もんむす・くえすと! 勇者ルカと仲間たち 作:J・チェプナクル
サン・イリア城下町、とある武器屋。
鋼鉄で作られた剣や盾、槍に斧、兜に鎧と、並べられた武器や防具を前に、カムロウはじっと凝視していた。
カムロウ「……これもダメだ。」
長い間にらめっこしていた剣を、陳列棚に戻した。未だに、丈夫そうな剣を見付けられない。
チリ「ねぇ、これなんてどう?丈夫そうだよ。」
カムロウ「それも多分ダメだ。もっと強い、硬い武器じゃないと。ジョージさんが言うには、耐久力のある武器じゃないとダメなんだ。【鋼鉄の剣】よりも、もっと強い武器じゃないと……」
チリも一緒に探してくれてるが、それでも見つからない。
カムロウ「武器自体の耐久力を上げるのなら、大剣や両手剣でも良いんだけど…両手に持つような武器になると、盾が持てなくなる。俺は盾も使いたい。」
チリ「そっかぁ………う~~~ん………」
すると、チリは何かを閃いたようだ。
チリ「そうだ……カムロウのお父さんの大剣はどう?」
脳裏に、カムロウの父ハーレーが持つ白く輝く大きな剣がよぎった。
カムロウ「え、親父の?無理だよ。アレ親父のだし……」
チリ「そっちじゃなくて、借りてた大剣のほうだよ。」
そっち…というのは、ある事情で借りてた剣だ。刀身に黒い木目状の模様がある、使い古された大きな剣だ。
カムロウ「あぁ~…あの変な模様のある剣か。」
チリ「あの剣、絶対、普通の剣じゃないよ。」
カムロウ「えぇ?普通じゃないって、何?」」
チリ「ただの鉄じゃないってコト。カムロウのお父さんが使ってたんだから、何か理由があるんじゃないの?全力出しても壊れない…とか!」
カムロウ「そうかぁ?」
でも…確かにそうかもしれない。
俺が使ってた【鋼鉄の剣】が壊れたのは、俺の技量…扱う剣術に耐えきれなかったから。
そしてその剣術を教わったのは、父であるハーレーから。一番経験知識豊富な親父が使ってた剣だ。もしかすると、使えるかもしれない。
カムロウ「………今からコロポ村に引き返すのかぁ……」
帰れなくはない。ただ…めんどくさい。ここからコロポ村まではちょっと……めんどくさい。
帰ったとしても、ハーレーから「お前、剣借りるためにわざわざ戻ったのか。なんで最初からそうしなかった?」みたいなことをやかましく言われるのが一番めんどくさい。
チリ「めんどくさくても行くべきじゃないの?」
カムロウ「ギクッ……」
心の隙間を覗かれた気分だ……
家に帰れない……というわけではない。なんか帰りたくないって気分だ。
チリ「【鋼鉄の剣】を何本も壊して戦う気?それだったら借りた方がいいんじゃない?」
カムロウ「それはぁ…そうだけどさぁ……」
帰るべきか、どうするべきか…そう尻込みしていると、武器屋の店主が話しかけてきた。
店主「悪いなァ品揃えが少なくて。」
店主「今、ウチの仕入れと鍛冶担当が休んでてな。ま、気に入るのが見つかるまで、じっくり見てってくれよ。」
カムロウ「……………」
ダメもとで聞いてみるか。
カムロウ「……すみません。ここには【鋼鉄の剣】より強い武器は売ってありませんか?特に……
店主「【鋼鉄の剣】でダメってんならァ…頑丈な武器はウチには無いなぁ。」
カムロウ「そうですか……」
カムロウ「(こうなったら一度家に帰って…親父の剣を借りれるかどうか掛け合ってみるか…?)」
めんどくさいけど、親父と話し合わなきゃいけない。そう、少し落胆した時だった__
店主「__……しかし、
武器屋の店主は、眼の色を輝かせてそう言ってきた。
チリ「言葉…?」
店主「久々に聞いたぜぇ。大抵の奴は見て呉れを気にするんだよ。もしかしてボウズ……
カムロウ「……?
店主「ここらの品じゃ満足出来ねぇヤツのことさ。おっと、悪口言ってる訳じゃねぇぜ?」
店主「最近はめっきり見なくなってけどなぁ。成長して服が小さくなった子供みてぇに、もっと強い武器が欲しい!ってせがむやつがいたんだよ。」
店主「だが、ボウズは
すると店主は、近寄って来いと手招きをしてきた。さらに聞き耳を立てるようハンドジェスチャーで促してくる。
店主「ここに強い武器は無いが……代わりに耳寄りの情報ならあるぜ。聞いてくかい?」
カムロウ「……………」
俺はその情報を聞くことにした。店主のすぐそばまで近寄って、耳を傾ける。
店主「……ナタリアポートのどっかの裏路地に古い工房があってな、アチャボーグっていう中年の、腕利きの鍛冶屋がいるらしい。ここらより良い品揃えしてるって噂だ。」
店主「ただ、気を付けた方がいいぜ。気難しい上に、カネをけっこうぼったくってくるってよ。しかも、裏で人を殺ってるって話もある。正直、俺はおっかなくて関わりたくねぇ___」
__それからして、カムロウ達は大通りに出ていた。
カムロウ「アチャボーグって名前の鍛冶屋さんか………」
チリ「ここからナタリアポートに引き返すか……コロポ村に戻るか……どうする?」
カムロウ「う~ん…………」
カムロウ「ルカにお願いしてナタリアポートに引き返そうかなぁ。家に帰るよりはマシ。」
チリ「えっ。」
すると、何やら城のほうから騒ぐような声が聞こえて来た。
チリ「……なんの騒ぎ?方向からしてお城の方からみたいだけど……」
カムロウ「サン・イリア城に何かあったのか?」
チリ「………」
カムロウ「………」
待てよ……この感じ………
カムロウとチリは互いに二人で顔を見合わせた。
「「………まさか。」」
そのまさかが、遠くから駆け走ってきた!
ルカ「あぁ!カムロウ、チリ!丁度良かった!!一緒に来てくれ!!!」
ラクト「早くずらかるぞォォォ!!!」
なんとルカたちが、城から逃げるようにやってきたのだ!!
チリ「うわあああああああァァァ!!!」
カムロウ「やっぱりお前らかァーーーッッッ!!!__」
__そして、サン・イリア城の城下町。
カムロウとチリに事情を説明する僕達の後ろを、アリスをとぼとぼついてくる。
チリ「あのねぇ~~…なんで問題ばっかり起こすの~~?」
カムロウ「それともなんだ?アレか?問題しか起こせないのか?」
ルカ「うん。全部アリスのせいなんだよ。」
ラクト「確かにその通りではあるな。」
アリス「正直、今回は反省している。火の不始末とは恐ろしいものだ、魔王城でも注意しなければ……」
ルカ「まあ、貴重な書物はだいたい運び出せたみたいで良かったけど……」
アリスにしては随分しおらしく、さすがに反省しているようだ。
カムロウ「それで、アリスさん。イモは無事に焼けたんですか?」
アリス「この通り無事、黄金色に……」
カムロウ「わお!これは見事な。」
アリス「ホクホクだぞ。」
ルカ「……………」
ルカ「でも、精霊の本は図書館に置きっぱなしだな。もしかして、燃えちゃったんじゃ……」
ラクト「え…何してんのお前。え、何してんのお前!?」
ラクト「ルカ、お前ェ!?ちゃんと本、読めたんだろうなァァ?」
ルカ「いやいや……開くたびに魔物が出て来たんたぞ!?読めるわけないだろ!」
ラクト「何のために地下図書館に行ったと思ってんだ!?今のゴタゴタでしばらく城に行くことは出来ねぇんだぞォ、怪しまれっからなぁ……まさかここで何日も足止めするつもりじゃあねぇだろうなァァァ……?__」
アリス「__…ほれ。」
アリスが差し出したのは……
例の本__「四精霊信仰とその源流」だった。
ラクト「え!?お前これぇ……!?」
アリス「…あの騒ぎの中でくすねてきてやったのだ。」
ルカ「おおっ!ありが……」
ルカ「いや、褒めないぞ。あの騒ぎは、お前が元凶なんだからな。」
アリス「すまぬ……」
アリスはしょんぼりした………
ラクト「もうやめとけ、これ以上は気の毒すぎる。」
ルカ「……まあ、反省してるんだったらいいよ。僕も、アリスにはずいぶんと世話になっているんだし。」
「四精霊信仰とその源流」をアリスから貰う。
ルカ「それより、今度こそちゃんと読めるんだろうな……魔物が出てきたり、火事になったり、もう散々だ。」
……魔物が出てくる、か…………
ルカ「…………」
ラクト「…………」
本をベンチの上に置くと、僕とラクトは武装した。僕は剣を、ラクトは銃を構えた。
パヲラ「……いやいや、流石にもういないんじゃないの?」
ジョージ「ダメだ。聞こえていない……ルカ殿は必死だ。」
マモル「…ようござんすか。」
ルカ「ああ……」
ベンチの上に置かれた本の表紙を、恐る恐る触り……
ルカ「……ほいっ!!!」
一気に開いた!!
……しかし、何も起こらなかった。
ラクト「……異常、ナーシ。」
ルカ「やっと読めるな………」
僕は広場のベンチに腰を下ろし、ようやく書物を読み始めたのだった。__
ルカ「__ふむふむ……」
カムロウ「どうだった?」
ルカ「精霊のだいたいの居場所は、この本に記されていたよ。」
サラマンダーはセントラ大陸の北部、ゴルド地方の火山洞窟。
ウンディーネはセントラ大陸の東部、ノア地方にある神聖な泉。
ノームはセントラ大陸の西、サフィーナ地方に広がる砂漠のどこか。
ルカ「そしてここから一番近いのは、ここナタリア地方北西にある精霊の森のシルフみたいだな。サン・イリアからそう離れていない。」
膝の上で地図を広げ、みんなと精霊の森の場所を確認する。
パヲラ「だいたい3日くらい歩けば着く距離ねぃ。」
アリス「精霊の森というのは、フェアリーやエルフが静かに暮らしている森。」
パヲラ「そういえばフェアリー……最近見なくなったわねぇ。昔はいたのに。」
アリス「相性の悪い人間だと、フェアリーの姿を視認することができん。純粋な心を持つ子供なら見れるが…成長したことで見れなくなったことも考えられるだろう。」
アリス「精霊の森は、魔王たる余としては、あまり人間に踏み込んでほしくはない地なのだ。」
ルカ「分かってるさ、アリス。向こうから攻撃してこない限り、彼女たちをそっとしておくよ。フェアリーやエルフ達の平穏を乱すのは、僕としても本意ではない。」
ルカ「それでいい。貴様らが信頼できん人間ならば、精霊の事など教えておらん。」
ラクト「……ってことは、俺たちの事…」
ルカ「…信頼してくれてるのか?」
アリス「…ふん!」
ラクト「それなり、みてぇだな。」
そんな会話を交わしていた時だった__
???「ここで会ったが百年目。恋してダーリン、この愛百年……」
ルカ「お、お前は…!?」
残念なラミアが現れた!
アミラ「私はアミラ、残念なラミア。不滅の恋に燃える、はかないフェニックス。」
ルカ「はかないフェニックス……語義が矛盾してるぞ。」
チリ「珍獣が珍獣を言ってる……」
ルカ「そういえばお前…航路は封鎖されてるはずだろ、どうやってこの大陸まで来たんだ?」
アミラ「実は、あなた達の船にこっそり乗っていたの。ダーリンを追い掛け、この世の果てまでどこまでも。」
ジョージ「ふむ……密航してきたのか。」
ルカ「…分かったから、あんまり付きまとわないでくれないか?」
アミラ「…私は、どこへ行っても避けられる醜い蛇。人に避けられ石を投げられ、どこの町でも一人の身。」
ルカ「アミラ……」
子供「うわー!ヘビのおねえちゃんだー!」「あそんでー!あそんでー!」
子供達はアミラの足を引っ張ったりと、大はしゃぎだ。
ルカ「……思いっきり、子供になつかれてるぞ……」
子供「ヘビのおねえちゃん、つよい?」
子供「北のお化け屋敷のオバケ、やっつけられる…?」
アミラ「私はインパクト重視のへなちょこラミア。腕っ節は頼りないの。」
カムロウ「いや噛みつけよ。ヘビなんだし。」
ルカ「北のお化け屋敷…?なんだい、そりゃ?」
子供「北の大きな屋敷にはねぇ、おばけがいっぱい出るんだよ。」
子供「ゆーれいが出てきて、遊べないの。」
不意に、アリスは大声を上げる!
アリス「ふん、幽霊など存在せんわ!」
ルカ「おいおい、アリス。子供が怖がるだろ。」
子供「わーい!へびー!」「へびー!」
子供達は驚いた様子もなく、アミラと遊んでいるようだ。
アリス「…ふん、馬鹿な人間め。幽霊など迷信、恐怖心が生み出した幻想に過ぎん。そんなものを怖がるとは、馬鹿も大馬鹿、ドアホの極みよ。」
マモル「じゃあします?怪談話……」
アリス「せんで良いわッ!!!」
ルカ「…何言ってるんだ、アリス?」
不審の態度のアリスはともかく……
ルカ「北には、お化け屋敷なるものがあるらしいな。子供の言うことだし、大した事はなさそうだけど……」
パヲラ「どうかしらね。子どもだからこそ、何かあるかもしれないわよ。」
ルカ「う~ん、どうなんだろうな……」
すると、そこに二人の兵士が通り掛かった。
兵士「むっ!町の中に魔物が!」
兵士「城内に侵入した魔王と関連があるかもしれん!捕らえろ!」
彼らは血相を変え、こちらに走ってきた!
ルカ「ま、まずい!逃げろ…!」
アミラ「わわわ…!」
僕やアミラは、慌ててその場から駆け出す。
さすがは、イリアス信仰が盛んなサン・イリア。
ここでは、魔物がおちおち歩いているとまずいらしい__
__ルカとアリスとアミラは逃げ出した!
ラクト「待てお前ら…全力で他人のフリをしろ。」
カムロウ「なんでぇ?」
ジョージ「あの衛兵はアミラ殿を追っているのであって、我々ではない。変に逃げるのもおかしいか……」
チリ「確かにそうだね……」
チリ「……ってことは、ルカ達が戻るまでここで待つの?」
ジョージ「む……それもそうか……」
カムロウ「足止め食らったり食らわなかったり……忙しいな、今日一日……」
マモル「若、あとどのくらいで戻ってくるかね。」
パヲラ「30分くらいしたら戻ってくるんじゃないかしら。__」