もんむす・くえすと! 勇者ルカと仲間たち   作:J・チェプナクル

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第12話 入り乱れる情報

数十分後__

 

ルカ「はぁはぁ…よく考えたら、僕は逃げる必要ないじゃないか……」

城下町をぐるりと周り、元の広場。

ルカ「アミラの奴は、逃げ切れたかな……」

アリス「やれやれ…この町では、魔物は歓迎されんようだな。やはり、イリアスの汚れた思想に染まっているか。」

そうして、元いた場所に戻ってくると……

 

それぞれ休息をとる仲間たちの姿があった。それはもうダラダラと。

マモルは噴水の縁で横になってたりしてるし、ラクトとパヲラはチェスの真っ只中だ。

カムロウとチリとジョージは、広場に設置されてる掲示板を食い入るように眺めている。

ラクト「お、来たかルカ。」

ルカ「(なんだこいつら……まるで他人事のように……)」

 

カムロウ「そうだルカ。さっきの北のお化け屋敷のことなんだけど……」

ルカ「何か分かったのか?__」

 

ルカが戻る少し前………

 

ラクト「俺、道具屋行って来るわ。」

ジョージ「なら私は武具を見に………」

ラクトとジョージが買い物に行った。

マモル「いってらー。」

そうして残った仲間が、引き続きルカを待っていると……

カムロウ「なぁ………」

マモル「うん?」

カムロウが何かに気付き、指差しをした。その方向にいたのは……

カムロウ「あれ、フラドリカじゃないか?」

フラドリカというのは……以前、イリアス大陸で出会った一人の少女だ。フラット探検団と称して、世界各地を冒険することを目標としている。

なお、団員は今のところ、人見知りの激しいミミック娘のヴェニアしかいない。

チリ「あれ、本当だ……」

カムロウ達に気付いたフラドリカは、大きなリュックサックを揺らしながらこっちに歩み寄ってきた。

フラドリカ「これはこれは…ルカ殿のお仲間ではないですか!」

パヲラ「フラドリカちゃんじゃない!サン・イリアに来ていたのねぃ!」

ナタリアポートで別れてしばらくだったが、どうやらサン・イリアに来ていたようだ。

カムロウ「良かったぁ。元気そうで。ヴェニアは……これじゃ様子がわからないな。」

背荷物の中に紛れてある宝箱、これがミミック娘のヴェニアだ。今は閉じこもってるようだが……

フラドリカ「サン・イリアは魔物排斥(はいせき)の思想が大きいでありますから……危ないので彼女を外には出すことはできないのであります。」

カムロウ「あぁ、そうかぁ……」

 

パヲラ「探検の方はどうなのかしら?」

フラドリカ「それが……今のところ、路銀稼ぎの毎日であります。冒険の旅というのは、常に財源の支出との戦いであります……」

フラドリカ「今は城下町の清掃のアルバイトをしているであります。」

マモル「だったら、その背荷物は降ろしたほうが作業しやすいんじゃねぇか…?」

 

チリ「ところで、フラドリカさん。北のお化け屋敷の話って……何か知ってる?」

フラドリカ「おお、その話でありますか!実はこの仕事の際、情報収集も併用してありまして……」

フラドリカはポケットから、手帳を取り出してぺらぺらとめくる。どうやらメモのようだ__

 

   〈フラドリカスペシャル〉

  怪奇と恐怖と戦慄の廃屋敷!

 

 

サン・イリアから北に行ったところに、とても大きなお屋敷がある。

そこには数十年前まで、大富豪の一家が住んでいた。

しかし!大切な一人娘が病気で死に、悲嘆に暮れた大富豪は、お屋敷を引き払ってしまった。

それ以来、お屋敷は無人になってが……

今でも、死んだ少女の幽霊が現れるらしい……

 

だが!この屋敷の逸話はまだあった!

 

北の屋敷がある土地は、かつて処刑場であり、処刑された人々の怨念が、今も屋敷の周りに漂っているのだとか……

 

あるいは、昔は墓場で共同墓地だったのかもしれないとか……

 

もしくは変な女魔導師が住み着いており、背徳的な研究をしているのだとか。

 

死人に口なし、真実はいずこか、今も安泰を求めて迷走しているのか__

 

フラドリカ「__共通する目撃情報としては…【少女の幽霊】でありますが……こうも話が乱れていると、真相は分からずであります。」

そうして、フラドリカはメモ帳をパタンと閉じる。

フラドリカ「……と、これくらいでありますかね。」

パヲラ「情報がこうも違う所が気になるわね……もし、その話が全部本当だとすれば……」

マモル「もともと処刑場だった土地に屋敷を建てるも、その一人娘が死亡して廃墟に。そしてそこに女魔導師が住み着いた……」

チリ「でもそれだと、幽霊が出る理由が……」

マモル「わかんないんだなこれが。」

フラドリカ「なので、ワガハイも困っているのであります。一体どの話を信じれば良いのかと……」

 

カムロウ「それで……フラドリカはどうなんだ?北のお屋敷、行くのか?」

フラドリカ「いえ、そのつもりはないのであります。」

 

フラドリカ「冒険と肝試しは違うであります。死者の眠る場所に許可も得ず土足で入るのは冒涜であります。」

フラドリカ「むしろ気になるのは……精霊の森の奥にいる湖のヌシの話でありますな!」

カムロウ「あ、その話はいいや__」

 

 

 

カムロウ「__だとさ。」

ルカ「聞いてやれよ、湖のヌシの話。」

とにかく、このサン・イリアにフラドリカがいたのか。

元気そうで良かった。

 

ルカ「しかし、なんで話がバラバラなんだ?仮に魔物の仕業にしても、少し変な話の気もするな。ホントに幽霊の仕業だったりして……」

アリス「そんなわけがないだろう!!!」

ラクト「だぁっ!うるせぇ!!」

 

アリス「それはそれとして……あれは一体何なんだ?」

アリスが目を留めたのは、広場の掲示板だった。何枚もの紙片が、画鋲で留められている。

ラクト「あぁ、アレ?依頼掲示板(クエストボード)だよ。要は小遣い稼ぎ……」

ルカ「不特定多数に色々と依頼するための掲示板だよ。特に、冒険者なら必見……ってことで、チェックしておくか。」

「腕が立つ冒険者の方、3ヵ月ほど警備の仕事をお願いしたい。報酬はずむ、面接あり」

「腕利きの鍛冶屋求む、鎧職人は特に優遇」

「ノースセントラ草をお持ちの方、400ゴールドで売って下さい」

「かわいいこいぬがほしいです」

ルカ「う~ん、手を付けられそうな依頼はなさそうだな。なにせ旅の身だから、時間が掛かりそうな依頼には手を出せないし……」

ジョージ「力仕事であれば、私も働けるのだが……」

 

ラクト「とっとと、今日の宿でも探そうぜ。」

ルカ「そうだな。」

そのまま広場を後にしようとした時、一羽の鳩がぱたぱたと飛来してきた。その鳩の足に紙片をくくりつけており、掲示板の上に止まる。

アリス「む…この鳩はなんなのだ。」

ルカ「アリス、この鳩は大事な仕事をしているんだ。だから、食べちゃ駄目だよ。」

アリス「食うかっ!」

ラクト「え、取って食わねぇのか?」

アリス「食わんわっ!」

鳩は足にくくられた紙片の一枚をくちばしで外し、それを掲示板に張り付けた。そして、次の町へと飛び去っていく。

ルカ「あれは掲示鳩だよ。あんな風に、世界中の町や村の掲示板にメッセージを貼るのが仕事なんだ。」

アリス「なるほど、訓練された鳩を伝達手段として用いるとはな。人間も面白い事を考えつくものよ。」

そして、掲示鳩が貼っていった新しい依頼はというと__

 

「魔物に偏見を持っていない冒険者の方へ。依頼がありますので、どうかお話を聞いて下さい。ナタリアポート南区6番街3-29 依頼主メイア」

 

ルカ「魔物に偏見を持っていない冒険者…?」

カムロウ「この辺りで魔物に偏見を持っていない冒険者なんて珍しいモンだろ?」

ルカ「わざわざそこを強調している以上、魔物に偏見がある者には出来ない依頼なんだろうな。」

 

ルカ「気になるな…ちょっと行ってみようかな?」

アリス「まさか貴様、ナタリアポートまで戻る気か…?」

面倒事が嫌いなアリスは、やはり反対のようだ。

確かに、ナタリアポートにまで引き返すのは大変だが…不満そうなアリスは、まあ放っておこう。

ここを出る前に、町で一泊してから出発しよう。

 

ラクト「そういや…道具屋寄った時に、幽霊除けの聖水なんてモンあったんだが……欲しい?」

ルカ「いや、僕はいらないな。」

アリス「ふむ、もらおうか。」

ラクト「えっ、お前が?」

ルカ「アリス……?」

アリス「なに、ただの気まぐれだ……幽霊なんて、馬鹿馬鹿しい。」

 

 

__サン・イリアの宿で一泊して、早朝。城下町の外。

ルカ「……結局、北のお化け屋敷ってどうなってるんだ?人によって、言ってることが全然違うんだろ?」

パヲラ「事故死した少女の霊、処刑場の怨念、墓場、女魔導師……」

ルカ「う~ん。いったい、どれが本当なんだろう。」

 

ルカ「でも、幽霊が出るっていう話は共通してるんだろ。不思議なこともあるもんだな、アリス?」

アリス「ない!貴様ら無知蒙昧な人間には分からんだろうが、幽霊など魔導科学的に存在せんのだ!」

ラクト「異議あり!モンスターにも、ゾンビ娘とかゴースト娘とかいるだろ!?その辺どーなの!?」

カムロウ「そーだ!そーだ!」

アリス「あれは幽霊ではない!れっきとしたモンスターだ!死体などを媒介に、高濃度の魔素が集まって生まれたモンスターに過ぎん!非科学的な幽霊などと一緒にするな、ドアホめ!」

ラクト「あっ、そーなの……」

カムロウ「あっ、そうですか……」

ルカ「へぇ…そうなのか。」

パヲラ「見事に論破されたわね……」

……なぜか、アリスはひたすらに幽霊を否定する。

 

ルカ「でも、その幽霊屋敷に行ってみる必要があるかもな。もし人々に迷惑をかける悪い魔物だったら、退治しないと……」

アリス「そんな必要はない!とっとと精霊の森に行って、シルフに力を借りるのだ!下らん寄り道をしている暇などない!」

ルカ「……こいつは何をムキになってるんだ?」

カムロウ「さぁ……?」

アリスの態度は、相変わらずよく分からない。

 

ルカ「そう言えば、メイアっていう人の依頼もあったなぁ……」

「魔物に偏見を持っていない冒険者」という条件は、まるで僕を指名しているようなものだ。

ルカ「勇者ってのは、やる事がいっぱいあって大変なもんだね。」

アリス「貴様がドアホなだけだろう。他人の事など、放っておけばいいものを……」

ルカ「それでも、この僕が行かないと。きっとこれは、人間と魔物の架け橋になるような依頼だよ。」

アリス「本当に、貴様は人助けとやらが好きなのだな。放っておけばいいのに、全く…」

ルカ「僕は勇者、困っている人を助けるのが仕事なのさ。」

アリス「ニセ勇者のくせに…」

ルカ「ニセ勇者だからこそ、心は真の勇者でありたいんだよ。」

アリス「ふん、一丁前の口答えを習得しおって…」

メイアとやらの依頼を受けるため、ナタリアポートに向かうか__

それとも、北のお化け屋敷に行ってみるか__

またはアリスの言う通り、精霊の森に直行するか。

さて、次の目的地は__

 

 

 

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