もんむす・くえすと! 勇者ルカと仲間たち 作:J・チェプナクル
あの襲撃の後、特にコロポ村には大きな被害はなかった。
あったとすれば、ボロボロだった村の門がまた壊れてしまったことだった。
これで三度目だと村の人たちは怒っていた。
二回目は僕が壊してしまったようなものだし……
結局、襲撃してきた彼らが一体何者なのか、何が目的だったのか、最後に見た炎の玉は何だったのか。全部分からず仕舞いだった。
恐らく、事の全てを知っているのは、傷だらけになったジョージとマモルの二人だ。
二人の意識が戻るまで、僕達は時間を潰して待った__
__夕方。
僕とカムロウとラクトは、広い空き地にいた。
そして、カムロウはドラゴンの姿に変身している。
重症のジョージとマモルの回復を待っている間、僕は、あることを試そうとしていた。
ルカ「行くぞ!カムロウ!」
カムロウは頷いた。
僕は剣を構え、カムロウに斬りかかった!
ルカ「はあああああ!!!」
カンッ!!
ルカ「硬った!?」
ちょうど、首辺りだろうか。
そのあたりに剣を当てたが、鱗が硬すぎて、剣が弾かれてしまった。
ルカ「え、えいっ!えい!!か、硬いっ!」
何度も剣を突き刺す。
しかし、硬い鱗に剣が刺さることはなかった。
キンッ!キンッ!!グギッ!!!
ルカ「手、捻った!」
ラクト「大丈夫かよ……」
力を入れ過ぎて、手を捻ってしまった……
アリス「なんだ。憧れの勇者とドラゴンの一騎打ちとやらをしているのか。いや、へっぽこニセ勇者の自作自演、マッチポンプ一騎打ちと言うべきか。」
ラクト「いや、どういう言葉だよそれ……」
アリスはまた、現れるなり暴言を吐いてきた。
ルカ「違うよ。万が一、カムロウが暴走した時に、この剣で止めれるか試そうと……」
堕剣エンジェルハイロウは、斬った相手を封印する効果を持つ。
ということは、これでドラゴンに変身したカムロウを無力化できるのでは?
そう思って試そうとしていたのだが……
さっきの通り、カムロウのドラゴンの体に、傷一つ付ける事すら出来なかった。
アリス「ふん。ドラゴンとはどういう生物か。イリアスベルクで、あれほど熱心に語っていたではないか。」
ドラゴンとは、荒ぶる牙と爪はいかなる武器より鋭利で、紅蓮の炎は全てを焼き尽くし、その鱗は堅固な装甲と同じ……
つまり、ドラゴンの体は、鉄の塊、同然だ。
アリス「今の貴様では、ドラゴンに成ったカムロウを止めることすら出来んな。特にその非力な腕力ではな。」
ルカ「うぅ……」
ラクト「心を刺すなぁ……」
僕でも、鉄の塊を斬れるほどの技量を持っていない。
そうなれば、カムロウが暴走してしまったら、止める手段なんてない。
ルカ「なぁ、アリス。堕剣エンジェルハイロウは、鉄も斬れたりしないのか?」
アリス「それは、貴様の技量の問題だろう。仮にその剣が、斬鉄剣の類だとしても、今の貴様の腕力では、その剣を十分に扱いきれないだろうな。」
ルカ「まぁ、そうだよな…」
ラクト「……俺は、その剣が鉄をぶった斬れるようには見えねぇんだが…」
…確かに、こんな不気味な形をした剣が鉄を斬れたら、もはや化け物の剣としか思えない。
アリス「その動きに風を宿し、その身に土を宿し、その心に水を宿し、その技に火を宿す。せいぜい、これを体得しなければ、止める事すら出来ず、成す術なく消し炭になるだろうな。」
ルカ「ああ、そのことか…」
確か、イリアス大陸の秘宝の洞窟に行く前の野営。
その時の鍛錬でアリスが言った、禅問答みたいな言葉だ。
ルカ「もしも、僕がその言葉通りの動きが出来るようになるとしたら…一体どれくらい年月を費やすことになるんだろうな……」
そう落ち込んでいると、カムロウはボンッと弾けるように、人の姿に戻った。
カムロウ「あっ、時間切れだ。」
そして、ゴロゴロと地面に転がる。
例のごとく、変身の反動で身体を動かせないようだ。
カムロウ「う゛あ゛あ゛あ゛動゛け゛な゛い゛い゛い゛」
身体をプルプルと震わせながら、切ない声で叫んだ。
ラクト「おっし、運ぶぞー」
倒れたままのカムロウはラクトの背中に背負われる。
ちなみに、ラクトはカムロウを運んでもらうためだけに呼んだ。
ラクト「んで?俺たちに、なんか用でもあんのか?」
アリス「あぁ。あの侍と陰陽師が、気が付いたそうだぞ。」
カムロウ「それって、本当ですか!?」
アリス「そうじゃなければ、わざわざお前らを呼びに来たりはせん。」
ラクト「そうはそうだな。なんか言われたのか?」
確かにそうだ。アリスが呼びに行くといった雑用をするとは思えない。
すると、アリスは不敵に笑い始めた。
アリス「くくく…お前らを呼び出しに行けば、天ぷらを食べさせてもらえると約束したからな……」
ルカ「なるほど、言いくるめられたな。」
…なぜこいつは、食べ物のことになるとこんなに意地汚い奴になるんだ?
ともかく、吉報を聞いた僕達は、急いでジョージ達がいる宿舎に向かった。
__コロポ村、宿舎。
その一室を借りて、ジョージとマモルはベッドに横たわっていた。
ジョージとマモルは、至る箇所に包帯のぐるぐる巻きといった治療の痕がある。
その部屋には、パヲラとチリもいた。
カムロウ「良かった…二人とも、気が付いて良かった…」
パヲラ「ジョージとマモルちゃんが気が付いて良かったわぁぁぁん!!!」
ラクト「うるせぇ!」
パヲラは目から涙を滝のようにドバドバと流し、大号泣していた。
こっちに気が付いたジョージとマモルは、上半身を起こした。
ジョージ「おぉ!勇者殿!またも御恩を、かたじけな…イタタタタタ。」
マモル「いやぁ、また勇者様にご恩を…ありがとうござ…イタタタタタ。」
ジョージとマモルは無理に土下座をしようとした。
ラクト「いいって!無理すんなよ!」
ルカ「無理しなくていいですよ!安静にしていてください!」
慌てて二人の土下座を中断させる。
感謝してもらうのは嬉しいことだが、こうも無理をしてでもお礼を言われるとと、こっちも申し訳ない気持ちになってしまう。
ルカ「あの…怪我は大丈夫なんですか?」
この質問はチリが答えてくれた。
チリ「ある程度までは回復魔法で回復させた。後は自然治癒で回復させるの。無理に回復させると、体力消耗させちゃうから。」
ルカ「そうなのか。」
とにかく、無事のようだ。本当に良かった……
そうしていると、アリスは部屋を出ようとしていた。
ルカ「ん?アリス、どこに行くんだ?」
アリス「用は済んだ。余は天ぷらを食べに行く。」
パヲラ「あら、そういえばそういう約束だったわねぃ。」
ラクト「その約束したのお前か!」
パヲラ「今、村の人に作って貰ってるわよん。カボチャとキノコとちくわでいいかしらん?」
アリス「うむ、それで十分だ。ではすぐに行くとしよう。」
バタンッと、扉が閉まった。
あいつ、本当に食べに行ったのか……?
まぁ、あいつのことはどうでもいい。
今は、ジョージとマモルの二人に聞くことがある。
ルカ「それで、あの…お二人に一体、何があったんですか?」
ジョージ「あ、いや、そのことでござるが……」
マモル「あぁ、それはですねぇ……」
二人は言葉を濁した。
ジョージ「うむ……うーむ……うむむむむむ……」
マモル「……………」
カムロウ「……もしかして、言いづらいことなんじゃ?」
まっずい、地雷を踏んだか?
ルカ「あ、いや…言いづらい事なら無理に話さなくても大丈夫ですよ?」
ラクト「そ、そうだぜ?誰しも、人に話したくないことぐらいあるよな!1つや2つぐらい!な!」
チリ「そ、そうですよ!ね!」
そう言っても、二人は真剣な表情をして悩み始めた。
…まっずい、本当に地雷を踏んだか?
ジョージ「……勇者殿であれば、話しても良いでござるか。」
マモル「いいんじゃないですかぁ?ご恩もありますしぃ。」
ラクト「良いのかよそれで!?」
おいおい…本当に良いのか?
パヲラ「……良いのかしら、ジョージちゃん。」
ジョージ「無論でござる。パヲラ殿や勇者殿は信用できるでござる。」
マモル「さて、事の真相を話す前になんですがぁ…先にアッシらの
ルカ「過去、ですか…?」
…あの襲撃と関係のあることなのか?
マモルは懐から、一枚の紙を出した。右目に傷のある男の人の似顔絵が書いてある。
マモル「
ルカ「あぁ、それのことなら……」
覚えている。イリアスベルクで見せてきた、面相書きだ。
マモル「アッシら…この男に
カムロウ「う、恨み!?」
マモル「えぇ、えぇ、そうですぅ。…それも、死をもって償うほどの。」
マモルはニヤニヤした表情を変えなかったものの、その言葉に、確かに怒りを感じた。
マモル「この男の名は…イズク。」
ジョージ「…ひと時も忘れたことはない……!」
隣にいたジョージは、わなわなと震えていた。
理由は表情で分かった。鬼のような形相をしていた。怒りで震えているのだ。感情の昂りによるものなのか、その眼には涙を浮かべていた。
パヲラ「ジョージちゃん…やっぱり、無理に話さなくても…」
ジョージ「構わん!このことは、パヲラ殿にも聞いてほしいのだ…!」
チリ「でも…身体に障りますよ?」
ルカ「…良いんだ、チリ。二人の話を聞こう。」
…二人が話す過去というのは、聞かなければいけない気がした。
僕達は、黙って聞くことにした。
ジョージ「忘れもせん…この男は……!!」
ジョージ「拙者たちの友を…殺した男……!!!」
カムロウ「えっ…!?」
ラクト「ぅぇっ…!?」
ルカ「友人を…!?」
マモル「そうですよぉ、この男は…アッシらの友人を、ましてはその一族諸共、無残に殺したんですよぉ…!!!」
その言葉が出たあと、辺りは静まり返った。
衝撃的だった。
マモルの気さくな表情、ジョージの威風堂々の佇まいからは考えられないほどだからだ。
ジョージ「あの日から…拙者らは…!友の敵討ちのために…!!」
ジョージ「この男を探し、旅を続けてきた!!!」
__そして、ジョージとマモルは、自分達の旅の目的のその発端となった事件を話し始めた。