もんむす・くえすと! 勇者ルカと仲間たち   作:J・チェプナクル

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第5話 再来するは獄炎、舞うは蛍火

一方そのころ、休憩所でルカ達を待つカムロウ達は__

 

カムロウ「やっぱりさぁ。チョコレートは邪道だと思うんだよね。」

チリ「まだ言ってる……」

マモル「チョコミントは?」

カムロウ「だめだね。チョコレートは邪道だ。」

マモル「チョコミントは?」

カムロウ「チョコレートは邪道だって言ってんだろうがァァァ!!!」

キレたカムロウのアホ毛がマモルを貫いた!

マモル「ぐわああああああ!!!」

ジョージ「マモルゥゥゥ!!!」

ジョージ「起きろ!起きるんだ、マモル!」

マモル「チョコミントは、だめなのか…」

パヲラ「アンタ達は何をしてるのよ……」

すると、チリが溜め息混じりでふと呟いた。

チリ「…あぁ、やっぱり一緒に行けば良かったかな。」

パヲラ「? チリちゃん。何か心配事でもあるのかしら?」

チリ「いや…ルカ達がなにか問題を起こすんじゃないかと心配で心配で……」

パヲラ「そうかしら?ルカちゃん達がトラブルを起こすようにはおもえないけど……」

チリ「ルカって何かと苦労性気質だし…アリスさんは色々とトラブルメーカーだし…ラクトはラクトで問題を引き連れそうだし……」

パヲラ「……言われてみれば確かに心配ね……」

 

すると次第に、城内がざわついてきた。

カムロウ「うん?」

ジョージ「なんだ?騒がしいな……」

マモル「なんかあったんですかね。」

チリ「まさか……」

パヲラ「まさかね………」

 

さらには衛兵たちもせわしなく動き始めた。

衛兵「ほ、報告!!王の間に、魔王が襲撃してきたという報告が!」

 

チリ「やっぱり………あの3人、絶対なにかやらかした。」

パヲラ「言った通りになっちゃったわね……」

 

衛兵「し…しかし、静か過ぎはしないか?魔王が入り込んだ様子など、まるでないのだが……」

衛兵「もしかしたら誤報かもしれん。関係者を集め、状況を把握した方が良いのでは……」

そう言い残し、衛兵は突然に昏倒した。

衛兵「な…!いったい何が!?」

衛兵「__ぐはっ!」

続けて、もう一人の衛兵も倒れてしまう。

 

「「「「「!?」」」」」

 

カムロウ「い、今…何が起きた…!?」

チリ「え、衛兵が2人…急に倒れた…?」

マモル「いや、違う!明らかに他者の…意思を持つモノによる所業!」

ジョージ「………今、見えたような……【何か】…いや、【誰か】がいた!!」

パヲラ「ええ、【いた】わね…【誰か】…が……間違いなく、確かにそこにいた……!」

 

???「ほう……一瞬ではあるが、私の姿を見ることができるとは……そこの人間は、かなりの強者のようだな。」

姿は見えないのに、声が聞こえた。

そしてその声……女性の声だが、カムロウ達には聞き覚えがあった!

チリ「こ、この声って…!!!」

カムロウ「ど、どこだ…!?どこから…!?どこにいるッ!?」

パヲラ「そして、この気配…いや、気迫…!感じたことあるっ!!この気迫はまさか…!!!」

 

???「なんだ、見覚えがあると思えば…お前達か……あの少年の姿はないようだが?」

カムロウ達の前に姿を現したのは__

 

なんと、グランベリアだった!!!

 

「「「グ…グランべリア…!?」」」

 

カムロウ「……お久しぶりです。」

グランべリア「うむ、久しぶりだな。」

パヲラ「あら、カムロウちゃん偉いわ~久々に会う人にはそう言うって教えたことちゃんとやってる。」

チリ「いや、やってる場合ですか!?状況が状況なんですよ!?」

 

マモル「今、アッシらの目の前にいるのが……四天王の一人だって!?」

ジョージ「なんという気迫!!これほど静かと荒々しさを持つ気迫は初めてだ…!!!」

グランベリア「ん?」

グランベリアの視界に、ジョージとマモルの2人が映った。

グランベリア「……なんか増えてる。」

チリ「なんか……って……」

 

カムロウ「なんでお前が……ここにいるんだ!?」

グランベリア「探しているものがあってな………」

チリ「探し物…?」

パヲラ「ここに、あなたが欲しがりそうなモノなんてないと思えるけど……」

グランベリア「違うな。あるからここに来た。」

 

グランベリア「ルカはどこだ?」

カムロウ「ルカ…だって…?」

そう聞いた時、ジョージとマモルは臨戦態勢に入った!

ジョージは抜刀する構えを取り、マモルは錫杖を両手で持った!

ジョージ「貴様…!ルカ殿をどうするつもりだ…!」

マモル「まさか、殺すつもりで来たってんじゃあねぇだろうなァ!?」

グランベリア「どうかな。お前達には関係ないだろう。」

マモル「なにィ…!?」

ジョージ「なんだと…!?」

カムロウ「…………」

 

カムロウ「……ルカは……ここにはいない。さっき王様に呼ばれて、王の間に行ったばかりなんだ……」

グランベリア「そうか………」

 

グランベリア「では、王の間に向かうとするか。」

グランベリアは方向を変え、王の間に移動しようとする__

 

カムロウ「__待て!!!グランベリア!!!」

それをカムロウが制止した。

カムロウ「もしお前がこのまま行けば……被害が広がる!」

カムロウ「ここにいる衛兵は…城を、王様を、市民を守るためにお前に立ち向かって、でも敵うことなく、成す術なく倒れていってしまう……勝てっこないのに……けど…守ることが【誇り】だから!【使命】だから!……次々とお前に立ち向かうんだ……」

カムロウ「でも、それだと!犠牲者が増えるだけだ!!」

グランベリア「では、どうする?私はお前たちに用などないが……?」

カムロウ「………」

 

カムロウ「【勇者】とは……【立ち向かう者】。」

グランベリア「…?」

カムロウはふと呟き、そして話を続けた。

カムロウ「ルカから勇者ハインリヒの話を聞いた時…そして、ルカが旅で出会う敵と戦う姿を見た時…【勇者】とはどういう存在なのかを、心で感じていた……」

カムロウ「【勇者】とは……強大な力に……運命に……【立ち向かう者】!」

カムロウ「だから、勇気のある者なんだ…!!!」

グランベリア「………」

 

カムロウ「俺は…俺はその【勇者】の仲間として……【立ち向かう者】の仲間として!」

カムロウ「今、ここで…お前を食い止める!!!」

チリ「私も!」

パヲラ「あたしも!」

ジョージ「それはルカ殿に忠誠を誓った私も…」

マモル「アッシだって!」

 

「「「「同じだッ!!!」」」」

 

グランベリア「………ならば、来い!!!____」

 

 

魔王軍四天王__グランベリアが現れた!!!

 

カムロウ「陣形を組むんだ!俺は前に出る!」

パヲラ「あたしとジョージちゃんも行くわ!チリちゃんとマモルちゃんは後ろで支援して!」

前衛はカムロウ、パヲラ、ジョージの3人。

後衛はチリ、マモルの2人だ。

 

カムロウ達が陣形を組むのを見ると、グランベリアは感心したような素振りを見せた。

グランベリア「……そうか。お前達もイリアスベルクの時から成長しているのか。」

グランベリア「楽しみだな……どれほど成長したかを。」

カムロウ「お気に召すほどか……どうかは、分からないけど……」

グランベリア「問題ない。これから分かることだ。」

 

グランベリア「闘いは……強者によって彩られる……___」

 

 

__この戦いを、ある魔物から取材を受けた一人の衛兵は語る。

 

グランベリアが襲来した時?はい、覚えてますよ。ハッキリと。

かくいう私も、防衛にあたってましたし……

私が駆けつけた時すでに、5人の冒険者がグランベリアを食い止めようとしていましたね。聞けば、勇者ルカ殿のお仲間だとか。

少年と…武闘家と…サムライ?前線にいたのはその3人ですね。

引けを取らない…戦いでしたね。我々も、あのグランベリアに傷一つ付けることはできなかったのですが…

ルカ殿が駆けつけてくれるまで、あの方々も良く持ちこたえてくれたと思います。

 

あの少年が扱う…剣術…と呼べばいいのか。

剣から風が出るんですよ。衝撃波?みたいな……

あと、それだけじゃないです。斬撃の風?も出たんです。なぜか光ってましたけど……

私も仕事柄、剣術も習得してはいるのですが……それでも嘘みたいな光景でしたね。

剣で炎を斬る。なんて…ね?憧れはしますけどね。__

 

グランベリア「__おおおお!!!」

グランベリアは巨剣を振り回し、燃え盛る火炎を放った!

カムロウ「__グラディリオン(勇者ノ風)!!!」

グランベリアが放つ炎の壁を、光輝く風の一枚刃が切り裂いた!

そのままグランベリアに迫る風の一枚刃。しかしグランベリアは、迫る風の一枚刃を一閃して相殺した!

グランベリア「この風……【炎も断ち斬る風】か。やはりただの風ではなかったようだな。」

カムロウ「断ち斬るだけじゃない!風は逆流するぞ!」

カムロウ「烈風巻(れつしまき)!!!」

風の一枚刃が進んだ方向に沿って、渦が生まれた!

その渦は炎を巻き込み、グランベリアに襲い掛かった!

グランベリアは巨剣の刀身でガードし、攻撃を防いだ!

グランベリア「ほう?技術があるのか……その【風】……誰かに教わったのか?それとも自分で考えたのか?」

カムロウ「俺の親父だ。親父に教わった。」

グランベリア「筋が良いな。お前も……お前の父親も。__」

 

あの少年も良い太刀筋でしたが…

私としては、あのサムライもなかなかだと思いますね。異国の剣術というのもあるんですが……

特に惹かれたのは…グランベリアの前でカタナを抜刀した時ですね…!

 

__戦いの最中、カムロウはグランベリアの攻撃で吹っ飛ばされる!

衛兵「助太刀致しますぞ!」

一人の衛兵が、その場に飛び込んできた!

グランベリア「邪魔だ!」

グランベリアは、上段から斬撃を放った!

衛兵「ぐぁぁっ!!」

衛兵は250のダメージを受けた!衛兵は倒れ伏した!

 

倒れ伏した衛兵の元に、ジョージが歩み寄り、衛兵の身体を起こす。

ジョージ「歩けるか?」

衛兵「か……かろうじて……」

ジョージ「ここは退くのだ。私に任せよ。」

目の前にはグランベリアがいた。

剣を構えたまま、ジョージと衛兵を見つめていた。

ジョージ「さぁ、行くんだ。」

よろよろと歩きながら、一人の衛兵はその場から撤退した。

 

グランベリア「……そういえば、お前は……あの後ろにいる人間(マモル)も、ヤマタイの……東方の者か?」

ジョージ「いかにも。」

そう言いながら、ジョージは刀を抜こうとする。

…抜刀する構えのまま、なぜかジョージは動かなくなった。

パヲラ「ジョージちゃん、気を付けてなんて言えるほどじゃない!グランベリアはとてつもなく強い!__」

 

マモル「__それは分かってやっすよぉ……ジョージの奴を見ればさらに分かりやっす……」

マモル「見てくだせぇ……ジョージが未だに抜刀できずにいる……ジョージでさえ、抜刀する隙が見当たらないんだッ!」

グランベリアに相対するジョージ。すでにグランベリアは巨剣を抜刀してある。

しかしジョージは、今だ抜刀できずにいた。

冷や汗が額からにじみ出る、そのまま頬伝う。

目は乾くほど開いたまま、グランベリアの細かい動作一つ一つを逃さないように。

だが、身体が、足が、手が、動かずにいるのだ。

ジョージ「(隙が……見えん……いや、これは……動けない!?)」

ジョージ「(刀を抜いた瞬間、斬られるという未来を、身体が本能で感じ取ってる…!?)」

 

グランベリアは不思議そうに、ジョージの顔を覗き込む。

グランベリア「……どうした?抜かないのか?刀……おそらくお前は、侍…なのだろう。抜刀しないのか……?」

ジョージ「……………」

済まぬが、お主相手に抜刀できる隙がないのだ。

と、言いたいのに…口が緊張で開けない。

グランベリア「いいぞ。()()()()()()()()。」

ジョージ「ぬ…?」

グランベリア「刀を()()()()()()と言っているんだ。これは情けや同情ではない。剣士としての誇りゆえに()()()()()()と言っている。」

グランベリア「私は何もしない。攻撃もしない。お前は刀を抜くまではな……」

ジョージ「………」

それからしばらく、沈黙が続く。

マモル「ダンナ(パヲラ)、今の言葉は信用できるんで?」

パヲラ「できる。グランベリアは正々堂々と戦うわ。戦闘中ならともかく、ああいう抜刀の際の不意打ちとかはしないと思う。」

ジョージ「………」

すると徐々に、ゆっくりと、ジョージは刀を抜き始めた。

ゆっくりゆっくり………刀身が露になり…………

そして、両手で構え、再びグランベリアと相対する。

グランベリア「…良い業物だな。その刀………」

ジョージ「……………」

こわばった表情をしていたジョージの口が、少し緩んだような気がした。

ジョージ「ならば…腕前も上質なコトををお見せしよう!」

グランベリア「フッ…そうでなくては、強者は務まらん!」

 

 

それからの鍔迫り合いというか、剣士と剣士のぶつかり合いというか?

剣士同士の戦い…ですよ!言葉通りの真剣勝負!演習では味わえない緊張感!

こっちまで手に汗握るというか…!

感動してたのか、グランベリアにやられて意識が朦朧してたか…

グランベリアが炎を纏うのに対して、あのサムライは何か黒いオーラを纏ってたような気が……

とにかく、グランベリア相手に、サムライもかなりやったと感じます。

 

グランベリアとの剣の打ち合いから、ジョージは途中で抜け出した。

ジョージ「ハッ………はぁ………はぁ………」

ジョージは体中、汗が大量に噴き出していた。

グランベリア「お前の太刀筋、悪くはなかったぞ。それにしても、命を削って力を引き出す術…か。」

グランベリア「惜しいな。もっと戦えれば良かったのだが……」

 

息を切らすジョージの横に、マモルが立ち並ぶ。

マモル「お前さん、禍津(マガツ)の使い過ぎ。ちょいと休んどけ。」

ジョージ「そうさせてもらう……」

 

マモル「悪行罰示式神(あくぎょうばっししきがみ)…!」

マモルの体に禍々しいオーラが纏い始める!

マモル「邪魅(じゃみ)!お前の身体を!!【右腕】だけ出すことを【許可】する!!!」

マモルは床に札を張り付けた!

そこから、黒く、紫のオーラを纏う巨人の右腕が這い出てきた!

巨人の右腕に赤黒いオーラが噴き出した!

マモル「鬼哭殴撃(きこくおうげき)!!!」

巨大な拳が、グランベリアに襲い掛かる!!

 

__しかしグランベリアは、巨大な拳を片手で受け止めた!

 

「「「か……片手で!?」」」

 

グランベリア「ふむ……召喚術か降霊術の類か……」

次第にマモルが呼び出した巨人の腕は薄れていき…消えていった…

グランベリア「…ん?」

薄れ消えていく巨人の腕。その裏の視界が露わになると、そこからマモルが突っ込んできた!

マモルは錫杖を振り回して突っ込んだ!

マモル「裂頭(さけがしら)ァァ!!」

グランベリア「ふん!」

グランベリアは咄嗟に巨剣を構え、マモルの錫杖を受け止めた!

…に見えた。次の瞬間、マモルの錫杖がバキッと折れてしまった!

グランベリア「薙刀術か。せめて槍を使え。」

マモル「そんな急に言われてもなぁ。」

 

衛兵「私も加勢します!」

衛兵「俺もやるぜ!」

2人の衛兵がグランベリアに攻撃しようとする!

グランベリア「どけぇ!!」

グランベリアは燃え盛る巨剣で周囲を薙ぎ払った!__

 

マモル「__身代式神(みがわりしきがみ)。」

その場にいたマモルと、2人の衛兵の姿がフッと消え、代わりに紙式神が現れた!

紙式神はグランベリアの燃え盛る巨剣を受け、燃え尽きてしまった……

グランベリア「なんだと?」

どこに消えた?周囲を見渡すと、遠い場所に3人の姿が見えた。

グランベリア「……ああ。()()()()()()()…か。陰陽師というやつか?妙な術を使うな……」

マモル「あぶねぇなぁ…全く。事前に紙式神を置いといて正解だった…」

衛兵「た、助かりました。」

 

その頃、カムロウはグランベリアの周りをダッシュで走り駆けていた。

グランベリア「なんだ?なんのつもりだ…?」

グランベリアは剣を構え、カムロウの姿を捉えながら警戒していた。

しかし、一瞬、グランベリアは気配を感じ取った。

自身の遠く後ろの場所から、殺気を感じ取ったのだ!

 

グランベリア「__囮か!」

 

後ろを向く。その遠い場所には、投球フォームで構えたパヲラがいた!

パヲラ「魔凝球(フォトン)!!!」

パヲラの右手から、魔力を圧縮した光る球がぶん投げられる!

グランベリア「その技か……今度は斬り返してくれる!」

グランベリアは、飛んでくる光る球を打ち返そうと剣を構えた__

 

__しかし光る球はグランベリアへ向かう軌道を逸れて通り過ぎた!

グランベリア「なんだと…!?」

逸れた!?どこを狙った!?

 

パヲラ「カムロウちゃん!そのまま打ち返して!」

その軌道の先は、カムロウだった!

カムロウは剣をバットのように構え、刀身部分で光る球を打ち返した!

カムロウ「いっけぇぇぇ!!」

打ち返され、さらに速さを増した光る球が!

グランベリアに命中し、爆音と爆風、そして煙を巻き起こす!

 

グランベリア「__おおおおぉぉぉぉ!!!」

煙が内側から晴れた!

するとそこから、炎の波が現れた!

爆炎の波は、カムロウを飲み込もうとする__

 

チリ「__魔力障壁(マジックバリア)!!」

寸前のところで、チリが魔法で半透明な壁を形成する!

カムロウの前に現れた半透明な壁が、炎の波からカムロウを守った!

チリ「そのまま乗り越えて!」

カムロウ「ああ!」

半透明だが、確かにそこに存在する壁を駆け登り、爆炎の波を飛び越えて、グランベリアに上段斬りを仕掛ける!

カムロウ「天翔風蝗斬(てんしょうふうこうざん)!!!」

グランベリア「ふん!」

今度は、カムロウとグランベリアの剣がぶつかり合った!__

 

 

そういえば、あのお嬢さんも…あと…オンミョウジ?東方の術師の。

あの2人がいなければ、我々衛兵隊の被害も、より大きくなってたと思います。

魔法の類でしょうか。見えない壁を作ってグランベリアの炎から我々を助けてくださったり……

 

そういえば、あの…武闘家の方でしょうか。彼が、あの戦いにおいて司令塔のような役割を担ってたと思います。

時折、彼が指令をすることで、あの5人の冒険者様方は、かなり統率力のある戦いをしていました。

……なんでタキシードであそこまで戦えたのか、さっぱりですが。

 

 

戦いが始まってから、カムロウ達と衛兵達はグランベリアの進行を食い止めるために、せわしなく動き回っていた。

特に、カムロウ達に指示を出していたのはパヲラだった。

パヲラ「マモルちゃんは式神で負傷者を運んで!チリちゃん!ジョージちゃんの回復お願い!__」

 

__その刹那、パヲラの前にグランベリアが立ちはだかった!

グランベリア「お前は…イリアスベルクの時もそうだった。おそらくお前は、チームにおいて頭脳(ブレイン)のような役割を持つ存在なのだろう……」

グランベリア「だが、そういう奴ほど厄介だ!!」

パヲラ「!!」

グランベリア「容赦はしないぞ!」

グランベリアは、パヲラに巨剣を振り下ろそうとする!

パヲラ「仕方ないわ…!」

パヲラは懐から、アイスキャンディーを取り出した!

そのアイスキャンディーは、グランベリアの巨剣を受け止めた!

チリ「えっ!すごい!アイスキャンディーでグランベリアの攻撃を受け止めた!?」

チリ「いやなんで!?」

グランベリア「凍神剣(とうしんけん)アズキバか……」

チリ「ただのアイスキャンディーじゃ……」

グランベリア「ふんっ!」

グランベリアの持つ巨剣が、火炎を纏った!

アイスキャンディーは溶けてしまった……

チリ「ああっ!!アイスキャンディーが溶けた!!!」

 

パヲラはすぐさま後ろに飛び、距離を取ろうとした!

しかし、グランベリアの移動速度の方が速く、距離が離れるどころか、逆に詰まる一方であった!

グランベリア「前回の経験からか?お前から直接攻撃が少なく感じる……」

パヲラ「くっ…!!」

パヲラは態勢を変えた。距離を取ることを止め、応戦することにしたのだ!

パヲラ「はあああぁぁぁ!!!」

パヲラは脚技による連続攻撃を、両足で何度も何度も繰り出した!!

グランベリア「お前達人間は……地面に立ち、歩くための身体となっている。重力に適応するために、脚の筋肉量のほうが腕よりも多い……ゆえに腕よりも丈夫かつ強力な攻撃ができる。」

グランベリア「だから脚技で応戦することにしたか。しかも魔力を練り上げて身体強化をしたうえでの攻撃だ。納得できる考えだが……」

グランベリア「私の前ではまだ弱い!!!」

グランベリアは片足だけで、パヲラの攻撃を捌ききった!

パヲラ「なっ…!?」

一瞬驚愕したパヲラだが、すぐに反撃する態勢になった。

今度は両手による攻撃を仕掛けた!

パヲラ「オオオオオォォォォ!!!」

パヲラは拳による連続攻撃、ラッシュ攻撃を放った!!

グランベリア「弱いッ弱いッ弱いッ弱いッ弱いッ!!!」

グランベリアはパヲラの攻撃を全て躱した!!!

受け流す?いや、流れた!

拳の隙間を、攻撃の隙間を、水が流れるように避けたのだッ!__

 

グランベリア「__はぁっ!!!」

炎を纏った拳が、パヲラを貫いた!!!

パヲラ「うぶっ………」

強力な一撃だ。それはそうだろう。四天王最強と謳われるグランベリアの攻撃を直で受けたのだ。

 

カムロウ「__パヲラさん!?」

パヲラ「ごめんなさい…ドジっちゃった……」

パヲラはその場で倒れ込んでしまい、動けそうにないようだ。

着ていたタキシードは、所々が焼けて破れている。

 

衛兵「__今だ!助けに行くぞ!」

衛兵「「「「「「おお!!!」」」」」」

衛兵たちがその場に飛び込んできた!

グランベリア「その勇気は認める……だが!」

グランベリアは、剣で周囲を薙ぎ払った!

衛兵たちは倒れ伏した!

グランベリア「……せめて、勇気に見合った実力を身に付けるべきだったな。」

衛兵「ひ、一太刀で何人も……」

衛兵「な、なんて強さだ……」

他の衛兵達は、すっかり尻込みしてしまったようだ。

グランベリア「もう、余計な邪魔は入らんようだな……__」

 

__その時、グランベリアに向かって、数本の鉄の槍が飛んできた!

投げたのはジョージだ!

負傷し、戦えそうにない衛兵たちが落としていった鉄の槍を拾い上げ、槍投げによる攻撃を仕掛けていたのだ!

グランベリア「むっ!」

それをグランベリアは難無く斬り落とし、弾き返す!

カランカランと音を立てながら、鉄の槍が辺りに散らばり落ちる。

すると、一本の鉄の槍が、マモルの足元に転がった。

マモル「……あっ。」

マモルは満足そうに鉄の槍を拾い上げた!

マモル「槍!これ使えばいいじゃん!」

 

ジョージ「(さっきやり合ってわかった…剣による戦いではこちらが力負けする!ならば……)」

ジョージは後ろを振り返り、チリに向かって駆け出した!

ジョージ「チリ殿!すまぬが、()()を貸してはくれぬか!?」

ジョージが指差しをした()()とは、チリが持つ大きなハンマーのことを指していた。

急な要望で、チリは驚いた顔をしたが…

チリ「えっ…これ!?い、良いですよ!」

すぐさまハンマーを投げた。

それをジョージは受け止め、両手でハンマーをしっかり持った!

 

ジョージとマモル、2人はグランベリアに接近した!

ジョージ「参る!!!」

マモル「そらそらそらそらそら!!!」

ジョージは大きなハンマーを振り回し、マモルは槍で何度も突攻撃を繰り出す!

グランベリア「甘いッ甘いッ甘いッ甘いッ甘いッ甘いッ甘いッ!!!」

グランベリアも巨剣を振り回し、2人の攻撃を受け止め、捌き、流す!

そして、剣の柄で2人の腹部に打撃を放つ!

ジョージ「ぐぅッ…!」

マモル「うぎゃぁッ…!」

剣の柄による打撃。ただそれだけなのに。

それを受けただけで、ジョージとマモルも倒れ込んで動かなくなった__

 

グランベリア「__これで残るは…2人だけか……」

今、この場に立っているのは…グランベリア、カムロウ、チリの3人だけ。

カムロウ「……………」

チリ「そんな……【悪魔】……いや、こんなのもう……【厄災】……!」

カムロウ達は戦慄した。グランベリアの強さはイリアスベルクで知っていたはずなのに。

少し成長した自分達なら、あの時よりちょっとぐらいは持ちこたえると思っていたのに。

カムロウ達や衛兵が束になっても、それでも、どうしようもなく、強い。

改めて、カムロウ達は戦慄した。

 

するとグランベリアはおもむろに、倒れ込むパヲラの元に歩み寄る。

グランベリア「悪いな、せっかくのタキシードを……」

パヲラ「全くよう…高いのよこれ……」

カムロウは、パヲラを庇うように、グランベリアとパヲラの間に割り込む。

カムロウ「パヲラさんに何する気だ…!」

グランベリア「心配するな。もう戦う気はない。とどめをさすといった事もするつもりはない。ただ……そこの人間(パヲラ)に、言いたいことがあってな。」

カムロウ「言いたいことだって?」

 

グランベリア「確か…パヲラという名前だったか?お前は……」

パヲラ「あら………覚えてくれているなんて……光栄ね……」

グランベリア「一つ、分かったことがある。」

 

グランベリア「__お前は弱い。」

カムロウ「__は…?」

 

突然のグランベリアの発言。それを聞いたカムロウは激しく取り乱した。

なぜならカムロウから見れば、パヲラは強く、清く、正しい人間だからだ。信頼に値できる人間だからだ。自分に教養を身に付けてくれた人間でもある。

信用でき、尊敬できる人が、弱いと人蹴りされたら、誰だって取り乱し、怒るのは当然である。

カムロウ「そ…そんな訳ないだろ…!?パヲラさんは弱いハズない!デタラメを言うな!」

グランベリア「嘘は言っていない。」

カムロウ「い…いや、そりゃあ……グランベリアからしてみればそこまで強くないと感じると思うけど…!」

 

グランベリア「そういう事ではない。」

カムロウ「じゃあ何だ!?何だってんだ!?」

グランベリア「こいつはあの侍や陰陽師と比べれば、()()()()()()()()()()()()()…か。」

カムロウ「な…なんの話をしてんだよ…?」

 

グランベリア「__そもそもこいつは()()()()()()()()()ではない。強いて言うなら、そこら一般人と同程度の能力しかないぞ。」

カムロウ「な……!?は……!?」

グランベリア「それに理由はまだあるぞ。こいつの体術は【未完成】だ。強いて言うならその場しのぎの体術だな………それを今まで、持ち前の知力で補っていただけだ。」

 

倒れ込んでいたジョージは、グランベリアが言ったことを聞いて、密かに歯を食いしばっていた。

ジョージ「(くっ…!見破られてしまったか…!あの日、共に鍛錬をしていた時…パヲラ殿が私にだけ明かしてくれた、内密にしていたことを…!)」

ジョージ「(パヲラ殿は言った…実は身体が、魔物と十分に戦えるほど強くないということを…【魔導拳】は発展途上であること、そしてその【完成形】はまだ遠いということを……!)」

 

グランベリア「厳しい言い方になるが……いままで無理をして、背伸びして戦っていたということだ。」

カムロウ「もう黙れお前ッッッ!!!」

カムロウは一喝した。怒り心頭であった。

カムロウ「もうそれ以上言うなッッ!!さっきから黙ってきいてりゃあ!!好き勝手言いやがってッ!!ナメるなよッ!パヲラさんはなァ!!!」

 

パヲラ「__いや……良いのよ。カムロウちゃん……グランベリアの言っていることは確かなことよ。」

パヲラは怒るカムロウを、冷静に、静かに制止しようとした。

パヲラ「グランベリアの言う通り…私の考案した【魔導拳】は、確かに【未完成】…そして今まで、無理をして戦っていたことも……」

パヲラ「私には、知力だけはあった。……というより、残っていた。本心を言えば、今まで知ったかぶりをして戦っていたのかもしれない……」

パヲラ「【魔導拳】は…私が()()()()()()()を再現するためのモノ……だから、【未完成】……実戦で扱うには早すぎたのよ……だから、十分に戦えない。これは揺るがない事実なの……」

申し訳ない表情をしながら、パヲラはそう語った。

チリ「そ、そんな…!?そんなことない!パヲラさんが今まで言ってたことは、全部正しかった!」

チリ「持ち前の知力で、私達を助けてくれた!それは本当のこと……」

グランベリア「弱さを慰めるも認めるも勝手だが……そこの人間(パヲラ)は弱い。私が言いたいのはそれだけだ。」

 

グランベリア「だが、お前は……弱いと分かっていながら、なぜ戦い抜こうとする?何故、戦い続ける?」

パヲラ「それは……」

 

 

カムロウ「__()()()()()()。」

グランベリア「?」

パヲラ「……え?」

カムロウ「ノープロブレム(弱くても良い)だ。パヲラさん。ノープロブレム(弱くても良い)……」

 

カムロウ「俺にとって仲間は…友達ってのは、深い眠りから目が覚めて、初めて視界に映った時に何事も無く安心できるような存在の事を言う……」

カムロウ「恐怖や不安や憂鬱なことがあっても、ただ傍に、近くにいるだけで全部吹っ飛んで、安心できる存在。」

 

カムロウ「だから強さなんて求めてない。弱くても良い。ただ、傍にいてくれるだけで良いんだ。それだけで良い……」

カムロウ「むしろ、仲間を脅かす奴から守ってやりたい。」

カムロウ「だから………__」

 

カムロウ「__テメェ(グランベリア)はこのカムロウが絶対に許さねぇェェエエエッッッ!!!!!」

 

カムロウは剣を握りしめて、グランベリアに飛び掛かった!

カムロウ「重颪(かさねおろし)ィィィ!!!」

カムロウは剣を振り回し、連続攻撃を放った!

グランベリア「乱撃技も習得済みか!」

グランベリアは冷静に剣を構え、カムロウの連続攻撃を一つ一つ、丁寧に受け止める。

カムロウ「ウオオオオオォォォォォォ!!!」

グランベリア「………………」

その攻防の最中___

 

 

バキッ………

 

 

カムロウの装備していた鋼鉄の剣が、折れてしまった!

カムロウ「はっ!?」

チリ「剣が折れた……」

パヲラ「耐久の寿命……こんな時に…!」

グランベリア「(勝負あったか……)」

しかし、次の瞬間__

 

カムロウは折れた剣を、あっさりと捨てた!

グランベリア「なにッ!?」

グランベリア「(剣を捨てた?いや、違う!)」

グランベリア「(この少年…剣が折れてもなお…眼にまだ闘志が燃えている!)」

 

カムロウ「WOOOOOOORYAAAAAAA(ウオオオォォォリアアアァァァ)!!!」

カムロウは両手を握りしめ、連続攻撃…ラッシュ攻撃を仕掛けていた!!

グランベリア「徒手空拳に切り替えたか!」

グランベリアは片腕だけで防御した!!

片腕だけでカムロウの攻撃を受け止めるグランベリアの脳裏には、ある疑問が浮かんでいた。

グランベリア「(武器が壊れると、大抵の人間は敗北を悟る……なのに、この少年は心が折れていない!)」

グランベリア「(…なぜ戦う?…なぜ戦える?…なぜ戦おうとする?なぜコイツは戦える?)」

 

グランベリア「(何か()があるはずだ……)」

グランベリア「剣が壊れてもなお戦う意思があるということは……」

 

グランベリア「何か奥の手があるんじゃないのか?」

カムロウ「!!!」

驚いた顔をしたカムロウを見て、グランベリアはニヤリと笑った。

グランベリア「あるんだろう?確かドラゴンに成れると聞いていたが…」

グランベリア「どうなのだ?」

カムロウ「………」

剣は壊れた、仲間もやられた。

あるのは残っているただ一つの手段。

と、すれば……

やるしかない!__

 

パヲラ「__ダメだ、カムロウ!!!絶対に変身するな!!!」

 

パヲラ「ここがどこなのか分かっているのか!?人目が付く!事情を知らない人が見れば、さらに混乱を招くことになる!」

パヲラ「いいか!絶対に変身するな!!」

カムロウ「…………手の内が知られている以上……」

 

カムロウ「変身する他に手はない!!!」

 

パヲラ「カムロウッ!!」

チリ「ダメ!カムロウ!パヲラさんが言ってたことを分かってないの!?」

 

カムロウ「チリはみんなの助けに行ってくれ!」

 

カムロウ「俺は今から…手が付けられなくなるッ…!!!__」

 

カムロウの体から、バチバチと雷が迸る____

 

 

 

__緊迫した状況だったのもあったのでしょうか…それとも夢…幻だったのか…

私は一体何を見たんでしょうかね。まぁアナタに聞いても真相は分からないのですが……

けど、どういうわけか。我々、口を揃えて一致する証言が……

「ドラゴンを見た」…なんですよね。……不思議ですよね。

 

 

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