もんむす・くえすと! 勇者ルカと仲間たち 作:J・チェプナクル
__コロポ村に滞在して3日が経った。
天気は晴れ、空には積雲、綿菓子のような雲がいくつか点々としている。
カムロウの修行が終わるまでの間、僕達は建物の修復を手伝っていた。
といっても、修繕作業自体は村の人達で足りているらしいので、資材の搬入ぐらいしかしてないけど。
今、ちょうど正午近くになったのでお昼休みにしようとしていると、通りかかった空き地にラクトとパヲラがいた。
パヲラは岩の上に座っており、ラクトの前には木で出来た的当てがあった。
ルカ「何してるんだ?ラクト。」
ラクト「お、ルカか。見りゃわかるだろ。」
ルカ「分からないから言ってるんだけど…」
ラクト「あぁ~ん?」
これだよこれと言うような表情をしながら、ラクトは手に持っている物を見せてくる。
それは、とても銃とは思えない見た目をした銃だった。まるでおもちゃだ。
ラクト「試し撃ちだぜ。やっと新兵器が完成したんだ。今、最終テスト中でな。」
ラクト「俺様が開発した新兵器…命名して、「魔導銃モダングリモア」!!」
パヲラ「銃って言うけど、それ猟銃より随分小さいじゃない。」
そう。猟銃よりも小さいのだ。いや、コンパクト、小さくまとまってあると言ったほうが的確だろう。
ラクト「デカいと取り回しが悪いんだよ。素早く動くにはこれくらい小さくねぇとな。それに
ラクト「あるのは魔力を放つ機構と、中でルーン魔導を発動させる機構だけ!今までよりもずっと早く、簡単に魔法を放てるぜ!」
…機構?
ルカ「それって…どういうやつなんだ?」
言ってることがとてもよくわからず、話に付いていけない。
ラクト「まずは魔力を放つ機構は、体を通して魔力を集めるようになっていて、ようは自動供給ってやつだな__」
すごい早口で言い始めた。
ラクト「__それでルーン魔導を発動させる機構は、中であらかじめルーン文字を自動で描くようになってるから、自分が放ちたいと思う魔法をすぐに描いてくれて__」
ルカ「へぇ。」
パヲラ「ふーん。」
なんかよく分からないから無視することにした。
ラクト「お前ら興味すらねぇのか!あーはいはいそうですか!そうですか!!」
チリ「みんな、ここにいたの?」
遠くから声が聞こえた。振り返ってみると、チリとアリスがいた。
アリス「どうした、昼飯を食いに行かないのか?今日は茸の炊き込みご飯らしいぞ。」
ラクト「キノコ…白米はねぇのかぜ?」
チリ「白米もあるって。」
パヲラ「あーん早く行きましょ!あたしお腹ぺこぺこ!」
カムロウは後で来るとして、先に昼食をとりにいこう。
そうして、僕達は空き地から離れる。
すると、歩きながらアリスが僕に質問を投げかけてきた。
アリス「ところで、カムロウの修行が終わった後どうするのだ?目的地などのあてはあるのか?」
ラクト「そういや、行きたい所があるって言ってたよな。」
ルカ「ああ、ここから西にあるサン・イリア城に向かうよ。そこのお城もイリアス信仰が非常に盛んで、旅の勇者を歓迎してくれるらしいんだ。」
そこの王様は、勇者に道を示してくれるという。
サン・イリア王は、迷える僕にも道を示してくれるかもしれない。
アリス「…ニセ勇者も歓迎してくれるのか?」
ルカ「こ、心は勇者なんだよ!」
チリ「刺すなぁ…」
サン・イリア城は教会都市であり、王様も偉い大神官様。
勇者に道を示してくれる賢者であり、ぜひ訪れておきたいところなのだ。
アリス「ふむ…あまり行きたくないところだな。料理もマズそうだ…」
ラクト「あぁ…またこいつは…」
やれやれ、やっぱり食い物のことか…
__同時刻。コロポ村、鍛錬場。
村よりも高い崖の上にあるその場所には、カムロウと、その父ハーレーがいた。
カムロウ「うわあああああ!」
いきなりカムロウは突風に飛ばされていた。
ハーレーは木刀に風を纏わせ、構えつつその場で動かないでいる。
ハーレー「まだまだ、だな。「風」を使い切れていない。」
カムロウ「だからって吹っ飛ばすことは……」
文句を言いながらも、カムロウは立ち上がる。
ハーレー「なんだ、俺の教え方が下手だと?」
カムロウ「いや、そういうわけじゃないけどさ…」
今は木刀を使って実戦形式の鍛錬中。
僕にとっては、一番戦いやすく、覚えやすい鍛錬の仕方だと感じるけど…
父さんとの鍛錬はむちゃくちゃだと思う。
だって手加減してくれないから。
僕は木刀を握り締め、再びハーレーに攻撃を仕掛ける。
木刀同士が叩きあう最中、父さんがあることを聞いて来る。
ハーレー「お前の戦い方…ある程度の技は、友人から教わったか?」
カムロウ「そうだね…剣術とか、戦術とか、魔法とかは。」
剣術の内、突きはルカからある程度は教えてもらったり、見て学んだ。
魔法はラクトから、戦術はパヲラさんから。
魔法に関しては、最近パヲラさんの授業のおかげで文字を読めるようになったから、読み始めた市販の魔導書がある。なので、まだまだ覚えることが多くある。
ハーレー「お前はラーニング…技を見たり経験したりするとすぐに自分の技に出来る。俺の
えっ?そうなの?
意識してなかったけど、父さんがそう言うのなら間違いないだろう。
ハーレー「だが、技は真似るだけ、形だけ覚えるだけでは意味がない。現に、お前が覚えた
確かにそうだ。
前の僕は、風を放つ技を
しかし本当は、剣に風を纏わせる技であった。
父さんから教わったことがなかった…いや、教わろうともしなかったため、見よう見真似で覚えた
真の
そして今、その風の剣の極意や、父さんの技を教わっている真っ最中なのである__
ハーレー「__あぁ、そうだ。一応言っておくが、もう俺の持つ技は全部叩き込んだぞ。」
カムロウ「えぇ!?」
なんだって…!?
ハーレー「もう1日目あたりで教え終わった。」
カムロウ「えぇぇ!!?」
なんだってぇ…!?
ハーレー「なんなら、もうこれ以上教えることすらないぞ。」
カムロウ「えぇぇぇ!!!?」
なんだってぇぇぇ…!!?
えっ!?これからどんどん新しいのを教えてもらうんじゃなくて!?
いや確かに…まだ使うことすらままならないが、1日目で教えてもらったといえばそうだ。
風で相手の攻撃を巻き込んで跳ね返す技とか、
正直言うと、あの日はハードスケジュールだったと今でも思う。
ハーレー「ぬん!」
父さんは隙を突いて、再び突風を放って僕を吹き飛ばしてくる。
カムロウ「うわまたっ!」
吹き飛ばされつつもなんとか体勢を整える。
カムロウ「何かこう…ないの!?必殺技とか奥義とか、本当はそういうのあるでしょ!?ルカやパヲラさんだって持ってるのに!」
ハーレー「そういうのは自分で考えたらどうだ?言ったはずだ。「後は自分なりに強くなれ」と。」
カムロウ「確かに言ってたけど…」
てっきり、この1週間でみっちり教えてもらうと思っていたのに…
こんなの、聞いてない。
…それもそうか。今、言われたことだし。
カムロウ「じゃあ、さっきまでの鍛錬は何だったんだよ!?」
1日目で教え終わったのであれば、それ以降の、これまでの鍛錬は一体何のために…?
ハーレー「お前のラーニングの能力を向上させるためだ。」
カムロウ「…?」
さっき言ってた、見たり経験したりするとすぐ自分のモノにできるっていう?
そんなことのために、今まで鍛錬をしていたというのか。
ハーレー「人が異なれば、使う剣も技も異なる。人次第で技量は変化する。「風」は変幻自在であるがゆえに型など存在しない。」
ハーレー「俺の戦い方は基本にして奥義だ。そしてお前は、「お前の戦い方」を見つけろ。」
…僕はブスーッと、ふてくされた顔をした。
カムロウ「…なんで、僕の戦い方を?」
イマイチ、理解できない。
父さんの戦い方をそっくりそのまま、教えてくれればいいのに。
なぜ戦い方を見つけろなんて言うのだろうか?
ハーレー「カムロウ、お前はなぜ、強くなりたい?」
カムロウ「それは…みんなを守るためだよ。」
ハーレー「…お前はまだ、
カムロウ「……?」
…
どういうことなのだろうか?
理解できず、ますますふてくされた顔をする。
ハーレー「昼の休憩にするぞ。終わり次第、鍛錬の再開だ。」
父さんは木刀を納刀しながら去っていく。
結局、意味を理解できずに終わった。
なんだろうか、
でも、父さんのことだ。
その
なぁに、まだ4日も残ってる。
父さんとの鍛錬に励めば、その内分かるはずさ___
___なんてことを考えていたら、近くの地面にグサッと矢が刺さった!
その矢は姉のリンドウが使ってる矢だ。リンドウは弓術が得意だ。
地面に刺さったその矢には赤色の着いた紙が巻かれていた。
この前、村が魔物の襲撃に合った後、村で決めたという合図。
この合図の意味は…村が襲撃に合っているという意味だ!
こんな時に…!?
ただでさえ村は修復中の建物ばかりだし、村の門も直ったわけでもないのに…
しかし、考えている暇はない。
今すぐに村に行かないと!
よし行くぞ__
__ん?待てよ?
立ち止まってあることに気付いた。
ああ、そうだった!なんてこった!
僕の装備である鋼鉄の剣と鉄の盾は、この前の父さんとの決闘で傷付いたから修理に出してる!
だから今、手元に十分な武器がない!
それにしばらくは戻って来ない!
ああ、どうしよう…
う~ん…本当にどうしよう…
悩んでいる時間なんてないのに。
……今、手元にあるといったら、木刀しかない。
しょうがない、気休めにしかならないだろうけど…
僕は木刀を持って村に向かって駆けて行った__