もんむす・くえすと! 勇者ルカと仲間たち 作:J・チェプナクル
サン・イリア城内__
僕たちは全員合流し、アイスクリームを食べながら移動していた。
すると、ふと、地下へ続くような階段が目に入った。
チリ「なにあれ?」
ルカ「地下への階段っぽいけど……」
パヲラ「地下図書館への入り口ね。サン・イリア城の地下には、世界中の知識が結集しているとも評されてる大図書館があるのよ。」
そういえば、このサン・イリア城には学者がちらほら見かけた。
学者が多い理由は、この大図書館目当てなのかな。
ルカ「世界一の図書館か、すごいなぁ……アリス、ちょっと行ってみようか?」
アリス「本は食えん……」
カムロウ「アリスさん、本は食べれませんよ……」
パヲラ「それがねぇ…ルカちゃん。身元が確かな者しか許可が下りないらしいのよ。しかも、許可が下りるまで一週間ぐらいかかるかも。」
ルカ「そんなにかかるのか……でも、正直なところ、特に用事はないし……わざわざ許可を取る必要はないな。」
ルカ「さて、少し休もうか……」
ラクト「そんで昼飯、何にする?パスタ食わねぇか?ミートソース。マカロニの。」
ルカ「いやいや、サンドイッチだ!ミネストローネスープ付きの。」
カムロウ「ピザだろ!サラミ乗せてるやつ!」
ジョージ「魚料理はないのか?」
アリス「カプレーゼ。」
チリ「まーた始まったぁ…昼ごはん論争……」
マモル「いつもの流れなら、あと30分くらいですかね?」
パヲラ「それで結局、アリスちゃんの恐喝で決まるのよね…」
そう言い合いながら休憩所に向かっていると、誰かが僕の名を大声で呼んでいた。
衛兵隊長「ルカ殿はいるか!?さっき、王に謁見を申し込んだルカ殿だ!」
赤い羽根飾りを付けた衛兵隊長が血相を変え、僕の名を必死に呼んでいるのだ。
カムロウ「おいおい、ルカのことを呼んでないか?」
ルカ「ヤヤヤヤヤ…やっぱり、洗礼を受けていない身での謁見はマズかったのか……?」
ラクト「ん?申請用紙にはそんなのは書いてなかったはずだよなぁ?どっかでバレるってのはねぇと思うけどなぁ……」
おどおどしながら、僕は衛兵隊長の前に進み出た。
ルカ「は、はい……ここにいます。」
衛兵隊長「おお、お主か。」
衛兵隊長「これより至急、王が謁見なさる。ただちに来られるがいい。」
ルカ「え……?いったい、どういうことだ……?」
カムロウ「実は王様はヒマだったり……」
ラクト「ナワケッ。それで王が務まるかね。」
ルカ「なんなんだろ、いったい……」
とにかく、サン・イリア王が僕を呼んでいることは確かだ。
急いで玉の間に移動しようとした__
パヲラ「__待ちなさい。用があるのはルカちゃんだけよ。みんなでゾロゾロ行くと王様がびっくりしちゃうわ。」
ルカ「確かにそうだな……アリスだけは、連れて行ってもいいか?」
パヲラ「分かったわ。あたしたちはここで待つわ。」
他のみんなは休憩所で待っていてもらおう。
するとアリスは乱暴にラクトの首を後ろから掴んだ!
アリス「では、サンドバッグを持参ということで……」
ラクト「いやなんで俺ッ!?」
こうして僕たちは、王の間へと慌ただしく招かれたのだった。
不機嫌そうな様子のアリスと、アリスに首を掴まれ引きずられるラクトを従えながら__
サン・イリア城、王の間。
玉座に座っている王様は、統治者というよりも偉い賢者様のようだった。
柔和そうな表情に、穏やかな眼差し__
しかし、どこか落ち着きのないようにも見える。
衛兵隊長「お連れしました、王様。」
サン・イリア王「ふむ、では下がるがいい。この者に内密の話があるのだ。」
衛兵隊長「はっ……」
サン・イリア王は、早々に衛兵隊長を追い払ってしまった。
この場には王と僕、そしてアリスとサンドバッグ代わりにポカポカ叩かれてるラクトの4人きり。
いかに僕が勇者と名乗る者とはいえ、これでは不用心ではないのだろうか__
サン・イリア王「ルカと名乗る旅の者よ……ひとつ、無礼な質問を許してもらいたい。」
ルカ「え……?は、はい……」
サン・イリア王「お主……洗礼を受けていない、ということはないか?」
ルカ「ううっ!!」
いきなり、一番痛いところを突かれてしまった!
どうする?とぼけた方がいいのか……?
ラクト「これって、最悪かなぁ?勇者として正直に言うか、それとも名誉のために嘘を言うか……」
アリス「どうするかはアイツ次第だな。」
ルカ「……………」
少し悩んでしまったが、本当のことを、正直に言う事にした。
ルカ「……そ、その通りです。僕は、洗礼を受けていません……」
すると__
サン・イリア王の目が、かっと見開かれたのである。
ラクト「あ、ダメっぽい?」
アリス「ふん………」
ルカ「す、すみません……!」
や、やっぱりダメだったのかな__
サン・イリア王「おお!やはりお主こそが、イリアス様のお告げにあった通りの……!」
ルカ「え……?ええ……?」
呆気に取られる僕の前で、サン・イリア王は語り始めた。
サン・イリア王「あれは昨晩……私の夢枕に、イリアス様が立ったのだ。美しい御髪に、その清らかな御尊顔。汚れない体を覆う、薄い衣服。その姿はまるで__」
アリス「……そんな事はどうでもいい。先を語らんか。」
ルカ「お、おい!アリス!王様になんてことを言うんだ!」
ラクト「(あ、いや…そういえばこいつも王か。魔王だしな。ウン。同格だよな。)」
サン・イリア王「……ともかく、イリアス様は私にこうおっしゃったのだ。洗礼を受けていないルカという者が、間もなく現れる。「祝福なき勇者」の彼こそ、魔王を打ち倒す者なのだ__と。」
ルカ「ぼ、僕が……?」
なるほど、そういう事だったのか!だから洗礼の有無を聞いたのか!
サン・イリア王「では祝福なき勇者よ、道を示そうぞ!このセントラ大陸に住む、三人の賢者を訪ねよ!」
ラクト「ほーん……」
アリス「………」
サン・イリア王「そして彼等に己が力を示し、それぞれの証を授かってくるのだ!三賢者に認められた者にのみ、私はこれを授けよう!」
王の玉座の隣。
そこには、いかにも立派そうな剣があった。
きらびやかに輝き、細かな装飾が施された剣だ。
サン・イリア王「これは真の勇者が手にすべき剣、「女神の宝剣」!この剣を前にすれば、あらゆる魔物はひれ伏し、魔王さえ逃げ惑うという!」
ラクト「わお!豪華な装飾だ!もし売ったら大金になりそうだなぁ……ん?
ゆっくりアリスの方を向いてみた。
アリス「………」
アリスはまるで平然とした様子。
ラクト「(……もしかして、ただ豪華な剣なだけ?)」
どうやら、魔王はひれ伏しも逃げ惑いもしないようだ。
サン・イリア王「さあ、三賢者から証を手に入れて参れ!そうすれば、お主にこの剣を授けよう__」
アリス「下らん茶番だ、付き合っていられるか。」
アリスはおもむろに、その剣の前へと歩み出た。
ルカ「おい、アリス!何を__」
アリス「……ふん!」
アリスはその剣を掴み上げると__
その次の瞬間、「女神の宝剣」は粉々に砕け散ってしまった!
サン・イリア王「な、なんと__!?」
ルカ「ア、アリス__!?」
ラクト「お前何やってんだアリスフィーズゥゥゥ__!!!」
アリス「見ての通りだ、ルカよ。こんな玩具では、魔王どころか四天王さえ傷一つ付けられん。」
アリス「三賢者?勇者の証?こんな年寄りの妄言に従ったところで、時間の浪費だ。」
ラクト「だからって剣を壊すこたぁ、ねぇだろぉぉぉ!!金の浪費だぞ!!せっかく売りに出そうとしたのに……壊れ物は価値が下がるのを知らねぇのか!?」
アリス「知らん。」
ラクト「知っとけ!!」
サン・イリア王「……ぉぉぉ……」
サン・イリア王の顔面は蒼白で、怒るとかそういう次元ではない。口を開けたままガクガクと震え、目は虚空を向いてしまっている。
アリス「ろくでもない王の代わりに、余が勇者の道というものを示してやろう。」
アリス「四精霊の地を訪れ、彼女達の力を借りるがいい。」
ルカ「よ、四精霊……?」
アリス「サラマンダー、ウンディーネ、シルフ、ノーム……このセントラ大陸に、彼女達ゆかりの土地が散在しているはずだ。そこを探し出し、四精霊の力を借りるのだ。」
ルカ「……その四人の力を借りると、どうなるんだ?」
アリス「強大な力を得ることができる__彼女達に認められさえすればな。」
ルカ「……本当なのか…?だいたい、魔王のお前に勇者の道を示してもらってもなぁ……そんなおかしな話があるか?」
ラクト「いや……ルカ。アリスの話は
ルカ「そうなのか…?何でなんだ…?」
ラクト「その四精霊ってのは……森羅万象の権化っつってもいい!それぞれの属性そのものといってもおかしくない奴らだ!精霊の力を得るってのは、属性の力そのものを身に宿すことと同じになる…だから、強大な力を得るってのは
ルカ「属性の力を身に宿す…?確かに、強くなれそうだけど……」
ラクト「【なれそう】じゃあねぇ、【なれる】んだ!
ラクト「それにルカ、火のサラマンダー…水のウンディーネ…風のシルフ…土のノーム…これ、なーんか聞き覚えねぇか?」
ルカ「……あっ!まさか…!?」
ルカ「魔王軍四天王!?」
魔王軍四天王…彼らもそれぞれ一人ずつ、扱う属性を持っている。
グランベリアだったら火、アルマエルマだったら風みたいに。
ラクト「やっぱりそう感じるか!だとしたら、四天王と対等に戦える力としたら、その四精霊の他にいねぇよな!?」
ルカ「………」
ラクト「第一、神殿に現れなかった上に、その洗礼を受けさせなかった本人が夢の中に現れて、「洗礼を受けていない「祝福なき勇者」が魔王を打ち倒す者」なんだのかんだのって…なんか都合の良い話だと思わねぇか?筋が通り過ぎてる!」
ラクト「女神イリアスがお前になんかしたかぁ?祝福とかご加護とか!お前から聞いた話じゃあ、夢の中で応援してるだけじゃあねぇか!」
ラクト「それだったらお前に剣技を教え、魔物を封印できる貴重な剣をくれたアリスの方が、よっぽど信用できると思わねぇか?」
ルカ「そ、そうだけど……」
アリス「では、このろくでもない王に言われた通りにするか?三賢者とかいう連中に認めてもらったところで、「女神の宝剣」は木っ端微塵だぞ。」
ルカ「う……確かに、その通りだ。」
そもそもあんな剣をもらったところで、全く何の役にもたたなかっただろう。
アリスの言う通り、三賢者に会うなどという試練自体が徒労になっていたところなのだ。
ルカ「………分かった、信じるよ……」
僕がそう言ったとき、奇怪な笑い声が響いた。
サン・イリア王「ふぁっはっはっ!おお、イリアス様……刻が、見える……ふふ、あはは……」
アリス「ぬお、壊れおったか。」
ラクト「あーこりゃもうダメだ。トんでらぁ。」
どうやらサン・イリア王は多大な精神的ダメージを受け、気の毒な精神状態になってしまったらしい。
アリス「………」
するとアリスは、急に衝撃波で窓を破壊した!
ラクト「なんで窓を?」
アリス「隠蔽のためと言えば分かるか?」
ラクト「把握。」
ルカ「…?」
騒ぎを聞いて、衛兵隊長が王の間に飛び込んできた!
衛兵隊長「お、王……どうなされたのですか!?」
無残に床に散る「女神の宝剣」を見て、衛兵隊長はたちまち血相を変えた。
衛兵隊長「こっ、これは!!「女神の宝剣」が粉々に!?」
衛兵隊長「ル、ルカ殿…これは…!?いったい何が…!?」
ど、どうしよう…?
ルカ「えっと…その、これは………ぼ、僕は何も見ていません。」
つい、僕は嘘を吐いてしまった。
衛兵隊長「そ、そうなのですか…?しかし…」
アリス「そこの窓から突然に魔王が現れ、その剣を破壊してしまったのだ。」
衛兵隊長「ま……魔王が…!?」
ルカ「(こいつ、自分でやっておいて……!)」
ラクト「た、隊長さん…ルカが見てないのも無理もねぇ…!けど、俺は見たんだッ!おぞましい姿だった……ッ!そこの窓から、とてつもない速さで現れたんだよっ!王様を卒倒させた上に、「女神の宝剣」を壊してどこかに行っちまったんだぁ!」
衛兵隊長「確かに、この剣を破壊するなど、魔王ほどでなければ不可能なはず!」
ルカ「………」
なんだその演技は………
衛兵隊長「大変だ、今すぐ防備を固めなければ!!」
たちまち、城内は大騒ぎとなってしまう。
ラクト「おいルカ。バレない内に逃げようぜっ。」
ルカ「あ、ああ…!」
どさくさに紛れて、僕たちは王の間を後にしたのだった。
ラクト「いや~どうだったよ?俺様の演技力ぅ?うまくダマせたよなぁ~~ハハハッ!」
アリス「ああ、絞め殺したいぐらい名演技だったぞ。」
ラクトの首を片手で掴みながらアリスは評価した。
ラクト「現在進行形で首を絞められてるんですけど~~??」
ルカ「……」
……それにしても、なんか、とんでもないことになったなぁ。__
サン・イリア城内。王の間からこっそり抜け出し、何事もないような顔をしながら休憩所に向かっていた。
衛兵「大変だ、魔王が襲撃してきたぞ!王の間まで踏み込み、逃げ去ったようだ!」
衛兵「なんと、王はご無事なのか!?」
衛兵「怪我はされておらんようだが、ショックが激しいようなのだ……」
衛兵「おい!「女神の宝剣」が破壊されたというのは、本当なのか!?」
城内は、大変な騒ぎとなってしまっている。
ルカ「アリス……もう少し、何かやり方はなかったのか?おかげで、王様が壊れちゃったじゃないか……」
アリス「ふん。寝言ばかり抜かすから、目を覚ましてやったのだ。」
騒ぎの張本人は、平気な顔だ。
ラクト「だからってあんな豪華な剣を粉々にすることはなかったよな。黙って素直に貰えてりゃ、たぶん一ヶ月くらいは潤沢な資金を得れたのによぉ。」
ルカ「お前もお前だ!さっきから!売って金にしようとか考えるな!そういうのはだいたいアシがついて、とんでもないことになるんだぞ。」
ラクト「ケェァ~ッンだよ。お前なぁ。ウチの今の資金はカツカツなのは分かってるだろ?魔物の素材とか手に入った金品を売るだけじゃ足りねぇ~のっ!」
ルカ「だいたいアリスのせいなんだろ。」
ラクト「そう。」
僕たちの旅の資金…圧迫してるのはだいたいアリスの食費だったりする。朝昼夕晩4食、おやつ、あと黙らせるためのエサ代…どうにかならないモノだろうか。
ともかく、このままこっそり城を出るとするか__
衛兵「__大変だ!魔族の襲撃だ!!」
衛兵「それは分かっている!魔王が攻めてきたというのは…」
衛兵「違う!!攻めてきたのは魔王じゃない!」
衛兵「では、なんだ!?」
衛兵「魔王軍四天王の一人、グランベリアだ!!!」
衛兵から聞こえてきた「グランベリア」という単語。
それを聞いた瞬間、僕とラクトは思わず歩みを止めてしまった。
ルカ「な………」
ラクト「な………」
「「なんだってェェェ!?___」」