もんむす・くえすと! 勇者ルカと仲間たち 作:J・チェプナクル
__ナタリアポートから出発して正午すぎ。
僕達は森の中を歩いていた。
商人から聞いた話によれば、砂浜沿いの街道の途中、森のほうに商人が使う馬車が通れるよう雑に開拓された道があるそうだ。その道はコロポの村に続いているのだという。
そして、僕達はその道を見つけた。
とても整備された道とは言えないが、この道通りに進んでいけばコロポの村に着くことは確実だろう。
ラクト「そういやさ、カムロウの村ってどんなところなんだぜ?」
カムロウ「えっと、木がいっぱいあって…川があって…崖があって…」
要約すると、谷の間に村があるそうだ。
そして村の中央の地形はやや平たんであるものの、その周りには多くの木々と切り立った崖があるそうだ。そして村人は、その崖の上に家を建てて住んでいるらしい。
崖の間からは滝や川が流れ、その水が生活水として利用されているそうだ。
どうやら、僕の故郷のイリアスヴィルよりも、自然あふれる豊かな村といったところか。
アリス「ふむ。川魚、山菜、キノコ…山の恵みに関しては期待できそうだな。」
チリ「また食べ物の話してる…」
パヲラ「うふふ、マイナスイオンがいっぱいありそう!お肌がツヤツヤになるチャンスよ!」
カムロウの故郷、コロポ村。
いったい、どんな村なのだろうか。
そんな事を思いながら、僕は道なりに進んだ。
__夕方。
周りの風景もだいぶ変化した。
村へと続いているであろう道の隣は崖になっており、そこから切り開かれて見える空は赤くそまりつつある。そして、断崖の間には川が緩やかに流れている。いわば峡谷というやつだ。
ここまでくれば、秘境と言われても納得できるほどの光景だ。
カムロウ「あれ!村の門だ!」
僕達の前に、壊れかけの閉じた門が姿を現してきた。
ボロボロの門には応急ともいえるような、木の板で穴を乱雑に塞いだりと、ハリボテの処置が施されていた。
どうやらこの門がコロポ村の門のようだ。
カムロウから聞いた話だと、コロポ村は魔物の襲撃でかなりの被害が出たようで、村から出た時も、この門はまるで何者かが突き破ったかのような有様だったそうだ。
ルカ「この門…開くのか?」
ズタボロの閉じた門を指先でチョンとつつく。
すると、門はグラグラと揺れ始め、ズドォンと大きな音を立てながら倒れてしまった。
__ボロボロの門をやっつけた!
ラクト「おいおい、派手に壊れたじゃねぇか。後始末はどうするつもりだったんだぜ?」
アリス「いくら勇者と名乗っても、この有様では門破りだと言われてもおかしくはないぞ。」
ルカ「い…いや…」
…二人そろって酷い言い様だ。
まさか門がここまでボロボロだとは思ってなかった。
さて、どうしよう。万が一、村の住人に見つかったらどう説明しようか…
おじさん「なんだなんだ…一体何の音だ?」
門の向こうから、村人らしい人が様子を見に来た。
なんてこった。その万が一が当たってしまった。
村人はじろりとこちらを睨む。
おじさん「キミたちかい?門を倒してしまったのは?」
ルカ「えっと…そうですけど…悪気があったわけじゃ…」
まずい、本当に門破りになりそうだ。
そして僕達の顔を一人ずつ見ているうちに、カムロウを見ると驚いた顔をした。
おじさん「カムロウ!?カムロウじゃないか!?帰ってきたのか!?」
カムロウはばつが悪そうに前に出た。
カムロウ「た…ただいま。」
おじさん「ただいまってお前…あの日、急にいなくなって全員が心配したんだぞ!?ハーレーの奴は「アイツなりの償いだ。」とかいって探そうともしないもんだし…」
おじさん「言いたいことは山ほどあるが…とにかく、今は家に帰ることが優先だな!んで、後ろの人達は誰なんだ?」
カムロウ「お友達!」
おじさん「そうか!いやぁ疑って悪かったな!ある事情で村は今、厳戒態勢なんだよ。てっきり門破りかと思って…」
よかった、カムロウのおかげで門破りにならなくて済んだ。
ルカ「カムロウ、家族が心配してると思うから先に帰りなよ。」
彼は家出同然で村を飛び出したのだ。
ここは一足先に、両親に村に戻った報告を済ませてくるのが一番だ。
カムロウ「分かった!先に行ってくる!また後でね!」
ラクト「おう!後でな!」
カムロウは先に駆けて行った。
パヲラ「ところでムッシュ、この村には宿はあるのかしらん?」
おじさん「あぁ、ウチの村には商人が寄るもんだから、来客用の宿舎があるんだ。ちょうど空いているから、そこを使ってくれよ。」
アリス「夕飯はあるのか?」
おじさん「あぁ、あるとも!カムロウの友達なら、この村一番の川魚、山菜、キノコ、山の恵みをふんだんに使った料理を__」
アリス「__ふむ。」
チリ「ア…アリスさん、よだれが!よだれが!!」
こうして僕達は、コロポ村にお邪魔することになった。
__夕陽に照らされる村に入るやいなや、村は建物の修繕の真っ只中であった。
あちこちには半壊したのもあれば、形も残さないほど倒壊したのもある。
確かカムロウは、「村は魔物の襲撃に遭った」と言っていた。
この光景を見れば、これは魔物の仕業で間違いないと思える。
しかし、引っ掛かることが一つある。
魔王であるアリスは、全ての魔物に「自己防衛の目的においてのみ、力を振るうことを許す」という許可を出した。
仮に自己防衛で村を襲ったとしても、この惨状は、いくらなんでもその範疇を超えている。
まるで無差別に、眼に映る物を破壊しつくしたかのような、そんな風に見えるほど。
…これは、本当に魔物の仕業なのだろうか?
ルカ「どう思う?アリス。」
アリス「…余も信じがたいが、これは魔物の仕業だな。」
残念なことに、魔物がやったことだと断言された。
魔王であるアリスが言うのだ。間違いない。
アリス「これを見ろ。」
アリスが指差す場所には、葉っぱやツタ、花びらといった植物が切られ、散っていた。
パヲラ「ツタに花びら…どれもこれも植物ねい。」
アリス「うむ。植物系のモンスターであることに間違いない。」
ラクト「植物系だから…えーと…」
チリ「マンドラゴラ、ドリアード、アルラウネ…」
チリは思いつく植物の魔物を挙げていく。
ラクト「そうそうそいつら。そのあたりの奴らの仕業なんじゃねぇのかぜ?」
その答えに対し、アリスは首を横に振る。
アリス「いや…肝心の「誰がやったのか」が、分からないのだ。」
…?「誰がやったのか」が分からない?
ルカ「なんで分からないんだ?」
植物系の魔物ということが分かった以上、全ての魔物を知っているであろうアリスなら突き止めるのは簡単なはず…
花びらや葉っぱといった証拠品も揃ってあるのに、なぜ分からないのだろう?
アリス「この植物自体が…全ての植物系魔物に共通している形をしているのだ。」
パヲラ「ふむふむ…特徴が全部当てはまるから、見当が付かない…と。」
ルカ「全部に当てはまるだって…!?」
もし、この落とし物に当てはまるような魔物の特徴が残ってあるのなら、すぐに判別できるらしい。
しかし、その判別できる特徴がどこにも見当たらないとのこと。
決め手となる判断材料が入り混じっていて答えを出せないそうだ。
一体、どんな魔物の仕業なのだろうか…
ラクト「うーん…犯人が分からねぇんじゃ、見つけるのも大変なんじゃねぇかぜ?」
となれば、これ以上考えてもなにも出ないだろう。
すでに魔物は撃退され、いなくなったらしい。
この村は、しばらくは安全だろう。
村を立て直せるほどの時間が十分あると思う。
チリ「私たちが出来ることは、何もなさそうね。」
アリス「そうと分かれば、さっさと夕飯を食いに行くぞ。」
アリスは証拠品の花びらや葉っぱをもっしゃもっしゃと食いながらそう言った。
ルカ「いやそれ食うなよ…」
…なんでこいつはせっかくの証拠品を食っているんだ。
とりあえず僕達は、宿舎に足を運んだ。
夕飯は、魚やキノコ、野菜をたっぷり煮込んだ鍋料理らしい。
それを食べ終わったら、カムロウの家に向かおう__