もんむす・くえすと! 勇者ルカと仲間たち 作:J・チェプナクル
___時は回帰し、夕方のコロポ村。
部屋は薄暗い橙色の光で照らされている中、
ジョージとマモル。暗い顔をした二人の、過去の話が終わった。
ジョージ「今、話したので全て……」
いつの間にか、アリスが横で天ぷらうどんを食べながら話を聞いていた。
アリス「そうか…お前たちにはそんなことが……」
カムロウ「うわっ!?」
ラクト「お前、いつの間に!?」
こいつ…いつから聞いてたんだ?
ジョージ「そして…ナタリアポートで勇者殿と別れた後、イズクの手がかりを掴むことができ、後を追って奴と対峙こそしたものの…すでにイズクは反魂鏡の力を使いこなしており……」
マモル「あの野郎が
ラクト「それで、なんとか逃げてこの村に来て、今に至るってわけか……」
これで、二人に身に何があったか判明した。
彼らは、因縁の相手に挑んだが返り討ちに合い、命からがら逃げ延びて来たのだ。
チリ「あの…
マモルは懐からガサガサと紙切れを取り出し、それを見ながら話を続けた。
マモル「反魂鏡というのは…この現世と、死の世界を繋ぐ鏡でして…勇者様たちが戦ったっていう奴らは、イズクの持つ反魂鏡で呼び寄せられた、あの世の住人なんですねぇ。」
ラクト「つまり…ゾンビってことか?」
マモル「まぁ、似たようなもんですねぇ。」
チリ「いや、ちょっと違うんじゃない?」
僕もそう思う。
ゾンビというのは、生ける屍だ。動くはずのない死体が、何らかの力で動き出したモノを指す。
マモル「それで、呼び寄せた死者の魂を、イズクは反魂鏡を使って操ってるそうでぇ…」
パヲラ「つまり…
マモル「まぁ、似たようなもんですねぇ。」
チリ「さっきから、似たようなもので片付けてない?」
…僕もそう思う。
死体どころか、魂その物となると、それはもうゾンビとは言えない気がする。
パヲラは呆れたような顔をしながらため息をついた。
パヲラ「………人を殺してまで成し遂げたい目的って、一体、何なのかしら。」
ジョージはマモルが持っている紙を見る。
ジョージ「……拙者の友人が書き残した紙によれば…イズクは
ルカ「死を無くす…!?」
それを聞いたアリスは、興味を示すような反応をした。
アリス「ほう…人間にしては、思い切った行動だな。それと同時に馬鹿な事をしでかそうとしているな。」
ルカ「アリス、死が無くなるって…どういうことなんだ?」
さっきは盛大に驚いたが…正直言うと、想像がつかない。
死が無くなるなんて、聞こえこそいいが…
もしそうなるとするならば、どんな影響が出るのだろうか。
アリス「まだ予想の域を出ないが…「死」というのは、解釈こそ様々だが、簡単に言えば生物の終着点だ。そして、「死が無くなる」ということは、本来あったはずの終着点が無くなるというわけだ。終点もない、舵を失った船が行き着く先は…「破滅」だ。死というのは、生態系を担う立派な機能の一つだ。生と死で繋がっている循環から死が無くなれば、世界のバランス、その物が崩壊するぞ。例えるとするならば…安定している三脚から一本、脚が抜け落ちるようなものだ。」
ルカ「なんだって…!?」
アリス「それにしても…人間にも、世界規模で変革を起こすような代物があるとはな…」
マモル「友人の一族が封印してたものは、一族の負の遺産だそうで…今の技術や技量じゃどうしようもない代物なので、年月を掛けて風化させようとしていたところ、狙われたんですよぉ……」
……なんだかよく分からないけど。
ルカ「とにかく、そのイズクって奴は、とんでもないことをしようとしてるんだな!」
カムロウ「ルカ…もしかして、よく分かんなかったんじゃ…?」
ラクト「あぁ、バカじゃん。」
ルカは無言で、カムロウとラクトをボコボコと殴り始めた!
ラクト「ごめん!ごめんって!」
カムロウ「なんで僕まで!?」
アリスはルカ達の茶番を無視しつつ、眉をひそめた。
アリス「しかし…なぜ人間が、そんなことを?」
マモル「ロクでもない奴なのは見た時に丸わかりだったんでぇ…どうせ、力があるから何か大きな事をしたいとか、そんな理由だと思いますぅ。」
アリス「愚か者ゆえの虚栄心というやつか…」
ジョージ「そう…奴は愚者だ……!!」
愚者…その言葉に反応したジョージは、わなわなと体を震わし、鬼の形相で俯いたままそう言った。
ジョージ「言っても分からぬ愚か者には、行動で示さねばならない…!!!」
俯いていたため、はっきりとした表情は読み取れなかった。
しかし、彼からひしひしと伝わる感情…それは、友を殺された憎しみというより、友を助けることが出来なかった悔しさを感じた。
ルカ「……ジョージさん、マモルさん。」
ジョージ「?」
マモル「?」
ルカ「その仇討ち、僕も手伝いたいです。」
その言葉が響くと、部屋は騒然とした。
ラクト「はぁ…!?お前、何言ってんだ!?」
ジョージ「なにを…!?勇者殿が手を汚す必要は……」
マモル「そうですぅ、その汚れ仕事は、アッシらの仕事ですよぉ。」
ルカ「だからって…自分の私利私欲のために、人を殺すなんて…そんなこと、僕は許せない!」
アリス「__待て。」
うどんを食べ終えたアリスが一喝した。
その一喝で、部屋に一度、沈黙が生まれる。
アリス「ルカ、冷静になれ。貴様が協力しようとしているのは、仇討ちという名の
ルカ「アリス。君もナタリアポートで見たはずだ。人間にだって、悪人がいるって。僕は人間だからって理由で、悪人を見逃したりしない!一線を越えた以上、相応の罰や報いは受けるべきだ!」
カムロウ「そうだよ!」
そう言って、カムロウは身を乗り出して便乗した。
カムロウ「どんな目的があっても、やって良い事と悪い事があるのに…それなのに、一方的に人の命を奪うなんて、僕は許せない!」
まるで自分事のように、顔に怒りを浮かべながらそう叫んだ。
どうやらカムロウの、人としての道徳に反する事だったようだ。
それを聞いたラクトは、やれやれとした表情と態度をした。
ラクト「しょうがねぇなぁ~。ルカやカムロウが戦るってんなら、俺も行くぜ。ま、あの時の戦い、俺は不完全燃焼だったからな。」
チリ「よし。頑張って。」
チリはグッと拳を握って、応援のエールを送った。
ラクト「おいっ!お前も戦えよ!」
チリ「行くけど後援!わかった!?」
ラクト「俺も後援だろうが!?」
パヲラ「あたしも行くわよん!そうでもしないと、ジョージちゃんやマモルちゃんが、心の底から笑える日なんて来ないんだから!」
どうやら、仇討ちの助太刀は万場一致のようだ。
アリス「全く…お人好しで命知らずのドアホ共め…」
パヲラ「あら、アリスちゃん。もしかしてそれ褒めてる?」
アリス「褒めてない。」
__募る助太刀の声に、ジョージとマモルは涙を流していた。
マモル「いいんですかぃ…?本当に、本当にいいですかぃ?」
ルカ「一人の人間の身勝手な行動のせいで、世界がダメになるかもしれないんだ!それを知った以上、僕はじっとしていられないんだ!!」
僕の夢…「魔物と人間の共存」……
それを実現する前に、世界が壊れるなんて、とんでもない。
僕の旅がここで終わっていいはずがない!
ジョージ「……この御恩…必ず、償う所存でございます…!!!」
二人は、まだ痛みが残るはずの身体を無理に起こし、土下座をした。
これに対して、僕達は制止する言葉を掛けることも、何も言わなかった。言う必要もないと感じた。
マモル「ですが…お一つ、約束をお願いしてもいいでしょうか…?」
ルカ「…? なんですか?」
ジョージ「奴との決着は…拙者達で…!!!」
ルカ「……はい、分かりました。」
そうだ。これは本来、彼らの戦いだ。僕達が介入するのは、彼らの戦いに邪魔が入らないようにすることだけだ。
ルカ「アリス。これは人間同士の事だから、僕達に任せてほしい。」
アリス「ふん、そんなことを言うと思っていたぞ。余はうどんでも食べながら待つとしよう。」
こいつ…まだ食う気なのか…?
ルカ「ところで…アリスだったら、どうにか出来るのか?」
アリス「余を誰だと思っている。それくらいならどうとでもなる。」
えぇ!?嘘だぁ!?さっき世界がどうとか言ってただろ!?
…おそらく、魔王の魔力というのは、僕達の想像をはるかに超えた力を持っているんだろうなぁ……
ルカ「そうか…じゃあ、僕達が本当にどうしようもなくなった時に、どうにかしてくれるか?」
アリス「分かった。そうしよう。」
ルカ「…一応聞いておくけど、どうとでもなるって、どうやって?」
アリス「決まっているだろう。始まる前に潰す。この手に限る。」
ゴリ押しのパワープレイかよ……__
___同時刻、ある森の中。
夕陽は沈み、暗くなりつつある。
そんな中、岩の上で古びた手鏡を覗く、一人の
手鏡にはコロポ村の、ボロボロの門が映し出されていた。
???「ほうほう…そこに逃げたか…?」
髪の毛を掻きむしり、頭を捻り、悩むように唸る。
???「ん~~~?……もしかすると、邪魔者が増えたなぁ…」
そう呟くと、空からゆらゆらと4つの炎の玉が降り、手鏡に吸い込まれた。
吸収されたのを確認すると、男は大きな欠伸をした。
???「
???「俺には、死んだ人間の数ほどの歴戦の戦士がいる…その気になれば、亡者の大群だって作れる!!反魂鏡の力は十分に理解したぞ!」
???「あとはその力で…邪魔者は全部、まとめて…」
???「消すだけだからなぁ!!!」
__悪魔のような笑い声が、森の中を木霊した。