もんむす・くえすと! 勇者ルカと仲間たち   作:J・チェプナクル

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第8話 襲来後の紆余曲折

サン・イリア城内。グランベリアの襲来から少し時間が経ったころ。

城内の一角にて。

パヲラは腕を組み、座ったままのカムロウを真っ向から立っていた。

カムロウは俯いたままだが、パヲラはかなり怒っているような様子だった。

その周りを、チリは心配そうに右往左往している。

パヲラ「……カムロウ。何故、ドラゴンに成った?」

カムロウ「…………」

パヲラ「君も気付いているだろう。周りの視線を。」

周りの視線。それはルカ達以外の、衛兵や一般の人達の視線のことである。

ルカに向けられている信頼の視線とは違い、どちらかというと懐疑的な目だった。

パヲラ「あくまで、君がドラゴンに成れるのを知っているのは仲間である私達だけだ。それ以外の、無関係の人間からしてみれば、君は怪物の類と見なされる。」

パヲラ「今回はグランベリアが襲撃したことで、かなり混乱した状況だったのが幸いだった。ルカがいたこともあって丸く収まったが……」

パヲラ「人間社会において、異端視されるのは非常にまずいことだぞ。孤立することになる。それを分かったうえで変身したのか?」

カムロウ「……………」

パヲラ「今後、人前で変身するようなことがあってはならない。一度掛けられた疑いを晴らすのは難しいことだ。君はルカの目的の邪魔をしたいのか?」

チリ「パ…パヲラさん……ほら、なんとか助かったわけですし…そこまで怒らなくても……」

パヲラ「そういう事を言っているわけではない!止めたのにも関わらず変身したことが問題なのだ!!__」

 

カムロウ「__……しょうがないじゃないですか。別に他の人達を殺そうと思って変身したわけじゃない……グランベリアに殺されると思ったから。」

俯いたまま、カムロウはそう呟いた。

パヲラ「…………」

カムロウ「俺は正しい事をしたんだ!誰になんと言われようと、みんなを守ろうとしたんだ!!」

カムロウ「今こうして喋っているのも、考えているのも、判断しているのも、全部全部!人間としての俺なんだ!間違いなく人間の俺なんだ!!」

カムロウ「俺はバケモノなんかじゃない…!!!」

パヲラ「だからって、頼りすぎるな!確かに強大な力ではあるが、アレを多用するのは__」

 

カムロウ「__親父にもそう言われましたよ。」

パヲラ「なに…?」

カムロウ「…………___」

 

 

 

ハーレー「__そういえばお前、(ドラゴン)の力を使えるのか。」

カムロウ「…まさか、使うなって?」

ハーレー「……頼るなとは言っていない。だが、頼りすぎるな。」

 

ハーレー「もしかすると…いつか、テアラのようになるかもしれん……」

カムロウ「えっ…!?」

 

カムロウ「母さんと…!?どういうことなんだ!?」

ハーレー「テアラの身体は弱いのは知っているだろう。だが、テアラは元からああではない。」

ハーレー「昔…俺が若い頃……世界各地を旅していた時だ。テアラはその時、俺のパーティとして連れていたが……」

ハーレー「ある妖魔の襲来に合った時、テアラは身を挺して俺を庇った。その時妖魔から受けた呪いで衰弱し、あの身体になった。」

 

ハーレー「封魔凍蝕呪法(ふうまとうしょくじゅほう)……確か、そういう名前だった……」

カムロウ「封魔凍蝕呪法(ふうまとうしょくじゅほう)…!?」

ハーレー「体内の魔力、魔素に反応し、内側から氷が身体を蝕む呪法だ。本来は魔物を相手に使用する呪法で、魔物であれば一瞬で凍結するが、古龍族であるテアラはすぐには凍らなかった。」

ハーレー「だがそれでも…徐々に氷に身体を蝕まれ、最後に到達するのは……凍死、だ。」

 

ハーレー「もし…またテアラが(ドラゴン)に成ることがあれば…その時テアラは必ず死ぬ。龍に変身すると、古龍族が持つ本来の魔力に戻る。それに呪法が反応して、今よりも一気に呪法の進行度が加速する。」

 

ハーレー「今でもテアラは……ゆっくりではあるが、死に近づいている……」

ハーレー「あれさえ無ければテアラは……!!!」

カムロウ「……………」

ハーレー「古龍族は歴史の裏で生きてきた。恐らく、魔物でもその存在を知るのはごくわずかだ。ゆえに怪物と恐れられる。その力を消そうとする奴もいれば、利用しようとする奴も現れるだろう。」

ハーレー「だが、テアラに呪法を施した妖魔は、テアラが古龍族であることを知ったうえで襲ってきた。だから、使うときは周りに注意しろ。」

ハーレー「お前が古龍族の血を引いていると知れると、厄介なことになるかもしれん___」

 

 

 

カムロウ「___…………」

パヲラ「………」

チリ「………」

少しの沈黙の後、パヲラが先に口を開いた。

パヲラ「……いや…すまない。私も一方的に怒って悪かった。今の私は一度冷静になるべきだ……」

パヲラ「確かに君は、私達を守るためにドラゴンに成った。その事を忘れてはいけない……」

カムロウ「いや、パヲラさん。俺も謝らないといけないです。俺も悪かった。あの時の俺は冷静じゃなかった。」

カムロウ「俺って、なんというか……仲間を傷つけた奴を見ると、頭にものすごく血が昇るというか、変な焦燥感に駆られるというか、そんな気持ちになるんです。」

カムロウ「仲間を傷つけた奴を、早く倒さないと!……みたいなのが、身体を突き動かすんです。だからあの時、自己判断で変身したんです。」

パヲラ「……そうなのか。」

カムロウ「はい……」

 

カムロウ「すみません……冷静な判断ができるように、自分を律しないと…」

パヲラ「少しずつだな。もしそうなることがあれば、今度から自分で止めるように。」

カムロウ「……はい。」

チリ「(……よ…良かった。なんとか収まった……)」

仲間同士の言い争いや喧嘩にならなくて良かったと、チリはホッと胸を撫で下ろした。

 

パヲラ「ともかく、また剣が壊れてしまったな。また新しく買う必要が……」

ジョージ「そのことについてなのだが……」

近くで話を聞いていたジョージが、会話に割り込んできた。

ジョージ「カムロウ殿は、【鋼鉄の剣】よりも強い剣を扱うべきだ。」

パヲラ「……?それはどういう………」

ジョージ「これを見よ。」

ジョージが持ってきたのは、カムロウが持っていた【鋼鉄の剣】。しかし刀身部分はキレイさっぱり無く、あるのは柄と鍔だけだ。まるで元から刀身が存在しないような感じだ。

ジョージ「問題なのはコレだ。剣の壊れ具合が、普通ではない。もし剣の打ち合いで折れたのならば、真っ二つに折れるはず。」

ジョージ「だがこれは……粉々だ。文字通り。」

パヲラ「つまり、グランベリアとの打ち合いで折れたのではなく、カムロウの力で壊れたと?」

ジョージ「うむ。」

 

ジョージ「恐らくだが、カムロウ殿。お主の技量に、剣が追いついていないのだろう。」

チリ「剣が追いついてない…!?そんなことがあるんですか!?」

ジョージ「いわゆる耐久力の問題だ。カムロウ殿の扱う剣技に、剣が耐え切れていないのだ。この先、全力で戦おうとすれば、先に剣が壊れてしまう。」

ジョージ「使える剣が限られることになる。もっと耐久力のある剣を探さねばならない。」

カムロウ「もっと強い剣……か……」

そういえば、親父(ハーレー)が使ってた剣は、かなり大振りな剣だったな。いわゆる大剣と言っても良いぐらい。

特に気にしなかったけど、大剣を使っていた理由はソレなのかも。

ジョージ「パヲラ殿。すまぬが、私はこのあたりの土地には疎い。何か知っていることは?」

パヲラ「どうだろう……このナタリア地方で【鋼鉄の剣】以上の強さを持つ剣は無いとは言い切れないけど……私もその剣がどこに売ってあるか、そもそもあるのかどうかさえ分からない……聞き込む必要がある__」

 

カムロウ「__……パヲラさん。俺に魔導拳を教えてくれませんか?」

パヲラ「むっ…?」

突如、カムロウがそう提案をしてきた。

カムロウ「剣だって満足に使えない。かといって盾だけで戦うわけにもいかない。」

カムロウ「だったら…いつでも剣が壊れても良いように、素手だけでも十分戦えるようにしておけば問題ない!」

ジョージ「おお、良い案だ。__」

 

パヲラ「__すまないが、無理な話だ。」

カムロウ「なっ!?」

即効で却下された。

パヲラ「言っただろう。【魔導拳】は未完成だ。まだ人に伝授するほどの段階ではない。」

カムロウ「そ、そんな……__」

 

パヲラ「__けど。」

 

パヲラ「武術の【指導】はできるわよん?」

パヲラはいつもの口調に戻り、ウインクしながらそう言った。

カムロウ「……よっし!……イタタタ………」

チリ「あー、まだ満足に動かせないのに急に動くから………」

自分の考えが通った。それに教えてもらえる。カムロウは嬉しさのあまりガッツポーズをした。

パヲラ「まずは身体を休ませてからね。武術の指導は旅の合間にゆっくりやりましょ。__」

 

 

 

そのころルカは、王の間の一件を仲間たちに説明していた。

マモル「ヨンセイレイ~?」

ラクト「そうそう。神サマの変なうんちくよりかは信じれるだろ?」

マモル「へぇ、森羅万象の力を得るということですかぃ。それにしてもまぁお嬢(アリス)、ハデに暴れましたねぇ。」

アリス「ふん………」

 

ルカ「それでアリス……四精霊とやらの力を手に入れれば、強くなれるってのは確かなんだな?」

アリス「ああ。彼女達に認められ、その力を己がものとすればな。」

ルカ「分かった、信じるよ。」

 

ルカ「…それで、その四人はどこにいるんだ?」

ラクト「おう、知ってんだろ?」

アリス「そこまで余に聞くのか?魔王を打倒する方法を魔王に聞くなど、恥を知れ。」

ルカ「いや……別に、アリスを倒したい訳じゃないんだけど……」

ラクト「恥を知れって…教えたのお前だろ……」

ルカ「けど、アリスの言う通りなんだよな……何もかも、魔王の世話になるというのも勇者として問題がある。」

ルカ「分かった。自分で調べるよ……」

 

ルカ「それで、どうやって調べれば良いんだ?」

ラクト「お前なぁ……」

 

アリス「この城の地下には、大図書館がある。そこに、四精霊について記した書物が現存しているはずだ。」

ルカ「なるほど……」

 

ルカ「…あれ。確か大図書館って入るのに許可がいるんじゃなかったっけ?」

地下の大図書館は、誰にでも開かれた場所ではない。

認められた学者でもなければ、立ち入りは許されないはずだ。

マモル「とりあえず聞いてみればどうです?どちらにしても調べなければいけないですし。」

ルカ「そうだね……」

 

そうして移動しようとした時、カムロウがルカを呼び止めた。

カムロウ「ごめん。ルカ、ちょっと待って。」

ルカ「どうした?」

カムロウ「また剣が壊れたからさ。使えそうな剣、買ってくるよ。身体もまだ思うように動かないし。」

チリ「あ、私は付き添いで。」

どうやらカムロウとチリは武器屋に行くらしい。

確かに、装備品が壊れたのなら、早いうちに修理するか代用品を手に入れた方が良い。

ルカ「分かった。じゃあ、また後で。」

カムロウ「ああ!__」

 

 

__カムロウとチリがパーティから離脱しました。

 

ルカ「さて……あの人に聞けばいいのかな?」

僕は、怪我人救護などの指示を出していた衛兵隊長に声を掛ける。

ルカ「あの、ちょっといいですか……?」

衛兵隊長「おお、ルカ殿。御用ならば何なりと。我等一同、全身全霊をもってルカ殿の力となりましょう。」

彼らの目の前でグランベリアを撃退したせいか、ずいぶんと待遇が良くなったようだ。

ルカ「…えっと、そのですね。四精霊というのがいまして、その力を…」

衛兵隊長「はぁ…よんせいれい、ですか…」

ルカ「その四人がどこにいるのかをですね、図書館で、その……」

事情を説明するのに四苦八苦しているルカを見て、仲間たちは目をそらした。

マモル「……説明が下手くそすぎる。」

ラクト「最悪だぜ。ダメだこりゃ。」

アリス「ええい、貴様はなぜそこまで説明が下手なのだ!」

そのやり取りを見かねたのか、アリスが割り込んでくる。

アリス「ここの大図書館で、早急に調べたい事がある。魔王打倒、ひいてはこの世界の行く末に関わる重要な事だ。そういうわけで、大図書館に入る許可をもらえないだろうか。」

衛兵隊長「りょ、了解致しました。通常なら手続きに1週間はかかるのですが、特例として許可しましょう!」

ラクト「うっひょー!特例だってよ!勇者様様ってな!!」

ルカ「…ありがとうございます。」

……なんだか、アリスに負けた気分だ。

それはともかく、僕達は地下の大図書館に通されたのだった。___

 

 

 

 

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