もんむす・くえすと! 勇者ルカと仲間たち 作:J・チェプナクル
__すっかり日が落ち、暗くなった部屋の中。
灯りを中心に、ジョージ達の仇、イズクを倒す作戦が進められていた。
目的はイズクの撃破、もしくは持っている反魂鏡の破壊。
イズクの相手はジョージとマモルだ。
僕達は敵の陽動、戦いに邪魔が入らないようにする。
これが、今のところ大まかな流れだ。
ジョージ「反魂鏡を壊せるのは、祟術を教わった拙者とマモルの二人のみ。そしてイズクはそのことを知らぬ。」
ルカ「七尾と戦った時に見た
イリアス大陸の秘宝の洞窟、七尾の怒涛の攻撃に対抗するべく、ジョージが繰り出した術。右腕が赤黒く滲み、蒸気が腕のいたる箇所から吹き出るようになる。生命力を消費する代わりに、超人的な力を発揮できるようになる術だそうだ。
カムロウ「祟術っていうの、マモルさんも使えるんですか?」
マモル「まぁ、ついでみたいなもんですけどねぇ。」
パオラ「となると、結局、どうやってもイズクとか言うのと戦う事になるのはジョージちゃんとマモルちゃんなのねぃ。」
チリ「けど…大丈夫なんですか?また、返り討ちに遭ったりなんてしたら……」
ジョージ「あの時は地の利、数の利、時の利で敗北を喫してしまったが…今は勇者殿達の助力もある!」
マモル「それにアッシらには奥の手があるんですよぉ。」
ルカ「…? 奥の手っていうのは?」
ジョージ「この刀でござる。」
そう言うとジョージは、いつも腰に携えていた一振りの刀を僕達に見せてくれた。
ジョージ「この刀の名は
ジョージ「血に飢えた妖刀と称され、ひとりでに暴れ始め、巨岩を乗せても止まらず岩を破り、血を吸うまで鞘に納まらないと伝えられている。」
ラクト「うげぇ…なんか、おっかねぇな……」
ラクト「ルカの剣と同じで。」
ルカ「なんだよ!」
ジョージ「はは…なに、そう怖がる必要はない。ただの伝承でござる。しかし、この刀の力は本物で…この刀に宿る力に、畏敬の念を込めて祟りと呼ばれている。」
ジョージ「この刀には、持つ人間の祟術を増幅する力がある!亡き友より拝借したこの刀で…奴を叩き斬る!」
マモル「アッシにも託されたものがあるんでねぇ…ひと暴れしてやりますよぉ…!!」
二人の闘志が、溢れんばかりに感じる。
僕達も、出来る限りの援護をするべきだろう。
マモル「あっ、そうですそうです、チリさんチリさん。」
チリ「はい?どうしましたか?」
マモル「実はさっきの土下座で身体を痛めたみたいで…」
ジョージ「癒しの術を施してもらえると助かるでござる…」
ラクト「やっぱりあの時無理してたのかよっ!!」
ルカ「よし、それじゃあ、明日に備えて…」
今日はもう寝よう、と言おうとした時、
ラクト「おっと、ちょっと待った。」
ラクトが僕の発言を遮った。
ジョージ「む、なんでござるか?」
もしかして、作戦に関してまだいう事でもあるのだろうか?
ラクト「いや、ルカに用があるんだ。」
ルカ「僕に?」
すると、ラクトは僕の頭をポンポン叩きながら話を続けた。
ラクト「いいか、お前ら。こいつはこんなちんちくりんでもな、勇者志望の、いつかは勇者になる人間なんだ。」
ラクト「んで、お前は勇者で、このデコボコ隊のリーダーだ!つまり、司令塔!その司令塔でもあるお前が、ボーッと突っ立っているようじゃ話にならねぇ!戦うか逃げるか、それくらいの判断と指示が出来るようになってもらえねぇと困るぜ!?」
ルカ「……確かにその通りだ。僕も迂闊だったよ。」
今までの戦い、僕が指示を出す事があったが…その時はぐだぐだと、締まりがないことが多かった。
そのせいで、戦況が劣勢になってしまったことは確か。
勇者である以上、みんなの前に立って戦うことがほとんどだろう。
戦うか守るかの判断を、瞬時にかつ的確に行うのが、仲間を引き連れる勇者の責務の一つのはずだ。
…いや待て、デコボコ隊ってなんだ?
ルカ「でも…具体的にどうすれば?」
パヲラ「
ルカ「シフト?」
パヲラ「そう、なにも具体的な指示をする必要はないわん。各自が判断するべき指標を決めてくれればいいのん。」
パヲラ「攻めて欲しいなら
ラクト「なんだよ妙に詳しいなお前。」
パヲラ「なによ?戦術に関しては小さい頃に勉強してたのよ。」
パヲラ「ルカちゃん、最初は攻撃するか防御するかで指示をして頂戴。いきなり難しく考えるよりも、簡単な事から、出来る事から始めるのが一番だと思うわん。」
要は「各々に行動を任せる」ということだろう。
何も、指示を出す相手は言葉が通じない人間でも、意思疎通が出来ているかどうかすら分からない存在というわけでもない、信頼できる仲間だ。
ルカ「分かった。意識してみるよ。」
攻めるべきなら攻撃、守るべきなら防御。
シンプル・イズ・ベスト。
頭が軽くなった気分だ。
変に、具体的な行動を指示するべきだと考えていたから。
これなら、直感で行動できる。簡単そうだ。
パヲラ「あとは…そうねい…リーダーの代わりに指示を出す、サブリーダーも決めたほうが良いわね。戦況によっては、ルカちゃんがいない時もあり得るわん。」
場合によっては、みんなが、僕の指示が届かないような場所にいる時もあり得る。今のうちに、それも決めておいた方が今後のためにもなるだろう。
パヲラ「あたしも含めて…カムロウちゃん、やってみる?」
白羽の矢が刺さったカムロウは狼狽えた。
カムロウ「えっ…僕!?…が、頑張ってみるよ!」
しかし、カムロウは、すぐに決意の眼差しをした。
ルカ「…それってさ……もし二人がいなかったら、どうするんだ?」
パヲラ「その時はその時で。」
ルカ「えぇっ!?そこも考えてくれよっ!!」
…まぁ、サブリーダーが誰もいなかったら、その時はその時。各自の判断に任せる…と、いうことにしておこう。
ラクト「…よし。これで、何が起きても俺様は責められることはないな……」
ルカ「おい、聞こえてるぞ。」
さてはこいつ、僕に責任転嫁するつもりだったな。
パヲラ「あっ、ムカつく。アンタもサブリーダーね。」
ラクト「なんだとてめぇ!!」
パヲラ「おぉ!?やるかぁ!?」
おいおい…部屋の中での喧嘩はやめてくれよ。
チリ「喧嘩するなら他所でやって!!!」
一喝された二人は子犬のように縮こまった。
パヲラ「はい…」
ラクト「すみません…」
…どういうわけか、ラクトもサブリーダーに任命された。
責任を押し付けようとした、自業自得かな。
とにかく、これで作戦会議は終わりだ。
今度こそ、明日に備えて今日は寝よう___
__会議が終わったカムロウは、部屋の外に出た。
すると、部屋のドアのすぐ隣に、父のハーレーが、腕を組みながら壁に寄りかかっていた。
ハーレー「…行くのか。」
カムロウ「わっ、聞いてたの?」
びっくりした。
ハーレー「ただ事ではないからな。」
確かに、今のような状況だったら、気になって僕も聞き耳を立てるだろう。
カムロウ「ところで__」
ハーレー「__言っておくが、俺は加勢できない。村の防衛が、俺の仕事だ。」
うわぁ…聞こうとしたことの返事をすぐに言ってきたよこの人…
まぁ、そうだろうとは思ってた。
しかし、望んでた答えでもあった。
この一件に父さんが関与する必要はない。
これは、ジョージさんに加勢すると名乗り出た僕たちがするべきことなのだ。
ハーレー「それにこの村の連中は弱い。」
カムロウ「あぁ…そう…」
そこ、はっきり言っちゃうんだ……
まぁ、言う通りではある。コロポ村で一番強いのは父さんだ。
なので、襲ってくる魔物の撃退などは父さんの仕事だ。そう簡単に村から離れることはできない。
…たまにどっか出かけるけど。
カムロウ「…そうだ。父さん。」
ハーレー「なんだ。」
カムロウ「この剣、まだ借りてて良い?僕の剣、まだ使えないから…」
背中に担いだ大剣を父さんに見せる。
木目状の模様が特徴的なこの大剣は、父さんが急遽、貸してくれた剣だ。
僕が使ってた鋼鉄の剣と鉄の盾は、まだ修理中だ。
流石にステゴロ、武器もなしで戦うというのは心もとない。
ハーレー「ああ、分かった。」
了承は得た。よし、存分に使ってやろう。
…これすっごく重いけど。
カムロウ「うん?…まだ仕事?」
ハーレー「ああ、まだ見回りがある。」
ハーレーはカツンカツンと足音を立てながら、廊下を歩き始めた。
ハーレー「その剣は貸してやる。使いこなしてみろ。」
そう言い終えると、外に出て行った。
カムロウ「………」
静まり返った廊下の中で、手に持ったままの大剣に目をやる。
柄には滑り止めの包帯が巻かれている。その包帯は砂やらなんやらでくすんだ色をしている。
どうやら、かなり使い古していた剣…本当にお古の剣のようだ。
しかし、保管方法が良いのか、保存状態が良かったのか、それとも、たまに手入れをしていたのか。刀身には錆びは見当たらず、切れ味と輝きを保っていた。
…この剣を使うときの一番の問題点は、重量。
とにかく重いのだ。両手でやっと持てるほどの重さだ。
昔の父さんは、こんな剣を使っていたのか……
今の僕が…この剣を…扱えるのか………いや……!
カムロウ「(………使いこなしてやる!)」
そう決意したカムロウは。ギュウッ…っと大剣を握りしめた___