もんむす・くえすと! 勇者ルカと仲間たち   作:J・チェプナクル

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第1話 新たな大地、新たな魔物

僕達、勇者御一行は、砂浜沿いを歩きながら西へと向かう。目指すはサン・イリア城だ。

アリス「サン・イリア城とやらに向かうと言っていたな?」

ルカ「ああ。サン・イリアの王様に、勇者としての道を示してもらうんだよ。」

アリス「ふん、馬鹿馬鹿しい……」

アリスはうんざりした様子だ。

ラクト「しょうがねぇだろ?こいつ(ルカ)は勇者なんだからよぉ。んでルカ、ここからどっちの方角だぜ?」

ルカ「ここから西、歩いて3日ってところかな。」

 

出発から少しほど経った。

仲間の談笑を聴き、海から来る潮風を味わいながら、僕たちは着々と砂浜を歩き、進路を進みつつあった。

 

ラクト「なぁ、パヲラ。お前…その話、本当かよ。ウミウシが貝を捨てて、奪取って利を得たってのはよぉ。」

パヲラ「本当よ。信じられないと思うけど。」

 

パヲラ「猛毒のクラゲを捕食して、クラゲの棘を身体に身に纏うウミウシ。植物の葉緑体を体内に取り込んで、光合成をするウミウシ。」

パヲラ「どう考えても、奪取という利を得たとしか思えないわ。」

ラクト「……じゃあ、なんだ。その内、ウミウシが陸に上がって、俺達人間を襲いに来るって?道具とか武器を奪ってよぉ。」

チリ「いやいやいや…それはないって。」

カムロウ「なんか、随分な話になってない?」

そうやってたわいもない話を聞きながら、しばらく砂浜沿いを進んでいると__

 

若い女「きゃぁぁぁぁ!___」

不意に、若い女の悲鳴が響き渡った!

見れば__か弱い女性が、魔物に襲われているのだ!

若い女「こ、来ないで下さい!」

ナマコ娘「私、お腹が減っているの……あなたでもいいわ、精気を吸わせて……」

若い女「や、やめて……」

 

ジョージ「むっ!可憐……」

ジョージは若い女を見てそう言った。

マモル「見惚れてる場合かっ!」

 

ルカ「__やめろ!!」

僕は飛び出し、女性と魔物との間に割り込んだ!

若い女「あ、あなたは……?」

ルカ「ここは僕に任せて、逃げて下さい!」

若い女「は、はい……!」

女性は、その場から離れていく。

しかし、ナマコ娘は追おうともしなかった。

どうやら、その興味は僕に移ったようだ。

 

ナマコ娘「美味しそうな人間ね。私のお口で吠え込んで、搾ってあげる……」

ルカ「ふ、ふざけるな……!」

僕は、すかさず剣を構えた!

ルカ「みんな!戦闘準備だ!」

「「「「「「あぁ!」」」」」」

 

ナマコ娘が現れた!

 

ナマコ娘と戦うのは、僕を含め、カムロウ、パヲラ、チリ、ジョージの5人だ!

 

ルカ「セントラ大陸の魔物と戦うのは初めてだけど、イリアス大陸の魔物とそう違いはないはずだ!」

先に動いた僕は、ナマコ娘に雷鳴突きを繰り出そうとした__

 

ナマコ娘「__掛かったわね…!」

ナマコ娘は妙な動きをし始め、ナマコの身体をルカに向けた!

その不穏な空気を、ジョージは予感した。

ジョージ「来ませり…!」

ジョージ「ルカ殿!カムロウ殿!危険だ!!」

ルカ「えっ!?」

カムロウ「俺も!?」

しかし、遅かったようだ。

ナマコ娘のナマコの身体の口から、白い糸状のモノが大量に飛び出した!

ジョージ「ルカ殿、お許しを!」

ジョージはルカを突き飛ばし、代わりに攻撃を食らった!

 

ルカ「こ、これは…!?」

チリ「白い…網…?」

ナマコ娘の穴から飛び出たモノ。

それは白く細い糸のようなモノが互いに絡まり網状になっており、しかもネバネバしているのだ。

カムロウ「えらいネバネバしてんな…」

しかも、すごい粘着力のようだ。カムロウは糸状の粘液を取ろうともがいているが、中々取れなさそうだ。

すると、カムロウに異変が起きた!

カムロウ「なんだこれ!?イタタタ!!」

ルカ「どうしたカムロウ!?」

カムロウ「肌が焼けるように痛い!とにかく、刺されるみたいに鋭く痛いんだよ!」

ルカ「それ…もしかして、山芋のとろろと同じか!?」

カムロウ「いや、それは違うなぁ…」

よく見ると、カムロウの肌が腫れている。

ジョージ「この粘液…肌に触れた個所に、ヒリヒリと焼けるような痛みを感じる。これは一体…?」

ジョージの肌も同じように腫れていた。

 

ルカ「なんだ…これ!?」

その時、ハッとパヲラは思い出したかのように語り始めた。

パヲラ「そうか…キュビエ器官!おおよそのナマコの種が持つとされる器官だわ。もともと内蔵だったモノが変化した器官よ。」

パヲラ「外敵に襲われた際に、粘液の絡んだ細い糸の網を体内から放出して、外敵の動きを封じる役割を持つ!種類によっては、このキュビエ器官に毒も含まれてる種もいるとか…」

ルカ「それの魔物版か!」

 

チリ「あの白い網は…洗濯魔法(クリーンアップ)でどうにかできると思うけど……もし、まだ何回も出せるのだとしたら、助けに行ったところで私達もやられるかも……」

パヲラ「実際のナマコは、キュビエ器官を一度出したら、再生まで時間がかかるらしいけど…魔物だったら、それは考え得るわね…」

ルカ「じゃあ尚更、救出できないじゃないか!」

 

パヲラ「ジョージちゃん!カムロウちゃん!あまり動かないで!その粘液がもし目に入ったら失明するかもしれないし、体内に入ったら死ぬかもしれないわ!」

カムロウ「なんだって!?」

ジョージ「くっ…!なんとも、もどかしい…!しかし、下手に動くのもまずい……」

2人は白い粘液の網に絡まり、砂浜に身体を伏せたままの状態だ。

動こうにも身動きが取れない。かといって下手をすればより悪化する。

なんともまずい状況だ…!

ナマコ娘「ふふふ、そうね。そのまま動かないほうが良いわよ。私にとっても、あなた達にとっても。」

カムロウ「……………」

 

カムロウ「…分かった。じゃあ、そうさせてもらおう。」

ナマコ娘「……?」

なんとカムロウは、さっきまで焦っていた様子から打って変わって、まるでリラックスしたような様子を見せた!

カムロウ「俺はここから動かない。ただし……()()()()()()()()()()()()()。」

顔つきも変わった。

冷静というか、なんとも涼し気な顔だ。

ナマコ娘「…それはどういう意味?」

カムロウ「これはある意味、【忠告】だ。お前は今、その場所から動かないほうが()()。お前にとっても、俺達にとっても。」

カムロウは手を広げたまま突き出し、人差し指をナマコ娘に差してそう言った。

カムロウ「難しい話じゃあ……ないだろ。子どもじゃあるまいし……」

ナマコ娘「…………」

少しの沈黙が続いた。

ナマコ娘「今のあなたが……その場から何かできるとは思えないけれど……」

カムロウ「そう見えるのか?じゃあ、どうする?」

カムロウは、人差し指を差す姿勢を崩さないままだ。

カムロウ「本音を言うなら、もう帰ったほうが身のためだとおもうよ。そーすれば全部、何事も無く丸く収まる……」

ナマコ娘「…………」

沈黙はまだ続く。

 

その時、僕は何かに気が付いた。

ルカ「(ま…まさか、カムロウの奴は……ハッタリを…脅しを仕掛けているのか!?)」

今の状況は…かなりの心理戦だと僕は思う。

というのも、カムロウのあの指差し……ただの指差しじゃないと感じた。

わざわざ、あの姿勢のまま動かないでいるのが不自然だ。

かといって何をするつもりなのかは僕たちもわからない。ナマコ娘も同じだ。

実は何もできないというハッタリかもしれないし、反撃をするという意思表示なのかもしれない。

攻撃をされるという実感…それをナマコ娘も感じているから、すぐ行動に移せずにいるのだ。

だから…もしかすると…次の行動で、カムロウは()()()()()()()()()()()だ!

だから次が、その時が、攻撃を仕掛けろという合図なのだと思う!

 

ナマコ娘「……そう。」

沈黙が破られた。

ナマコ娘が選んだ次の行動は__

 

ナマコ娘「このまま帰るつもりはないわ!」

攻撃をするという行動だ!

ナマコ娘はナマコの身体の口から水の魔法を放った!

ルカ「水の魔法だって!?」

水流の塊が発射された!

 

カムロウ「__だろうと思ったよ!」

カムロウの突き出した手から、冷たい風が吹き出した!

カムロウ「氷風魔法(ブリザード)!!!」

カムロウは手から、凍り付くような強風を放った!

冷気の強風は、ナマコ娘が発射した水流の塊を吹き飛ばし、大量の水滴がナマコ娘のほうに押し返された!

吹き返された大量の水滴は、ナマコ娘の身体に当たり濡らす。

その水滴が、カムロウが放つ冷たい風によって急速に冷やされ、段々と凍っていく!

ナマコ娘「なんてこと…飛ばされた水が凍るなんて…!う、動きにくい…!」

ナマコ娘の身体が、固い氷に覆われてしまった!

 

カムロウ「__今だ!」

ルカ「ああ!」

まさに攻撃をする絶好のチャンスだ!だったら、最大限の威力を持つ技で攻撃するほかない!

僕は後ろに振り返り、チリに向かって走り出した!

ルカ「チリ!頼む!」

チリ「ええ!」

チリは大きなハンマーを構えてくれた!

そして、僕がハンマーの上に乗るのを確認すると、ハンマーを思いきりぶん回して、上空に飛ばしてくれた!

 

ルカ「__最後に勝利するのは、僕たちだ!」

これから僕が放つ技は、天魔頭蓋斬!

高いところから飛び降り、頭上から強力な一撃を食らわせる必殺剣だ。

人間である僕だと、周囲に登れる物がないと使うことができない技だが、チリのハンマーで空中に飛ばしてくれれば問題はない!

ルカ「くらえ!天魔頭蓋斬だ!」

 

上空から放たれた渾身の一撃は、見事、ナマコ娘にヒットした!

ナマコ娘「こんな人間が、まさか……」

僕の必殺剣を受けたナマコ娘は小さなナマコの姿になった!

 

ナマコ娘をやっつけた!

 

 

ルカ「ふぅ……」

足元に転がるナマコを見下ろし、僕は一息吐いた。

ルカ「危ないところだったな…」

パヲラ「えぇ、そうねぃ。あの魔物が私たちを甘く見てくれて良かったわ。侮るというのは、戦いにおいて一番やっちゃいけない事なのにね。」

ルカ「僕にも言えることだな…肝に銘じておこう。」

パヲラ「…そういえば…私の知り合いに恐怖を抱かないというのを嫌う奴がいたわね…」

ルカ「どんなやつだよ……」

 

カムロウ「あの…助けてくれません?」

倒れたままのカムロウとジョージは、ジーッと僕を見ていた。

ルカ「あぁ、ごめん。ちょっと待ってて…」

 

すると、背後に誰かの気配。

ルカ「アリス、僕も随分やるようになっただろう…?」

そう言いながら振り返ると__

 

__立っていたのは、さっきの女性だった。

若い女「あの…ありがとうございます。」

ルカ「い、いえ」

若い女「……嬉しかったです。あなたのような方に出会えて……」

ルカ「そ、それはどうも……」

すると、その若い女性は不意に頬を染めた。

若い女「あの…私のお婿さんになって下さい。」

 

……………?

 

ルカ「え、えええ……!?いきなり、それは……!」

ラクト「わお、旅の途中で求婚される奴を見るなんて初めてだぜ。おったまげたなぁ。」

女性は、しゅんと肩を落とす。

若い女「私じゃダメですか、旦那様……?」

ルカ「いや、旦那様じゃないよ。」

ラクト「え、旦那様じゃないの?」

ルカ「黙れお前。」

 

ルカ「でも、いきなり結婚は、さすがに……」

マモル「若ァ、何がいけねぇんでい?別嬪さんですぜ、もったいねぇ……」

ルカ「いや…綺麗な女性だけど、いくらなんでもそれはまずい。こういうのは、まずは文通でもして仲を深めてから…」

マモル「文通から始めるのか……」

 

若い女「じゃあ、しばらく私と一緒に暮らしましょう。いいでしょう、旦那様♪」

不意に、女性の肉体が変化し始めた。

ルカ「え……?」

スカートがめくり上がり、巨大な殻のようなものが膨張していく__

 

貝娘が現れた!

 

ラクト「なんか妙だと思ったぜ……戦いが終われば急に現れ、しかも求婚、変だと思ってたが…こいつ魔物だったのか!しかも貝の魔物か!!」

貝娘「私の殻の中で、一緒に過ごしましょう。旦那様も、いっぱい満足させてあげますから、ずっとずっと二人っきりで、幸せに暮らしましょうね……♪」

ルカ「そ、それはできない……!」

貝娘「なぜです?私が魔物だからですか……?」

ルカ「いや、むしろその強引すぎる性格の方が……」

ラクト「あっ、そこ素直に言うのね。」

向こうは退く様子などないようだ。

ルカ「どうやら、戦うしかないらしいな!」

 

チリ「ねぇちょっと!カムロウ達は!?」

ルカ「ごめん、後で!」

カムロウ「はぁ!?」

チリ「じゃあ、ごめん!後で!」

カムロウ「はぁぁ!?」

遠くに倒れたままのカムロウとジョージは、ほったらかしにされた……

 

ラクト「なぁ、ルカ…良いのかよ、あの2人助けないで。」

ルカ「後で助ける!まずはこいつ(貝娘)をどうにかしたほうが良い!」

マモル「婚約破棄の方が大切ですか…っと。」

ルカ「その表現の仕方は…他に無かったか?」

 

カムロウ「……その…俺達は急患だと思うんだけど………」

 

ジョージ「カムロウ殿、アレを見よ。」

カムロウ「?」

ジョージの視線の先には…砂浜を歩くとても小さなカニがいた。

ジョージ「カニだ。なんとも小さい。」

カムロウ「……………」

 

 

カムロウとジョージが戦えない代わりに、ラクトとマモルが戦闘に出た!

ラクト「……んで、これから貝の魔物と戦うわけなんだが………」

ラクトは自身の武器である魔導銃をガンスピンしながら、貝娘と対峙していた。

僕も剣を抜いて、貝娘の出方をうかがっていた。

ルカ「あの貝殻…堅そうだな。」

パヲラ「いや、ルカちゃん。気をつけるのは触手のほうよ。」

貝娘から出ている数本の触手、それに気をつけろとパヲラは忠告してきた。

うねうねと動く貝娘の触手は、いかにも素早く、そして遠くまで届きそうな見た目をしていた。

ルカ「……確かに、あの触手は遠いところまで届きそうだな。」

パヲラ「そういう事よん。」

僕は剣を構え、パヲラは拳を構え、2人で背中合わせで戦闘態勢に入った!

 

貝娘「それっ!」

貝娘は無数の触手を鞭のように振るってきた!

ルカは剣を振るい、パヲラは蹴り技で、迫る触手から身を守る!

ルカ「くそっ!触手のせいで近づけない!」

一本だけならまだしも、触手は無数にある。

ルカ「ダメだ、パヲラ!これじゃ、多勢に無勢だ!手数の多さの意味で!」

パヲラ「手数の意味で?じゃあこっちも増やせば良いわね。」

そう言うと、パヲラはラクトとマモルに向かって声掛けをした!

パヲラ「二人とも!」

 

ラクト「おうよ!」

マモル「あいよダンナァ!」

それに応えるように、ラクトは魔導銃を構え、マモルは紙の式神を取り出した!

ラクト「土泥魔弾(アースショット)!」

マモル「鉄砲式神陣(てっぽうしきかみじん)!」

ラクトは重い土の塊を何発か発射し、マモルは紙の式神をばら撒き、鉄砲のように突撃させた!

大量の弾丸の幕が、貝娘に襲い掛かる!貝娘の周りは土煙が舞い、衝撃音が鳴り響く!

ラクト「オマケもやるよ。」

マモル「ついでにアッシも。」

ラクトは筒状の物体をぶん投げ、マモルは紙の式神を束ねて投げた!

2人が投げたモノは土煙の中に入っていくと、大爆発を起こした!!

ラクト「わお。俺達、相性良いかもな。」

マモル「コンビ名でも付けます?」

ラクト「ギブアンドテイクってのは?」

マモル「相互扶助ですか……」

ラクト「あー……やっぱ、ナシで。」

 

ルカ「ラクト、一体何を投げたんだ?」

ラクト「改造した魔法信号筒。まだ開発中の段階のものだけどな。爆発するまではいってんだが……」

そう言いながら、土煙のほうに視線を移す。

そして、土煙が晴れると、中から貝殻に閉じこもる貝娘が現れた。

ラクト「うーん、効いてないかぁ……」

チリ「多分、貝殻を閉じて防御したね。それにあの貝殻、だいぶ固いみたい。」

ルカ「くっ…!なんて便利な身体なんだ!」

閉じれば要塞、開ければ鞭の攻撃が来る。

それに、あの爆発に耐えれるほどの貝殻だ。となれば、僕の攻撃でも通用しないだろう。

突破口が、攻略の仕方が見つからない…!

かといって正面突破なんて____

 

__その瞬間、ルカに閃きが生まれた。

ルカ「……そういえばアイツって……貝の魔物でいいんだよな?」

チリ「ええ、そうだけど。見たまんま…だけど。」

その時、ルカにある一つの手段が思い浮かんだ!

ルカ「そうか!いや、()()んだ!()()()()()()()()()!」

ルカ「誰か!アイツに貝殻を閉じさせたままにすることはできるか!?」

チリ「それ、とっておきなの…私じゃない?」

チリは大きなハンマーを肩に担いだ。

そして走り出し、貝娘が貝殻を開ける前に、思いっきりハンマーを叩き込んだ!

重い一撃に、周囲の砂が一瞬だけ舞う。それでも、貝娘の貝殻が壊れる様子はない。

そして、チリは、ハンマーを貝娘の貝殻に押さえたままにしていた。

チリ「それで!?ここからどうするの!?」

ルカ「そのまま押さえつけて!」

僕は剣を手の甲に乗せて水平に、そして狙いを定めて突きを放った!

ルカ「魔剣・首刈り!」

狙いは……この貝娘の二枚貝、貝殻の端の隙間だ!!

 

ドスッ…と、僕の剣は狙い通り刺さった!

そして、次にやることは……

ルカ「うおおおおぉぉぉぉ!!」

剣を小刻みに動かしながら、貝娘の周囲180度を移動する!

かなり滑稽なことをしているように見えるが、これにはちゃんと意味がある!

この行動は………

チリ「あの動き…もしかして……」

パヲラ「ええ、そうよ…【貝柱】を斬ってるのよ!!」

そう、僕の料理の経験に基づいての行動だ!

ホタテといった貝には、両方の貝がらを閉じる働きをする筋肉…閉殻筋がある。

これは、僕たちが普段、貝柱と呼んでいる部分だ。

貝柱を斬れば、貝はもう貝殻を閉じることはできない!

こうして説明している間に、僕は貝娘の貝柱を斬ることに成功した!

ルカ「貝柱を斬ってやった!どうだ!僕の料理スキルを侮ったな!」

 

ルカ「これでもう閉じることは出来ない!」

そう言いながら、僕は攻撃をするために貝娘の貝殻をこじ開けた!

するとそこには__

 

__僕を鋭く睨みつける貝娘がいた!

貝娘「悪い旦那様は……こうです!!」

なんと、貝娘は無数の触手を伸ばしてきた!

僕の身体は、触手に絡め取られてしまった!

ルカ「しまったあああ!!!」

迎撃の準備をもう済ませていたとは……!

一気に婚約まで話を進めるだけはある!…ってそんなことを言ってる場合か!

ルカ「はなせっ…!」

剣を振り回しながら解こうとするが、触手はどんどん僕の身体に巻き付き、拘束はどんどん強くなっていく…!

ルカ「ぐっ、ぅぅぅ……!」

貝柱を斬ったから、貝殻が閉じることはないと思うが……

このままでは僕がやられる!

 

ラクト「くそっ…不用意に開けるからだぜ!」

ラクトは僕に駆け寄り、ルカに巻き付いた触手を解こうとした!

貝娘「私と旦那様の間に入らないでください!」

貝娘は一本だけ触手を伸ばしてラクトの首に巻き付き、きつく締めあげた!

ラクト「うげぇっ!」

ルカ「ダメだ、ラクト!離れるんだ!」

ラクトは自分の首に巻き付いた触手を掴むが、強靭な触手らしく、引き剥がせなさそうだ。

ラクト「チクショウ!こうなったら…!本当はやりたくねぇ【案】なんだが…()()()()()()!!」

ラクトは、持っていた魔導銃の銃口を、自身の身体に突きつけた!

ルカ「ラクト!?何をする気だ!?」

ラクト「()()()()()()()()()()()()!」

ラクト「重力付加魔弾(ヘビーウェイトショット)!!」

ドォォ…ンと重さを感じる音が響いた!

すると、貝娘は苦い顔をした。

例えるなら、何か重いものを引っ張り上げる時の顔だ。

ラクト「俺の身体を【重く】させた!」

しかし、ラクトも苦しい顔をした!

ラクト「だが、俺の身体にはちと負担が大きすぎる……!肺が…潰れそうだ…!!」

以前、パヲラにこの魔法を放った時、パヲラはなんともなさそうだったが、それは恐らく鍛え上げた身体だったからかもしれない。

しかしラクトは違う。パヲラと比べれば強い身体ではない!だから苦しい顔をしているんだ!

貝娘「は…離してくださいっ!」

貝娘は、ラクトの首に巻き付いている触手を回収しようと試みたが、ラクトはがっしり掴んで触手を逆に離そうとしない!

ラクト「離すかよぉ……!離せるモンなら離してみろよぉぉぉ………!!!」

ラクトは腕っぷしはあるが、触手の拘束を解けるほどの力はない。

しかし今、彼の身体は魔法でより重い力が働いている!

大岩に腕をがっしり鷲掴みされている感覚と表現すればわかるだろうか。

おそらく貝娘は、その感覚に襲われている!

だから、大岩のように重くなったラクトの手から、触手を戻そうにも戻せないのだ!

 

さらにラクトは、ルカの身体に巻き付いた触手をまとめて束ね、掴み上げた!

ルカに巻き付いていた触手の拘束が解かれた!

身体が自由になった!そして、ラクトの言う通り()()()()が出来た!

貝娘の触手はラクトが掴んでいる!貝柱を斬ったから貝殻は閉じれない!

まさに絶好のチャンスだ!

ルカ「そこだああああ!!!」

僕は剣を両手で握りしめ、横一文字に斬り払った!

貝娘「!!!」

渾身の一撃を、貝娘に与えた!

貝娘「そんな…旦那様……あぁぁ……!」

 

貝娘は小さな貝の姿になった!

 

貝娘をやっつけた!

 

ルカ「………」

さっき封印したナマコの隣に、貝が並ぶ。

容赦なく叩きのめして、よかったのだろうか。

思い込みが激しく強引だが、悪い奴とは限らないし……

アリス「実に迷惑で厚かましい女だったな。ああいう奴が、魔物の評判を(そう)めるのだ。」

アリスは尾で砂浜にざくざく穴を掘ると__

アリス「少しばかり痛い目を見て、反省するがいいわ。」

あたふたしている貝とナマコを放り込んで、埋めてしまった。

ルカ「おいおい、ナマコまで……」

アリス「死にはせん、少し反省しろ。」

チリ「ひえぇぇ……」

ルカ「……魔王の懲罰、恐るべし。」

 

ルカ「とにかく、先を急ごう。早くサン・イリア城に行って、道を示してもらわないとね。」

アリス「自分の行く道を、どこの馬の骨ともわからん奴に示してもらうとは……つくづく、貴様はドアホだな。」

ルカ「馬の骨って……サン・イリア王はとっても凄い人なんだぞ。本当なら、僕達なんか、口も聞けないくらい偉い賢者様なんだ。

アリス「ドアホ、余だって偉いわ。魔王だぞ魔王。そんな馬の骨より、数億倍偉いわ。」

ラクト「お前、何と張り合ってんだよ。」

 

ジョージ「ルカ殿、お怪我は……」

心配するように、ジョージが駆け寄ってきた。

ルカ「大した怪我はないよ、だいじょ……」

……ちょっと待て、ジョージ?

軽く周りを確認すると、いつも通り立っているカムロウと目が合ってしまった。

…しまった、2人のこと完全に忘れてた。

ルカ「………あのネバネバは……」

カムロウ「もう取った。」

ルカ「……………」

 

カムロウ「お前ぇ…なぁ。絶対、忘れてただろぉ。俺たちの事。もうこのまま出発するって流れだったろぉ。」

ルカ「うん。ごめん。忘れてた。」

カムロウ「……………」

 

カムロウは「まじかよ……」みたいな顔をして僕を見てきた。

ルカ「いや、ごめん。本当にごめん。」

カムロウ「……………」

 

カムロウ「次はない?」

ルカ「ない。うん。ない。本当に。」

カムロウ「……………」

 

カムロウ「なぁ、ジョージさん。なんとも思わない?」

ジョージ「終わり良ければ総て良し……」

カムロウ「…そうかぁ。」

 

 

……色々あったが…僕達は再び、西へと進んだのだった。

 

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