もんむす・くえすと! 勇者ルカと仲間たち   作:J・チェプナクル

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第13話 漆黒の魔剣士ワトライバ

ルカ「よし、ナタリアポートに行ってみよう!「魔物に偏見を持っていない冒険者」への依頼を受けに、メイアという人に会いに行くんだ!」

アリス「やれやれ、つくづく貴様はドアホだな。旅の目的を忘れたのか?」

ルカ「魔王城に行くことだけが、僕の目的じゃないよ。少しでも人と魔物が仲良くなれるように、出来ることをしたいんだ。」

アリス「やれやれ……」

気が乗らない様子のアリスを連れ立ち、僕達はナタリアポートへと進路を向けたのだった。

ルカ「さあ、行くぞ!__」

 

 

サン・イリアから離れ、平野を歩く僕達。

ラクト「ホントにナタリアポートまで引き返すのかよ……3日も掛かったこのルートをか!?」

カムロウ「俺は丁度良かった。ナタリアポートには用があったから。」

気が乗らないのはアリスだけじゃなかったらしい。ラクトは不満をタラタラこぼす。

チリ「そんなに嫌なら、瞬間移動魔法(テレポート)でも使えば?」

ラクト「お前な……移動魔法はどえらく高等な魔法だぜ?あまりの魔力の量に、俺様の体が耐え切れなくて粉になっちまうわ。」

チリ「なら【ハーピーの羽】買えばいいじゃない。」

ラクト「あんな高いモン買えるわけないだろ……いくらすると思ってんだ……」

 

ジョージ「とはいえ、一度通った道だ。以前よりも時間は掛からないはず。」

ルカ「ああ、今のところ順調に進んでいるしな___」

 

__その一瞬、僕の視界に…【黒い何か】が物凄い速さで、僕達に向かって飛んでくるのが見えた__

 

 

ルカ「__みんな伏せろ!!」

僕はソレに対して、身の危険を感じた。

咄嗟に叫んだものだから、仲間たちは困惑の声を出すが、反射的に身をかがめた。

【黒い何か】……黒く蠢く、禍々しい塊だった。そして間もなく、【黒い何か】が地面に伏せた僕達の上を風の如く通り過ぎた。

ルカ「な、なんだ…今のは…!?」

突然の襲撃か……!?__

 

目の前を見ると、そこには黒いマントに身を包んだ者が一人いた。

端正な顔立ちをしていた。中性的だが…男っぽい。

ルカ「な、なんだお前は…?野党か…?」

???「………………」

仮に目の前にいるこの男が野盗だとしても不可解な所がある。それは、身なりが良い事だ。

シルクの布のような白い肌。

艶のある髪。風に吹かれて、ユラユラとなびいている。

光をも飲み込むような漆黒のマント。

腰には赤いダガーナイフと白いメイス。

背中には銀色に輝く剣…サーベルかな。

貴族の人間と言われても疑えないくらい格好で、とても野盗とは思えない恰好をしていた。

???「サン・イリア城でグランベリアを撃退したという少年……君が勇者ルカか?」

ルカ「えっ…!?そ、そうだけど……」

???「………………」

しばらくこちらを睨みながら黙り込むと、ふと呟く。

???「ふむ、情報通りの少年だな……君のような少年が、グランベリアを撃退したというのか?信じられんな……」

しかも、僕の事を知っているというのだ。

その男は、ある程度距離を取りつつも、ゆっくりと僕達に歩み寄ってくる。

 

ルカ「な、なんだお前は…!?僕が狙いか…!?」

???「そうだ。」

ルカ「理由はなんだ!?金か!?」

???「お前が【勇者】だからだ。」

ルカ「僕が勇者だから…?何言ってんだアイツ……」

会話になってないぞ……勇者だから狙うってどういうことだ……?

 

すると、マモルとジョージがハッ…と、何かに気が付いたような反応をした。

マモル「…待てよ……まさか…!」

ジョージ「あぁ…!もしかすると、あの噂は本当かもしれん…!」

そして、僕を庇うように二人は前に出てくる。

ジョージ「下がるのだ、ルカ殿!この男…【勇者狩り】だ!!」

ルカ「【勇者狩り】…!?誰だ…?」

名前からして物騒だ。只者じゃないということだけはなんとなく分かるが……

 

パヲラ「まさか…【漆黒の魔剣士】…!?」

マモル「ダンナも知ってるんで?」

パヲラ「ええ、聞いたことはあるわ……」

チリ「な、なんですか…【漆黒の魔剣士】って……」

パヲラ「それは___」

 

__数年前…ゴルド地方とノア地方で、【勇者】を名乗る戦士は、旅の道中で【黒い剣士】に襲われるという噂話が流れた。

その【黒い剣士】は、卓越した剣術の持ち主で……狙われた者たちは、命こそを奪われはしなかったが、ひどく打ちのめされたという話だ。

疾風のようにやってくるも闇のように消え、跡を残さず去る……

剣士の目的は、【勇者であること】ただ一つ。それ以上でもそれ以下でもなかったそうな。

人間の仕業なのか、それとも魔の者の仕業なのか……流れるように付いた異名は…【漆黒の魔剣士】__

彼に襲われ、敗走したという強者は数知れないと……

 

ルカ「それが…【漆黒の魔剣士】…?」

ラクト「そんな強ぇヤツが、ナタリア地方に南下してきたっていうのかよ!?」

カムロウ「しかも目の前にいる……!」

 

???「どれどれ…顔をよく見せてくれないか。ここからじゃよく見えない。」

【漆黒の魔剣士】は、僕達の方に歩み寄ってきた。

それに対して僕達はますます警戒を強める。

ジョージ「止まれ、何をするつもりだ。」

???「どうもしないさ。なにも…そうも毛を逆立てたままだと、自己紹介すらロクにできんだろう?」

ルカ「…………」

 

ルカ「名乗るくらいなら……」

僕は前に出て、【漆黒の魔剣士】の近くに寄ろうとした。

ジョージ「ルカ殿、危険だ!信用できる相手ではない!」

ルカ「わかってる。」

 

ルカ「みんな、何かあったらすぐに動いてくれ。」

仲間たちは静かに頷いてくれた。

 

僕は、【漆黒の魔剣士】の前に立つ。

彼は身長が高いようで、僕の目線だと見上げるほどだ。

???「ほう……良い眼をしている。真っ直ぐな眼だ。」

そして【漆黒の魔剣士】は、手を差し伸べて来た。なんら不自然な動きすらない、友好的な動きだ。

???「オレの名は【ワトライバ】…よろしく。」

ルカ「…………」

恐る恐る手を伸ばして、握手を交わす。

ここまでは異常もなにも変わりない。殺気すら感じない__

 

 

ワトライバ「__さて、これが避けれるか?」

ルカ「え…?___」

 

 

__その刹那、ワトライバは背中にあるサーベルを右手で抜いて一閃してきた!

ルカ「くっ…!」

僕はすぐさま後ろに飛び退いて回避した!

しかし、間一髪…か?反応が少しでも遅れていたら、首が飛んでいたかもしれない……

ルカ「やっぱり僕が狙いか…!」

ワトライバ「ほう。身のこなしはなかなかのようだな。」

 

ラクト「野郎…攻撃してきやがった!じゃあ撃っても構わねぇよな!」

ラクト「バレットショット(魔弾射撃)!!!」

すぐさまラクトが魔導銃で、ワトライバに向けて数発、発砲した!

ワトライバ「遅いッ!」

ワトライバは、腰から刀身が赤いダガーナイフを左手で抜き、逆手持ちした!

そして発射された魔弾を、ナイフを振り回して弾いた!!

ラクト「は!?」

ワトライバ「魔力を弾丸にして飛ばす武器…か。面白い発想だが、この程度でやられるようなオレではない!」

ルカ「ならこれならどうだ!」

僕は抜刀して、ワトライバに魔剣・首刈りを仕掛けようとした。

しかし、剣先が首元まで迫った瞬間、ダガーナイフの刀身に遮られて防がれてしまった!

ルカ「な…!」

ワトライバ「惜しいな。だが、いい動きだ。」

今、僕はワトライバに剣を突き差したままだが……動こうとすると、ワトライバが右手に持っているサーベルで切られるような()()しかない。いや…経験や本能からくる予測だろうか?

ルカ「くっ…!」

パヲラ「この強さ…!やっぱり本物の【漆黒の魔剣士】としか…!」

ジョージは抜刀して、ワトライバに斬りかかろうとした!

ジョージ「助太刀を!」

ワトライバ「全員、動くな!勇者の首が飛ぶところを見たいのか!」

カムロウ「そんなモン俺は見たくねぇな!」

そう言い終えた時、カムロウは持っていた鉄の盾を投げ飛ばした!

ワトライバ「うおっ!?」

ワトライバは僕の剣を跳ね除け、左手のナイフで盾を跳ね除けた!

カムロウは火炎弾魔法(ファイヤーボルト)を何発か放ちながら、ワトライバに近づこうとした!

ワトライバ「まだ若いな!この世界で生きるならば、人の首が飛ぶところを必ず見ることになるぞ!!」

右手で持ったサーベルで、飛んでくる火炎弾を斬り伏せるワトライバだったが…

ワトライバ「その殺意という刃が自分にも向くということを!」

火炎弾を一発、サーベルの刀身に浴びせた!

ワトライバ「その身体に刻み教えてやろう!!!」

するとサーベルは着火されたかのように燃え盛った!

ルカ「な、なんだあの燃える剣は…!?」

ごうごうと燃え盛る。いや、噴き出してる!?

 

カムロウ「俺の拳を、アイツに叩き込むッ!!」

ワトライバ「食らえ小僧ッ!そして身の程を知れェェーッ!!!」

燃え盛るサーベルを構えたワトライバ。

それを前にしてもなお、ひるまず近づくカムロウ。

ルカ「カムロウ!止まれェェ!」

僕の制止の声は届いたのかどうか。カムロウは止まることはなかった。

 

ワトライバの剣が、カムロウの拳が、互いにぶつかり合った__

 

 

 

 

__……まだ。

 

__まだ【その時】ではない。

 

__まだ【待っている】。

 

__我らが御子よ。まだ【死ぬ時】ではない。

 

__力を欲するならば。

 

__力を我物とするのだ。

 

__故にこの力を渡そう_____

 

 

 

 

__その刹那、カムロウの右腕が、異様に膨れ上がった!!

カムロウ「う…!?」

胎動するかのような動きを見せた後、内側から皮膚を破くかのように、()()は姿を見せた__

 

__カムロウの腕が、ドラゴンの腕に変化したのだッ!!!

 

ワトライバ「な…なにィッ!?」

カムロウ「お…俺の腕!?」

ドラゴンの腕に変化したカムロウの腕は、ワトライバの燃え盛るサーベルを簡単に受け止めた!

 

ワトライバ「受け止めたのか…!?オレの剣を!?」

カムロウ「これはなんなんだァァァ!?なんで俺の腕がこんなになるんだァァァ!?」

 

ルカ「え…!?なんでカムロウの腕があんなになるんだ…!?」

ラクト「分かんねぇ!あれもアイツが持つ力か!?」

パヲラ「それにしてはカムロウちゃんが一番驚いているように見えるけど……」

 

チリ「ねぇ、カムロウ!その腕、痛くないの!?」

カムロウ「うん、痛くも痒くもないんだけど……どうなってんだコレ……」

 

ワトライバ「……そうか…そういうことか!」

後ろに飛び退いて後退したワトライバは、剣を構えながらも話を続けた。

ワトライバ「何が起きているか良く分からんが、辻褄が合ったぞ!」

 

ワトライバ「ドラゴンとはお前の事か!」

 

ワトライバ「フフ……そうか…そうか、そうか。フフフ……」

すると、ワトライバは笑いながら武器を懐にしまってしまった。

あっさり戦闘態勢を解いたのだ。

カムロウ「オイ!なんで武器をしまった!?」

ルカ「今度は何をする気だ…?」

ワトライバ「興覚めだ。オレは帰らせてもらう。」

ルカ「か、帰る…?帰るのか…?」

先に仕掛けておいて、なんとも身勝手なヤツだ。

ワトライバ「どうやら君は、そこらの勇者紛いとは違うようだ。」

ルカ「勇者紛い…?」

ワトライバ「ああ。だから狩る理由が無くなった。」

ルカ「……?」

聞けば聞くほど、ますます謎が深まる奴だ。

 

ワトライバ「ところで勇者……ルカといったな。君には後ろ盾がいるな?」

ルカ「う、後ろ盾…?なんのことだ?」

ワトライバ「君たちには、魔物の協力者がいるのか?」

ルカ「………!」

すこし、汗が出た。僕は今、動揺したのか?

ワトライバ「その剣技を、【魔物】が編み出した技を【人間】の君が使っている、しかもかなりの使い込み。その技は猿の真似事程度で扱える代物ではない。ということは……魔物から教わったと考えるほうが的確だろう。」

ワトライバ「教えた魔物がグランベリアかと思ったがどうにも考えにくい。別のヤツだな……?」

ルカ「……………」

こいつ、かなり鋭い。

ワトライバ「誰に教わった?」

ルカ「それは……答えられない。」

ワトライバ「そうか。今の質問は気にするな。そんなことを知ったところでどうするわけでもないしな。」

 

ワトライバ「では、失礼するとしよう。まぁ、諸国漫遊を楽しむことだな。」

そう言うとワトライバは僕達に背を向いて、どこかに行こうとする。

ワトライバ「…だが__」

 

 

ワトライバ「近いうちに、お前たちとは戦うことになるだろうな。」

ルカ「なんだって…?」

 

ワトライバ「さっきの興覚めというのは、お前達がまだ【狩る】に値しないということだ。」

ワトライバ「お前達が【狩り】に相応しい強さを持った時、オレから出向いてやる。」

ルカ「…………」

つまりこの先、また僕達の前に現れる。ということか……

 

ワトライバ「あと最期に一つ、言っておこうか……このナタリア地方にはオレの仲間が何人か散らばっている。」

ルカ「ええっ……!?」

こいつ、()()じゃない!僕達のように、複数で行動しているのか!

チリ「そういえばさっき、【情報通り】とか言ってたような……」

ラクト「どこから情報が漏れてんだよ…!?」

ワトライバ「フッ……気を付けるんだな。特に背後を。このオレが、闇夜に紛れてお前たちを見ていると思え……」

 

ワトライバ「さらばだ、勇者御一行団体様。」

 

ワトライバ「そして!魔剣の勇者と、龍の戦士!再び相まみえる時を楽しみしているぞ!!」

 

ワトライバ「闇影転移(テレポート)!」

そう叫んだワトライバの体を、影が包み込んだ!

するとワトライバは音もなく消えてしまった……

 

ルカ「………………」

カムロウ「あっ、腕戻った……」

人の腕に戻ったカムロウは、問題ないように腕をあちこちに動かしていた。

 

ルカ「なんだったんだ…アイツ……」

ラクト「俺たち、とんでもないのに目ェ付けられちまったんじゃねぇか…!?」

形容し難い不安という気持ち。常に狙われているのではないかという焦燥感。

僕たちに残ったのは、そういった気持ちだった。

 

ジョージ「…ルカ殿。いかがなさいますか。一度戻って態勢を立て直すのも良いかと。」

ルカ「…いや、このままナタリアポートに進もう。」

僕たちはここで止まっているわけにもいかない。

ワトライバ…奴のことも気がかりではあるが、だからといってどうこうできる問題じゃない。

今は出来ることをしよう。と、僕は考えた。

 

こうして僕たちは再び、ナタリアポートに足を進めた__

 

 

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