もんむす・くえすと! 勇者ルカと仲間たち 作:J・チェプナクル
__一方そのころ。
沸騰する血の狂戦士VSハーレー。
カムロウの父、ハーレーの武器は、まるで、白い牙のような大剣。
それを片手で軽々と振るっている。
対して、血の狂戦士は、武器を持っておらず、素手で戦っている。
全身は返り血に染まったかのような鎧に包まれている。
両者の攻防は、一進一退。
優勢に立ったかと思えば、すぐに逆転され、また逆転されの繰り返しだ。
狂戦士の戦い方は、その名に恥じぬ暴れ狂いっぷりだ。
立ちはだかる障害物を、岩石や大木を、拳一つで粉砕する。
一方、ハーレー戦い方は、カムロウと決闘をした時と同じ戦い方だ。
身体から発せられる強風が、ハーレーを中心に吹き荒れている。
まるで、ハーレー自身が台風の目のようだ。
そして、その流れる風を、風に身を任せて攻撃を避けたり、風を集めて強烈な攻撃を放つといったことに使用している。
ハーレー「
ハーレーは剣に風を纏わせ、渦巻き状の、強風の衝撃波を放った!
血の狂戦士は衝撃波を食らってもなお、その勢いは止まらなかった。
ハーレー「…ふむ。かなりの打たれ強さだな。」
血の狂戦士は、ハーレーの脚部を狙いローキックを放った!
ハーレーは風の流れのように回避した!
攻撃が当たらなかった血の狂戦士は、地団駄を踏みながら、手から爆炎をまき散らした!
ハーレー「…魔法の爆炎か。まさに怒りの権化だな。……確か、それが沸騰した血しぶきのようにも見えることが、名前の由来だったな。沸騰する血の狂戦士。」
ハーレーに爆炎の波が迫る!
ハーレー「炎なら斬れる!」
風の剣が炎を切り裂いた!!
ハーレー「
ハーレーは剣から竜巻を放った!!!
切り裂いた炎が竜巻に巻き込まれ、逆流した!
炎をも巻き込み、逆流した竜巻は、血の狂戦士を貫いた!!!
…しかし、攻撃を食らってもなお、狂戦士は倒れる気配はなかった。
ハーレー「なんだ…?打たれ強いことは確かだが、それにしても妙だな…?」
かなりの暴れっぷりにも関わらず、疲れ果てる様子がない。
加えて、何度も攻撃を食らわせているのだ。そのはずなのだ。
なのに、狂戦士は一向に倒れる気配がない、現れないのだ。
それどころか、ますます凶暴になってると感じる。
ハーレー「(嫌な予感がする…さっさと終わらなければ。)」
狂戦士の拳の連撃を、剣で防御しながらハーレーはそう感じた__
__ルカ達は遠くからその攻撃を傍観していた。
ドラゴンに変身したままのカムロウは、あっけにとられていた。
カムロウ「(あれが…父さんの戦い方……)」
ルカ「すごい風だ…これじゃ、近づけそうにないな。」
パヲラ「あたし達が加勢しても、足手まといになりそうねぃ。」
離れているとはいえ、勢いのある風がこっちにまで届いている。
ハーレーが、自ら放つ風を戦いやすいように操っていると考えられる。
戦いに加勢したところで、ハーレーの放つ風で、思うように身動きがとれないだろう。__
__不意に、血の狂戦士は力を溜め始めた!!
ハーレー「ん!?」
嫌な予感が的中した。
奴はこの後、大爆発を起こすつもりだ。
そうなると、ここにいる全員が巻き込まれることになる……
ハーレー「…全員!退避だ!!」
ルカ「えっ!?た、退避ってどこに…!?」
ハーレー「アイツが今から放とうとしてる攻撃の、余波が危険だ!どこでもいい!早く退避しろ!」
カムロウ「(でも、父さんは…)」
…ハーレーは攻撃を受け止める気だ。
自身の周りに風を集中させ、ドーム状にして身を守っている。
父さんのことだ。あれで切り抜けると判断したんだろう。
リンドウ「飛ぶよ!捕まって!」
ドラゴンの姿のままだったリンドウは、近くにいたパヲラとチリを背中に乗せ、空を飛んだ。
カムロウ「(えっ!?…あっ、そうか!ドラゴンって飛べるんだった!)」
どこに逃げようかとグズグズして、逃げるタイミングが遅れてしまった、もう間に合わない!
ラクト「やべぇ!もう来るぞ!!」
ルカ「走るんだ!とにかく離れよう!」
ルカとカムロウとラクトは、攻撃の余波から逃れようと慌てて走り出した__
__血の狂戦士は、有り余る怒りを大爆発させた!!!
辺りに凄まじい爆炎と衝撃が走る!!!__
__カムロウは、今の自分の、大きなドラゴンの体を盾に、ルカとラクトを庇った。
カムロウ「(イタタタ……でも、なんとか耐えれたな。やっぱりドラゴンの身体だから頑丈なのか…?)」
ラクト「な、なんだよ…あのデタラメな攻撃はよ……」
ルカ「危ないところだった…助かったよ、カムロウ。」
ドラゴンに変身しているカムロウとは、意思の疎通は出来ないものの、そこまで大きいダメージを食らったようではないことが分かった。
今のカムロウの耐久力は尋常ではないことは、七尾との闘いで十分、証明されている。七尾の攻撃を食らっても、ビクともしなかったからだ。
そんなことを思っていると、上空から声が響いた。
チリ「三人とも!そっちを狙ってる!!」
空を飛んでいるリンドウ、その背に乗るチリがそう叫んだ。
そして、チリが指差す方向を見ると、狂戦士が僕達のほうを向いていたのだ!
ルカ「ハーレーさんは!?どこに行ったんだ…!?」
ハーレーがさっきまで立っていた場所を見ても、周りを見ても、姿が見えない。
ラクト「もしかするとだが、吹き飛ばれたかもしれねぇ!」
そうかもしれない。無事だといいが……
とにかく今は、迫ってくる狂戦士をどうにかしなければ!
ルカ「カムロウ!迎撃できるか!?」
僕だけで狂戦士を相手するのは無理だと感じた。
何度もカムロウに頼ってしまうのは申し訳ないが……
カムロウ「(この距離なら、
今はまだ、お互い、十分に離れている。
それに、
カムロウは、
__その瞬間、カムロウの身体がボンッと弾けるように人間の体に戻った!
ラクト「はぁ!?」
カムロウ「えっ!?なんで!?」
ルカ「えっ!?」
そしてそのまま、カムロウは地面に倒れる。
予想外の出来事が起こった。
なんの前兆もなく、カムロウは人の姿に戻ってしまった。
しかも、今の反応からすると、本人の意思ではないようだ。
それに驚いているうちに、狂戦士はどんどん僕達に近付いて来る。
ラクト「おい!もう来るぞ!?どうすんだ!?」
まずいまずい、まずい!
どうしようどうしよう……
ルカ「に、逃げよう!それか、避けよう!!」
ラクト「よしわかった!」
急遽、作戦変更を決行した。
今は攻撃を逃げるか避けることを、第一に優先しよう。
態勢を整えてから、それからどうするべきか考えよう。
ルカ達は、一目散に逃げだした__
__……ん?
違和感を覚えて、後ろを振り向くと、どういうわけか、カムロウはその場から動かず、倒れたままだった。
ルカ「カムロウ!何してるんだ!早く逃げるんだ!!」
カムロウ「うわわわ!ちょ、ちょっと待って、体が動かないんだ!!」
ルカ「何だって!?」
ラクト「動かねぇだぁ!?」
最悪な事態が起きた。
七尾と戦った後、カムロウは、ドラゴンに変身した反動によるものなのか、しばらく身体を動かすことが出来なかったのだ。
それが今になって仇となるとは……
パヲラ「ラクト!魔法でどうにか出来ないの!?」
ラクト「んなこと言われてもよぉ!もう魔力が残ってねぇんだ!」
チリ「リンドウさん!」
リンドウ「……
チリ「ルカ!どうにかして!早く!」
ルカ「えっ!?えっと…どうすれば……!?」
どうにかしろと言われても、本当にどうすればいいんだ…!?
そうこうしていると、もう目前まで、狂戦士は迫っていた!
爆炎の拳を振り下ろそうとしている!
カムロウ「うわあああああっ!!!」
ああっ!!ダメだ!間に合わない!!!__
__次の瞬間、ガキンッという衝突音が響いた。
なんと、カムロウの前に、ハーレーが立っていた!
そして、大剣で狂戦士の攻撃を防いでいた!
ハーレー「………」
ハーレーは剣を構えつつ、狂戦士をギロリと睨んだ。
ルカ「うっ…!」
…あの、鋭い眼つき。
僕達に向けられたわけではないのに、背筋が凍った。
怒っている……あの気迫はそうだ。
自分の息子を狙った。それが、ハーレーの逆鱗に触れたのだ!
大自然の世界の、動物でもそうだ。
子を持つ親を、怒らせてはならないと___
__次の瞬間、ハーレーの怒涛の攻撃が始まった!
ハーレーは、狂戦士の拳を剣で弾いて距離を取ると、煌めく風を身に纏い、光輝く綺羅星と化した!
ハーレー「
風の綺羅星は、狂戦士に激突した!
激突した勢いで吹き飛ばされた狂戦士に、ハーレーは追い付き、追撃をした!
ハーレー「
ハーレーはすさまじい速度で相手に突撃した!
煌めく風を剣に纏わせ、すれ違いざまに斬撃を浴びせた!!
風 の 剣 が 大 気 を 貫 く ! ! !
そして、ハーレーの連撃は、それだけでは終わらなかった!
ハーレー「
ハーレーの剣が、煌めく風が、嵐を呼ぶ!
__ハーレーの剣が、巨大な風の剣に変化した!
巨大な風の剣を肩に担ぎ、両手で構えた!
ハーレー「…失せろ!!木端微塵に、吹き飛べ!!!」
ハーレー「
ハーレーは
烈 風 大 切 断 ! ! !
__嵐のような突風、凄まじいほどの大地の揺れ、それがやっと止んだ。
そして、ハーレーの方に視点を向けると、大地が一直線に、深く、大きく、巨人の手で粗削りをされたかのように、えぐられていた。
そして、その先で土石やら、大木の残骸やらの瓦礫の中に、ぐったりと倒れこむ血の狂戦士の姿があった。
ハーレー「…終わったな。」
ハーレーは剣を血振るいをした後、静かに背中に納刀した。
すると、狂戦士の姿が、青白い炎の玉に変わった!
ハーレー「ん?」
ルカ「な、なんだあれ!?」
それだけではない、燃える斧の戦士、氷の魔導士、緑草の狙撃手も、青白い炎の玉に変化していた!
青白い炎の玉たちは、空の彼方に消えていった……
ルカ「な、なんだったんだ…今のは?」
何かするかもしれないと身構えていたが、特に何も起こらなかった。
本当に何だったんだ、今のは……
アリス「今、飛んでいったのは「魂」だな。」
ラクト「うおっ!?お前、いつの間に!?」
気付いたら、すぐ近くにアリスが立っていた。
やっと、デザートを食べ終えたのだろうか?
いやいやいや、今はそんな事を気にしてる場合じゃない。
今、アリスは何て言った?魂だって?
ラクト「なんだよ、その非科学的なものはよぉ…」
アリス「余も詳しいことまでは分からんが、どうやらアイツらを操る親玉がいるらしいな。」
…彼らを操る親玉?
ルカ「ごめん、アリス。言ってることがよくわからないんだけど…」
何か、アリスはもう分かったらしいが、僕達は全くと言っていいほど何も理解してないし、状況も飲み込めていない。
詳しく説明して欲しいところだが…
アリス「ふむ…ああ、そうだ。詳しいことは、あの二人に聞いたらどうだ?」
ルカ「……あっ!」
あの二人とは、ジョージとマモルのことだ。
急な襲撃ですっかり忘れていた。
二人に何があったのかを聞けば、何か分かるかもしれない。
といっても、彼らは瀕死の重傷だ。
今は、彼らの回復を待たなければ……
チリ「ごめん、みんな!私、先に行く!」
そう言って、一足先に村に戻っていった。
回復なら、チリが得意な事だ。
ここはチリに任せよう。
ひとまず、戦闘は終わったという事にしてもいいだろう。
リンドウは人の姿に戻っていたわけだし、これ以上増援が来るような様子も見られない。
地面に倒れたままのカムロウに、ラクト、パヲラ、リンドウが集まっていた。
ラクト「あー…カムロウ、動けるか?」
カムロウ「いや、全く。全身筋肉痛みたいだ……」
カムロウは体を動かそうと必死そうだが、腕がプルプルと振るえるだけだ。
やっぱり、反動によるものなのだろうか。
パヲラ「大丈夫よ~ん、あたしか背負っていくからね~い。」
くねくねしながらパヲラはそう言った。
ラクト「うわ、気持ちワリィ。」
パヲラ「そういや、アンタ。さっき私の踊りを気持ち悪いって言ってたわよね。聞こえてたわよ。」
ラクト「いや、言ってないぜ。」
ルカ「言ってたよ。」
ラクト「ルカ!てめぇ!!」
リンドウ「ドラゴンに変身した反動だね。しばらくしたら、動けるようになるよ。」
カムロウ「…あれ、なんでリンドウは大丈夫なんだよ?ドラゴンになっても喋れるし…」
確かにその通りだ。さっきまでドラゴンに変身していたリンドウは普通に喋っていたし、変身した後もカムロウとは違い、なんともなさそうなのである。
リンドウ「私は小さい頃からドラゴンに変身できるから慣れてるけど、カムロウは最近になってドラゴンに変身できるようになったでしょ?だから、
リンドウ「今のカムロウの身体じゃ、ドラゴンに変身できる時間も限られてるし、さっきので活動限界だったんだと思う。」
カムロウ「…それさ。」
カムロウ「早く言ってよ……」
リンドウ「……ごめん。」
ハーレー「そういえばだが…お前のそれは、自分で作ったのか?」
ハーレーはラクトの持つ銃を見ながらそう言った。
ラクト「ん?あぁ、そうだぜ。何か、気になることでもあんのか?」
ラクトは魔導銃を見えやすいように出した。
ハーレー「いや、似たような物を使う知り合いがいてな。」
ラクト「ほーん。」
ハーレー「話が逸れたな。村に戻ろう。」
そう言いながら、ハーレーは去っていった。
もう襲撃もない。ここに長居は無用のはずだ。
これ以上残っても、ただ時間を潰してしまうだけだろう。
早く村に戻って、何か異常がないか確認しないと…
こうして、謎の敵と交戦し終えた僕達は、村に戻っていった__