もんむす・くえすと! 勇者ルカと仲間たち   作:J・チェプナクル

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第6話 イリアス大陸へ

朝になり、カムロウたちは港にいた。

イリアス大陸の往復便があるはずの区域は、寂れた様子だった。

ラクト「ずいぶん寂れてるぜ…それほど長い期間、往復便が出てないってことか。」

ラクトはそう言うとパヲラに話しかけた。

ラクト「それでどうやってイリアス大陸に行くんだ?いくらなんでも船は無理だろ?」

パヲラ「船は無理なのはわかりきってるわよラクト。ちょっと待ってて頂戴。」

そういうとパヲラはカムロウたちから離れ、近くの船乗りに話しかけた。

カムロウ「パヲラさんの考えって何だろうね、ラクト。」

ラクト「船が使えないのがわかってるってんなら、今更どうするつもりなんだが…」

ラクトは地面に寝っ転がった。

ラクト「まぁ待ってやるか…。どうせ無理だろ。」

 

 

少し経ったころ、パヲラが戻ってきた。

パヲラ「はーい?準備できたわよみんな!」

ラクト「はあ!?出来ただぁ!?」

寝っ転がっていたラクトが驚いて飛び上がった。

まさかイリアス大陸に行く方法があるとは思わなかったからだ。

カムロウ「イリアス大陸に行ける方法が見つかったんですか!?」

パヲラ「えぇもうばっちり!それじゃ、はいこれ。」

パヲラは二人に何かを手渡した。

カムロウ「?」

ラクト「?」

カムロウ「何ですかこれ?」

パヲラ「ヘルメット。」

ラクト「ヘルメット!?トンネルでも掘れってんのか!?」

パヲラ「まぁまぁ、ついてらっしゃい。」

ヘルメットを被りながら、二人はパヲラに付いて行った。

 

ラクト「…おいおいこれは……どういうことだぜ?」

彼らの目の前にあったのは、一門の大砲だった。

ラクト「あのな…俺たちは芸人でもなければ、サーカス団でもないんだぜ?まさか、この中に入って飛べなんて言わねぇよな?」

パヲラ「そのまさかよ。画期的でしょ?」

ラクト「どこがだよ!狂人の域だぞアホ!」

三人でこの大砲に入り、イリアス大陸に向かって飛ぶというのがパヲラの考えらしい。

大砲の衝撃吸収、飛行中の軌道修正、着地はパヲラがしてくれるそうだ。

ラクト「いやどうやってだよ!↑の説明どういうことだよ!」

パヲラ「船旅だめなら空の旅。これ以外に方法はありはしないわよ。」

カムロウ「空の旅かぁ…楽しそうだね!」

ラクト「だめだ…俺はこいつらといると早死にする…」

パヲラ「さぁさぁ入った入った!せっかく準備してくれた船乗りのお兄さんを待たせちゃいけないわ!」

カムロウ「はーい!」

ラクト「いやだあああ!俺はまだ死にたくないいいい!」

大砲にカムロウが先に入り、パヲラにずるずると引きずられたラクトが強引に入れられ、最後にパヲラが入った。

パヲラ「さぁお兄さん!火、お願いね!」

船乗りはその光景に驚きながらも着火の準備をする。

ラクト「…なぁ、俺降りてもいいか?」

カムロウ「だめだよ、ラクトを置いて行くわけにはいかないよ。」

パヲラ「カムロウちゃんの言う通りよ、男なら覚悟決めなさい。」

ラクト「わかったよ!行けばいいんだろ行けば!」

導火線に火が付けられた。みるみるうちに火が走っていき、とうとう発射まであとわずかになった。

ラクト「…やっぱりなしでいい?」

ラクトがそう言った瞬間、火薬が爆発した。

大砲から3人が勢いよく射出された。

パヲラ「フォルテッシモーーー!!!」

カムロウ「わああああああ!!!」

ラクト「ぬわああああああああああ!!!」

3人は空の彼方に飛んでいった。ラクトの悲鳴が響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

ラクト「ああああああああ!!!」

イリアス大陸の海岸に、激しい地響きと爆発音がした。

土埃が空高く舞い、その中心にはクレームができていた。

そこにはパヲラにお嬢様抱っこされたカムロウと、その後ろで痙攣しながら倒れこんでいるラクトがいた。

パヲラ「無事到着したわねい!どうかしらあたしの「魔導拳」!魔力で肉体を強化することでこんなことまで出来るのよう!」

そういうとカムロウを下に降ろした。

カムロウ「すごいよパオラさん!ぼくたち鳥みたいだったよ!」

初めての体験にカムロウは興奮が止まらないようだ。

その後ろで息も絶え絶えなラクトがこうつぶやいた。

ラクト「こいつ…いつか絶対コロす…」

 

 

 

墜落地点から徒歩で、イリアス大陸の港町のイリアスポートに着いた。

しかし活気はなく、少し寂れた様子だった。往復便が出ていない影響だろうか。

ラクト「ホントにイリアス大陸に着いたんだな…ここを見ると改めて実感するぜ。」

腰に手を当てながらラクトはそう言った。さっきカムロウに回復魔法をかけてもらったばかりだが、まだ落下の衝撃がまだ痛むらしい。

パヲラ「みんな?あたしたちの目的はなんだったか覚えてるかしら?」

ラクト「そりゃあ…薬探しだろ?重症でもたちまち治っちまうようなすごい薬をよ?」

忘れてはいけない、カムロウの旅の目的だ。

パヲラ「そのためには情報収集よん!人に聞くことが一番なのよ!」

ラクト「あぁ…確かにそうだな。」

カムロウ「でも…そんな薬、知っている人いるのかな…」

パヲラはカムロウの目線に合わせるよう屈んだ。

パヲラ「あきらめちゃだめよカムロウちゃん。どんなに絶望的でも、針の穴ほどの突破口は必ずあるんだから!」

その言葉を聞いて、カムロウは安心した。

カムロウ「そうだよね…あきらめちゃいけない!ありがとうパヲラさん!」

パヲラ「ふふふ…どういたしまして。」

ラクトが頭を掻きまわしながらこう言った。

ラクト「んじゃ、俺は酒場とか行って聞きまわってくるわ。」

そう言うとカムロウたちから離れ、路地裏に消えていった。

パヲラ「それじゃあたしたちは薬屋さんに聞きに行きましょ!」

カムロウ「うん!」

こうしてカムロウたちは情報収集を開始した。

ラクトは酒場を、カムロウとパヲラは薬屋を中心に聞きに回った。

 

…しかしめぼしい情報は見つからなかった。

再び集まったカムロウたちは、町のレストランの外のテーブルで昼食を取っていた。

ラクト「わりぃ…大した話は見つかんなかったぜ。」

カムロウ「こっちもだよ…ここにはないって。」

ジュースを飲み干しながらお互いの収穫を報告していた。

パヲラ「まぁまぁ、まだ終わったわけじゃないわよ。」

パヲラがミルクティーを飲みながらそう答えた。

ラクト「これからどうするんだ?こっちじゃ大方、イリアスベルクならどうだって話だぜ。」

パヲラ「そうでしょう?だからイリアスベルクに行こうと思ってるの。」

ラクト「じゃ、決まりだな。」

ラクトが会計をしに、席を立った。

その間に、カムロウは純粋な質問をパオラにした。

カムロウ「パヲラさん、イリアス大陸とか、イリアスポートとか、イリアスベルクの名前にある、「イリアス」ってなあに?」

パヲラ「あらん、カムロウちゃんは知らなかったのねん。」

パヲラはティーカップをテーブルに置くと、ラクト帰ってくる間に、カムロウにわかりやすく説明した。

パヲラ「イリアスっていうのは、この世界を創った女神イリアス様のことよん。それでこの大陸は、イリアス様のことが大好きな人たちにとっては大事な場所なの。」

カムロウ「みんな大好きだから、イリアスって名前が付いてるの?」

パヲラ「そういうことよん。詳しい話は、まだカムロウちゃんには分かりづらい話だから、そのことを覚えているだけでも十分よん。」

そう会話をしているとラクトが帰ってきた。

ラクト「会計終わったぞ。」

パヲラ「わかったわ。行きましょカムロウちゃん。」

3人は席を立ち、イリアスベルクに向かうべくレストランを後にした。

 

 

 

イリアスベルクまでは馬車に乗って移動することになった。

他に乗る人はおらず、荷台の中はカムロウとラクトとパヲラの3人だけだった。

パオラ「イリアスベルクに着くまでは、あたしのウルトラスーパー授業をするわよ~ん!準備はいいかしら~?」

カムロウ「はーい!」

カムロウはまだ社会の常識や戦術について全く知らない。そこでパヲラは足りない知識を、イリアスベルクに着くまでの間で出来る限り教えることにした。もちろんこれからも時間が空いたときに教えるつもりだ。

パヲラ「あんたも受ける?」

ラクト「俺はいいや。」

 

 

軽く社会常識について教えたあとに、パヲラは戦術を教え始めた。

パヲラ「カムロウちゃん、今から教えるのは「戦場の基本」の教えよん。」

カムロウは真剣な表情で聞いていた。

 

パヲラ「戦場の基本は、き・ほ・んの3つ。き「決して相手を侮るべからず」、ほ「相手の情報は蓄積せよ」、ん「大技はここぞで使え」。」

 

パヲラ「決して相手を侮るべからずは、どれだけ自分が強くても慢心したり調子に乗ったりしないこと。常に相手を警戒しつつも、敬意、尊敬の念を忘れないこと。ま、注意しろってことねい。」

 

パヲラ「相手の情報は蓄積せよは、相手の行動を観察して弱点を見つけること。使えそうな技術は自分の物にすること。これは情報は武器っていう考えでの教えよ。どれだけ無敵に見えても、情報を蓄積していけば突破口が見つかる可能性があるって意味でもあるわ。」

 

パヲラ「大技はここぞで使えは、強大な力を使うときは周りに注意するって意味よ。打開策代わりに大技を使っても、二次災害が起きてもっと事態が悪化する恐れがあるから、使うときは冷静かつ慎重に、事態を見極めて使うこと。まぁやたらめったに大技を使っても、無駄に体力を消耗しちゃうから気を付けてねってわけ。」

 

パヲラ「この3つが「戦場の基本」よん。よーく覚えておきましょう?」

話を聞き終えたカムロウは難しい顔をした。

カムロウ「うーん…なんとなくわかった気がするけど…よくわかんないや…」

パヲラ「良いのよカムロウちゃん、ゆっくり覚えていくことが大事よ。人は急には覚えることなんでできないもの。」

それを本を読みながら聞いていたラクトが口を挟んだ。

ラクト「なんか…お前に似合ってない講座だな。」

パヲラ「なによ、似合ってないってメイクのこと?」

ラクト「服もだよバカヤロー。」

パヲラはラクトが呼んでいる本に目を向けた。

パヲラ「あんたこそ何読んでるのよ。」

ラクト「魔導書。古本市で買った。」

パヲラ「へぇ、あなた魔導書なんて読むの。」

ラクト「なんだよ…意外か?」

パヲラ「金のことしか考えてないと思ってたわ。」

カムロウ「ぼくも。」

ラクト「そろいもそろってお前らなぁ…」

その間も、馬車は荷台を揺らしながらイリアスベルクに向かっていった。

 

 

 

一行は夕方ごろにイリアスベルクに到着した。

イリアス大陸の最大の町というだけあって、日没も近いというのに人で賑わっていた。

三人は馬車から降り、広場に出た。

ラクト「あのよ、考えたことがあんだけどよ。」

到着して早々、ラクトが提案をしてきた。

ラクト「俺は人に聞くより、本で探してみることにするぜ。ついでに宿も探してくる。」

手には何冊か薬草学に関する本を持っていた。

パヲラ「あんた…薬草から見つけるつもりなの?」

ラクト「わざわざ薬じゃなくていいだろ。どんどん候補を見つけて、そん中から決めるってのもありだぜ?」

それを見ていたカムロウが、ばつが悪そうに言った。

カムロウ「…ありがとう、ラクト。本当はぼくが探すべきなのに…」

ラクト「なんだよ、そう落ち込むなよ。」

ラクトは笑いながら言う。

ラクト「むしろこっちがありがとって言いてぇよ。お前は俺にできないことをやってくれてんだ。だから、お前にできないことは俺様にまかせな!」

そしてパヲラを指差しながらこう言った。

ラクト「あとこいつにとやかく言われるのがやだ。」

パヲラ「なんですって!?」

パヲラが怒り始めた瞬間にラクトは逃げるように走り出した。

ラクト「んじゃあとでな!はっはっはっ!」

そして彼は大勢の人の波に消えていった。

パヲラはやれやれとした表情をした。

パヲラ「まぁ…あいつなりの考えなんでしょうね。素直じゃないわねホントに!」

パヲラはいら立ちながら歩き始めた。

しかしすぐにカムロウのほうを見て微笑みながらこう言った。

パヲラ「でも、カムロウちゃんのこと思ってるのは確かね。良い友達ができて良かったわね。」

カムロウ「パオラさんも友達だよ!」

パオラ「あら!もうカムロウちゃんったら!」

そんな楽しい会話をしながら、二人は夜になるまで薬屋を聞きに回った。

 

 

 

 

そして夜、三人は宿の部屋にいた。

ラクトはベッドに横になり本を読み、ラクトとパヲラは椅子に座っていた。

ラクト「…やっぱり難しいか?」

カムロウ「うん…そうみたい…」

何軒か聞きに回ったが、どこもわからないの一点張りだった。イリアスポートに続いて、収穫は0だ。

ラクト「まぁそう簡単に見つかったら、すぐに治せてお終いってわけだからな。こういう結果は予想はしていたんだが、いざそうなると気分が落ち込むよな…。」

もしかしたらあるだろうと淡い期待をしていた三人は気を落とした。

カムロウは故郷のことを思い出していた。

家出同然で飛び出したことや、重症の母が生きているかどうか。不安と焦燥に駆られた。

パヲラはそれを察知した。すぐに話題を変えようと思いラクトに話しかける。

パオラ「ラクトは何か進展はあったの?」

ラクト「俺か?いくつか候補はあったんだけどよ…」

ラクトは起き上がり、パラパラと本をめくった。

ラクト「プクサクの根、カイムケマの実、サニレの葉…このあたりがそうらしい。どれも治癒力を高めてたちまち傷を塞ぐって書いてある。でもよ、肝心の生息域がわかんねぇ。」

パヲラ「…そういうのって、人里離れた遠い場所とか、そんな感じよねぇ…」

…重い空気が流れた。沈黙という言葉が合いそうな時間が長く続いた。

 

カムロウ「…神様に頼んでみる?」

子どもならではの神頼み。カムロウは藁にすがる思いでそう言った。

パヲラ「神様ねぇ…神様?」

パヲラがその言葉に引っ掛かったようだ。そして何かを思い出したようだ。

パヲラ「そうよ!神様がいるわ!」

ラクト「はぁ?神様だぁ?」

ラクトが何を言っているんだという顔をする。

パヲラ「創世の女神イリアス様に聞いてみればわかるかもしれないのよん!」

ラクト「イリアスって…あのイリアスか?聞くってどういうことだよ?」

パヲラ「明日は勇者を目指す少年が、イリアス様に洗礼を施してもらえる「勇者の洗礼」の日なのよん!」

ラクト「それがどうしたってんだよ。」

パヲラ「察しが悪いわねぇ、その時無理言って、カムロウちゃんの頼みを聞いてもらおうってワケ!」

カムロウ「ええっ大丈夫なんですかそれ…?」

いくらなんでも割り込みをしてでも聞くだなんて強引ではないかとカムロウは思った。

パヲラ「イリアス様はあたしたち人間を深く愛していらっしゃるわ!きっと聞いてもらえるわよん!」

ラクトはそれを聞いて考え込んだが、

ラクト「まぁ…神だろうがなんだろうが、手掛かりは欲しいな…」

といって考えるのをやめてしまった。

カムロウ「それで…そのイリアス様ってどこに行けば会えるんですか?」

パヲラはとっさに地図を広げた。イリアス大陸の地図だ。

パヲラ「このイリアスベルクの近くにイリアスヴィルっていう村があるの。そこにイリアス神殿っていう、洗礼の日にイリアス様が降臨する神聖な建物があるわ。明日そこに行けば必ず会えるはず!」

それを聞いていたラクトが愚痴を漏らした。

ラクト「イリアスイリアスって…早口言葉かよ…」

パヲラ「それ、イリアス様に失礼じゃなーい?」

ラクト「わりぃな、俺は神はいねぇ派なんだよ。」

パヲラ「それはもっと失礼よ。さぁ早く寝ましょ!明日は早いわよ!」

その号令と共にカムロウとラクトも寝る準備をした。

不穏な流れになっていた薬探しに希望の光が見えた。

しかし、イリアスヴィルに行って、女神イリアスに会うことはできるんだろうか。もし会えなかったらどうすればいいのか。

母を治す薬について教えてもらえるのだろうか。

そんな不安と期待を抱きながらも、カムロウは目を閉じた。

 

 

 

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