もんむす・くえすと! 勇者ルカと仲間たち   作:J・チェプナクル

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前章前半 勇者の名の下、集う仲間
第1話 勇者ルカ、初めての戦いと出会い


…ここは、どこだろう。

周囲は柔らかな光に溢れ、荘厳な雰囲気が満ちている。

これは、夢だろうか__?

???「ルカ……勇者ルカ……」

……どこからか、僕を呼ぶ声が聞こえる。

とても穏やかで、そして慈愛に満ちた声だ。

僕の前に現れたのは__

なんと、創世の女神イリアス様のお姿だった!

イリアス「勇者ルカよ……私の声が聞こえますか?」

ルカ「答える理由はない。」

どうせ夢なのだろう。答える理由なんてありはしない。

イリアス「…………」

ルカ「…………」

イリアス「…次にそのような口を利けば、裁きます。よろしいですね?」

ルカ「すみません…」

夢じゃないっぽい…。

 

イリアス「……今から、何十億年も前。あなた達人間の時間感覚では、計り知れないほど昔の事…」

イリアス「私は、この世界を創世しました。まず大地を、そして空を、海を、緑を、動物を、鳥を、虫を造り…そして最後に、あなた達「人間」を作り出したのです。」

イリアス「しかし…私とて、全知全能ではありません。人間を造り出す過程において、幾多もの失敗作を生んでしまいました。」

イリアス「それが、魔物__醜く、そして忌まわしい存在です。魔物とは、すなわち悪。時には暴力で、時には淫らな手段であなた達人間を苦しめるのです。」

ルカ「………」

イリアス「私は、か弱き人間達を深く愛しています。そして人間を苦しめる忌まわしい存在__魔物を、深く憎んでいます。」

イリアス「ときにルカ……あなたは、とうとう「旅立ちの年齢」となりますね。」

ルカ「はい……幼いときからずっと、その日を待っていました!」

「旅立ちの年齢」とは、イリアス様の洗礼が受けられる年齢。それはすなわち、勇者として認められるということでもある。

勇者を目指す僕は、「旅立ちの年齢」に達する日を待ち望んできたのだ。村で平和な暮らしを送りつつも、剣技の修行に明け暮れながら___

そして!その「旅立ちの年齢」に達する日は、とうとう明日なのである!

イリアス「私はこれまで、何人もの少年に洗礼を施してきました。勇者としての祝福と、女神の守護を幾多の若き戦士に与えてきたのです。」

イリアス「しかし__彼らは未だ、現在の魔王を討ち滅ぼせずにいます。今より500年前、当時の魔王を滅ぼした勇者ハインリヒのような若者はまだ現れないのです。」

勇者ハインリヒ__

500年前、悪逆非道を尽くした当時の魔王を滅ぼしたという伝説の勇者。

その剣技は大地を割り、強大な邪悪にも屈さず、正義を貫き通す__

まさに、勇者の中の勇者だ。

真の勇者を目指す僕にとって、憧れの人物であることは言うまでもない。

イリアス「しかし、ルカ__あなたこそが、魔王を討ち滅ぼす勇者となるのかもしれません。」

ルカ「え……?ぼ、僕が……?」

イリアス「行きなさい、ルカ。私は、いつでもあなたのことを見守っています__」

 

 

 

柔らかな朝の日差しを浴びながら、僕は目覚めの時を迎えていた。

さっきのあれは、夢だったのだろうか____いや、決してただの夢なんかではないはず!

夢を通じて、イリアス様が語りかけて下さったのだ!

ルカ「イリアス様、ありがとうございます。どうか、この僕を見守っていて下さい__」

いつものように、まずは起床後のお祈り。そして次に、見肌離さず装着している形見の指輪へと語りかける。

ルカ「おはよう、母さん。いよいよ今日、僕は勇者として旅立つよ……」

そして体を起こすと、僕は朝の仕度を開始した。天気も良く、いつも以上に清々しい朝だ。

今日の午前にイリアス神殿に向かい、勇者の洗礼を受ける。そして、いよいよ魔王退治に旅立つのである。

この家には、しばらく戻ってこない__そう思うと、感慨もひとしおだ。

ルカ「……魔王を退治するまで、ここには帰ってこないんだからな。もしもの事があってもいいように、綺麗にしておかないと……」

朝食を終えた僕は、いそいそと掃除を始めた。立つ鳥跡は濁さず、とはよく言ったものだ。

正直なところ、旅立ちを目の前に控え、居ても立っても居られないだけだが__

 

村人「た、た、大変だぁ!」

ルカ「……ん?なんだ?」

ベッドを整えていると、外から男の叫び声が聞こえてきた。

騒いでいるのは、木こりのハンスさんらしい。

こんな朝から、いったい何事なのか__

村人「近くの森に、魔物が出たぞぉ!」

ルカ「な……なんだって!?」

この平和なイリアスヴィルの近くまで、魔物が__!?

イリアスヴィルは小さな村ながら、世界に誇る大神殿がある。イリアス様を奉った、イリアス神殿だ。

その偉大な御力に守られ、村に魔物は近づきもしないはずなのだが__

 

平和な村は、たちまちパニックに陥ってしまった。よりにもよって旅立ちの控えた今日、村に魔物が襲ってくるなんて__ど、どうしよう……!?

実のところ、僕は魔物と戦ったこともなければ、見たことさえない。

だが、これから魔王退治の旅に出ようという身。こんな田舎に現れる魔物程度に尻込みするなど、勇者として失格だ!

ルカ「よし、行くぞ!」

剣を片手に、僕は家を飛び出していた。僕が生まれ育ったこの村を、僕自身の手で守るために!

 

村の中は、大混乱に陥っていた。

朝早くから農作業をしていた人達は、自分の家に飛び込んでいく。

そんな人の波を逆らうように、僕は村の入り口へと駆け出していった。

そんな僕を見とがめ、隣家のおばさんが声を張り上げる。

ベティおばさん「おやめよ、ルカ!ここは、イリアス神殿の兵隊さんに任せとくんだ!」

ルカ「大丈夫だよ、ベティおばさん!僕は勇者なんだ!」

ベティおばさん「勇者って、あんた……まだ洗礼を受けてないだろ!?こら、行くんじゃないよ!」

確かにまだ洗礼は受けていないから、正式には勇者じゃないけれど__

それでも、雑魚モンスター程度に負けたりするものか!

ベティおばさんの制止も振り切り、僕は村の通りを駆け抜ける。そして、村の外へと飛び出した!

 

外に続く一本道をひた走り、森へと飛び込む。そしてふと足を止め、僕は周囲を見回した。

ルカ「はぁ、はぁ……魔物は、どこにいるんだ?」

ひっそりと静まりかえった森で、僕は周囲をきょろきょろと見回す。

あてもなく森に飛び込んだものの、敵はどこにいるのか__そう思った時だった。不意に、脇道から一体のモンスターが姿を見せた!

 

 

スライム娘が現れた!

 

 

スライム娘「あはは、美味しそうな男の子~!」

スライム娘は、呆気に取られる僕を前にしてくすくすと笑う。その粘液状のボディを、ぷにぷにと揺らしながら__

ルカ「こ、これが……魔物……」

とりあえず剣を構えたのはいいものの、僕はそのまま硬直してしまった。魔物をこの目で見るのは、生まれて初めてである。思ったよりも迫力

があり、意外に可愛くて……そして、異様。じゅるじゅるとうねり、波立つ体は、人間とは程遠かった。こんな人外の相手に、本当に僕が勝てるのだろうか__などと、さっきまでの自信をあっという間に喪失してしまっていた。

スライム娘「あれれ……?もしかして、モンスターを見るのは初めてなの~?」

ルカ「………」

図星だが、返事はしなかった。ビビっている、そう思われるのが嫌だったからだ。手の震えが伝わり、剣先がぶるぶると揺れてしまう。僕は両手に力を込め、せめて震えだけでも押し隠した。

ルカ「あの……ここは、人間の村の近くなんだ。だから、大人しく引き返してくれないかな?」

剣を構えたまま、僕はおずおずとスライム娘に語り掛けていた。断じて、怖いわけではない……たぶん。

相手が魔物といえども、無駄な戦いなどしたくはないのだ。ちゃんと話せば、分かってくれるかもしれない__

ルカ「村の人達は、みんな怖がってるんだ。もし、君に悪気がないのなら__」

スライム娘「あはは……キミ、平和主義者ってやつ?そんなお願い聞けないよ~。あたしだって、お腹がぺこぺこなんだから。…それとも、きみがごちそうしてくれる?」

ルカ「そ、それは…できない…」

モンスターの多くは、人間の精液を餌とするらしい。しかし、人間にとってそれは大いなるタブー。魔物と交わるのは、イリアス五戒の一つ、魔姦の禁によりきつく戒められているのだ。

ルカ「…イリアス様の五戒律で、魔物との交わりは禁じられているんだ。だから、精を与えることはできないんだよ…」

スライム娘「じゃあ…ムリヤリ搾っちゃうもんね~♪」

ルカ「くっ…!」

やはり、戦いは避けられないようだ。

 

僕が剣を構えたその時__突然、魔の前に別のビジョンが広がった。

イリアス「勇者ルカよ…私は、あなたの心の中に語り掛けています。私はいつ…」

 

ルカ「えっ!?」

今、途中で切れたんじゃないか?イリアス様、何かを言い掛けていたぞ……?

スライム娘「どしたの?ぼーっとして…」

ルカ「あ、いや…」

僕は我に返り、あらためてスライム娘と対峙した。よし、行くぞ_!

 

相手がモンスターでも、乱暴なことはしたくない。だけど__

ルカ「い、いくぞ…!」

実戦は初めてだけど、毎日マキを何十本も割って鍛えてきたのだ。そんな僕の一撃を食らえば、雑魚モンスターなんて_

ルカは斬りかかった。しかし、スライム娘はひらりとかわした。

ルカ「え……?」

そうだ。マキと違って、モンスターは避けるのだ。

スライム娘「えへへ…そんな大振りの攻撃、当たらないもんねー♪」

ルカ「…なら、小振りの攻撃なら当たるのか?」

スライム娘「…ひ、ひみつ!」

大振りはダメだ。目一杯に振り切らず、手首を用いた最小限の振りで__

ルカ「でやっ!」

見事、スライム娘に攻撃が当たった。

粘液の体に切れ込みが入った。

ルカ「やった…!」

攻撃が当たった喜びも束の間、スライム娘の体はみるみる再生していった。

ルカ「…あれ?」

スライム娘「えへへ…あたし、スライムなんだから。剣の攻撃なんて、効かないもんね~♪」

ルカ「そ、そんな……!!ズルいよ…!」

再生するだなんて、最初の敵にしてはズルすぎないか?

こんなの、反則じゃないか。斬って倒せないなら、どうやって戦えばいいんだ…?

スライム娘B「あ、いたいた~」

スライム娘C「こんなところにいたんだ?」

ルカ「えっ…!?」

なんと脇道から、新たにスライム娘が二体も現れた!

3体1だなんて、不利すぎるじゃないか!ああ…イリアス様、僕はどうすればいいのですか?

 

 

 

 

 

 

 

一方そのころ、森の中を進む三人の姿があった。

剣と盾を武器に戦う世間知らずの少年カムロウと、マフラーをたなびかせながらすぐ逃げ出す青年ラクト、そして、派手な恰好をした武闘派の旅芸人パヲラだ。

カムロウは母が重傷を負ったため、その傷を一瞬で完治するような薬を探しに旅に出た。

ラクトとパヲラはその途中で出会った、カムロウの旅に同行してくれてる友達である。

三人は問題なく、森の中を順調に進んでいた。

カムロウ「この調子なら着きそうかな?パヲラさん。」

パヲラ「そうねい。朝早くから出発して正解だったわん。」

ラクトはあくびをしながらパヲラに質問した。

ラクト「でもよ、こんな朝早くから行く必要はあったのかよ?洗礼とやらはいつやるんだ?」

パヲラ「知らない。」

ラクト「知らないだぁ!?なんで知らねぇんだよ!?」

パヲラ「なによ!あたしは勇者じゃないのよう!?知らなくて何が悪いのよ!だから間に合うように早く出かける必要があったのよう!」

ラクト「おめぇが知っていれば、もう少し寝ることができたことがわかんねぇのかこの「オカマ野郎」!」

パヲラ「はぁ!?「オカマ野郎」!?なによこの「素敵マフラー」!」

ラクト「す…「素敵マフラー」だとてめぇやんのかこの野郎!」

 

二人はあーだこーだ口論をしながら歩く。そんな時だった。

カムロウ「…!ねぇ二人とも、あれって…!?」

カムロウが指差したその遠くの先には、一人の紫髪の少年と三体の魔物がいた。

ラクト「おいおい、あれって襲われてないか…!?」

ラクトはビビりながらそう言う。

パヲラ「いや…戦ってるようにも見えるわねい…あの坊や、剣を持っているもの。」

カムロウ「でもあれじゃ…」

どう見ても劣勢だ。このままじゃ少年は魔物にやられてしまう。

それを見てカムロウは少年を助けたくて体がうずうずした。黙って見ているわけには行かなかった。

あの日、母を助けられなかった記憶が蘇る…あんな思いはもうしたくない!

カムロウ「ぼく、助けに行く!あのまま放っておけない!」

パヲラ「そうよね…どのみち、この先の村に用があるんだから!」

カムロウとパヲラはすぐに戦闘準備をした。それを横目にラクトは茂みの中に逃げ出した。

ラクト「んじゃ頑張れよ!俺様は避難すっからよ!あばよ!」

すぐにラクトの姿は見えなくなった。それを二人は呆然と眺めていた。

パヲラ「…あいつすぐ逃げるよねい…戦おうともせずに…」

カムロウ「…ぼくは、ラクトが無事ならそれでもいいよ?」

パヲラ「んまぁ!カムロウちゃんったらなんて優しいのよう!もうなでちゃう!なでまくっちゃう!」

パヲラはカムロウを抱きしめながら頭をなでまくった。カムロウは恥ずかしそうに顔を赤くした。

パヲラ「さて、こんなことをしている場合じゃなかったわねい。早くあの坊やを助けに行きましょう!」

カムロウ「うん!」

カムロウとパヲラは、少年を助けに勢いよく駆けだした。

 

 

 

 

 

ルカ「くっ……!」

ルカは三体の魔物を前に、剣を構えながらも後ずさりをしていた。

三体もいると目線が定まらない。どっちから攻撃を仕掛けてくるかわからない。

スライム娘たちはそれを見て笑っている…

もうだめだ…このまま逃げるべきだろうか…?

そんな時だった。魔物の後ろから走ってくる二人の影が、魔物たちに攻撃を仕掛けた。

カムロウ「せいやぁ!」

パヲラ「おらぁ!」

スライム娘B「きゃっ!?」

スライム娘C「な、なによ!?」

魔物たちは攻撃を避けた。そしてルカの目の前に、同じくらいの年の少年と、奇抜な恰好をした大人が立った。

ルカ「き…きみたちは…?」

パヲラ「話はあとよん、パープルボーイ!」

カムロウ「助けに来たんだ!みんなで倒そう!」

そういうと二人は魔物に向かって戦闘の体勢をとった。

ルカは予想しない援軍に驚いていたが、すぐに剣を構えた。

いまはこの目の前にいる…魔物たちを倒さなくては!

 

 

 

 

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