もんむす・くえすと! 勇者ルカと仲間たち   作:J・チェプナクル

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第54話 たとえ弱くても、諦めない

__ルカ達が奮闘している間、ラクト達は…

残った亡者たちを倒していた。

襲ってくる亡者に塩を浴びせ、一体ずつ、確実に、慎重に。

あるいは、チリのハンマーで吹き飛ばしたり。

そうして、出来るだけルカ達に邪魔が行かないように。

黙々と、敵を倒していた。

チリ「ねぇ…」

その最中、チリが口を開いた。

ラクト「なんだってんだ、こんな時に。」

チリ「ルカ達、大丈夫だと思う?」

そう言われて、ラクトはルカ達の様子を視た。

ルカ達の顔には、苦痛の表情が浮かんでいた。

何度も狂戦士に向かっていくも、殴られ、蹴られ、吹き飛ばされている。

苦戦。劣勢。そんな感覚が、なんとなく伝わってきた。

ラクト「…とはいえだな。」

ラクトはやれやれというジェスチャーをした。

ラクト「俺たちは俺たちで、この亡者(ゾンビ)共をルカたちに近付けさせねぇようにしなくちゃならねぇんだぜ。それが、俺たちが一番役に立つことだ。」

ラクト「助けに行ったところで、足手まといになるのはごめんだぜ。」

実のところ、ラクトはまだ、自分の中に恐怖が残っているという自覚があった。

確かに、逃げる事は止めた。敵前逃亡を、自身の身の安全を優先するために、立ち向かうべきであろう壁から逃げ出すことは止めた。

しかし、今のラクトには、ルカ達のような、立ち向かう勇気が、未だ備わっていなかったのだ。

今、こうして足に意識を向けなければ、自然と震えだすに、ガクガクと震えるに決まっている。

正直言えば、逃げ出したい。

けど誓った、もう逃げない。

今逃げ出してしまうことは、ラクト自身の意地が許さなかった。

出来る事なら、ルカ達に協力したい気持ちはあった。

しかし、今ここで、チリと共にルカ達を助けに行ってしまえば、誰がこの亡者を相手するのだろうか。

数の不利を相手しながら強敵を倒すのは至難である。

今はこうして、亡者の相手をすることが、最善なのだ。

そう、ラクトは自分に思い聞かせた。

そして、それを忘れるためか、それとも気になっただけなのか、話の話題を変えた。

ラクト「そうだ。お前何か、回復魔法以外に魔法覚えてねぇのかぜ?」

チリ「えっ?」

ラクト「遠距離攻撃だよ。覚えてたら、ちったぁ楽できるだろ。」

そういえばこいつ、回復魔法以外の魔法を使ったところを、俺は見た事がない。

チリ「…ハンマー投げちゃ、ダメなの?」

ラクト「拾うのが大変だろうがっ!」

いや…ハンマー投げるよりも楽だと思うんだが……

ラクト「なんなら、この俺が教えてやろうか?」

チリ「結構です。」

ラクトはガクッと、姿勢を崩し損ねた。

絶対、覚えたほうが楽だと思うんだがなぁ……

その時であった。

二人は、ラクトとチリは、周囲の空気に妙な違和感を覚えた。

辺りを見渡すと__

 

ラクト「__な…!?」

倒したはずの亡者が、いつの間にか増えていたのだ。

数人しかいなかったはずの亡者が、数十人に。

いや…正確に言えば、()()()()

空を見上げると、無数の炎の玉が揺らめていていた。

それが降り注ぎ、弾けると、亡者が姿を現した。

チリ「これ…まずいんじゃ…?」

チリ「私達が倒したのが、呼び戻されてるってことだよね!?」

イズクが呼び出した亡者たちは、倒しても、完全に倒すことは出来ない。

時間が経てば、再び復活する。

そして今!時間切れ(タイムリミット)!!

すでに、再びこの場に呼び戻される時間になっていた!

ラクト「こいつはやべぇ!助けに行く前に、ここら一帯がまた亡者で埋まっちまうぞ!?」

では、再び倒せばいいだけの話だ。

そう思いながら、ラクトは持っていた塩の入った袋に手を突っ込む。

 

__スカッ。

 

ラクト「……は?」

再び、袋に手を突っ込む。

 

__スカッ…

 

ラクト「な……」

ラクト「なにぃぃぃぃぃ!?」

塩が入ってたはずの袋の中は、空であった。

つまり、これが意味することは。

ラクト「チリは!?まだ塩、持ってるか!?」

チリ「私もない!さっきので使い切ってた!!」

ラクト「どうして塩がもうねぇんだよぉぉぉ!!!」

塩の在庫切れであった。

いくら、村からかき集めた大量の塩であっても、底は尽きるものである。

チリ「ど、ど、どどどどどどど…」

チリ「どうするの!?どうすればいいの!?」

塩がなくて焦る間に、亡者たちは一歩ずつ、ゆっくりと、こちらに進行してきている。

チリ「私達は今、どうするべき!?」

ラクト「クソっ!なにか、なにかねぇのか!」

焦りながらも僅かな希望に賭け、ラクトは自分のカバンをひっくり返してバッサバッサと揺らす。

ラクト「残ってる塩は!?なんでもいい!なにか、なにかねぇのかよぉ!」

カバンからはこぼれ落ちるは…トンカチ、非常食、へそくりの入った袋、等々。

ボロボロと私物が落ちる中に、お目当てのモノ…塩はなかった。

知ってはいた。入ってるはずがないと。

そうであっても、僅かな希望にすがりつきたかった。

そのとき、塩ではない別のモノが眼に付いた。

それは、魔法信号筒と呼ばれるアイテムだった。

ハピネス村での一件、クイーンハーピーを倒した後にルカが使ったのと同じモノ。

渡された時の予備を、ラクトはいくつか持っていた。

ラクト「こ…これはっ!」

とっさに、地面に落ちた魔法信号筒を拾い、真上に投げた。

ラクト「そぉぉらあああぁ!!」

それは空中で弾け、色とりどりの光を生み出した!

…ただ、それだけ。

チリ「何したの!?」

ラクト「悪あがきだ!」

急いで、腰にあるホルスターから、自作の魔導銃を取り出し構えた。そして、魔導銃から魔法を乱射した。

炎、氷、風…何発もの魔法の弾丸を連発した。

それらが迫りくる亡者の大群に命中しても、倒れる亡者は一人もいなかった。

焼け石に水とは、このことを言うのだろうと、ラクトは感じた。

それでも……

ラクト「抗ってやる!最後の最後まで抗ってやる!!」

俺にはまだ、生きる理由が…!

ラクト「俺はこんな所で!死ぬわけにはいかねぇんだあああぁぁ!!!」

 

ラクト「そこで!今、この物語を読みに来ている、暇で暇で仕方の無い諸君!」

この後の展開を予想してみよう!

次の項目から、一つだけ選んで下さい。

①超ラッキー!すごいことが起きて助かる。

②魔法信号筒に気付いた誰かが駆け付け、亡者を一掃する。

③ルカ達が一旦引いて、助けに来てくれる。

④しかし、何も起こらなかった。

 

…とりあえず、この後考え得る出来事はまとめた。

__後は……

ラクト「チリ!岩飛ばせ!!何でもいい!!岩でも木でも土でも何でも!!!」

ラクト「とにかく攻撃の手を緩めるな!!!」

チリ「言われたからにはやるけど…打開できるの!?」

チリ「これじゃあ、もうどうしようもないでしょう!?」

そう言われても、ラクトは魔導銃を構えたまま、銃口を敵に向けたままの姿勢を続けていた。

 

ラクト「_だからやるんだよ。」

 

ラクト「悪あがきってのはさぁ。」

ラクト「もうどうしようも出来ない奴にしか出来ねぇ特権なんだよ!!!」

ラクト「強くなくても、生きるってのは誰にでも出来るんだからなぁ!!!」

__ルカのように、最後まで諦めない勇気を。

 

ラクト「__うおおおおおおお!!!」

ラクトは魔法の弾丸を連射した。

チリは近くの岩を、自慢の大きなハンマーで砕き、粉砕した岩石を飛ばした。

塩と違って、溶けるように倒せるわけではなかった。

一体を倒すのに、かなりの時間を有する。

脚を負傷させても這いずり、腕を負傷させても胴体を貫いても顔を狙っても、変わらず迫り来る。

それでも二人は、諦めなかった。

生きる事を、諦めなかった。

ただ、ひたすらに。がむしゃらに。必死に。

 

____しかし。

亡者の大群は、目前まで迫って来てしまった。

チリ「うっ…!」

もう、手を伸ばされたら届くほど。

そう思えるくらい、囲まれてしまった。

チリ「ダメだった…結局…」

チリ「無駄だったんだ……」

 

__悪あがきとは。

悪足掻きと書く。意味はいくつか存在する。

その意味の内、一つは、

どうしようもないという立場にありながら、しても効果のないことをあせってあれこれと必死に試し、なんとかしようと抵抗するさま。

である。

絶望的な状況を覆す行動を意味していない。

結局のところ、何をしても無意味なのだ。

ラクト「……最悪だぜ。」

ラクト「この後の展開は…」

ラクト「(しかし、何も起こらなかった。)……」

ラクト「結局、(しかし、何も起こらなかった。)ってのかよおおおぉぉぉ!!!」

亡者の大群は、二人に襲いかかった!!!

ラクト「うおああああああああ!!!」

チリ「うわああああああああ!!!」

 

 

 

死を覚悟した瞬間。

二人に飛び付こうとした亡者の頭に、一本の矢が突き刺さった。

チリ「えっ!?」

それだけでは終わらず、何十本もの矢の雨が、二人を避けるように降り注いだ!

ラクト「矢…!?狙撃か!?」

避けるように飛んで来たということは、ラクト達に対して敵意、攻撃する意図はない事を意味する。

つまり……

ラクト「誰かが、助けに来てくれたってことなのか!?」

矢が飛んでくる方向を辿る。

すると、村の門がであろう場所に、二人の人影が見えた。

その人物は…

 

リンドウ「そらそらそらそらぁ!」

弓を持ち、矢を放つカムロウの姉リンドウと。

白い牙のような大剣を片手で持つ男、カムロウの父ハーレーであった。

 

チリ「……もしかして…なんだけど……」

チリ「さっき、ラクトがやった事…魔法信号筒……」

チリ「アレに…気付いてくれたって…ことかな……?」

ラクト「は…はははは……」

ラクト「どうやら、そうみたいだな…はははは……」

さっきまで、死を覚悟していた二人は、生きた心地を感じてはいなかった。

未だに心臓が、バクンバクンと爆発しそうなほどの鼓動をあげていた。

それでも、実感できたことがある。

ルカのように、最後まで諦めない勇気というのは、必ず実を結ぶことがあると。

 

__悪足掻きには。

善し悪し含め、意味のある、評価できる理由が一つだけある。

 

決して、諦めない姿勢である。

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