もんむす・くえすと! 勇者ルカと仲間たち 作:J・チェプナクル
__コロポ村の広場。
辺りは暗く、月光がかすかに地面を照らしている。
広場にはハーレーが腕を組み立っていた。
その前に、カムロウも立っていた。
少し遅れて、ルカ達も到着した。
ラクト「広場か…なんでここに?」
ルカ「一体、何をする気なんだ…?」
…あの様子だと、カムロウの近くに寄れそうにない。
近寄りがたい空気なのだ。
二人から少し離れた場所で、ルカ達は様子を見た。
ハーレー「…カムロウ。」
ハーレー「お前が旅に出たいと願うなら__」
ハーレー「__この俺を倒してみろ。」
なんと、ハーレーの出した条件は、決闘だった。
カムロウ「…どうしても?」
ハーレー「倒さなければ、俺は認めんぞ。」
…いくらなんでも、この決闘は不公平だ。
相手は大人。体格も経験も、カムロウと比べれば桁違いだ。
ラクト「じゃ、じゃあ俺も__」
__ラクトは決闘に参加しようとすると、不意に、足元に衝撃波が放たれた。
カムロウが、剣から衝撃波を、
チリ「カムロウ…!?」
ルカ「いきなりなんで…」
なぜこっちに
軌道を見るに、最初から地面に当てるつもり…牽制にような軌道だった。
カムロウ「…そこで見てて。これはぼくと、お父さんの戦いなんだ。」
だから、横槍を入れるなと?
ここで見ていて欲しいと?
ラクトは納得できないようで、それでも近づこうとした。
しかし、アリスは行かせまいとラクトの服の襟を掴んだ。
ラクト「離せ!離せってんだよ!」
アリス「手出し無用だ。いいから黙って見てろ。」
…僕達は大人しく、事の成り行きを見守るしかないようだ。
カムロウは剣と盾を構えた。
ハーレー「…来るか。」
カムロウ「…勝つんだ。お父さんに勝って、旅に出る!」
ハーレー「…そうか。」
ハーレーは一度、目を瞑った。
そして見開き、カムロウを睨みつけた!
ハーレー「さぁ…来い!」
親子の決闘が始まった___
__ハーレーが立ちはだかった!
木々が揺れ、空が泣き、冷たい風がなびく。
ハーレーは武器を構えず、腕を組んだまま仁王立ちでこちらを睨んだままだ。
お互い、距離は離れている。
まずは遠距離の攻撃をして、隙を作るのが鉄板だろう。
魔法で火の玉を作り、放つ!
カムロウ「
火の玉を、真っすぐ飛ばすのではなく、曲線を描いて飛ばす。
軌道を分かりにくくすれば、回避するのも容易ではないはずだ!
しかし、火の玉は途中で消えてしまった。
…風だ。
よく見ると、ハーレーを中心に、強烈な風が吹き乱れているのだ。
その風が、
ならば、今度は威力を高めて…
カムロウ「…
さっきよりも大きな炎の玉。
これならいけるか…!?
…ダメだった。それすらも、かき消されてしまった。
ハーレーから発せられる風の防壁が、防いでしまうのだ。
…こうなったらやぶれかぶれだ。
剣に風を纏わせ、飛び上がった!
カムロウ「ふ、
そして、ハーレーに斬りかかった!
ハーレーの風の防壁と、カムロウの風の剣が相殺し合った!
カムロウ「う…うぅ……!」
だが、カムロウが徐々に押され始め、最後は吹き飛ばされ、地面に転がる。
ハーレー「どうした…そんなものなのか、お前は!?」
飛ばされたカムロウを、仁王立ちのまま見つめる。
俺を失望させるなと言わんばかりの眼だった。
カムロウ「まだだ!」
再び立ち上がり、剣を構え、何度も斬りかかった。
そして、何度も吹き飛ばされた。
カムロウ「まだ…まだ終わってない!」
それでも、立ち上がった。
負けるわけにはいかないんだ…
勝たなきゃいかないんだ…!
__ルカ達は遠くからその戦いを眺めていた。
ルカ「なんだ…あの風!?」
さっきから流れている風、自然に流れる風とは思えない。
異様なのだ。まるでハーレーから放たれているかのような風だ。
アリス「そうか…なるほど…」
ルカ「…どうした?アリス。」
アリスは何か、納得したのか、分かったかのような反応をした。
一体こんな時に、何を理解したのだろうか。
アリス「あの風の正体がわかった。」
そういえば、魔王軍四天王のグランべリアは、カムロウが放つ
魔法や魔力で起こした風でも、力任せで巻き起こした風でもないと。
アリス「あれは生命エネルギーだ。体から溢れ出た生命エネルギーが、風となって流れているのだ。」
ルカ「……生命エネルギーって…なんだ?」
初めて聞いた。なんだ、生命エネルギーって。
アリス「要は、生命力そのもの…その者の強さが具現化した力と考えればいい。」
アリス「あのハーレーとかいう剣士は、その生命エネルギーで生まれた風を自在に操ることができるようだな。あの者ほどの強さとなれば、半端な攻撃はあの風に遮られて通用しない。」
チリ「そんな…じゃあこんなの、負け戦同然じゃ…」
パヲラ「カムロウちゃんに成す術ないわよ!?早く止めましょう!」
この決闘は、ハーレーが圧勝することなど確実だ。
このまま戦っても、カムロウが疲弊するだけだ。
どうにかして止めなければ__
リンドウ「あぁ…そんな……」
テアラ「…やはり、そうなってしまったのですか……」
カムロウの姉リンドウと、母のテアラが来た。
テアラは車椅子に乗り、リンドウが車椅子を押していた。
ラクトはテアラに駆け寄った。
ラクト「なぁアンタ!あの二人の喧嘩を止めてくれよ!」
しかし、テアラは首を横に振った。
ハーレーの妻であり、カムロウの母でもある彼女でも、止めることはできないようだ。
テアラ「出来ることなら、止めたいと思うのは同じ気持ちです。ですが__」
ラクト「__いいから止めろって言ってんだよ!あの
テアラ「__危ない道を辿ろうとする我が子を止めるのは、親の務めではないのでしょうか……?」
ラクト「………!」
テアラ「私に出来ることは…見守ることしか…」
そう言ってテアラは俯く。
この戦いを止める方法は、もはや二人のどちらかが勝つまでなのだ。
もうどうしようもない。
ラクト「だ、だけどよぉ!__」
アリス「__ラクト、諦めろ。」
パヲラ「…決着が着くまで、待つしかないわ。」
チリ「止めたいのは同じ気持ちなの。だけど、どうにもできないのはわかってるでしょ?」
三人の言葉を聞いて、ラクトは次第に体をわなわなと震わせる。
ラクト「ケッ!勝手にしろぃ!もうどうなっても知らねぇからな!!」
ラクトは拗ねたかのように、その場で座りこんだ。
…僕はラクトの隣に座った。
ルカ「…ラクト、僕はカムロウを信じるよ。」
カムロウを信じる。それが今、僕達が精一杯出来ることだろう。
ラクト「…あぁ、俺もカムロウを信じる。」
このまま、信じることしか__
カムロウ「___うおおおぉぉぉ!!!」
カムロウは何度も何度も、ハーレーに立ち向かっていた。
しかしそれでも、ハーレーを囲う風の防壁が壊れることもない。むなしい特攻だ。
ハーレー「その程度で、俺に勝てると思っているのか!?」
カムロウ「うわああああああ!!!」
すると、カムロウの体から、突風が放たれた。
怒りが最高潮に達した証拠だ。
瞳は涙で煌めき、風が纏うように吹き荒れる。
カムロウ「
怒りの
剣に荒々しい風を纏わせ、強風の衝撃波を放つ。
…その渾身の一撃でも、防壁はビクともしなかった。
ハーレー「ほう…その風。お前は、俺のを見て覚えたのか?」
カムロウ「!?…う、うん。」
急にそんなことを言われ、情けない返事をした。
なんでいきなり、そんなことを__
ハーレー「__そうか。良い風だな。」
カムロウ「えっ!?」
…褒められた?
初めての事だった。
だって、今までまともに会話をしたことがなかったから。
ハーレー「だが、それは本当の
ハーレーは背中に背負った大剣を片手で抜刀し、カムロウに見えるよう掲げた。
その大きな剣は、まるで巨大な白い牙のようだ。月明りに照らされ、さらに銀色に輝く。
ハーレー「この剣の名は…「醒剣クトネシリカ」。俺の故郷の伝承だと…英雄が闇を切り裂くために、この剣を振るったと言われる剣だ。」
そう言うと、片手で剣を構えた。
すると、剣に風が纏わり始めた。
それだけじゃない。徐々に剣が輝き始めたのだ!
ハーレー「炎を切り裂き、風をも薙ぐ剣。これが「本来の
カムロウ「「本来の
カムロウも、僕達も目を疑った。
こんな夜なのに、ハーレーが持つ剣は輝いて見える。
日の光があるわけではないのに、月の光はそこまで輝いているわけでもないのに。
ラクト「なんだよあれ!?」
チリ「どうなってるの!?」
アリス「風が肉眼で目視できるほどの密度で剣に纏っているうえに、光の乱反射で輝いて見える…そういうトリックだな。」
パヲラ「理解しがたいけど…そう納得するしかないわねぃ。」
ルカ「そんなめちゃくちゃな…!?」
ハーレー「そして…!」
ハーレーの剣に、風が纏わり付き始めた!
次第に大きくなり、光の風となる!
ハーレー「これがグラディリオン…「勇者の風」と言われている。」
カムロウ「勇者の…風…」
まだ放たれてすらいないのに、圧倒されそうになる。
ハーレー「行くぞ…!」
カムロウ「………!」
カムロウは来る攻撃に備え、迎撃の体勢に構えた!
ハーレー「
勇者の風が放たれる!
それは、衝撃波の塊である
横一文字に放たれたそれは、光る風の一枚刃と言うべきか。
そしてもう一つ、目に見えてわかることがもう一つある。
__気付けば、体に衝撃が走っていた。
迎撃の構えをしていたのにも関わらず、予想以上の速さに、反応できなかった。
猛烈な勢いで吹き飛ばされる。
そして、広場を超え、後ろの崖に激突する。
カムロウ「ゲホッ…ケホッ…」
土煙にまみれながらも、なんとか立ち上がる。
ハーレー「どうした!?俺に勝つのではなかったのか!?」
ハーレー「それとも、あれは嘘だったのか!?」
再び、勇者の風が放たれる!!
ハーレー「
あんなデタラメなモノをもう一度食らえばひとたまりもない…
今度は盾で防御を…いや、防ぎきれない!
だとしたら、避けるしかない!?
そう考えているうちに、光の風は迫ってくる!
こうなれば一か八かだ。
攻撃が当たる方に盾を向け、飛び上がりきりもみ回転をして避ける!
カムロウ「くぅぅ…!」
盾にガガガと、削るかのような音が聞こえる。
それでも、なんとか避けきれた。
安心する余裕もない。
そのまま突っ走り、距離を詰める!
ハーレー「この俺を超えてみろ!!カムロウ!!!」
荒々しい勇者の風が放たれる!!!
ハーレー「
今度は近い。避けることなんて出来やしない。
となれば…斬るしかない…?
もしこの光の風を斬ることが出来れば、お父さんに近付ける。
だけど、斬れるんだろうか…いまのぼくに…?
……いや、違う。
カムロウ「超えてみせる…父さんを…!!!」
斬るんだ。斬ってみせる!!!
剣に風を纏わせ、
カムロウ「はああああぁぁぁ!!!___」
__斬れた。
横一閃の光の風を、一刀両断。
斬れるとは思ってなかった。でも、驚いている暇はない!
もう今は、止まれないんだ!
止まっちゃいけないんだ!!
ぼくは勝って、旅に出るんだ!!!
ハーレー「!!!」
カムロウ「__だああああぁぁぁぁ!!!」
疾風の
ハーレー「それでもお前は行きたいと願うか…!」
ハーレー「ならば食らうがいい!!俺の風を!!!」
剣を構え、光の風を纏わせる!
そしてさらに風を集め、光の竜巻と化す!
ハーレー「
強者の風が吹き荒れる!!!
カムロウ「はあああぁぁぁぁ!!!」
ハーレー「おおおおぉぉぉぉ!!!」
互いの風が、牙を剥く___
__結果は、目に見えて…いや、最初から分かっていたことだった。
カムロウが、ハーレーに。
子が父に。
ぼくがお父さんに勝てるはずなんてなかったのだと。
広場の中心には大きなクレーターが生まれ、そこにカムロウは、瓦礫に埋まっていた。
ハーレー「………」
勝敗は、決まった。
瓦礫に埋もれたカムロウは動く気配はない。
ハーレー「(悪く思うなよ…)」
ハーレーは、顔色一つも変えずに、その場を去ろうとする。
…5歩、いや、7歩ほど歩いたところで、ハーレーは何かの気配を感じ、再びクレーターの中心の方を向く。
そこにいたのは、こちらを見つめるカムロウだった。
ハーレー「(カムロウ…!?)」
なんとカムロウは、瓦礫の中から立ち上がったのだ。
至る所からは血が流れ、焦点の合わない目でハーレーを見ていた。
ボロボロになりながらも、おぼつかない脚で。
カムロウ「お父さん…」
肩で息をしながらも、頭から血を流しながらも、
カムロウ「聞いて欲しい事が…あるんだ…」
ハーレーに歩み寄る。
カムロウ「いや…」
首を横に振り、拳を握り、息を吸い込む__
カムロウ「__聴けよ!!!」
ハーレー「!!!」
自分の心の言葉を、思うがままに、存分に、打ち明ける。
僕の本心を、聴いて欲しい言葉を、僕の想いを__
カムロウ「__僕が人だとか龍だとか、もうそんな事はどうでもいい!だけど…自分が、自分であることを…忘れない…!忘れたくない…!!忘れるもんか!!!」
カムロウ「僕は今も、この先も、ラクトやルカやチリや…アリスさんやパヲラさんと…!!同じ路を、同じ景色を!同じ場所を!みんなと一緒にいたいだけなんだ!!!みんなのことが、大好きだから…みんなの手を、この手を、離したくない!!!」
カムロウ「ずっと隣で信じていたいんだ!!!」
ハーレー「それは…お前が死ぬことになってでもか!?__」
カムロウ「__それでも!!!」
ハーレー「…!」
カムロウ「だから!」
カムロウ「僕は強くなりたい!!強くならなきゃいけないんだ!!!みんなを守れるくらいに…! 父さんみたいに…!!」
カムロウ「…父さんと……」
目から涙が溢れ出た。
カムロウ「父さんと同じように…!!!」
ハーレー「俺のように…か?なぜ俺のように強くなりたい!?カムロウ!」
カムロウ「だって僕は…父さんの子どもだから!!!」
小さい時からそうだ。僕の憧れは父さんだ。
身近にいる存在だからこそ、超えるべき壁だと感じた。
父さんのように強くなりたい。
…沈黙が続いた。長く感じた。
実際に、長い時間が流れたと思う。3分ほどだろうか。
ハーレーはカムロウを見たまま、考え事をしていたかのようにも見えた。
そして、口を開いたのは、ハーレーだった。
ハーレー「…1週間だ。」
カムロウ「…?」
ハーレー「今のお前は弱い。1週間でお前に、俺の持つ技を全部叩き込む。」
カムロウ「…!」
ハーレー「…後は自分なりに強くなれ__」
ハーレーは剣を納刀すると、静かに去っていった__
ルカ「………」
ラクト「………」
もう勝負は…終わったということで良いのだろうか?
周囲の様子を見た後に、ラクトはチリの背中を叩く。
ラクト「おい、ボケッとしてる場合か!?回復だ!急げ!」
チリ「あっ…わ、わかった!」
僕達は、窪んだクレーターから出てきたカムロウを囲うように集まる。
ルカ「えっと…この勝負、どうなったんだ?」
パヲラ「決闘のほうは…」
アリス「残念だが、カムロウの負けだな。」
カムロウ「うん。そうだね、僕の負け。」
負けたのにもかかわらず、カムロウは悔しがる素振りを見せなかった。
むしろ、清々しいような、爽やかというか、一皮むけたような印象だ。
カムロウ「…でも、認めてもらえた。そんな気がした。」
テアラ「いえ…認めたんですよ。息子として。」
後ろから母のテアラが、姉のリンドウに車椅子を押してもらいながら、そう声を掛けてきた。
テアラ「
リンドウ「えっ?そんな顔してた?」
カムロウ「…そうだったかな。いつもと変わらない表情だったけど。」
小さい頃から変わらない、仏頂面だった気がしたけど。
ルカ「テアラさんには…分かるんですか?」
テアラ「ええ、もう何年も一緒にいますから。なんとなく分かるんですよ。」
テアラは、カムロウを見つめた。
テアラ「…カムロウ。」
カムロウ「? どうしたの?母さん。」
テアラはカムロウに手招きをして、もっと近くに寄るよう促した。
カムロウは近づいた。すると、テアラはカムロウの体を抱きしめた。
テアラ「…あなたは、外の世界を知り、学び、感じ…そして、良き友を持ちましたね。」
カムロウ「…!」
テアラ「あの時のあなたは…泣くことしかできなかった。けれど…今は、泣いても立ち向かうことができるほど強い心を持っています。」
テアラ「…成長しましたね。カムロウ。母として、こんなに嬉しいことはありません。」
カムロウ「母さん…」
二人はしばらく抱きしめ合っていた。
決闘の結果は負けではあったが、自分の父親に立ち向かったこと。
それこそ、カムロウが一番成長した証だろう。
ラクト「母さん、か…」
ラクトはその光景をしみじみと眺めていた。
チリ「なんだか、見てるこっちもにやけちゃうよね。」
パヲラ「あーら?母親が恋しいのかしら?」
パヲラはラクトをおちょくった。
またいつものように突っかかってくるだろう__
ラクト「__まぁ…そうだな。」
チリ「…え?」
パヲラ「…?」
予想とは違った答えが返ってきた。
普段であれば、すぐに怒って突っかかってくるはずなのに。
こんな反応をするラクトは初めて見た。
パヲラとチリはそれ以上、聞かなかった。
彼の領域に、これ以上土足で踏み入れてはならないと感じたからだ。
ルカはカムロウにこの後の行動を聞く。
ルカ「それで、カムロウ。この後はどうするんだ?」
カムロウ「それなんだけど…明日から1週間、父さんと稽古することになった。」
カムロウ「だから先に__」
ルカ「__となると…その間はこの村に滞在することになるな……」
カムロウ「…?ルカ、先に行かないのか?」
ルカ「そういうわけにはいかないよ。カムロウを置いて先に行くなんて。」
カムロウ「…ありがとう、ルカ。」
ルカ「気にすることはないよ。特に慌てることも、焦る必要もないわけだし。」
カムロウが僕の旅に付いて行くことは決まったのだ。
置いていくよりも、踏み始める足は一緒のほうがいい。
僕の旅は、まだ先は長い。1週間くらい、どうってことはない。
ルカ「だから、ハーレーさんと稽古して、しっかり力を付けるんだ。それが今、カムロウがするべきことだよ。」
カムロウ「…そうだね。」
ルカ「みんなも、それでいいか?」
アリス「まぁいいだろう。まだ山の恵みを食べ足りぬからな。」
チリ「また食べ物の話してる…」
パヲラ「いいわよ~ん♪。なんだったらあたし、いつまでも待つわよん!」
ラクト「ま、仮に先に行くなんて言ったら、この俺様が許さねぇからな。」
ルカ「言ってろ。」
アリス「言ってろ。」
パヲラ「言ってろ。」
チリ「言ってろ。」
ラクト「な、なにぃ…!?」
ルカ「…とは言ったものの、1週間の間、何をしようか…」
大方、アリスと一緒に剣の鍛錬だろうけど…
それ以外で何をするべきか…
暇つぶしをするわけにもいかないしな…
パヲラ「だったらあたし、コロポ村の復興作業を手伝おうかしら。」
チリ「私もそうする。だって…」
チリは周囲の風景を指差しながら怒った。
チリ「カムロウやハーレーさんは…暴れるだけ暴れて、後始末はどうするつもりだったの!?この地面とか崖とか!余計な仕事を増やしただけじゃない!」
カムロウ「あはは…ご、ごめんね?」
アリス「ふむ。では余はこの村の特産品を…」
ラクト「何、楽しようとしてんだお前!」
ルカ「手伝え!少しは!!」
アリスとラクトはボコスカ喧嘩をし始めた。
アリス「なんだと!?元々、我々は部外者ではないか!手伝う筋合いなどない!!」
ラクト「だからってタダ飯食う気かてめぇは!」
ルカ「少しだけでもいいからわきまえろよ!」
まったくこいつは…本当に意地汚い奴だ。
テアラ「ふふふ…本当に、楽しいお友達ですね。」
リンドウ「…もしかして、いつもこんな調子だったりする?」
ルカ「……えっと、はい。」
リンドウ「えぇ…」
テアラ「さて…すっかり夜も更けましたね。そろそろ帰りましょうか。」
ルカ「そうですね。カムロウは、明日から頑張らないといけないこともありますし…」
ルカ「みんな、帰るよ__」
__みんなの方を振り返ってみると、
チリ「ガミガミガミガミ…」
カムロウ「ご、ごめん……」
アリス「この、ジャーキー分けようともしないケチな奴め!」
ラクト「お前、あの時のことまだ根に持ってたのかよ!?」
チリはまだ、カムロウを叱っていたし、アリスとラクトの取っ組み合いも続いたままだ。
ルカ「(…あぁだめだこいつら。聞く耳を持ってくれない。)」
パヲラ「放っておきましょ、ルカちゃん。しばらくしたら冷めるタイプよこれ。」
ルカ「そうだな…置いて先に帰るか。」
__こうして、僕達は宿舎に、カムロウは自分の家に帰った。
カムロウは明日から1週間、父のハーレーに稽古をつけてもらうことになった。
そしてルカ達はその間、コロポ村に滞在することになった__