もんむす・くえすと! 勇者ルカと仲間たち 作:J・チェプナクル
__風は止まり、空は怪しく曇り始める。
まるで、これから何が起こるか分からないように。心配な気持ちを、不安を煽るように。
灰色に染まり、時間が止まったかのようなこの場所で、激戦が始まる__
__作戦はこうだ。
まず、イズクと戦うのはジョージとマモルの二人だ。
ルカ達は、ジョージ達に邪魔が入らないように、イズクが呼び出した亡者の大群の相手をする。
だが、ここで壁にぶち当たる。
亡者の身体能力は人並みであるが、既に死んだ身体であるため、胴体に剣を突き刺した程度では倒すことはできない。
仮に倒せたとしても、一時的にイズクの持つ反魂鏡に戻るだけで、完全に倒すことはできない。時間が経てば、再び呼び戻されるのだ。
亡者の大群の数は少なく見積もっても100は超える。
それに比べて、ルカ達は5人。
1人、20体も相手をするなんていう、簡単な計算だとしても、無理がある。
倒したとしても、少し間を置けば、再び呼び戻される。
これではいたちごっこ、らちがあかない。。
どちらかが根負けするまでの勝負となってしまう。
無論、ルカ達が不利である。
しかし、ルカ達に秘策アリ!
この亡者たちには弱点及び、天敵が存在する。
それは、「塩」である。
穢れを祓う力を持つと信じられている「塩」。
邪気の塊でもある亡者は、これを浴びればひとたまりもない。
成すすべなく、溶けるように浄化されるのだ。
そこで!
ルカ達は、全力で塩を投げつける戦法をとることにしたのだ!
コロポ村の村人たちに協力してもらい、現状で出来る限りの!
集めれるだけ集めた塩を!
亡者に向かって、全力でぶん投げる戦法を!
「「「「「うおおおおおおお!!!」」」」」
ルカ達は塩を投げつけた!
塩!投げ放たれるは、
無数の、塩化ナトリウムの結晶が!
次々と亡者たちに投げつけられる!
ルカ「(…正直、この作戦。ナメクジ娘の時の苦い戦歴を思い出すから、恥ずかしいな…)」
ナメクジ娘の体表を覆う粘液で、まともにダメージを与えられなかったときに思いついた、苦肉の策。
今、思い返すと、本当に恥ずかしい…
カムロウ「せぇい!っえいやぁぁぁ!!」
パヲラ「がむしゃらじゃなくて、狙って投げるのよ!持ってきた塩には限りがあるんだから!」
ラクト「分かってらぁ!分かってはいるけどよぉ!」
チリ「怖い!怖いの!」
僕もそうだが…各々、両手に塩を持ち、盛大に塩をぶん投げている。
投げつけられた塩が亡者たちに当たると、当たった箇所からシュウゥゥゥ…と、白い煙を噴き出しながら溶け始めた。
しかも、次々と倒れていき、亡者の身体は炎の玉と化して空に飛んでいく。
一時的ではあるが、倒せた証拠だ。
…どうやらこの戦法、見た目は地味であるが、効果は絶大のようだ。
それが分かると、やる気がグングン湧いてきた!
よし!この調子で、どんどん倒そう!
イズク「(なんだよありゃあ…ゴリ押しじゃねぇか…)」
イズクはまじまじとその様子を眺めていた。
あまりにも見当違いな戦い方に、あっけにとられていたのである。
マモル「なんだぁ?豆の鉄砲でも食らったかぁ?」
ジョージ「戦いにおいて、身近にある物を最大限に活かすことは、おかしいことではないだろう。」
いつの間にか、イズクが乗る巨人
マモルの、巨人のような式神
その式神の肩には、マモルとジョージが乗っていた。
イズク「…あぁ、そうか。それが、お前らの作戦か。」
イズクは顎に左手を当てながらそう語った。
イズク「アイツらが亡者共を。お前ら二人は俺と。」
イズク「殺り合おうってか…」
イズク「ふーん…」
そう語り終えると、頭を左手で掻き回した。
イズク「あーあー。何も分かってねぇなぁ…言ったはずなのになぁ…」
イズク「あの
亡者を倒しても、少し経てば再び復活する。イズクの持つ反魂鏡がある限り、何度でも。イズクはそれを示唆するようにか、煽るように呟いた。
しかし、それを聞いたジョージ達は、依然として堂々としていた。むしろ、それを聞いたうえで「だからどうした?なにか問題でもあるのか?」と言わんばかりの目つきと表情であった。
そして二人は、その自信の表れでもある答えを言い放った。
マモル「意味はあるなぁ。」
ジョージ「貴様を討てる機会が生まれるのであれば。」
ジョージ「それがひと時もあれば十分。」
イズク「………」
イズク「へぇ……」
その答えを聞いたイズクは、眉をひそめた。
どうやら、予想していた反応でも言葉でも行動でもなかったらしい。
しかも、不快に感じる答えだったようだ。
イズク「減らず口がよぉ!!!」
イズクは
マモル「お前もなんだよなぁ!!!」
ジョージ「イズクゥゥゥ!!!」
マモルは式神
拳がぶつかり合い、相殺し、衝撃音と爆風が響き渡った!!
その瞬間、ジョージは飛び上がり、刀で空中を一閃した!
ジョージ「
禍々しいオーラを放つ斬撃を放った!
しかし、その斬撃が向かう先は、イズクではなく地面であった!
地面に斬撃がぶつかり、大きな斬り込みが生まれた!
イズク「どうしたぁ!外したなぁ!!どこ狙ってんだこのバカ!!」
ジョージ「
ジョージ「今、貴様がいる場所は、崖際だ!」
イズク「なにぃ!?」
その刹那!イズクの立っている地面が崩れ始めた!
そう!ジョージが狙ったのはイズクではなく、地面!崖なのである!
斜めに斬られた崖が!滑り落ちるように崩れたのである!
判断が遅れたイズクは、崩れ行く崖と共に谷底に落ちていく!
さらに!
マモルの式神
マモル「イズク!これで終わりだと思うな!!アッシらはその谷底で、お前と戦うことにしたんだよぉ!!!」
ジョージ「そこが最も、邪魔が入りずらい場所だろう!そこで貴様との因縁を!!」
ジョージ「決着をつける!!!」
イズク「はははっ!面白れぇ!良いだろう!この谷の奥底で、相手をしてやる!!」
イズク「そこがお前らの墓場だぁぁぁ!!!」
谷底に落ちる間際、ジョージはルカに向かって叫んだ。
ジョージ「勇者殿!そちらは任せた!」
そう言い終えると、ジョージらはイズクの後を追い、谷底に落ちて行った!
暗い谷底に落ちるその瞬間!互い因縁の!戦いの火蓋は斬って落とされた!__
ルカ「__よし、分断は出来たな。」
二人の姿は、暗い谷底に消えていき、見えなくなった。
イズクの戦力を減らすために分断するという作戦は成功した。
後は…彼らの無事を祈ろう。
…今、残った僕たちで、
ルカ「…今、僕達に出来ることといったら……」
…亡者は、さっきの塩投げ作戦でかなり数が減った。
後、残っている敵がいるとすれば…血の狂戦士という名の男。
遠く離れたところから、赤い鎧を身に付けた大男がこっちに向かって歩いて来ている。
彼は生前、手慣れの戦士だった。
イズクのせいで、今は僕達と敵対関係であり、以前戦った時は、カムロウの父、ハーレーが撃退してくれた。
…が、反魂鏡の影響で再び復活し、こうして僕達の前に再び立ちはだかった。
説得も通じない相手だ。
そうなれば…実力行使しか他にない!__
パヲラ「__ルカちゃん!後ろ!」
ルカ「えっ!?」
そう言われて振り向いた瞬間!
なんと!3体の亡者が僕のすぐ近くにまで来ており、飛び掛かって来ていた!
ルカ「(だ…だめだ!反応が遅れたっ!)」
ルカ「(
ルカ「うわああああ!!__」
ラクト「__
__5発。発砲音が響き渡った。
そしてすぐに、僕に襲いかかって来ていた亡者は炎の玉と化してどこかに飛んで行った。
音がするほうを向くと、ラクトが魔法を撃つ銃、魔導銃をこっちに向けて構えていた。
どうやら、ラクトが狙撃してくれたようだ。おかげで助かった。
ラクト「ルカ!カムロウ!パヲラ!お前らは
ラクト「亡者の奴らが、お前らの邪魔なんかしねぇように…」
ラクト「俺たちはここから援護する!」
チリ「頑張って!」
…と、高らかに宣言しているが………
ラクトとチリは、まるで二人揃って一つの点のように見えるぐらい、遠くの場所から宣言していた。
……いやいやいやいや。
ルカ「遠っ!」
カムロウ「二人共さぁぁぁ!!」
遠い。うん。明らかに遠い。遠すぎる。
カムロウ「いくら何でも、遠すぎるだろ!」
全くの同感である。
今思えばあの二人、出来る限り戦闘を避ける傾向にある二人だ。
しかし、援護してくれるのならもう少し…いや、もっと近くに寄ってもいいだろうに。
ラクト「ええっ!? なにぃ!? 聞こえねぇ!!」
チリ「ごめん、もう一度言って!!」
ルカ「…だめだ、聞こえてないみたいだ。」
カムロウ「あのさぁぁぁ!!!」
カムロウは頭を抱えてヒステリーを起こした。
パヲラ「いや、もう…アノ子達はあそこで良いと思うわ…うん…そう思うわ…」
ルカ「……あの二人、前線向きじゃないしなぁ…」
まぁ、その通りではある。
ルカ「とにかく…」
特に気にするような問題でもないので、この話はもう終わりにすることにした。
もう狂戦士がすぐそこにまで迫ってきている。
僕は剣を抜いて構えた。
それに応じるように、カムロウは大剣を両手で持ち、パヲラはファイティングポーズをした。
ルカ「行くぞ!
「「ああ!」」__
__沸騰する血の狂戦士が立ちはだかった!
ルカ「先手必勝!」
パヲラ「意気軒昂!」
ルカの先制攻撃に、パヲラが続いた!
ルカ「行くぞ!雷鳴突き!!闇を引き裂き光を照らせ!!!」
パヲラ「とあああぁぁぁ!!」
ルカは雷鳴のように踏み込み、雷鳴突きを繰り出した!
パヲラはつま先を尖らした飛び蹴りを放った!
狙ったのは胸の辺り、パヲラも同じだ。
しかし、巨体である狂戦士が倒れる様子はない。
無論、この一撃で倒せないことは分かっている。
僕の狙いは、
今の僕たちが、これほどの強敵を倒すには、ダメージを蓄積して倒すしかないのだ!
カムロウ「おおおぉぉぉ!!」
カムロウは、その小さな身体に似合わないほどの大きな剣を両手で持ち、構えた!
カムロウ「
そして、剣に風を纏わせ、衝撃波の塊を放った!
その衝撃波は、以前彼が使っていた鋼鉄の剣よりも、少し大きな衝撃波だった。
何より、昨日の戦闘の時、カムロウは父から借りた大剣の重量に振り回されていた。
今の動きといい、息切れを起こしていない様子を見るに、どうやら、なんとか自分のモノにしたようだ。
そして、風の衝撃波は狂戦士に命中した!
それでも、狂戦士は怯む様子はなかった。
それどころか、僕に向かって、両手を組んでダブルスレッジハンマーを振り下ろそうとしていたのだ!
パヲラ「おっと。」
すると、パヲラが僕を押し退け庇った!
パヲラ「男の型・酔いどれ男優。」
パヲラは泥酔したような動きをし始めた!
予測不能の千鳥足。すると狂戦士は一瞬だけ、ほんの一瞬だけ体が硬直した。
多分、狙いを定めるために止まってしまったのだろう。
その一瞬生まれた
狂戦士の両手は上に構えられている。そうなると、腹部ががら空きになるのだ!
パヲラ「おらぁぁぁ!!」
右手を前に突き出し、腹部に正拳突きをした!
左手で掌底突きを繰り出し!最後に回し蹴りを放った!
…しかし。
狂戦士は両手を組んだままだった!
パヲラが攻撃をする前から、同じ構えをしたままだったのだ!
パヲラ「(手ごたえ無し!?)」
そのまま、両手のハンマーが振り下ろされる!
パヲラは間一髪で、後方にバク転をして回避した!
その差、狂戦士の指の第二関節が、パヲラの顔の目と鼻の先にあったほど、僅かな差だった!
狂戦士の両手が地面に叩きつけられると、小さなクレーターが生まれた。
当たれば恐らく、骨が砕かれるほどの強さだったのだろう。
パヲラは、顔中に冷や汗がブワッ…と噴き出した。
彼は今、「本当に間一髪だった…」と、感じた。
ルカ「そこ!!」
カムロウ「だぁぁぁ!!」
狂戦士の両手が地面にある今!
あっちに攻撃を防ぐ方法はない!
僕とカムロウは剣を大きく振りかぶり、斬りかかった!
恐らく、肩辺りだろうか。
狂戦士の着ている鎧のせいで、切り傷を与えらえることはできないが。
それでも、ダメージは入ったはずだ!
…
狂戦士は、スクッと立ち上がった!
ルカ「なっ…!?」
カムロウ「いっ…!?」
まるで何事もなかったかのように。ピンピンしていた。
そして、狂戦士は回し蹴りをし、周囲を薙ぎ払った!
僕とカムロウはすぐさま後ろに避けた。
距離は十分。当たるはずがないくらいの距離をとった。
しかし僕達は、信じがたい光景を目にした。
なんとその回し蹴り。爆風を放った。
ルカ「なんだってえええぇぇぇ!!?」
僕達は爆風に吹き飛ばされる。
そして地面に叩きつけられる。
カムロウは大剣を杖替わりにして立ち上がり、パヲラは手を使わずに立ち上がった。
…なんだ?今のは?
回し蹴りだけで爆風?
一体何が、どうして、こんな事が起きているのか、さっぱり分からない。
そう感じていると、パヲラが口を開いた。
パヲラ「……なんていうか。」
パヲラ「攻撃を食らっても生き生きしてるわよね…?」
ルカ「そうなんだよ…アイツ、本当にダメージが入っているのか?」
僕はそう言いながら立ち上がった。
そう。僕達が仕掛けた連携攻撃は、自慢にも聞こえるようだが、かなりのダメージを与えたはずだ。これだけは確かだ。
なのに、狂戦士は怯む様子がない。倒れる様子すらもない。どうなってるんだ…?
というより…気付いたことがある。
さっきから僕達の攻撃を
ノーガード戦法、というやつなのだろうか。
だとしたら、僕達の攻撃は十分に負っているはずだ。
なのに、ダメージを負っている感じがしない。
本当に…どうなっているんだ…?
カムロウ「もしかしてアイツは……」
カムロウ「痛みを知ることが喜びとかじゃ…?」
ルカ「どんな推理だっ!嫌だよそれ!」
絶対、そうじゃないと思いたい。
カムロウ…キミはどうしてそんなことを思ったんだい?
その時だった。
僕は、僕達は、異様な空気を感じ取った!
目線を狂戦士に向けると…
狂戦士は、腕を胸の前で
ルカ「あれって…確か…!」
この前の戦闘で見せた、大爆発を起こす気だ!
まずい、まずいぞ…えーと、えーと…!
落ち着け……考えろ考えろ…!
………そうだ!
ルカ「ガ…
ルカは
カムロウ「うぇっ!?」
パヲラ「防御するのよカムロウちゃん!」
そう言われたカムロウはハッと気が付き、大剣を盾にした。
パヲラは身を屈め、迫る攻撃に備えた。
僕は…剣を地面に突き刺して、衝撃に備えた。
__狂戦士は、有り余る怒りを大爆発させた!!!
辺りに凄まじい爆炎と爆風が走る!!!__
__周囲の障害物を吹き飛ばすほどの爆発。
その爆発に、僕達はなんとか耐える事が出来た!
カムロウ「た…耐えた…!」
パヲラ「ナイス判断よ!ルカちゃん!その調子よ!」
ルカ「そ…そう?」
正直、死ぬかと思った…
僕はなんとか剣にしがみついて、吹き飛ばされないように踏ん張った。
よし!僕達は攻撃に耐えた!仕切り直しだ!
僕は剣を地面から抜き、魔剣・首刈りの構えをとろうとした時だった。
パヲラ「ルカちゃん、ちょっとだけ待って頂戴。」
そんな僕に、パヲラは制止するよう声を掛けた。
なんだろう。どうしたというのだろうか。
パヲラ「ん~………」
そういうパヲラは、頬に指を当て、目を空に向けていた。考え事か?
パヲラ「…やっぱし~ダメージ、通ってないんじゃないかしら。あれ。」
ルカ「ええっ…!?」
僕を制止した理由。それは、同じことの繰り返しになるから無駄な行動になるという理由だった。
ダメージが通ってないとすれば、攻撃しても意味はない。
じゃあどうすれば…?
ルカ「もしかすると…物理攻撃じゃだめなのか!?」
そうだ。まだダメージが通らないと決まったわけではない。
剣や打撃によるダメージの他に、魔法によるダメージもある。
カムロウ「試してみる!」
今、この場で魔法を扱えるのは
カムロウ「
カムロウは指から、炎の玉を放った!
炎の玉は見事命中し、狂戦士の身体に当たり爆散した!
しかし…
カムロウ「…!?」
僕達の期待とは裏腹に、全く効いている様子もない。
なんだか、嫌な予感がしてきたぞ…
カムロウ「
カムロウは空から、雷を呼び落とした!
激しい稲光と共に、雷が落ちた。
現状、カムロウが扱える最大威力の魔法。
流石に、これを食らえばひとたまりもないぞ。
だがしかし…
狂戦士は、それでもなお立っていたのだ。
雷をまともに食らっても、平然としていた。
カムロウ「だ、ダメだ!効いていない!」
ルカ「なんで…効いてないんだ…!?」
パヲラ「物理もダメで魔法もダメ…どういうトリックなのかしら……」
何故だ…?
何故なんだ…?
そう困惑していると、狂戦士は問答無用と言わんばかりに攻撃を仕掛けてきた!
狂戦士は手から爆炎を巻き起こした!
「「「うわああああ!!」」」
僕達は爆炎に巻き込まれた。
どうして攻撃が通用しないのかに気を取られていて、防御するのを忘れていた。
僕は身体に付いた火を消すために転がった。
ルカ「くそ…どうすれば、アイツを倒せる…!?」
これじゃ、打つ手がないじゃないか!
もう、どうしようも、ないじゃあないか!__
???「__ダーリン!ただ、攻撃するだけじゃあだめよ!」
ルカ「こ、この声は…!?」
視界を、声のする方向に入れる。
今、僕達が立っている所より高い崖の上に、逆光で黒いシルエットになってはいるが…
…いや待て。シルエットでも分かる、あのでんぐり返しの姿といったら………
???「優勢と劣勢には翼があり、常に戦う者の間を飛び交っている…」
???「例え、絶望の淵に終われても、勝負は一瞬で状況を変える…」
???「人、それを回天という!」
そして高台より降り立ったその者は……
__残念なラミアが現れた!
それは、上半身は大蛇、下半身は妖艶な美女という、だれが得をするのかでさえ分からない、残念なラミアだった。
アミラ「私はアミラ…勇気ある者の窮地に現れるか弱い乙女…」
着地した時に足を捻ったのか、少しこらえるかのような声でそう言った。
ルカ「またお前かー!!!」
だが、そんなことはどうでもいい。なぜ、こんな込み入っている時に来た?
アミラ「また会ったわね。愛しのダ__」
ルカ「待った。」
どうせ、また僕に対するあいさつ代わりの台詞だろう。
けど今は、その言葉を悠長に効いているような状況ではない。
ルカ「ごめん二人共!ちょっと戦ってて!」
二人には悪いけど…今はこいつの相手をする時間が欲しい。
カムロウ「無茶言うなーっ!」
パヲラ「でも言われたからには、やるしかないのよねぇ!」
無茶なお願いを聞いた二人は、狂戦士に立ち向かって行った。
ルカ「それで?何の用なんだ?いくら何でも、戦闘中に来ることはないだろ。」
アミラ「だからこそ来たのよ。ダーリンたちの攻撃が効かなかったのには理由があるのよ。」
どうやら、有力な情報を持っているようだ。
ここはちゃんと聴くことにしよう。
アミラ「エンチャントよ。大男が着ている鎧は、エンチャントが施されてる鎧なの。」
ルカ「エンチャント…?」
どうやら…ただの鎧じゃないらしい。
僕達の攻撃が効かなかったのは、ちゃんと理由があるそうだ。
アミラ「あら、ダーリン。ご存じないの?」
アミラ「武器や盾に鎧、アクセサリー…物体に魔術を施して能力を付与する特殊な技術。それがエンチャントよ。」
アミラ「主な能力は、耐久力の向上だとか、炎の力を持たせるといったのがあるわ。」
ルカ「へぇ…そんなものがあるのか。」
アミラ「それで、あの大男が着ている鎧には、
ルカ「なんだって…!?」
だったら、納得がいく。
回し蹴りだけで爆風が生まれたのも。
良く分からない大爆発を放つのも。
全部、僕達が与えたダメージを力に変えていたとすれば、納得できる。
しかし…それじゃあ…
ルカ「それじゃあ…どうしようもないじゃあないか!」
アミラ「ダーリン。待って。焦らないで。」
アミラ「どうしようもないように聞こえるけど、それがまだ決まったわけじゃあないの。」
アミラ「確かに
ルカ「…?」
アミラの言った意味は理解している。
ダメージの吸収というわけであって、無効化するわけではないということ。
しかし、吸収されるんだったら、無効化されるのと同じように聞こえる。
彼女は一体、何が言いたいのだろうか。
アミラ「良い?ダーリン。ただ、攻撃するだけじゃダメなのよ。
ルカ「…! そうか!その手があったか!」
つまり、狂戦士の着ている鎧は、吸収できるダメージの量に限度があるのだ。
限界に達して割れる風船のように、限度があるのだ。
無効化するわけじゃないとは、この事を言っていたのか!
だから、《耐えきれないほどのダメージ》》を与えれば…
アミラ「どうやら、お役に立てれたようね…」
アミラ「アミラ、感謝感激だわ…」
ルカ「それ、お前が言う側じゃないだろ…」
アミラ「それじゃ、私は早急に避難するわ…この戦場に、か弱い乙女は似合わない……」
ルカ「ああ、早く安全な場所に避難するんだな。」
さっさと帰れ。
アミラ「ええ、そうさせてもらうわ。さよなら、愛しのダーリン。」
ルカ「…………」
ルカ「(そういや、なんでアイツここにいたんだろう。)」
いや、深く考えるのはやめておこう。
とにかく…絶望の暗闇に、一筋の光が見えたことは確かだ。
狂戦士は無敵じゃない。突破口があった。
それが分かれば、闘志がみなぎってきたぞ!
闘志をたぎらせていると、カムロウが吹っ飛ばされ、地面に激突していた。
その間パヲラは、狂戦士の攻撃を受け止めたり、躱したりしていた。
そうだった。狂戦士の相手を二人に任せていたのをすっかり忘れていた。
カムロウ「ルカ!話は終わったのか!?」
パヲラ「なにか手だてはあるの!?」
ルカ「ああ!まずは…」
ルカ「僕達3人で、同時に攻撃するんだ!」
耐えきれないほどのダメージ量を出すには、瞬間火力だろう。
ちまちまと与えると、蓄積したダメージが狂戦士の力に変換されてしまう。
一度に、一斉に攻撃して、鎧を破壊しなければ!
パヲラ「そうと決まれば、さっさといくわよぉ!」
そう聞いたパヲラはすぐに駆け出し、右手に魔力を込めた!
カムロウ「うおおおぉぉぉ!!!」
カムロウは大剣を剣で持ち、剣に風を纏わせながら、バッタのように飛び上がった!
ルカ「煌めけ、勇気の刃!」
ルカは、脚をバネのようにして、狂戦士の懐に飛び込みかかった!
いくぞ!これが僕達の!
三位一体の攻撃だぁぁぁ!!!
パヲラ「
カムロウ「
ルカ「魔剣・首刈り!!!」
狙ったのは胴体だ。
パヲラの拳が、カムロウの大剣が、僕の剣が、同じ個所に当たった!
…しかし、狂戦士はビクともしなかった。
ルカ「え!?」
カムロウ「はっ!?」
狂戦士は右手で僕を、左手でカムロウを掴み、凄まじい勢いでぶん投げた!
パヲラ「なっ!?」
そして片足で、パヲラを蹴り飛ばした!
飛ばされた僕たちは、崖の下に衝突した。
土煙が舞い、辺りに石の瓦礫が飛び散った。
パヲラ「どういうこと…?全く効果がないじゃないの…」
なんとか岩を押し退け、僕達は身体を起こした。
カムロウ「ルカ、僕達は言われた通りにした…アミラさんから、一体何を聞いたんだよ?」
ルカ「あの狂戦士が着る鎧は、ダメージを吸収するらしいんだ…だから、限度を超えるダメージを与えるしか…」
カムロウ「でも、さっきやった同時攻撃でも、ビクともしなかったじゃないか!」
……ということは…!?
ルカ「そうか、攻撃が弾かれた!?」
ダメージが吸収されてしまったのだ。
つまり…
ルカ「威力が足りないっていうのか!?」
僕達、三位一体の攻撃。それでも壊せないということは…
ルカ「だめだ…僕達3人だけじゃ…」
ルカ「3人だけの力じゃあ…あの鎧を壊せない!!?__」