もんむす・くえすと! 勇者ルカと仲間たち 作:J・チェプナクル
セントラ大陸北東部にあるヤマタイ地方。
ジョージとマモルは、そこで生まれ育った。
__今より、数ヶ月前。
まだ霧残る早朝。ジョージは家の庭で竹棒を持って素振りをしていた。
ジョージ「147…148…149…」
上半身は何も着ず、鍛え上げられた筋肉と流れる汗が露出していた。
マモル「おぉ、おぉ、朝からご苦労なこったぁ。」
ふとすると、家の塀である石垣の上に、マモルが座っていた。
ジョージ「お、マモルでござるか。何をしているのだ?」
マモルはめんどくさそうな顔をしながら答えた。
マモル「家の雑用ぉ。」
ジョージ「お主もご苦労でござるな。」
???「__よぉ。」
後ろから、自分に対してであろう呼び掛けが聞こえた。
ジョージは振り返らずに、その声の主の名前を言った。
ジョージ「…ショウトか?」
ショウト「ご名答♪ご名答♪…大当たり♪俺だ。」
視界に、手にサイコロを持ち、ニヤニヤした青年が映り込む。
彼がショウトだ。彼は、ジョージとマモルの友人である。
ジョージとは小さい頃からの親友同士、マモルとは家の関係で幼馴染の関係だ。
マモル「何だお前さんか…」
ショウト「何だはないだろ、何だは。」
普通に考えれば、振り返ればわざわざ聞く手間も省けると思うだろう。
だが、そういうわけにはいかない。
ショウトが後ろから呼び掛けてきた時は絶対に振り返らない。
昔からそういう決まりだ。ショウトがそうしろと言ってきた。
__突然、突風が吹き、ショウトの顔面に風呂桶が飛んで来た。
ショウト「ぐはっ!!」
一つだけでは止まらず、次々となだれ込むように、風呂桶が飛んでくる。
ショウト「ぶれっ!おぶっ!いあっ!」
…ショウトは風呂桶の山に埋もれた。
ジョージ「…お主、今度は何の賭け事に、祟りの力を使った?」
ショウト「今日は、チンチロ…」
マモル「はははっ!お前さん、また使ったのかぃ。」
ショウトの一族は、呪術を扱いに長けた一族である。
祟りといっても、大体は占いといったことにしか使っていない。
人を呪い殺すことも出来るらしいが、一族のご法度だそうだ。
…しかし、こいつは大の賭け事好きで、いつもその祟りの力を賭け事に利用している。
賭け事の結果を予想して、大儲けしたり大暴落したり…そんなことに使っている。
なので、祟りの代償で毎回会うたびに、何かしら痛い目にあっている。
ジョージ「どうだ?二人も一緒に鍛錬でも…」
マモル「悪ぃ、雑用が込み合ってんだぁ。さっさと終わらせねぇと大目玉くらっちまうんだ。」
ショウト「俺はまだ博打が……」
ジョージ「む、そうでござるか…」
マモル「ごめんなぁ?埋め合わせはするからよぉ。」
ショウト「あぁ、また誘ってくれよ。」
ジョージ「うむ、二人も頑張るでござる。」
三人は解散し、それぞれのルーティン、いつも通りの日常に戻る。
こんな風に彼らはいつもと変わらぬ日々を過ごしていた。
__ある日。
ちょうど、昼頃。
三人は、川のほとりに集まっていた。
川の水面は陽の光に照らされ、光は川の流れで乱れながら反射を繰り返している。
三人は自然と集まったのではなく、
ジョージとマモルは、ショウトに呼ばれて集まった。
ジョージ「それで…何の用でござるか?」
マモル「そうだよ。こんなところに集まってさぁ。」
ショウト「あぁ、それはな……」
ショウト「俺の祟りの力…教わって欲しいんだ。」
マモル「…はぁ?」
ジョージ「……祟術を教わって欲しい?」
いきなりで、予想外のことだったので、ジョージは同じことを聞き返した。
ショウト「そうだ。俺の祟術、覚えてくれ。」
ジョージとマモルは、一度互いに顔を合わせた。
こいつは何を言っているんだ?そんな反応だ。
ショウトの一族が扱う祟術は口外無用の秘術。
他人に教えるなど、やってはいけない行為だ。
それなのに、この男は、その秘術を覚えて欲しいと言ってきたのだ。
マモル「覚えるのは構わねぇけど…いいのか?門外不出の秘術を教えちまってさぁ?バレたらまずいんじゃないぃ?」
ショウト「あー、お前にも教えるから共犯だぞ。」
マモル「はははっ!相変わらず、ずる賢い男だなぁお前さんは。」
ジョージ「しかし、急だな…どういう風の吹きまわしでござる?」
ショウト「ま、教えると次の博打で勝てるって占いなんだ。」
ジョージ「なんだそれは……いや、今に始まったことではないが………」
彼らにとってはいつもの事だった。
ショウトは賭け事に必ず勝つために、突拍子もないことを始める。
この前は、腹を壊すまでかき氷を大量に平らげたり、一日中、日陰の中だけを移動したりなど、傍から見れば奇妙かつ変人的な行動をいつもしている。
たまにその奇怪な行動に、巻き込まれることもある。
全部、占いで出た内容通りに行っていると本人は言っているが……
ジョージ「しかし、いくらお主の占いの結果とはいえ、それは冗談にならないぞ?もし、拙者達が覚えたことが知れ渡れば、タダでは済まないはずでござるぞ。」
ショウト「知った事か!俺は勝ちてぇ。」
マモル「いやいや…お前さん、本当にそれでいいのか……」
ショウト「お前らが言わなきゃいいだけの話だろ?それともお前らは、俺に負けて欲しいってのか!?」
ジョージ「別に…」
マモル「関係ないし……」
二人は興味のない返しをした。
ショウト「おいっ。」
ショウト「いいから覚えろ!?呪うぞ!?」
なんと、ショウトはいきなり脅してきた!
マモル「おいおい!お前さんが言うと洒落にならないんだよぉ!」
ショウト「いいか?まず祟術ってのは……」
ジョージ「拙者らの言い分も聞いて欲しいでござる……」
…二人はしぶしぶ、ショウトから祟術を習った__
__その日の夕方。
マモルはすでに祟術を教わり終え、大きな岩の上で寝っ転がりながら、ジョージが祟術を教わっているのを見ていた。
ジョージは赤黒く滲んだ右腕を、足元に置いた小さめの岩に向かって振り下ろしていた。
ショウトから教わった祟術の一つで、筋力を強化する術らしい。
ジョージ「ぬん!」
すると、岩はひび割れ、真っ二つに、ぱっくり割れた。
ジョージ「むぅ…こうでござるか?」
ジョージは叩いた痛みで右腕をぶらぶらさせながら、出来栄えをショウトに聞いた。
ショウト「んー、まぁ、そんなもんだろ。十分、十分!」
ジョージ「十分って……」
マモル「いや、お前さんが、無理矢理脅して教えたんだろうがよぉ。」
ジョージ「しかし…」
足元の岩だったものの残骸に目をやる。
ジョージ「祟術…恐ろしい術だ……常人では壊すことなど困難であろう岩が、たった一発で割れたぞ。」
ショウト「今の
ジョージ「うむ…まず、使うことがあるかどうかすら怪しいが。それで…もう教えることはないでござるな?」
ショウト「あぁ。もう終わり…」
すると、ショウトはハッとした顔をした。
ショウト「ん!?ちょっと待った!忘れるとこだった。」
慌ててショウトは、手指で印を結び始めた。
ジョージ「…何をしているでござるか?」
ショウト「おまじない。」
ジョージ「おまじない?それもやっておかないと、勝てないのでござるか?」
ショウト「ま、そんなところさ。」
そう言いながら、ショウトはマモルに何枚かの紙を差し出した。
ショウト「あとこれも。」
マモル「んぁ?紙切れぇ?」
ショウト「今、読むなよ?今日じゃない日に読め。」
マモル「その約束、守らないとどうなるんだぁ?」
ショウト「俺の有金が化ける。」
マモル「はははっ!そりゃあ怖えな!分かった、守っとくよぉ。」
マモル「ちなみに、何が書いてあるんだぁ?」
ショウト「そうだなぁ。指南書?」
ジョージ「何のでござるか…」
ふと、マモルは空を見上げた。西の空が夕色に染まりつつある。
もうすぐ、日没に近い時間だ。
マモル「おっと…アッシはもう帰るぜぇ。あんまり遅いと、雷が落ちるからなぁ。」
ショウト「じゃあ、お開きにするとしますか。もう用は済んだからな。」
三人は川原から離れ、村に向かって歩き始めた。
その途中、それぞれが自分の家に向かうであろう分かれ道の途中で、ショウトが二人を呼び止めた。
ショウト「なぁ、お前ら。」
マモル「んん?」
ジョージ「何でござるか?」
ショウト「…………………」
ショウトは少し黙り込んでから、首を振って言葉を繋げた。
ショウト「…いや、何でもねぇ。またな。」
ジョージとマモルはさっきのように、お互いに顔を合わせた。
今日のショウトはどこか変だ。いつものことだが。
マモル「じゃ、そんじゃあな。」
ジョージ「では、また明日。」
二人は特に気に留めず、帰路に就いた。
ショウト「あぁ…じゃあな。」
こうして三人は、それぞれの帰り道を辿った。
__その日の夜。ジョージの家。
日は沈み、あたりは冥色、青く薄暗い空に染まっている。
ジョージの家は、藁の屋根、土の壁で出来た農家の家だ。
そしてジョージは、囲炉裏を前にあぐらをかいて座り、揺らめく火を眺めながら、今日のショウトの行動について思い詰めていた。
ジョージ「(なんというか…変だったな……)」
ショウトは普段から、賭け事で勝つために、占いで吉と出た行動を必ず行う人間だ。
しかし、いくら奇怪な行動をする人間であっても、一線を越えることはなかった。
それなのに、今日、彼は一線を越えた行動をした。
一族の禁止事項を破ったのだ。
…なぜ、そんなことをしたのだろうか?
変な胸騒ぎがして、気が気でなかった。落ち着かない。
……そんなときだった。遠くから走ってくるような足音が聞こえた。
???「ジョージ!起きてるか!?」
外から、急かすように自分を呼ぶ声が聞こえた。
表に出てみると、なんと、マモルがいた。
錫杖を持ち、荒い息を、肩を揺らしながら吐いている。
ジョージ「マモル!?どうした!?」
マモル「今から、ショウトのところに一緒に来てくれぇ!様子がおかしい!」
ジョージ「!? 何事だ!?」
マモル「ショウトの奴らが定例会に来ねぇんだよぉ!!!」
定例会というのは、マモルの一族とショウトの一族が、週に一度行っている会議だ。
しかし、その定例会に来ないというのだ。
ジョージ「ショウトが定例会に来ないとは、一体どういうことだ!?」
マモル「ショウトどころか、アイツの一族、全員来てねぇんだぁ!いつまで経っても、来る気配が全くねぇ!」
ジョージ「電報式神は!?」
電報式神、主に文の伝達で使用される式神。
マモル「もう送った!でもなんも反応もねぇもんだから、こっちも大騒ぎでよぉ!」
なんということだ…嫌な予感が的中してしまった。
ジョージは急いで天井に置いてある槍を取り出し、下駄を履いて駆け出した!
__道中。
夜空に浮かぶ月は雲に隠れている。
風が吹き、木の葉が揺れ、ざわめいている。
そんな中、ジョージとマモルは暗い夜道を全力で駆けていた。
マモル「なんかさぁ、今日の
ジョージ「分からぬ…だが、今は一刻も早く、ショウトの元に急ぐぞ!」
拭えぬ焦燥感に駆られながらも、二人はショウトの家に向かっていった。
__ショウトの家。
彼の家は屋敷であり、広い敷地に、立派な家がいくつか建っている。
普段はショウトの家族や下働きで賑わっているのだが……
不自然に、静まり返っていた。
何より目に付いた物は……
ジョージ「なんだ…これは……!?」
マモル「何が…どうなってるんだ…こりゃぁ…!?」
何体もの血まみれの死体だ。
砂利引きの地面が、何体もの死体から流れた血の水たまりで赤く染まり、夜空の雲の隙間から漏れた月光が反射している。
惨劇。
その単語が一番当てはまるような光景だ。
マモル「おい、これ…!」
そう言われてよく見ると、垂れた血の跡のようなものが線のように続いてある。
それを辿っていくと…屋敷の裏に広がっている森林、二人は、そこに続いている道の方に視線を移した。
ジョージ「社か…!」
ショウトの屋敷の裏、その森の中に社がある。
その社には、ショウトの一族が代々受け継がれてきた呪具が封印されているという。
どういう目的なのかはわからないが、この惨劇を巻き起こした張本人は、おそらくそこに向かっている。いや、もうすでに着いてしまっているのかもしれない。
二人は、道を辿り、暗い森の奥にある社に向かった。
__社。
分厚い雲に覆われた月から明りが消え、より一層薄暗い森の中に、古びた社が建っている。
そして、微かに刀と刀がぶつかり合う音が聞こえる。
なぜ、そんな音が聞こえるのかは、ジョージとマモルが着いた時に分かった。
ショウトが刀を持って、何者かと交戦していたのだった!
ジョージ「おおお!!!」
ジョージは槍をぶん回し、横槍を入れ、互いに距離を置かせた。
マモル「お前さん、こんなところで何してんだぁ!?」
ショウト「ハァハァ…なんだよ…もう来ちまったのかよ?」
???「んん?誰だ、お前たちは?」
両者、共に武器を構え、睨み合う。
ジョージ「貴様、誰だ…!?」
ジョージは、この村の住民の顔はある程度把握している。しかし、目の前にいる人物は、その中でも知らない顔だった。
ショウト「アイツはイズク…ウチの「出来損ない」だ。何十年か前に追放されたバカなやつだ。お前らも見て来ただろ?俺の一族を皆殺しにしたのも、あの出来損ないがやったことだ!!」
イズク「誰が出来損ないだってぇ!?訂正しろ!!お前らはこれから、そういう口も言えなくなるんだからよぉ!!!」
ショウト「訂正しねぇよ!!祟術を覚えているくらいで、他の奴を見下すような半端者のお前に、お似合いだろうが!!!」
イズク「つべこべうるせぇ奴だなぁ!」
イズクは刀を持った右腕に禍々しいオーラを纏わせ、衝撃波を放ってきた!
マモル「
マモルは式神を展開し、バリアを張って攻撃を防いだ!
イズク「あぁ、めんどくせぇ…!陰陽師の一族もいるのか……!まぁ、そんなことはこれからどうでもよくなるな……」
イズクは左手で持つ何かを見ながら不敵に笑う。
イズク「反魂鏡!ついに…ついにこの俺の手に!ケッケッケ…」
それは古びた柄鏡のようなものだった。
その鏡が何なのか…そう考えていると、不意にショウトが叫んだ。
ショウト「二人共、頼みがある!あの鏡を割るんだ!!あれは
そう言われてあることに気付いた。イズクの後ろにある
そして、あの柄鏡は、社から盗られた物だと。
だとしたら、確かにただの鏡ではない。
恐らく、あれは何らかの呪具で、何かしらの力を秘めているはずだ。
イズクはあれを手に入れるために、ショウトの一族を皆殺しにしたのだ!
ジョージ「なんだと…!!」
それを理解すると、怒りが込みあがってくる。
なぜ、友人の家族が死ななければならなかったのか。
なぜ、そんなことをしたのか。
持っていた槍を、両手でギュウッとさらに握り締めた。
それはマモルも同じだった。普段、温厚な彼が怒りの顔をしているのだ。
こんなことをされて、冷静でいられるはずがない。
ショウト「あれでなにかをしでかそうとしてんだよ…!!あんな奴がやることなんざ、どうせロクでもねぇことだ!!!」
イズク「ロクでもねぇことだと…!?お前は…ますますムカつく奴だなぁ!!お前らはここで、一族ごと全員死ぬんだよ!!!」
イズクはそう言いながら、だんだんと禍々しいオーラを放ち、刀から巨大な斬撃を、ショウトにめがけて放ってきた!
マモル「弐式!」
マモルは式神のバリアを、第二の壁を展開させた!
しかし、バリアはいとも簡単に壊れてしまった!
マモル「!?」
ジョージ「ショウト!」
まずい……!!!
ジョージは咄嗟に、ショウトを庇うよう前に出た!!__
__しかし、そのダメージが、ジョージが受けることはなかった。
ショウト「ぐふっ…!!!」
庇ったはずのショウトが、体に切り傷を残して血を吐いていた。
マモル「はぁ…!?」
ジョージ「な…!?おい、どういうことだ…!?なんでお主が…!?」
ジョージは倒れそうになるショウトを抱き抱えた。
おかしい。たしかにショウトを庇ったはず。
あの攻撃を食らうのは、自分のはず……
ショウト「悪ぃな、嘘ついて……あの時のまじないさ…「身代わりの呪い」なんだよ……」
身代わりの呪い。
対象に施すことで、全てのダメージを肩代わりする呪いだ。
しかし、そのダメージは術者に移る。
たとえ、死に値するダメージであってもだ。
マモル「はぁ……!?なんで…なんでそんなことしたんだよ!!」
ショウト「…ここでお前らが死ぬっていう未来を…知っちまったから……」
……ここで…
ジョージ「お主…!まさか…!!」
その未来を変えるために…!?
日中の行動はそのために…!?
ショウト「それだけは…どうしても変えたかった…だから、こうするしかなかった…!自分が死ぬって、なってでもな…!!!」
そう言い放ったショウトの口から、血が流れる。
目が虚ろになっていき、生気を感じさせなくなっていく。
声がかすれていき、手に持っていた刀が零れ落ちる。
ジョージ「おい…!しっかりしろ!!」
ショウト「ああ、ツいてねぇ…全く、ツいてねぇなぁ…今までの博打のツケなんだろうなぁ…ははっ。」
マモル「んなわけあるかよぉ!!気をしっかり持て!!!」
二人の呼びかけも虚しく、ショウトは弱っていく。
…ショウトは、全く動かなくなった。
今、抱き抱えているのは、物言わぬ骸だ。
行ってしまった。
もはや、二人の声はもう、届かない。
イズク「全く、お前ら一族はバカな奴らだったなぁ!そんなロクでもないことにしか力を使わねぇでさぁ!!安心しろ、俺が
イズクは高笑いした。無我夢中で、世界の中心で叫ぶかのように。
ジョージは、ショウトの身体を地面に置いた。
そして、ショウトの手から落ちた刀を手に持つ。
肺に溜まってある空気を、全部外に出すよう深いため息を吐く。
息を吸い込んだと同時に、刀で両手で握り締め、脚に力を込め、斬りかかる。
悲しみを力に。憎しみを力に。
怒りを、力にして___
ジョージ「___貴様ァァァアアア!!!」
刀を手にしたジョージは上段斬りを放った!!!
___ジョージは、イズクの右腕を斬り落とした!!!
イズク「___は…?」
イズクは、自分の身に起こったことを理解するのに時間が掛かった。
イズク「はあああアアア!?」
理解したと同時に、激痛が走ったのだろうか。
それとも、理解したくないのだろうか。
どちらとも解釈できるような、痛みに悶えるような声で叫んだ。
イズク「お…俺の右腕がアアア!!?」
そんなことを口走っていると、
マモル「__この腐れ野郎がァァァアアア!!!」
マモルは持っていた
イズク「痛ェェェ!み、右目がッ!右目がァァァッ!!」
イズクは慌てて、血が流れる右目を手で抑えた。それでも手の隙間から血が流れる。
マモル「次は左目だ!!!お前は…死を持って償え!!!」
怒りの権化ともいえよう顔をしたジョージとマモルは、目の前の、仇という名の愚か者を討とうと前に出た!
イズク「う、うおおおぉぉぉ!!!」
イズクは咄嗟に、防御するかのように左手に持っていた柄鏡を前に突き出した。
すると、柄鏡から無数の炎の玉が飛び出した!
ジョージ「ぬぅ!?」
マモル「いっ…!?」
炎の玉は爆発し、二人は吹き飛ばされ、後ろの木に激しく叩きつけられる。
イズク「お、おお…流石は反魂鏡…どうにかなるもんだなァ!ひっひっひ…い…今のは咄嗟に出来たことだから、どういう原理かは知らねぇが…じっくり調べて俺の意のままに…ひひひっ。」
イズクは、予想外の出来事に動揺した。
しかし、これを好機と言わんばかりに、斬られた右腕を押さえながら、森の奥に逃げようとする。
ジョージ「ま…待て!」
マモル「逃がすかよぉ…!!」
二人は立ち上がり、追いかけようとする。
イズク「誰が待つか!最後にダメ押しだ!!!くたばれ!!!」
イズクは再び、柄鏡を前に突き出し、炎の玉を放った!
今度はコツを掴んだのか、さっきよりも数も多く、大きくなっていた。
炎の玉は、爆風を巻き起こし、周りの木々を薙ぎ倒しながら二人に迫る!
ジョージ「うおおおおおお!!!」
マモル「うわあああああ!!!」
_______________
____________
________
_____
___
__
_
__数日後。
あの後、ジョージとマモルは、近隣の住民から救出され、命に別状はなかった。
しかし、惨劇を巻き起こしたイズクは、行方をくらました。
逃してしまった。
…ショウトの一族は、分家は数人、瀕死の重傷だったが、かろうじて生き残った。
しかし…ショウト及び、本家の一族は、全滅した。
一夜にして、一人の男によって、滅ぼされた。
…二人は、己の非力さを。自らの無力さを。呪った。
__元ショウト邸。
今では住む人は一人もおらず、立派な屋敷しか残っていない。
その敷地内には、鎮魂碑が建っていた。
先日起きた惨劇の慰霊碑だ。
ジョージは、その慰霊碑を前に立ち尽くしていた。
ジョージ「…………」
どうして、こんなことになってしまったのだろうか。
神が定めた運命なのか。
…どうして、彼が死ななければならなかったのか?
……友人が死ぬ必要があったのか!?
拭えぬ、抗えない、どうしようもない苛立ちが、未だに身体の中で暴れている。
…視線を落とすと、一本の鞘に収まった刀が置いてあった。
ショウトが、最期まで愛用していた刀だ。
ジョージ「…………」
刀の前に立ち、それを手に持つ。
ジョージ「(すまぬ…ショウト…!)」
持ってくぞ…!
___
心に住み着いた鬼は、友人を殺めたあの男を、この手で処すまで出ていかないだろう。
住んでいた家は売り払った。
長らく空けるつもりだ。帰る気はない。
笠を被り、刀を腰に差し、村を出ようと歩き始める。
マモル「__よぉ。」
その道中、石垣の上にマモルが座っていた。
しかし、普段とは違う様子だった。
錫杖を持ち、狩衣を着ていた。
まるで、これからどこかに行くかのような恰好をしていた。
ジョージ「マモル…その恰好はどうした?」
マモル「どうせ行くと思って、先回りしてたのさぁ。
ジョージ「そうは言ってもだな…お主家業はどうするつもりでござるか?」
彼には、家の家業があるはずだ。
そう易々と、長い間、家を空けるなどというのは許されないはずだが……
すると、マモルは笑みを浮かべながらジョージの横に立つ。
マモル「へへへっ、破門だってよ♪」
そう聞いて、ジョージは呆れた。
ジョージ「全く…さては盛大に暴れたな?」
マモルは隠しているつもりだったと思う。しかし、その身体や顔には、殴り合ったかのような傷跡がいくつか見えた。
マモル「まぁまぁ。でも、別にいいじゃないですかぁ?どちらにしても…」
マモル「お前さんもアッシも、
ジョージ「……………」
その会話を機に、二人は村を出た。
この旅であの男を見つけ、この手で殺めるまでは村に戻らないだろう。
いや…もしかすると、戻ることすら出来ないかもしれない。
それでもいい。
このやるせない感情が、晴れるのならば。
ジョージ「なぁ、マモル……」
マモル「…なんだぃ?」
ジョージ「…お腹が空いたでござる。」
マモル「……お前さん、アッシがいなかったら、どうするつもりだったんでぃ?」
__そして、時は現代へと回帰する!!!