もんむす・くえすと! 勇者ルカと仲間たち 作:J・チェプナクル
__数分前、コロポ村。
ルカ達は昼食を終えて、再び資材の搬入作業を開始しようとしていた。
アリス「ではこの後も、馬車馬のように働くんだな。」
アリスはデザートに野イチゴを楽しむ気でいる。
ルカ「アリス…お前ってやつは……」
ラクト「本当に手伝う気はないんだな…」
アリスが手伝わないのにも理由がある。
今は人間の姿をしているわけだが、アリスは全ての魔物を統べる魔王である。
その立場がある以上、そう簡単に人間に関与するわけにはいかない。
それは分かってはいるが…それにしても図々しい。
すると村の雰囲気がだんだん、騒がしいような、慌ただしいような雰囲気を醸し出してきた。
周りを見ると、遠くでカムロウの姉リンドウが村の人に指示を出していた。
リンドウ「二人分の担架を!そっちは包帯を!!」
どうやら、只事ではなさそうだ。
ルカ「あの…どうしたんですか?」
リンドウ「なんでも、門の前に傷だらけのサムライと青年がいるって…」
サムライ…?なんだろう、思い当たる言葉だな………
ルカ「まさか!?」
パヲラ「もしかして…ジョージちゃん!?」
ラクト「マモルもいるのか!?」
イリアス大陸で出会った、侍のジョージと陰陽師のマモル。
たしかナタリアポートで別れたはずだが…?
チリ「ルカ、私達も!」
ルカ「ああ、行ってみよう!」
僕達はリンドウと共に、村の門まで駆けて行った__
__村の門に向かうと、そこにはナタリアポートで別れたはずの、
袴姿の侍、ジョージと
長髪の青年、陰陽師のマモルがいた!
二人とも血まみれで、衣服もボロボロで、息も絶え絶えでその場に座り込んでいた。
どうみても、命からがら逃げてきたとしか思えない。
一体、二人の身に何があったというのだろうか…?
パヲラ「ジョージちゃん!大丈夫!?何があったの!?」
ラクト「おいマモル!生きてんのか!?」
しかし、返事がない…いや、返事をする気力もないように見える。
チリ「本当に…一体何が……?」
ルカ「わからない…けど今は__」
今はとにかく、二人を治療するべきだろう___
__そう言い掛けた瞬間、僕達の目の前に、
斧を持つ戦士、杖を持つ老人、弓を構える若者が現れた!
ルカ「…ん?」
ラクト「…なんだ?アンタらは……?」
何者かと問い掛けても、返事をしてくれない。異様だ。
そして……まだ気になる点があるとすれば、全員肌は青白く、生気を感じさせない。
すると、その3人組はいきなり、それぞれの武器を持って襲いかかってきた!
しかも、狙いは僕達ではなく、瀕死のジョージとマモルだ!
パヲラ「
パヲラは高速回し蹴りを放って攻撃を防いだ!
ラクト「あの野郎…攻撃してきやがった!」
パヲラ「いきなり何するのよ!危ないじゃないの!!」
今の状況は…とにかく
そして、敵意があることが分かった以上、ここは応戦するしかない!
リンドウ「連れて行って!早く!」
ジョージとマモルは担架に乗せられ、村人たちはそそくさとその場から離れた。
ラクト「何だがよく分かんねぇけどよぉ!!」
ルカ「行くぞ!今は僕たちだけで応戦しよう!!」
今、この場にいるのは僕を含め、ラクト、パヲラ、チリ、リンドウ。
謎の三人組を前にして、僕達は戦闘態勢に入った!
__そして現在、村の門の前でルカ達は謎の襲撃に応戦していた。
ルカとパヲラは、斧を持つ戦士と戦っていた。
パヲラが攻撃を防ぎ、僕が攻撃を仕掛ける。
堕剣エンジェルハイロウなら、人間は小人の姿になって封印されるらしいが…
パヲラ「かなりのやり手ねい…」
ルカ「封印するには、まだダメージが足りないのか…?」
一向に弱まる気配がない。パヲラの言う通り、かなりの実力者なのだろう。
パヲラ「そういえば、さっきから攻撃防いでるんだけど、なんていうか…ヌルヌルするのよね、あの斧。」
そう言われて見ると、確かにパヲラの手には液体が付いていた。
ルカ「ヌルヌル…?ハチミツか?」
パヲラ「いいえ…違うみたい……なんなのかしら、これ。」
すると、斧の戦士はマッチ棒を取り出した。
何をする気だろうと見ていると、戦士が持つ斧が燃え始めた!
ルカ「斧が…燃えた!?」
パヲラ「ってことは…このヌルヌルは油!?」
斧に油を塗って、火でさらに攻撃力を高めるという魂胆なのだろうか。
近付こうにも、斧の炎で不用意に近づきづらい。
ルカ「ん?…油…燃える斧…?聞いたことがある、確か__」
__燃える斧の戦士、ヤキニ・クスキー。
大の肉好きで、好物の焼き肉をすぐに食べれるように編み出した方法が「燃える斧の戦士」の由来だという。
パヲラ「でも、その人は20年も前に亡くなったって話よ!?」
そうだ。彼は野菜の栄養不足で亡くなったはず…
死んだハズの人間が、目の前にいるのはおかしい……
そう考え込んでいると、目の前にいきなり氷の壁が迫ってきた!
チリ「
チリはハンマーを持って暴れまわり、迫ってきた氷を粉砕した!
チリ「大丈夫!?考え込んでるみたいだったけど!」
ルカ「ご、ごめん、助かった!でも、この氷の壁は一体…」
チリ「たぶん魔法!あそこのおじいさんが放ってきた!」
チリが指差した方向には、杖を持った老人が立っていた。
するとその老人は、今度は氷の塊を飛ばして来た!
ラクト「
ラクトは銃から炎の弾丸を放った!そして飛んで来た氷を溶かした!
ラクト「考え事なら後にしたほうがいいと思うぜ。」
ルカ「うん、後にする!立ち止まってたらこっちがやられそうだ!」
ラクト「それとなぁ、ルカ。俺はこのジジイを本で見たことがあるんだが…」
ルカ「ああ、僕も本で…」
見たことある人間でもあり、それに氷の魔法を使ってくるとなると一人しかいない。
__氷の魔導士、ユキオイ・エティ。
50年間、雪山に籠って修行をし、幾多の強大な氷の魔法を会得した大魔導士だ。
話によれば、地図を逆さに見てしまい、それが原因で遭難をし、凍死している所を発見されたとか…
ルカ「…そういえば、リンドウさんは!?」
パヲラ「あっちにいるわよ!」
そう言われた方向を見ると、リンドウがいた。
リンドウ「一体、どこから矢が…!?」
リンドウが持つ弓の弓柄には、鋭利な刃が付いており、それを使って飛んでくる矢を切り伏せていた。
リンドウ「…! 気を付けて!この矢、なにか塗ってある!」
ルカ「もしかして、毒か!?」
ラクト「くそっ…この矢をどこから飛ばしてきやがってんだ…!?」
僕もラクトも、リンドウも周囲を見回して矢を飛ばしてくる張本人を探す。
ラクト「……いや…俺もよく見つけたなホント!あそこだ!!」
ラクトが指差した遠方の場所から、矢が飛んで来た!
リンドウ「あんな遠くから!?」
ルカ「遠距離の狙撃…毒の矢…となると、アイツは…」
緑草の狙撃手、モロ・ヘイヤ。
植物学に精通しているほか、生まれながらにして弓の天才であったという。
植物の毒を用いた矢と、普通の人間なら狙えるはずがない場所からの正確な狙撃、周りの草木に溶け込むほどの迷彩…
遂には、人からは畏敬の念として、「緑草の狙撃手」という名が付いた。
しかし彼は、ついついつまみ食いした毒キノコにあたって亡くなったという話のはず……
ルカ「ここにいる人たちは…もうこの世にはいないはず……」
ラクト「そうだよ!どいつもこいつも、死んだんじゃねぇのかぜ!?」
チリ「その死因が不名誉すぎるんですけど!?」
カムロウ「__みんなーーっ!!!」
向こうから、カムロウが木刀を持って駆けつけて来た!
ルカ「カムロウ!来たのか!」
カムロウ「これ、今、どういう状況!?」
ルカ「僕もよくわからないけど、向こうの3人は敵!」
チリ「状況は後で説明するから、今は一緒に戦って!」
カムロウ「わ、分かった!」
カムロウは戦闘に加勢し、燃える斧の戦士と戦おうとする。
しかし、戦士の攻撃を防いだ瞬間、木刀は虚しく折れてしまった!
カムロウ「うわっ!折れた!」
しかも燃えてしまった!
カムロウ「燃えたあああ!?」
戦士はそのまま、カムロウに斧を振り下ろす!
カムロウ「危なっ!熱っ!!危なっ!!!」
ステゴロ、武器も何も持っていない状態で、カムロウは戦士の攻撃をなんとか避ける。
ルカ「カムロウ!武器は!?」
カムロウ「持ってない!」
ラクト「はぁ!?なんで持ってねぇんだよ!?」
カムロウ「剣と盾は修理に出してるから、今は持ってないし使えない!」
ルカ「えぇ!?」
ラクト「なんでこのタイミングで修理に出してんだよ!?」
カムロウ「__じゃあ、ラクトはこうなるって分かってた!?」
ラクトは微妙な顔をした。
ラクト「……えーっと…それは………ごめん。」
カムロウ「いいよ。」
__その間に隙を突かれ、氷と矢の雨が降り注ぐ!
ルカ「まずい…来るぞ!」
リンドウ「ここは私が!ドラゴンに変身します!」
チリ「私も援護を!」
ラクト「俺もやるぜ!」
リンドウ「__はああああ!」
リンドウは赤いドラゴンに変身した!
リンドウ「
リンドウは口から破壊光線を吐いた!
チリ「
ラクト「
チリはハンマーを投げ飛ばし、ラクトは衝撃波を放った!
三人の三位一体の攻撃が、相手の攻撃を相殺した!
ルカ「よし!なんとか防いだぞ__」
__なんて言ってると、パヲラがこちらに向かって吹き飛ばされてきた!
それをカムロウがなんとか受け止める!
カムロウ「パヲラさん!?」
ラクト「どうしたお前!?誰にやられた!?」
ルカ「燃える斧の戦士にか!?」
パヲラ「いや、あの男よう!とんでもない怪力なのよう!!」
木々の間から現れたのは…まるで返り血を浴びたかのような赤い鎧を着た大男だった!
ラクト「おいおい…なんかヤバそうなのが出てきたぜ!?」
ルカ「あの鎧…あの人はまさか!?」
沸騰する血の狂戦士、ゲキオ・コリン。
常に怒っており、些細な事でもすぐに怒りが爆発するという。
彼が着ている鎧は返り血ではなく、怒りで近くにあったトマトを握りつぶした時についた汚れだという。
その最期は、あまりの怒りに体全体の血管が破裂し、大量出血で亡くなったという。
ルカ「これであっちは4人か…どうしよう……」
戦況で言うと、こちらのほうが不利だ。
こっちはリンドウがドラゴンに変身したものの、カムロウが武器を持っていない。
そして相手はどれも、それなりの名声と実力を持つ強者だ。
どうにかなる手段としては、あの狂戦士をアリスでも誰でもいいから抑えてくれれば、残りの3人を僕達だけでなんとか勝てそうではあるが__
__すると、カムロウの近くの地面に、刀身に木目状の模様がある大剣が突き刺さった!
剣が飛んで来た方向を見ると、高い崖の上に、カムロウの父ハーレーがいた!
カムロウ「父さん!?」
ハーレー「俺が昔、使っていた剣だ!今はそれで戦え!!」
そう言い放つと、ハーレーは崖から飛び降り、狂戦士と戦い始めた!
これはありがたい助っ人が来てくれたぞ。
しかも、カムロウに武器を貸してくれた!これでカムロウは戦える!
ハーレーが狂戦士を止めてる間に、残りの3人を倒すぞ!
ルカ「今だ!みんな!一斉に行くぞ!」
カムロウ「ああ、一気に決めよう!」
カムロウは地面に刺さった大剣を引き抜こうとする__
カムロウ「__重っ!?」
重い。この大剣。とてつもなく重いのだ。
最近、鋼鉄の剣に慣れてきたと思ったが、それ以上にこの剣は重い!
両手で、やっと地面から引き抜いて持つが、それでもあまりの重さに足がフラフラしてしまう。
カムロウ「なんだよこれ…すごく重いじゃないか!?」
しかし、他に武器はない。今はこの大剣で戦うしかないだろう。
…さっき、昔使っていた剣だとか言ってけど…本当にこんなに重いものを使っていたんだろうか。
そんなことを考えながら、カムロウは剣を構えた___