もんむす・くえすと! 勇者ルカと仲間たち   作:J・チェプナクル

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第38話 入港、ナタリアポート

アルマエルマ襲撃の翌日。

港に着くのは正午。

あと少しで着くそうなので、僕達は甲板で、トランプで時間を潰していた。

今、やっているのはババ抜き。

もうみんなは2枚や1枚しか持っていない。

僕の手元にはジョーカーはない。

そうなると…

ルカ「(一体、だれが、持って__)」

__周囲の顔色をうかがうと…

アリスだけ、あきらかに顔がやや引きつっていた。

ルカ「(お前かぁ…)」

…絶対、そうだ。

絶対、アリスがジョーカーを持っているはず。

…むしろあの顔で持ってませんって言えるだろうか。

ラクト「ほら、選べよ。」

ラクトはニヤニヤしながら持っている2枚の手札をアリスに差し出す。

アリス「………」

アリスの手札は1枚だけ。

もしジョーカーなら、絶対に揃うはずはない。

アリス「あれはなんだ?」

するといきなり、わざとらしく遠くの景色に向かって指を指す。

ラクト「ん?」

僕も、みんなもつられてそっちの方を見てしまった。

ラクト「…いや、なにもねぇじゃねぇか。…!?」

顔を真っ赤にして、ラクトはアリスに突っかかる。

ラクト「おいてめぇ!今、俺の手札変えただろ!」

見た感じ何も変わってなかったが…さっき視線を逸らしている間に、アリスの手札とラクトの手札1枚と交換したみたいだ。

つまりイカサマだ。

アリス「なんのことだ。」

アリスは目を合わせようとしない。

ラクト「俺さっきまでジョーカー持ってなかったぞ!!」

アリス「なんのことかさっぱりだな。」

アリスは目を合わせようとしない。

ラクト「しらばっくれんじゃねぇ!!!」

ルカ「(やっぱりお前だったのかぁ…)」

 

ジョージ「…?」

ジョージは未だに、何もない虚空を向いて何かを探していた。

マモル「いや、何もないでしょうがぁ。」

ジョージ「…あれ、港ではないのか?」

マモル「えぇ?」

そう言われてジョージが見ている方向を見ると…

まだ小さいが、遠くに港が見えた。

パヲラ「はーい、みんな、荷物片付けるわよー。」

カムロウ「はーい。」

チリ「はーい。」

ラクト「うーい。」

机の上に散らばったトランプをせっせと片付けて、客室にある荷物を取りに行く。

港に着いたら、スムーズに船から降りるために荷物を外に出しておくのだ。

 

 

___そして、僕達の乗った船はナタリアポートに到着した。

広大なセントラ大陸の南西部、伝統と自然が深く残るナタリア地方。

その最南部に位置する港町である。

 

僕たちは今、船から降りてフラドリカと会話をしていた。

フラドリカは探検家として世界中を冒険するために乗船した。

この後は団員のミミック娘、ヴェニアを連れて世界各地を旅するのだという。

フラドリカ「まさか船酔いで、ルカ殿が四天王を迎撃するという歴史的瞬間を見逃してしまうとは…不甲斐ないであります…」

ルカ「ははは…しょうがないさ。」

フラドリカ「ですが、ルカ殿のおかげで、こうしてセントラ大陸に無事渡れたであります!このことはワガハイの冒険記にでっかく!記しておくであります!」

でっかくか…照れるな。

彼女の探検に輝かしい成果があることを祈ろう。

フラドリカ「さらばであります、ルカ殿!ワガハイの冒険は、ここから始まるでありますー!」

そして、フラドリカは僕達に手を振りながら去っていった。

背中に担がれたヴェニアは、箱から手を出してこちらにサムズアップしていた。

 

 

フラドリカを見送った後、それに続くようにジョージとマモルがそばに寄ってきた。

ジョージ「ルカ殿、世話になったでござる。」

マモル「短い間でしたけどねぇ。」

ジョージとマモルは、セントラ大陸に着くまでの間だけ同行するという約束だった。

なので、ここでお別れだ。

ルカ「もう行くのか?」

マモル「ええ、先を急いでるんでねぇ。」

マモルはいそいそと荷物を背負う。

パヲラ「そんなぁ。もう行っちゃうの?あたし寂しいわぁ。」

ジョージ「すまぬ、パヲラ殿。しかし…」

パヲラ「わかってるわよん。ジョージちゃんにはジョージちゃんの理由があるんでしょう?さよならなんて言わないわよん。」

ジョージ「…また会おう。友よ。」

二人は会話を終えると握手をする。

ジョージ「では…さらばでござる。」

マモル「またどこかでお会いしましょうねぇ。」

ルカ「はい。またどこかで。」

ジョージは笠を被り、マモルと共に僕らに背を向けその場を去る。

次第に群衆の中に入っていき姿も見えなくなった。

僕達は二人を見送った後、町に向かおうとする。

しかし、カムロウとラクトとチリはしゃがんで何かを見ていた。

ルカ「行くよ3人共。…何見てるんだ?」

ラクト「ん?あぁ、フナムシ見てた。」

フナムシ「わきわきわきわきわき。」

フナムシ「ふな美さん…」

フナムシ「ふな男さん…」

フナムシ「わきわきわきわきわき。」

ルカ「フナムシが…喋ってる…!?」

 

 

 

ジョージとマモルは、人混みの中を歩きながら話をしていた。

その顔には微笑みを浮かべていた。

マモル「良い人達でしたねぇ。」

ジョージ「うむ、そうだな。」

しかし、次第にその顔に険しさが浮かんでくる。

マモル「…また、会えるといいですねぇ。」

ジョージ「………」

懐から面相書きを出す。

そして、その紙を見て、二人は決意を固めた顔を上げる。

ジョージ「…そう願うなら、あの男を見つけるまでは死ねんな。」

マモル「…ああ。」

そう会話を終えると、二人は再び旅路を歩み始めた。

ジョージ「ところで今日の晩飯は?」

マモル「うどんにするから小麦粉買って来ぃ。」

ジョージ「あい分かった。」

 

ジョージとマモルが仲間から離脱しました__

 

 

 

__生まれて初めてイリアス大陸以外の大地を踏み、僕は感慨に襲われていた。

ルカ「ここはもう、セントラ大陸なんだな…」

カムロウ「…ぼく、帰ってこれたんだ。」

感慨にふけっていたのは、カムロウも同じだった。

彼の旅も、終わりを迎えているのだ。

 

大通りには数々の店が並び、旅人がわいわいと行き交っている。

アリス「ふむ…ここはイリアスポートと違い、なかなか活気があるな。」

ルカ「セントラ大陸の沿岸都市を繋ぐ港町だからかな。イリアス大陸との貿易が途絶えても、こっちはそんなに影響はないみたいだね。」

そうして周りを見渡していると、異常な存在が目に入った。

ルカ「あれ…マーメイド?」

焼きヒトデなる不味そうな食べ物を売っている女性は、どう見てもマーメイド。

いや、彼女だけではない。町のあちこちに、マーメイドの姿があるのだ。

人魚たちは陸上での動きにも慣れているようで、尾ひれを器用に動かしてひょこひょこと歩いている。

ルカ「ど、どういうことなんだ?」

パヲラ「あら、ルカちゃん知らなかったのかしら?」

ラクト「ナタリアポートは人魚に馴染んだ港町なんだぜ。」

アリス「旅の書物によれば、この町では、人魚も住民として受け入れられているとか。」

ルカ「でも…あの人魚、服がボロボロじゃないか。もしかして、悪い人間に奴隷にされてるとか…」

マーメイド「服がボロボロなのは、単に儲かってないからよ…」

チリ「何をどうしたらヒトデを焼くという発想に至った?」

ルカ「そうだったのか、可哀そうに…でもヒトデってそもそも食べ物じゃ__」

マーメイド「__可哀そうに思うなら、買って行きなさいよ!」

ラクト「押し売りかこいつっ!」

チリ「押し売りかこいつっ!」

ルカは焼きヒトデを無理矢理買わされてしまった…

…いらない。

ルカ「アリス…食べるか?」

アリス「………」

一応、アリスに渡してみるが、全く反応がない。

ルカ「(アリスが反応しないってことは…食べ物と認識してないんだな。)」

アリス「………」

そして、なにも反応しないまま、ラクトのカバンに焼きヒトデを突っ込む。

ラクト「おい!無言で俺のカバンに入れんじゃねぇ!」

すると、今度はカムロウに渡した。

カムロウはそのゲテモノを食べようとする。

ルカ「待て待て待て待て…」

ラクト「食うな食うな食うな…」

慌てて食べようとするのを止める。

アリスが食べ物判定してない食べ物は食べ物じゃない。

このヒトデは食べれない。絶対そうだ。

というか食べろと言われても食べたくない。

 

 

ルカ「…ともかく、ここは良い町だね。人間と魔物が、仲良く暮らしてるなんて。」

僕が目指しているのは、人と魔物の共存する社会。

ここは人魚に限定されているとはいえ、とても素晴らしい光景だ。

アリス「ところで、これからどうするのだ?目的地などのあてはあるのか?」

ルカ「まずはコロポの村に寄るべきだと思うんだ。カムロウの事もあるし…」

僕が行こうとしているのはここから西にある教会都市サン・イリア城。

その間にある森の奥にカムロウが住んでいた村、コロポ村があるのだという。

カムロウの旅の目的はもう達成している。

だからそこに行けばカムロウの旅が終わるのだ。

アリス「ふむ…秘境にある村か。隠れた特産品があるかもしれぬな。」

ルカ「また食べ物の事か…」

相変わらずのアリスの事でそう呆れている時の事だった。

一人の美しいマーメイドが、僕に声を掛けてきたのだ。

マーメイド「あの…すみません。そこの旅のお方、ちょっとよろしいでしょうか?」

ルカ「は、はい…なんですか?」

マーメイドは僕が持っている堕剣エンジェルハイロウを見る。

マーメイド「そのような剣をお持ちしている事からして、ただものではないとお見受けしたのですが…」

ルカ「ええ…確かに、ただものではありません。」

ラクト「いやどんな返しだよっ!」

堕剣エンジェルハイロウ…魔物を封印でき、僕が持つととても軽いという性能とは裏腹に、その見た目は禍々しい。

こんな剣を持ち歩いている奴がただものだったら、そっちの方がびっくりだ。

マーメイド「腕に覚えのある冒険者とお見受けし、お願いがあるのです。どうか、お話を聞いてもらえないでしょうか…?」

マーメイドが、そう切り出した次の瞬間だった。

 

急に、大爆発の爆音が響き渡った!

ルカ「な、なんだ…爆発!?」

カムロウ「うわぁっ!?」

マーメイド「きゃぁっ!!」

凄まじい衝撃が周囲を揺るがし、あたりは騒然となる。

広場の向こうにあった建物が、何の前触れもなく爆発したのだ。

ルカ「な、なんだ…!?何があったんだ…!?」

マーメイド「あの建物は…人魚の学校!?た、たいへん!」

血相を変え、マーメイドは爆発のあった建物の方に駆けていく。

青年「なんだ!?何が起きたんだ!?」

おばさん「あそこは、人魚の学校じゃない!どうしたのよ…!」

ナタリアポートの住民達も、爆発した建物へと集まり始めた。

アリス「火薬の匂い…爆弾によるものだな。」

ルカ「ば、爆弾だって…?」

ラクト「最悪だぜ…なんで爆弾があって、しかも爆発したんだぜ?」

倒壊した建物から、大勢のマーメイドが這い出してきた。

駆けつけて来た兵士たちが瓦礫を押し退け、負傷者の救出が始まる。

僕達は人並みに紛れながら、救出作業を見守るのみだった。

パヲラ「…見た限りだと、軽症のようね。」

チリ「マーメイドは魔物だからね。普通の人間よりも体が頑丈なの。」

ルカ「よかった…大丈夫そうか…」

幸いにも死者は出なかったようだ。

僕がほっと胸をなで下ろした、その時だった__

 

 

__見慣れた顔が、群衆の中に混じっていたのだ。

身なりが悪い男だが…僕にとっては、確かに見慣れた顔だった。

ルカ「__あいつは!!」

アリス「…どうした?ルカ…?」

ルカ「………」

その男は、そのまま雑路に紛れてしまった。

間違いない、あいつがさっきの爆発の__

顔からブワッと汗が湧き出る。

アリス「…どうした、ルカ。汗だらけだぞ。」

ラクト「ん?ホントだ。まぁ、死者がいなくて安心したのはなにもお前だけじゃ__」

 

アリス「__さっきの薄汚く下品そうな男、貴様の知り合いか…?」

ラクト「はぁ!?そんなやついたか!?」

パヲラ「…もう見えないわね。みんな見た?」

チリ「いや…私は…」

カムロウ「ぼくも見てない…」

どうやら、あの男を見たのは僕とアリスだけのようだ。

ルカ「知り合い…いや、違うよ。」

ラクト「なんだよ、ただの見間違いか__」

 

ルカ「__向こうは、たぶん僕の事は知らないはずさ。」

ラクト「…は?お前が知ってて、相手は知らない奴?どういうこった…?」

ルカは震える体で息を吐いて、再び吸い込む。

そして話を続ける。

ルカ「親父の…その、親友だった男だよ。」

カムロウ「ルカのお父さんの友達…?」

ルカ「あの学校の爆発…その犯人は、間違いなくあいつだ。」

ラクト「あの建物に爆弾を持ち込んだか投げ込んだか知らねぇけど、それを爆発させたのもその男だってのかよ?」

チリ「ひどい…何が目的でそんなことを…」

ルカ「ラザロ、まだこんな事を__」

ルカ「…旅を続けよう、アリス、みんな。僕達にはのんびりしている暇なんてないはずだ。」

あんな奴を野放しにしないためにも、この世界を変えなければ__

アリス「いや、今日はこの町で休むとしよう。」

ルカ「え…?」

アリス「貴様、自分がどんな顔色をしているのか分かっているのか…?」

そう指摘されて初めて、自分の状態に気付く。

顔は汗だらけで、息も乱れ、手はぶるぶると震えていた。

ルカ「大丈夫だよ__」

そう言おうとすると、パヲラが人差し指と中指を僕のおでこに当てる。

パヲラ「…脈は乱れてる。」

チリ「息も乱れてるし…顔も真っ青だよ…?」

ラクト「それにフラフラしてるぞ、どこが大丈夫なんだぜ?」

カムロウ「ルカ…休んだ方がいいよ。」

ルカ「ううん、大丈夫__」

アリス「ドアホめ、そういう強がりは大丈夫な顔をしてから言え。あの安宿で我慢してやる。しばらく休むぞ。」

ルカ「でも…」

アリス「お前ら、連行しろ。」

パヲラ「アラホラサッサー!」

ラクト「アラホラサッサー!」

パヲラとラクトは、僕の体を持ち上げる。

ルカ「いや…本当に大丈夫だって…」

ラクト「お前はよぉ、何の意地かは知らねえけどなんでそう頑固なんだぜ?」

パヲラ「悪いけど問答無用で連れてくわよー。」

ぐずる僕を、みんなは半ば強引に宿まで連れて行ったのである。

 

 

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