

なので彼は、このまま村に戻るだけだ。

ルカ「ラクトは…カムロウが村に戻ったら、その後どうするんだ?」

ラクト「俺は元々、あいつ(カムロウ)に付いて行くことにしてたんだ。カムロウが村に戻るんだったら、俺は金稼ぎに戻ろっかなぁ。」

ルカ「そうか…」

ラクト「…でも、どうだろうな。」

ルカ「ん?何がだ?」

ラクト「カムロウが村に戻ってまず想定できることは…親にどっちがドラゴンだって問い詰めることだ。自分が人間じゃないって知った以上、普通に暮らせねぇと思う。自分は他の人とは違うっていう異物感が記憶の片隅で主張するんだよ。」

ルカ「………」

確かにそうだ。母親の傷を治したとしても、そのことについては解決していない。

となると、その後の暮らしが心配だ。

ラクト「けどあいつ(カムロウ)さ、ドラゴンのことで悩んでるんじゃねぇんだと思うんだ。」

ルカ「えっ…?」

彼がドラゴンの事で悩んでいるのではないのなら…

ルカ「じゃあ、いったい何で悩んでるんだ…?」

ラクト「俺たちだよ。」

ルカ「僕たちのことで…?」

ラクト「大方、「自分は人間じゃないから友達と仲良くできない」みたいな悩みなんだろうな。」

思い出し笑いをしながら話を続ける。

ラクト「最初に出会った時、あいつは全くの世間知らずでよ。俺とコンビ組まねぇかって誘ったら、友達でもいいかって聞いてきたんだよ。おかしいだろ?」

ラクト「でもよ…あいつにとって「友達」ってのは、一番大事なんだろうな。」

友達…(カムロウ)は誰かが仲間になるとき、友達になることだと認識していた。

僕やアリス、チリにだってそうだった。

ラクト「まぁアリスの鑑定で、ちょっと軽くなっただろうけどよ。それでも純粋な人間じゃねぇからって、まだ引きずってると思うぜ。」

そういえばカムロウは、お昼頃は客室に引きこもっていたのに対し、今は腕相撲大会を楽しんでいた。

ドラゴンとの混血児(ハーフ)という結果で、半分は人間ということを知ったがために、少しはみんなとの娯楽を楽しめるようになったのだろう。

ラクト「俺はよ、あいつ(カムロウ)がバケモンになっても、友達でいようと思ってる。俺様が信じなきゃ、誰がカムロウを信じるんだ?」

ラクト「…お前(ルカ)はどう思う?」

ルカ「…僕も同じだよ。」

たとえカムロウが人間じゃなくても、彼は彼なのだ。

それを否定するのは、僕の信念に矛盾すると感じた。

ラクト「…そうか。」

そして少しの間。沈黙の間が訪れた。

僕とラクトの会話はこれで終わった。

ラクト「うっし…そろそろ戻ろうぜ。もう終わってるだろうしな。」

ルカ「どうだろう。かなり接戦だったよ。」

僕はラクトと一緒に、部屋に戻ることにした。

 

客室に戻ると、さっきとは打って変わって静まり返っていた。

ラクト「なんていうか…すごいことになってるなこりゃ。」

みんな腕を押さえてピクピクと痙攣している。

ジョージ「う…腕が…」

マモル「もう動けねぇっすわぁ…」

チリ「い…イタイ…筋肉痛になりそう…」

カムロウ「ゼェ…ゼェ…」

そして、我が物顔で椅子に座っているのは…アリスだった。

アリス「余に勝とうなど、笑止。」

どうやらこの腕相撲大会の優勝者はアリスのようだ。

…いや、なんで参加したんだお前。

ルカ「…どうだった、みんな?」

ジョージ「驚いたのはチリ殿でござるな。まさかカムロウ殿とマモルに勝ってしまうとは思っていなかったでござる。」

チリ「そう?私もなかなかやるでしょ?」

ラクト「ふーん…そういうパワーを戦闘で発揮して欲しいなぁおい。」

チリ「悪かったわね発揮しなくてっ!!」

ラクト「まぁ俺だったら、アリスとジョージ以外のそのあたりならなんとか勝てそうだぜ。」

パヲラ「…最初から参加してない奴になんて、負ける気しないんだけど。」

ラクト「カッチィィィン!!!」

ラクトは腕まくりをし、椅子に座って右腕を出す。

ラクト「来いよ。」

パヲラ「いきがるなよぉぉぉ!!!」

そして二人は腕相撲を始めた。

ルカ「よし、もう寝よう。」

チリ「そうね。もう寝ましょ。」

アリス「さっさと明日に備えるぞ。」

カムロウ「ええっ!?」

こうして僕は眠りにつくのだった__

 

 

 

 

___そのころ、魔王城。

アルマエルマ「ただいま~♪ルカちゃんたちに、ボッコボコにやられて帰って来ちゃいました♪」

グランべリア「…何を言っている。どうせ貴様の事だ。手を抜いたのだろう?」

グランべリアはやれやらと溜め息を吐く。

たまも「でも、あのルカとかいうのは結構な素質を持っているようじゃ。秘めたる潜在能力は、とてつもないと見たぞ。」

アルマエルマ「うんうん。あれはきっと、とっても強くなるわよ♪」

グランべリア「以前に会った時には、剣をかじったばかりの素人に過ぎなかったがな。」

 

グランべリア「それと、あの少年(カムロウ)はどうだった?例のドラゴンとやらに変身したのか?」

アルマエルマ「いや?しなかったわよ。代わりに雷を落としてきたわ。」

グランべリア「雷を?人間が、しかもまだ幼い少年が雷を落とすなど聞いたことがないな…」

たまも「ふむ、雷を…か。」

アルマエルマ「グランべリアちゃん、ドラゴンに変身できないの?」

グランべリア「確かに、龍人族ではあるが変身などできん。かのドラゴンというのは、おとぎ話の存在ではないのか?」

すると、たまもが口を挟む。

たまも「いや、(ドラゴン)は太古の昔に存在したのじゃ。」

グランべリア「なに…?」

たまも「今となっては、姿すら見せないもんじゃから、一族諸共絶滅したのかと思うておったのじゃが…そうか、まだ生きていたのか…」

たまも「もしあの少年(カムロウ)(ドラゴン)の血族であるとするならば、ルカと同じく、この先成長してもっと強くなるぞ。」

グランべリア「…そうか。」

 

グランべリア「貴様達がそこまで言うなら、確かめてみるとするか…」

不意に、グランべリアが動きだす。

アルマエルマ「どこ行くの、グランべリアちゃん?」

グランべリア「知れた事よ。あらためて、腕を試す。」

そう言うとグランべリアはその場から姿を消す。

アルマエルマ「…行っちゃった。」

たまも「厄介者の芽は、早いうちに摘む…のとは、違うようじゃのう。」

アルマエルマ「そういうのとは、全く逆のタイプね…」

 

アルマエルマ「そういえば、エルベティエちゃんは?」

たまも「ウンディーネの洞窟にこもりっきりじゃ。故郷の水が、性に合うのじゃろうな。」

そう喋ったあと、たまもはアルマエルマの方をチラチラ見る。

たまも「…ウチも、ちょっと里帰りしていいかのう?」

アルマエルマ「グランべリアちゃんも、私情で戦いに行っちゃったし…みんな、四天王の自覚に欠けるんじゃないのかしら…?」

たまも「それは、お主もじゃろう。」

アルマエルマ「あははっ♪」

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