もんむす・くえすと! 勇者ルカと仲間たち 作:J・チェプナクル
ルカ「__や…やっぱりだめだぁぁ!僕達三人だけの攻撃じゃあ!!まるっきり威力が足りないんだぁぁぁ!!!」
カムロウ「そんな事言ったって!どうしろって言うんだぁぁぁ!!!」
そう叫びながら、二人は狂戦士の強力な攻撃によって吹き飛んでいた。
ルカ達は、攻撃を仕掛けては、反撃を食らって吹き飛ばされるの繰り返しをしていた。
速い速度で宙を舞う二人を、パヲラは衝撃で押されながらも受け止めた。
カムロウ「どうなってんだよ!何回やってもダメじゃないか!」
ルカ「そんな事言われたって、僕が知るよしもないだろ!」
カムロウ「なんだってぇ!?」
ルカ「なんだよ!」
互いに睨み合う二人を、パヲラは首の襟を掴んで止めた。
パヲラ「喧嘩するなら後にしなさい。今それどころじゃないでしょ。」
首の襟を掴まれわちゃわちゃする二人をよそに、パヲラは狂戦士を注視して思考を張り巡らせていた。
パヲラ「うーん……」
目を凝らして注目したのは狂戦士の鎧である。
狂戦士の身体は、死人の身体ではあるが肉体は鍛え抜かれた体つきをしており、とくに特徴的な要素や特別な力を持っているようには見えなかった。
そうなると、何か変則的な要素を含んでいるのは鎧しかないと考えた。
数秒ほど注視して、パヲラは一つの仮説に至った。
パヲラ「あの鎧…魔鉄製だと思うわ。ただの鉄の鎧にしては硬すぎるのよ。」
ルカ「魔鉄だって?」
説明しよう。
魔鉄というのは、魔力の濃い環境によって変質した鉄鉱石や、製錬途中に大量の魔力を注ぎ込むことで生まれる、魔力を帯びた鉄なのである!
魔法金属に分類される。
こうして生まれた魔鉄は、鉄以上の硬度を持つのだ!
ルカ「エンチャントに加えて魔鉄製か…厄介だな…」
カムロウ「けど、一方的に劣勢ってわけでもないみたいだ。」
パヲラ「さっすがカムロウちゃん、良く気が付いたわね。」
ルカ「? どういうことだ?」
パヲラ「良く見て。」
パヲラは狂戦士を指差しながらそう言った。
それに誘導されるように、ルカは狂戦士の方を見た。
良く見ると、狂戦士は肩で息をしていた。
疲れの色ってやつだ。
いくら手慣れの戦士であっても、その体力にも限りがある。
ルカ「そうか…勝機はまだある!」
こうなってくると耐久勝負か何かに思えてくるが…
狂戦士のスタミナが無くなるか、僕達が力尽きるかのどっちかだ。
それでも、まだ勝てる見込みがあるのが分かっただけで、闘志が!気力が!ぐんぐん沸いてきた!
パヲラ「お二人ちゃん、まだやれる?」
カムロウ「やれる!」
ルカ「ああ!」
パヲラは拳を構え、カムロウは大剣を両手で持ち、ルカは剣を握り締めた!
ルカ「真の勇者は…絶対に最後まで諦めたりしない!!!」
ルカ「行くぞ!二人共!!」
「「おおっ!!!」」」
3人は覚悟を決め、再び攻撃を仕掛けようとした__
その時であった。
不意に、狂戦士の顔面に、筒状の物体が飛んできた!
ほんの一瞬、その場にいる全員の頭上に「?」が浮かんだ。
筒状の物体は急に弾け、色とりどりの光を生み出した!
目くらましを食らった狂戦士は、顔を手で抑えて身悶えだした!
その特徴からすぐに分かった。あの筒は…
ルカ「魔法信号筒!?一体、誰が…」
???「この俺がぶん投げてやったのさ。」
声がする方を向くと、そこには何本かの魔法信号を手に持ったラクトと遅れてこちらに駆け寄るチリがいた!
ラクト「魔法信号筒を使用する時は、危険だから人に向けちゃダメって話だけどよぉ。」
ラクト「人じゃなけりゃあ、問題ねぇよなぁ?」
チリ「みんな大丈夫!?すぐ回復させるから!」
チリはルカ達に近寄り、回復魔法で治癒を始めた。
ルカ「二人共…あっちは大丈夫なのか?」
ラクト「ああ、心配ねぇ。」
ラクトは胸を張り、カムロウの方を向いて笑みを浮かべた。
ラクト「お前の親父と姉チャンが、一躍買ってくれるってよ。」
カムロウ「(父さんが……)」
カムロウは遠くの方に目を向けた。
姿こそ見えないが、嵐のような風が吹き荒れているのが見えた。
それを見たカムロウは、感慨深いモノを感じたようだった。
ラクト「それで?どういう状況なんだ?なんでお前らは四苦八苦してんだ?」
パヲラ「アイツの鎧が厄介なのよ。魔鉄製の硬い鎧に加えて、衝撃吸収のエンチャントがあるみたいなの。」
ラクト「ワーオ、厄介極まりねぇなぁ。」
チリ「どうやって倒すの?」
ルカ「あの鎧を壊してアイツにダメージを与えるには、あの鎧を壊せるほどのダメージを与えるしかないんだ。」
カムロウ「だから、みんなで同時に攻撃を…」
ラクト「いや…」
僕達の案を止めるかのように、ラクトは首を横に振った。
ラクト「お前らは鎧を破壊するんじゃなくて、アイツをぶっ叩くことだけを考えろ!」
カムロウ「えぇ!?なんでぇ!?」
カムロウは不満そうに発言した。
しかし、ラクトは彼なりの考えがあったようだ。
ラクト「アイツは生前、手慣れの戦士だったはずだ。鎧を壊したとしても、怯まずにカウンターを仕掛けるとハズ…」
ルカ「そうか…それは確かにそうだな……」
確かにそうだ。盲点だと感じた。
狂戦士を倒すことは、鎧を壊すことではない。
鎧を壊した後に、狂戦士にダメージを与えることだ。
ラクト「そこで俺に考えがある!」
彼はドヤ顔でそう言った。
パヲラ「考えぇ?ちゃんとした策なんでしょうねぇ??」
ラクト「お前ぶっ飛ばすぞこの野郎。」
ラクトは腰に携帯してあった魔導銃を、片手でクルクルと回しながら取り出し、胸の前で構えた。
ラクト「いいか?俺には、ありったけの
カムロウ「
ルカ「なんだって……!?」
パヲラ「確かそれ、試し撃ちしている時に閃いた即興モノじゃなかったっけ?ドコが奥の手よ。」
ラクト「てめぇマジでぶっ飛ばすぞ。」
なんか所々茶番があった気がするが無視しよう。
カムロウ「その奥の手で壊せるのか!?」
ラクト「分からねぇ。俺も使うのは初めてだし、壊せるほどの威力なのかどうかすらも…」
ラクト「だが、かなりの火力が出せるってことは確かだぜ!」
ラクト「あとだな……」
まだ話は終わってないようだ。
ラクト「今の俺が、
チリ「一度だけ!? なんで…?」
ラクト「消費が激しいんだよ。一回使えば、俺の魔力はもうすっからかんよ。」
ラクト「そうなると俺は、この戦闘じゃあもう魔法を使えなくなる。リタイアだ。その後は、お前らに任せることになっちまう。」
パヲラ「うーーん……一度だけ………」
その言葉を聞いて、パヲラは腕を組んで不安の表情を強めた。
ラクト「なんだよ、不安か?」
パヲラ「そりゃそうよ。」
パヲラ「その
すると、パヲラは服を脱ぎ始めた。
ルカ「(何でこの人は服脱ぎ始めたんだ?)」
チリ「えっ、ちょっ、ちょっと、何してるんですか?」
パヲラは服の下に、鎖かたびらを着ている。防御、肉体負荷トレーニングも兼ねているようだ。
なので、脱ぎ捨てられた服はズシン、かなり重いような挙動をして地面に落ちた。
それらを脱いだパヲラは上半身裸になった………と思いきや、なぜかピンクのブラジャーだけ脱いでいなかった。
ルカ「(何でこの人はブラジャーを付けているんだ?)」
身軽になったのか肩を回し、深呼吸した後にパヲラは一言叫んだ。
パヲラ「ちょっと本気出しチャオッ☆!」
カムロウ「えぇ!?」
すると、全身に…いや、身体中の筋肉という筋肉に力を込め始めた!
カムロウ「パヲラさん…いままで、本気じゃなかったんですか!?」
パヲラ「最初から本気出しても、無駄に体力を消耗するだけよん。」
パヲラ「誰かさんが全力を出すつもりなら、あたしも出さないと負けた気がしてねぇ!」
実際、パヲラの身体というのは、豪傑やマッチョのような、ムキムキの筋肉ボディのような身体ではなく、二の腕、太ももといった箇所はモチモチのプルプルである。
しかし、その柔らかな体が!
パヲラの意思に呼応するかのように!!
固い筋肉の塊と化していくのである!!!
しかも、ただのマッスルボディではない。
それは徐々に、ゆっくりと、空気を入れられ、膨らんでいく風船のように。
首、腕、肩、背中、上半身の筋肉が膨張しているのである!!!
パヲラ「この筋肉を見よ!!!」
それはもはや、パンプアップの域を超えた筋肉膨張。
個々がはっきりと分かる筋肉の塊、見事な逆三角形、純粋な攻撃力に、パワーに特化した人間の身体である。
パヲラ「んー素晴らしいっ!!!」
ルカ「いや、ブラ外せよ。」
ラクト「俺もそう思う。」
渋々とブラジャーのホックを外しながら、パヲラは話を続けた。
パヲラ「
ラクトに加えて、パヲラも本気を出すようだ。
今この場で、これほど心強いことがほかにあるだろうか。
さっきまで劣勢だったはずだが、今の僕は希望の光が照らされたような気分だ。
そうしている間に、チリはカムロウの傷の回復を終えたようだ。
チリ「治療完了!後、何かやってないことある?」
ラクト「あぁ、忘れてた。」
ラクト「
ラクトは魔力を込めた指先で宙にルーン文字を描き、それを両手で叩き、魔力を弾けさせた!
ルカ、カムロウ、パヲラの攻撃力が上がった!
カムロウ「うん?」
ルカ「なんだこれ?」
自分の両手を見ると、淡い光が纏っていた。
パヲラ「元はエンチャントに使われる魔法ね。けど、永続はしないわ。一時的な間だけ攻撃力を上げるだけよん。」
チリ「そんな魔法も覚えてるの…?」
カムロウ「スゴイなぁ、ラクトは!」
ラクト「ま、俺様ならってトコよな!はははっ!」
ラクト「どうよ勇者サマ。俺だってやる時はやるんだぜ?」
ルカ「……あぁ。お前はやる時はやる奴なんだな。」
心強い。本当に心強い。
これで準備は整った。
後は___
__遠くからドスンと足音がした。
どうやら狂戦士は、視界が戻ったらしい。
ルカ「来るか…!」
パヲラ「なにもアタシたちから出向く必要はないわん。」
ラクト「来いよ!手厚く歓迎してやるよぉ!!」
狂戦士は目標を定めるとすぐに、こっちに向かって走り出した!
ルカ「みんな!迎撃態勢だ!ラクトとパヲラは前に!チリとカムロウは僕と一緒に後衛に!」
カムロウ「分かった!」
チリ「後ろね!」
ルカ「頼んだぞ!二人共!」
ラクト「なんだぁ?
パヲラ「そうよ、合わせなさい。」
ラクト「お前が合わせんだよぉ!!」
そう言いながら、ラクトは銃を構え、パヲラは拳を構えた!
パヲラ「先、行くわよ!」
ラクト「おう!行って来い!」
パヲラはしゃがみ、クラウチングスタートの姿勢をした後、爆発するかのように駆け出して行った!
ラクトは銃を前に構え、照準がパヲラに被らないように、狂戦士に合わせた!
駆け出したパヲラと、こちらに向かって来る狂戦士との距離はどんどん縮まっていく。
互いの距離が目前になった時、先に仕掛けたのは狂戦士だった!
狂戦士は右腕の豪腕を鳴らし、右ストレートのパンチを放ってきた!!!
__ミス!パヲラは攻撃を避けた!
パヲラはその右腕を、目と鼻の先と言える距離で華麗にいなして避けた!
そして、パワーに特化したその身体を!全身の筋肉に、全身全霊の攻撃を放つために!!両腕に力を込めた!!!
パヲラ「__
パヲラ「___
パヲラは両腕の拳で、怒涛の連撃を放った!!!
連撃は、狂戦士の胸、腹部の辺りに向かって放たれた!
その衝撃を例えるなら、高い滝から流れ落ちる水流が、腹部に向かって落ちてきているかのような衝撃とドドドドドという音をしていた!!!
その攻撃を受けた狂戦士は、強烈な衝撃にどうすることも出来ないのか、反撃する瞬間が見当たらないのか、成す術なく食らっていた。
その間を、ラクトは逃さなかった!
ラクト「行くぜぇ!食らいなぁ!!」
構えた魔導銃の先端から、バチバチと稲妻が走る!
ラクト「__
ラクトは魔力の光線を放った!
ブォォォン…!という衝撃音と共に、ラクトは反動に耐えながらも後ろにのけぞった。
魔導銃から放たれたのは、とても大きな青白い光線。
直線状でパヲラが当たらない位置から真っすぐ放たれた!
それは狂戦士に直撃し、パヲラの連撃と共に継続してダメージを与えた!
ラクト「うおおおおおおお!!!」
パヲラ「ぬおおおおおおお!!!」
カムロウ「チリ、今がチャンスだ!」
後衛にいた三人は攻撃に入る機会をうかがっていた。
それは、チリのハンマーでルカとカムロウを飛ばし、上空から攻撃を仕掛けるという方法だった!
既にチリの持つ巨大なハンマーの上に、ルカとカムロウは待機していた。
ルカ「今更言うのもなんだけど…本当に僕達二人を飛ばせれるか!?大丈夫なのか!?」
チリ「何言ってんの!」
チリ「これが今の私に出来る事なんだから、やらせてよねっ!」
チリはハンマーを両手で持ち、両足で踏ん張り、ハンマーを持ち上げた!
チリ「行くよ!二人共!」
カムロウ「あぁ!」
ルカ「頼む!」
チリ「
そして二人を、空高く打ち飛ばした!
カムロウ「これで終わりだああああ!!!」
ルカ「これで終わりだああああ!!!」
二人は剣を構え、上空から同時攻撃を仕掛けた!
疾風の
カムロウ「
ルカは空高い場所から脳天めがけて強烈な一撃を放った!
ルカ「天魔頭蓋斬!!!」
ダ ブ ル ス ラ ッ シ ュ ! ! !
パヲラの「
ラクトの「
カムロウの「
ルカの「天魔頭蓋斬」
4つの攻撃が今、同時に合わさる!!!
ルカとカムロウの斬撃が、狂戦士の鎧に当たった瞬間…
小さなヒビが入った。
それは次第に、広がり、大きく走っていき…
バ ッ ッ キ ィ ィ ィ ィ ィ ン ! ! !
…と、確かな音だけが響いた。
その音はまさしく、いままで破れやしなかった、狂戦士の鎧が砕けた音だった!!!
ルカ「(やった…………!!!)」
一瞬、一秒も満たない間でルカは思った。
しかし、その安泰はすぐに覆された!
スローモーションに動いて見える中で、ルカは、狂戦士はまだ倒せていないことに気が付いた。
その狂戦士の眼はまだ、闘志の眼に燃えていたのだ!
ラクトの言う通りだった。
まだ鎧を壊しただけで、撃破に至っていないのだ。
致命傷を与えたわけではない。
奴はこのまま攻撃を仕掛けてくるはず………
カウンターをしてくるはず………
ならばどうするか。
答えは一つだ。
ルカ「ダメ押しだああああああ!!!」
その一瞬の判断から生まれた号令に、
仲 間 た ち は 呼 応 し た ! ! !
チリ「
チリはハンマを横に構え、振り回し投げた!!!
チリ「
チリの巨大なハンマーが、横に回転しながら投げ飛ばされた!!!
ラクト「(
ラクト「(だけど……!!!)」
ラクト「男には引けねぇ時があんだよぉぉぉ!!!」
ラクトは
カムロウ「
カムロウは着地した瞬間に飛び上がり、大剣を上段に構え、袈裟斬りを放った!!!
パヲラ「ぬうううぅぅぅん!!!」
パヲラは右手を握り締め、渾身の一撃を放った!!!
ルカ「いっっっけえええぇぇぇぇぇ!!!」
ルカは全身全霊を込めた突きを放った!!!
「「「「「おおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」」」」」
僕達の総攻撃を食らった狂戦士は、静止画のように止まったままだった。
その間は、とても長く感じた。実際は、3秒ぐらいしか経ってないはずなのに。
今の狂戦士は、死体同然。血が流れるわけではない。
しかし、その身体に変化があった。
身体のあちこちから、煙のような光が次々と、勢い良く噴き出し始めた!
そしてその身体は光に包まれ………
大きな青い炎の塊となって空に昇っていった。
沸騰する血の狂戦士を撃破した!!!
ルカ「や………やった…………」
ルカ「今度こそ、倒せたぞ…僕達の手で!!!」
僕は感動で震えが止まらなかった。
強敵を倒せたという喜び、興奮、身体の奥から、芯から溢れんばかりの感情を処理しきれない。
ラクト「ぜぇ…ぜぇ…もう…全部出しきった……」
ラクトは尻餅をついてガックリと脱力した。
これでラクトの残存魔力は0だ。
そんな僕達の近くで、パヲラ、カムロウ、チリは万歳をしていた。
パヲラの身体の筋肉はすでにしぼみ、元の身体に戻っていた。
パヲラ「はーい、バンザ~イ!」
カムロウ「ばんざ~い!」
チリ「バンザ~イ!」
三人は歓喜の声を上げていた。
間違いない。
勝った。
間違いなく、勝ったのは僕達だ!!!
__そんな中、ルカの脳裏に一瞬、忘れていた事がよぎった!
ジョージとマモルの事だった。
彼らは因縁の、友人の仇と戦っているはずだ。
今、どうしているのだろうか?
ルカ「そうだ……ジョージさんとマモルさんは____」
__そう言おうとした直後だった。
ド ッ ゴ オ オ オ ォ ォ ォ ン
爆発するかのような地響き、強風、衝撃が伝わってきた。
その衝撃は、
それと同時に、空の暗雲が一層暗くなった!
カムロウ「うわぁ!?」
ラクト「へぁ!?な、なんだぁ!?」
さっきまでの歓喜の声が、嘘かのように一瞬にして去った。
たった一つの
パヲラ「考えられるとしたら…」
チリ「まさか、二人に何かあったんじゃ…!?」
ルカ「…行ってみよう!!」
尻餅をついていたラクトは急いで立ち上がり、僕達は谷底の方に向かった。
___空は暗雲、それもかなり分厚く、もはや陽の光も届かない。
風は止まり、吹きすらしない。
ここにあるのは、怪しく、重々しい空気のみ。
そして僕達は、ジョージとマモルが落ちて行った谷底の崖に着いた。
そこにいたのは……
力無く地面に倒れこむジョージとマモルがいた!
そして相対していたのは……
怪物。その言葉がとても当てはまる存在だった。
上半身は裸だったが、右腕は身体に釣り合わないほど大きく変形し、左右対称とは言えないほどだった。
右目は大きく開き、ギョロリと眼球を動かしていた。
さらに肌は青黒く変色している。
ルカ「な…なんだ!?アイツは!?」
なんだあのバケモノは…!?
アイツもイズクの持つ反魂鏡で呼び出された亡者なのか!?
だとしたら…イズクはどこに?
ジョージとマモルが戦っていたあの宿敵はどこに?
姿は見えない。またしても、逃がしてしまったのか!?
ルカ「イズクは逃げたか!?」
パヲラ「いや…あの怪物の、右の手の甲を見て。」
その右の手の甲には、鏡が埋まるように浮き出ていた。
くっつくというよりは、身体の一部になったと言うべきか。
そんな風に、浮き出ていた。
…ということは。
ルカ「鏡ってことは…アイツがイズクなのか!?」
カムロウ「なんで右腕があるんだ!?」
おかしい、確かにヤツと対峙した時、右腕なんてなかったし、右目だってなかったはずだ!
…何があった?
僕達が戦っていた間に、何があったっていうんだ!?