もんむす・くえすと! 勇者ルカと仲間たち   作:J・チェプナクル

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第42話 意志の対立

__その日の夜。

宿舎に寄って夕食を食べた後、僕達はカムロウの家に向かった。

その一室にはカムロウと彼の母親のテアラ、彼の姉のリンドウ、村の医者がいた。

テアラはベッドに横たわり、全身の至る所に包帯が巻かれている。

医者は椅子に座り、虫メガネでカムロウが持ってきたカイムケマの実をじっくり見ていた。

医者「カイムケマの実…驚いたな。こうして実物を見れるのは。」

カイムケマの実、食べればどんなに重症でも傷が癒えると言われている実だ。カムロウはこれを、イリアスベルクにいたゴブリン娘から貰った。

カムロウ「どうやって食べさせるの?」

医者「煎じて少しずつ飲むのが最も効能が出るだろう。今のテアラには、少しずつ飲ませる方が体に負担を掛けない。」

カムロウ「…治るってこと?」

医者「そうだな。お前のお母さんはすぐに治るぞ。」

カムロウ「そっか…良かった…」

そう聞いて、カムロウは安泰の表情をした。

医者「さて、お邪魔にならないよう先に帰りますかっと。」

医者はカバンを持って席を立った。

リンドウ「もう帰るんですか?」

医者「この実を飲みやすいよう調合するからね。それでは。」

そう言って、医者は部屋を出た。

 

テアラはベッドから上半身だけを起こし、僕達に深々とお辞儀をした。

テアラ「お礼を申し上げます。息子(カムロウ)を導いて下さり、ありがとうございます。」

ルカ「僕は、当然のことをしただけですよ。それに…友達だし。」

チリ「そうですよ…お礼なんて…」

 

アリス「ふむ、褒美にはこの村の特産品を__」

ルカ「お前(アリス)黙ってろよ。」

ラクト「恩着せがましいやつだな。それでもお前、お偉いさんか?」

次の瞬間、僕達はアリスにヘッドロックされた。

ルカ「ギブ…!ギブ…!!」

ラクト「くっ…苦じいっ…!」

片腕ずつで僕達の首を絞める。

どれだけ馬鹿力なんだこいつは…

ラクト「まぁ、確かにお礼なんて言われることでもないぜ?なんてったって俺様は、カムロウの相棒なんだからな?」

パヲラ「…どの面下げて言ってんだが。」

ラクト「あぁ!?テメェ!」

パヲラ「なによ!やる気!?」

二人はお互いに突っかかる。

チリ「やめなさい!人前で!!」

チリは大きなハンマーを振り回した!

二人はハンマーで叩きのめされた。

ラクト「いでっ!」

パヲラ「おうっ!」

 

テアラ「ふふふ…賑やかなお友達ですね。」

カムロウ「そうかな?」

……褒められているのか?

とりあえず、褒められたということにしておこう。

 

パヲラ「カムロウちゃんとは、ここでお別れねい。あたし寂しいわあああぁぁぁん…」

…喋りながら途中で泣き始めた。

ルカ「おいおい…」

ラクト「お前、感情の起伏が激しすぎるだろ…」

とはいえ、悲しいのは僕も同じだ。

イリアス大陸から出るまで、共に過ごし、戦い、協力し合ってきた仲である。

しかし彼には家族がいるのだ。

それにこれ以上、旅する理由も戦う理由もない。

だから、カムロウとは、ここでお別れだ。

後はこの村で、ゆっくり平和に暮らすことになるだろう__

 

 

 

カムロウ「__まって。」

テアラ「…?」

ルカ「?」

チリ「どうかしたの?カムロウ?」

カムロウは一度、顔を伏せた。

そして、決心した眼差しをしながら顔を上げた。

カムロウ「…村に帰る時から、ずっと考えたことがあるんだ。」

そして僕の前に近付き、その答えを口にする。

 

カムロウ「ぼく…ルカに付いて行きたい。」

 

ルカ「えっ!?」

ラクト「はぁ!?」

リンドウ「ど、どういうこと!?」

彼にはこれ以上、旅を続ける理由も目的も、何もないはずだ。

なのに、僕に付いて行きたいと、旅に同行したいと言い出したのだ。

なぜカムロウは、そんなことを言い出したのだろう…?

それを聞いたテアラは、一度は驚いた顔をするも、すぐに冷静に戻り、カムロウに問いかけた。

テアラ「…なぜなのです、カムロウ?」

カムロウ「ルカは人と魔物が争わない世界を…魔物との共存を目指してるんだ。ぼくはそれを手伝いたい。」

そう答えたあと、首を横に振り、話を続ける。

カムロウ「…いや、ぼくも目指すんだ。平和な世界を。」

…目指す!?一体、どういうことなんだ!?

テアラ「……ルカさんは…勇者として、世界を旅しているのでしたね。」

ルカ「はい、そうですけど…」

テアラ「カムロウ…貴方はお友達の、勇者の責務を共に果たしたいというのですね?」

ルカ「…えぇっ!?」

だから、僕に付いて行きたいって…?

カムロウ「うん、だから__」

 

ハーレー「__ダメだ。」

後ろから声が聞こえた。

部屋の扉近くの壁に寄りかかる男がいた。

背中には立派な大剣を背負っており、腕を組んでいる。

カムロウの父、ハーレーだ。

ハーレー「俺が認めん。」

カムロウ「お父さん…なんで…?」

ハーレー「その旅に付いて行くということ…それがどういうことか、お前にも分からないわけではないだろう。」

僕の旅に同行するということは、その途中で死ぬ可能性も十分にあり得る。僕自信も、魔王城までに生きていられるかどうかも分からないわけだし…いや、生きて辿り着かなければならないのだ!

ハーレー「…自分の息子を、黙って死にに行かせるわけにはいかん。分かってくれ。」

ルカ「………」

そうだ。カムロウには家族がいる。まだ幼いカムロウに、この務めはあまりにも重すぎると思う。

それに死んでしまったら、残された家族は悲しむのは目に見えて分かることだ。

ここは大人しく、父親の意見を聞くべきだろう__

 

ラクト「__あ…あのさ。」

不意に喋り始めたラクトは、ハーレーに向かって土下座をした。

ラクト「俺からも頼ませてくれねぇかな!?」

ハーレー「!?」

ルカ「ラ…ラクト!?」

ラクト「心配も不安も、なにも無理な願いなことは全部分かってるけどよ!カムロウのこと、認めてくれねぇか!?」

それでもハーレーは動じずに、土下座をしているラクトを見ながら質問を投げかけた。

ハーレー「…なぜカムロウを認めてほしいのだ?」

そう言うと、ラクトは顔を上げる。

ラクト「信じたいんだ!俺はこいつ(カムロウ)友達(ダチ)だから!」

ラクト「近くに…俺は傍にいてやりてぇんだよ!」

カムロウ「ラクト…」

ラクト「…絶対に死なせねぇ!だけど…もしカムロウが死ぬことになったら、俺も一緒に死ぬ!だから…頼む!」

そう言って、頭がめり込むぐらいの勢いでまた土下座をした。

それを見たカムロウは、父の前に一歩歩み寄り、再び懇願する。

 

カムロウ「…お願いだよ、お父さん。だから__」

 

ハーレー「__なぜわからない!?また死にに行くのか!?目的はもう果たしたというのにか!?」

ハーレーは怒声を上げながらカムロウを睨みつけ、凄んだ。

ハーレー「お前のようなやつが外に出ても、すぐ死ぬだけだ!!」

そしてあり得る現実を突きつける。

先に進んだとしても、何がいるのか起こるのかは分からない。死ぬことだって考えられる。

カムロウ「…それでも行く!」

ハーレー「なぜだ!?」

カムロウ「外の世界は、人と魔物が争い合っているんだ!!」

ハーレー「それはお前(カムロウ)には関係のない事だろうッ!!!」

ハーレーが一喝すると、部屋中に風が吹き荒れる。

カムロウは一瞬、涙目になり泣きそうになった。

しかし、すぐに涙を払い、ハーレーを睨みつけた。

 

カムロウ「__関係あるッ!!!」

カムロウも一喝すると、カムロウの体から突風が放たれた。

ハピネス村でのクィーンハーピーと戦った時と、秘宝の洞窟で七尾と戦った時と同じだ。

カムロウは、怒りが最高潮に達すると、周囲に風が吹き荒れ、身体能力が格段に上昇する。

カムロウ「はぁ…はぁ…」

今回は、一歩手前でなんとか怒りを抑えたようだ。

ハーレー「…今のは……?」

どうやら今の出来事、カムロウの体から放たれた風は、父親であるハーレーでも予想外の出来事だったようだ。

カムロウ「_旅の途中で、ぼくは(ドラゴン)になったんだ……」

リンドウ「えっ…!?」

ハーレー「なっ…!?」

テアラ「そんな…!?」

驚愕の事実に、(カムロウ)の家族は驚いた。

それもそのはずだろう。まさか自分の息子が、弟が、ドラゴンになっただなんて、想像もしないだろう。

 

カムロウ「それで友達を、無くすところだった…!」

そしてカムロウは、自らの内に抱いていた疑問を、思う存分ぶちまけた。

カムロウ「ぼくは…本当にお父さんとお母さんの子どもなの!?それとも、違うの!?なんでぼくは、(ドラゴン)と人間の子どもなの!?」

姉のリンドウは、うろたえ始める。

リンドウ「そ、それは…」

ハーレー「…いや、いいんだ。リンドウ。」

テアラ「時が来れば話すべき事、それが今になっただけなのです。」

両親は、リンドウを落ち着かせた。

…どうやら何かを知っているようだ。

いや、隠していたというべきか?

そしてテアラは、すこし間を取って話し始めた。

テアラ「カムロウ、あなたは私とハーレーの子です。それは紛れもない、狂いもしない、揺らぐこともない事実…」

カムロウ「じゃあ、(ドラゴン)は…?」

 

 

テアラ「__(ドラゴン)は…私です。」

 

ルカ「えっ…?」

カムロウ「お母さんが…?」

(カムロウ)の母が…ドラゴンだって?どう見ても人の姿をしているというのに…?

テアラ「古龍族。それが、我々一族の総称…」

古龍族…全く聞いたこともない、初めて聞く名だ。

アリス「古龍族…知らぬ名だな。」

パヲラ「あたしも…聞いたことないわねぃ…」

テアラ「それもそのはずです。我々は、太古の昔から世を忍び、隠れて暮らしていました。」

アリス「今まで歴史の裏で生きてきたというわけか…しかし何故、存在を隠して生きたのだ?」

テアラ「我々の先祖が、そう決めたのです。私達はそれに従い生きてきました。」

ラクト「お、おいおい、待て待て待て…」

土下座の姿勢から、上半身を起こしたままのラクトは、理解が追い付いていないようだ。

ラクト「いきなりすぎて頭に入ってこねぇって!アンタがドラゴンだっていうなら…なんで人の姿をしてんだよ!?」

テアラ「古龍族は、(ドラゴン)と人の姿、二つの姿を持っています。今の私は、(ドラゴン)の姿にはなれませんが…」

チリ「ということは…いつでもドラゴンになれるんですか?」

リンドウ「はい。いつでも姿を変えることはできます。ですが龍の姿は、体力の消耗が激しいんです。なので、普段は消耗の少ない人の姿で生活を…」

 

話の最中、僕はアリスにひそひそと話しかける。

ルカ「アリス、テアラさんは魔物じゃないのか?」

アリス「うむ、魔物ではない全く別の種族だ。…いや、異なる生命体と言うべきか?」

アリス「今、遺伝子を見てみたが…魔物とは全く異なる遺伝子を持っている。」

魔物じゃない、全く別の生物。魔物を統べる魔王であるアリスも知らないわけだ。

アリス「ふむ、カムロウの遺伝子の謎が解けたな。親が知らないとなっていたら、どうなっていたことやら…」

確かにその通りだ。

もし養子だとか、そんな話になっていたら、さらにカムロウを悩ます亀裂となっていたはずだ。

それが解決出来てよかった。とりあえず一安心だ。

…いや待て、どうやって遺伝子を見たんだ?いや、見えたんだ?

ここからテアラさんまで、かなりの距離があるぞ。

2メートル…いや、3メートルほどか?

どうやら、自称視力16は伊達じゃないようだ。

 

…ちょっとだけ話がズレたかも。本題に戻そう。

ルカ「あの…村の人たちは、その事は…」

パヲラ「ええ、貴方(テアラ)がドラゴンだってことは知っているの?」

この質問はハーレーが答えた。

ハーレー「この村に移住した時に話してある。カムロウにはある程度の年齢になるまでは隠すつもりだった。」

ルカ「では…どうしてその事を、いままでカムロウに隠していたんですか?」

チリ「なにか…事情があったんですか?」

リンドウ「私は生まれた時から(ドラゴン)の姿に成れたんです。でもカムロウは…」

テアラ「私が産んだ時には人の姿でした。そして成長しても、(ドラゴン)の姿になることも、その前兆もありませんでした…ですので、人として育てるべきと判断し、ひた隠してきました。」

テアラは顔を俯きながら、カムロウに話しかける。

テアラ「…本当なら、もっと早く告げるべきでした。ごめんなさい…そのせいで、貴方には辛い思いをさせてしまって…」

カムロウ「…ううん、謝らなくていいよ。」

カムロウは首を横に振った。

カムロウ「ぼくが…ちゃんとお父さんとお母さんの子どもだってことがわかって良かった。」

そうだ。正真正銘の、実の子どもであることや、ドラゴンに変身できることなど、謎に包まれていたことが全て、はっきりと分かったのだ。

全部わかって本当に良かった…

テアラ「…ですがカムロウ、貴方に問わなければならないことがあります。」

…まだ、話はまだ終わっていない。

カムロウが旅に出ること。ルカの旅に付いて行くこと。

それがまだ終わっていない。

真剣な眼差しでカムロウを見つめる。

テアラ「私たち古龍族は太古の昔から、その身に余る強大な力を秘めています。その力は、全てを破壊する力とも…」

テアラ「ですがその全ては、世界も、お友達も、そして自分自身も破滅に導くものでもあります。…眼に映る物を、全てを滅する力なのです。」

 

テアラ「カムロウ。貴方にも、古龍族の血が、その力が受け継がれています。」

テアラ「…それでも、貴方は行くというのですか?」

(ドラゴン)の力は、つまり、諸刃の刃そのものだという。

力に飲まれ暴走すれば、誰にも手に負えない。

だが今のカムロウにとって、その問いに対する答えはすでに決まっていた。

カムロウ「…(ドラゴン)の力が、全部壊しちゃう力だっていうのなら…」

 

カムロウ「ぼくは__」

 

カムロウ「__その力を、みんなを守るために使いたい!!!」

 

(ドラゴン)の力があれば、みんなを守れる。

手を伸ばしても、届くことが、助けることができなかったあの日も、もし(ドラゴン)の力に目覚めていれば届くことができただろう…

もう後悔はしたくない。

だから守るために使う。

自分の手が絶対に届くように。

たとえそれが、全てを破壊する力であっても。

それがカムロウの答えだった。

 

 

ハーレー「…そうか。」

カムロウの覚悟を見届けたハーレーは、納得したかのような反応をした。

ハーレー「カムロウ。」

カムロウに呼び掛ける。

ハーレー「…来い。」

ハーレーはカムロウに背を向け、ドアを開け、家から出ていった。

 

…?

これは…どういうことだ?

カムロウが旅に出ることを認めたのか?

しかし、「来い。」というのかどういうことなんだ…?

カムロウ「………」

何かを察したカムロウは、剣と盾を持って家から駆けて出ていった!

ルカ「えっ!?ちょ…ちょっと待って!」

ラクト「おい、どこ行く気だよ!」

僕達も、カムロウの後を追って、慌てて家を飛び出した__

 

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