もんむす・くえすと! 勇者ルカと仲間たち   作:J・チェプナクル

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第48話 二人の旅の目的

あの襲撃の後、特にコロポ村には大きな被害はなかった。

あったとすれば、ボロボロだった村の門がまた壊れてしまったことだった。

これで三度目だと村の人たちは怒っていた。

二回目は僕が壊してしまったようなものだし……

結局、襲撃してきた彼らが一体何者なのか、何が目的だったのか、最後に見た炎の玉は何だったのか。全部分からず仕舞いだった。

恐らく、事の全てを知っているのは、傷だらけになったジョージとマモルの二人だ。

二人の意識が戻るまで、僕達は時間を潰して待った__

 

__夕方。

僕とカムロウとラクトは、広い空き地にいた。

そして、カムロウはドラゴンの姿に変身している。

重症のジョージとマモルの回復を待っている間、僕は、あることを試そうとしていた。

ルカ「行くぞ!カムロウ!」

カムロウは頷いた。

僕は剣を構え、カムロウに斬りかかった!

ルカ「はあああああ!!!」

カンッ!!

ルカ「硬った!?」

ちょうど、首辺りだろうか。

そのあたりに剣を当てたが、鱗が硬すぎて、剣が弾かれてしまった。

ルカ「え、えいっ!えい!!か、硬いっ!」

何度も剣を突き刺す。

しかし、硬い鱗に剣が刺さることはなかった。

キンッ!キンッ!!グギッ!!!

ルカ「手、捻った!」

ラクト「大丈夫かよ……」

力を入れ過ぎて、手を捻ってしまった……

アリス「なんだ。憧れの勇者とドラゴンの一騎打ちとやらをしているのか。いや、へっぽこニセ勇者の自作自演、マッチポンプ一騎打ちと言うべきか。」

ラクト「いや、どういう言葉だよそれ……」

アリスはまた、現れるなり暴言を吐いてきた。

ルカ「違うよ。万が一、カムロウが暴走した時に、この剣で止めれるか試そうと……」

堕剣エンジェルハイロウは、斬った相手を封印する効果を持つ。

ということは、これでドラゴンに変身したカムロウを無力化できるのでは?

そう思って試そうとしていたのだが……

さっきの通り、カムロウのドラゴンの体に、傷一つ付ける事すら出来なかった。

アリス「ふん。ドラゴンとはどういう生物か。イリアスベルクで、あれほど熱心に語っていたではないか。」

ドラゴンとは、荒ぶる牙と爪はいかなる武器より鋭利で、紅蓮の炎は全てを焼き尽くし、その鱗は堅固な装甲と同じ……

つまり、ドラゴンの体は、鉄の塊、同然だ。

アリス「今の貴様では、ドラゴンに成ったカムロウを止めることすら出来んな。特にその非力な腕力ではな。」

ルカ「うぅ……」

ラクト「心を刺すなぁ……」

僕でも、鉄の塊を斬れるほどの技量を持っていない。

そうなれば、カムロウが暴走してしまったら、止める手段なんてない。

ルカ「なぁ、アリス。堕剣エンジェルハイロウは、鉄も斬れたりしないのか?」

アリス「それは、貴様の技量の問題だろう。仮にその剣が、斬鉄剣の類だとしても、今の貴様の腕力では、その剣を十分に扱いきれないだろうな。」

ルカ「まぁ、そうだよな…」

ラクト「……俺は、その剣が鉄をぶった斬れるようには見えねぇんだが…」

…確かに、こんな不気味な形をした剣が鉄を斬れたら、もはや化け物の剣としか思えない。

アリス「その動きに風を宿し、その身に土を宿し、その心に水を宿し、その技に火を宿す。せいぜい、これを体得しなければ、止める事すら出来ず、成す術なく消し炭になるだろうな。」

ルカ「ああ、そのことか…」

確か、イリアス大陸の秘宝の洞窟に行く前の野営。

その時の鍛錬でアリスが言った、禅問答みたいな言葉だ。

ルカ「もしも、僕がその言葉通りの動きが出来るようになるとしたら…一体どれくらい年月を費やすことになるんだろうな……」

そう落ち込んでいると、カムロウはボンッと弾けるように、人の姿に戻った。

カムロウ「あっ、時間切れだ。」

そして、ゴロゴロと地面に転がる。

例のごとく、変身の反動で身体を動かせないようだ。

カムロウ「う゛あ゛あ゛あ゛動゛け゛な゛い゛い゛い゛」

身体をプルプルと震わせながら、切ない声で叫んだ。

ラクト「おっし、運ぶぞー」

倒れたままのカムロウはラクトの背中に背負われる。

ちなみに、ラクトはカムロウを運んでもらうためだけに呼んだ。

ラクト「んで?俺たちに、なんか用でもあんのか?」

アリス「あぁ。あの侍と陰陽師が、気が付いたそうだぞ。」

カムロウ「それって、本当ですか!?」

アリス「そうじゃなければ、わざわざお前らを呼びに来たりはせん。」

ラクト「そうはそうだな。なんか言われたのか?」

確かにそうだ。アリスが呼びに行くといった雑用をするとは思えない。

すると、アリスは不敵に笑い始めた。

アリス「くくく…お前らを呼び出しに行けば、天ぷらを食べさせてもらえると約束したからな……」

ルカ「なるほど、言いくるめられたな。」

…なぜこいつは、食べ物のことになるとこんなに意地汚い奴になるんだ?

ともかく、吉報を聞いた僕達は、急いでジョージ達がいる宿舎に向かった。

 

 

__コロポ村、宿舎。

その一室を借りて、ジョージとマモルはベッドに横たわっていた。

ジョージとマモルは、至る箇所に包帯のぐるぐる巻きといった治療の痕がある。

その部屋には、パヲラとチリもいた。

カムロウ「良かった…二人とも、気が付いて良かった…」

パヲラ「ジョージとマモルちゃんが気が付いて良かったわぁぁぁん!!!」

ラクト「うるせぇ!」

パヲラは目から涙を滝のようにドバドバと流し、大号泣していた。

こっちに気が付いたジョージとマモルは、上半身を起こした。

ジョージ「おぉ!勇者殿!またも御恩を、かたじけな…イタタタタタ。」

マモル「いやぁ、また勇者様にご恩を…ありがとうござ…イタタタタタ。」

ジョージとマモルは無理に土下座をしようとした。

ラクト「いいって!無理すんなよ!」

ルカ「無理しなくていいですよ!安静にしていてください!」

慌てて二人の土下座を中断させる。

感謝してもらうのは嬉しいことだが、こうも無理をしてでもお礼を言われるとと、こっちも申し訳ない気持ちになってしまう。

ルカ「あの…怪我は大丈夫なんですか?」

この質問はチリが答えてくれた。

チリ「ある程度までは回復魔法で回復させた。後は自然治癒で回復させるの。無理に回復させると、体力消耗させちゃうから。」

ルカ「そうなのか。」

とにかく、無事のようだ。本当に良かった……

そうしていると、アリスは部屋を出ようとしていた。

ルカ「ん?アリス、どこに行くんだ?」

アリス「用は済んだ。余は天ぷらを食べに行く。」

パヲラ「あら、そういえばそういう約束だったわねぃ。」

ラクト「その約束したのお前か!」

パヲラ「今、村の人に作って貰ってるわよん。カボチャとキノコとちくわでいいかしらん?」

アリス「うむ、それで十分だ。ではすぐに行くとしよう。」

 

バタンッと、扉が閉まった。

あいつ、本当に食べに行ったのか……?

まぁ、あいつのことはどうでもいい。

今は、ジョージとマモルの二人に聞くことがある。

ルカ「それで、あの…お二人に一体、何があったんですか?」

ジョージ「あ、いや、そのことでござるが……」

マモル「あぁ、それはですねぇ……」

二人は言葉を濁した。

ジョージ「うむ……うーむ……うむむむむむ……」

マモル「……………」

カムロウ「……もしかして、言いづらいことなんじゃ?」

まっずい、地雷を踏んだか?

ルカ「あ、いや…言いづらい事なら無理に話さなくても大丈夫ですよ?」

ラクト「そ、そうだぜ?誰しも、人に話したくないことぐらいあるよな!1つや2つぐらい!な!」

チリ「そ、そうですよ!ね!」

そう言っても、二人は真剣な表情をして悩み始めた。

…まっずい、本当に地雷を踏んだか?

ジョージ「……勇者殿であれば、話しても良いでござるか。」

マモル「いいんじゃないですかぁ?ご恩もありますしぃ。」

ラクト「良いのかよそれで!?」

おいおい…本当に良いのか?

パヲラ「……良いのかしら、ジョージちゃん。」

ジョージ「無論でござる。パヲラ殿や勇者殿は信用できるでござる。」

 

マモル「さて、事の真相を話す前になんですがぁ…先にアッシらの()()について話さないとですねぇ。」

ルカ「過去、ですか…?」

…あの襲撃と関係のあることなのか?

マモルは懐から、一枚の紙を出した。右目に傷のある男の人の似顔絵が書いてある。

マモル「()()の、覚えていますでしょうかぁ?」

ルカ「あぁ、それのことなら……」

覚えている。イリアスベルクで見せてきた、面相書きだ。

マモル「アッシら…この男に()()がありましてねぇ。」

カムロウ「う、恨み!?」

マモル「えぇ、えぇ、そうですぅ。…それも、死をもって償うほどの。」

マモルはニヤニヤした表情を変えなかったものの、その言葉に、確かに怒りを感じた。

マモル「この男の名は…イズク。」

ジョージ「…ひと時も忘れたことはない……!」

隣にいたジョージは、わなわなと震えていた。

理由は表情で分かった。鬼のような形相をしていた。怒りで震えているのだ。感情の昂りによるものなのか、その眼には涙を浮かべていた。

パヲラ「ジョージちゃん…やっぱり、無理に話さなくても…」

ジョージ「構わん!このことは、パヲラ殿にも聞いてほしいのだ…!」

チリ「でも…身体に障りますよ?」

ルカ「…良いんだ、チリ。二人の話を聞こう。」

…二人が話す過去というのは、聞かなければいけない気がした。

僕達は、黙って聞くことにした。

ジョージ「忘れもせん…この男は……!!」

 

ジョージ「拙者たちの友を…殺した男……!!!」

 

カムロウ「えっ…!?」

ラクト「ぅぇっ…!?」

ルカ「友人を…!?」

マモル「そうですよぉ、この男は…アッシらの友人を、ましてはその一族諸共、無残に殺したんですよぉ…!!!」

その言葉が出たあと、辺りは静まり返った。

衝撃的だった。

マモルの気さくな表情、ジョージの威風堂々の佇まいからは考えられないほどだからだ。

ジョージ「あの日から…拙者らは…!友の敵討ちのために…!!」

ジョージ「この男を探し、旅を続けてきた!!!」

 

__そして、ジョージとマモルは、自分達の旅の目的のその発端となった事件を話し始めた。

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