もんむす・くえすと! 勇者ルカと仲間たち   作:J・チェプナクル

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第15話 依頼主メイア

ルカ「南区6番街3-29……ここか。」

そこは大きくも小さくもない、ごく普通の民家。

依頼主のメイアとやらは、この家に住んでいるらしい。

ルカ「ごめんくださーい!」

 

   「はーい!」

元気な声と共に、出てきた女性は__

 

ルカ「__あれ、あなたは……」

見覚えのあるマーメイドだった。

 

以前…ナタリアポートに着いてすぐの事。

この町で声を掛けてきた人魚だった。

ルカ「もしかして、あなたがメイアさんですか?」

メイア「ええ、メイアとは私の事です。__」

 

__こうして僕たちは、メイアの家の中に導かれたのである。

 

メイア「あの時は、失礼しました。例の爆発で、すっかりうやむやになってしまって……」

ルカ「いえいえ、こちらこそ……」

あの時はイリアスクロイツの爆弾テロのせいで、結局話が聞けなかったのだ。

メイア「狭い家で、申し訳ありません。大したおもてなしも出来ませんし……」

マモル「いえいえお構いなく……」

テーブルの上に並ぶお茶やお茶菓子、水産の食べ物を前に恐縮するばかり。

 

アリス「なにか知らんが、余は忙しいのだ。下らん依頼など……」

ルカ「ああもう、お前は黙っててくれよ。ほら……この昆布、味がしなくなるまでかじってろ。」

マモル「昆布で良いんですか……」

アリス「こんぶ……」

食欲に負けたらしく、アリスは昆布をもむもむとかじり出す。

こいつがおとなしくエサを食べているうちに、依頼を聞くとしよう。

 

ルカ「それで、頼みというのは……?」

メイア「実は……私は、人間の男性に恋をしているのです。」

頬を赤らめ、いかにも幸せそうな素振りでメイアは言った。

マモル「あれま!青いですね青いですねぇ!」

ルカ「まさか、その男性との仲を取り持てという事ですか?すみませんそういうのはとても苦手で……」

メイア「いえいえ……旦那様とは、もうすっかり深い仲。この家で、愛し合いながら幸せに暮らしております。旦那様は今、漁の仕事で海に出ておりますが……」

マモル「もうそこまで!」

ルカ「なんと、それは素晴らしいですね!」

僕の望みは、人間と魔物が共存する世界を築くこと。人間と魔物が愛し合う、こんなに素晴らしいことはない。

 

メイア「しかし……私と旦那様は愛し合っているのにも関わらず、正式な夫婦ではありません。なぜなら、海の掟による婚姻の儀式が執り行えないからなのです。」

ルカ「婚姻の儀式……ですか?」

 

メイア「人魚が人間と結婚する際には、海底神殿におられる南海の女王様に誓書を捧げなければならないのです。」

メイア「しかし…海底神殿に向かう試練の道には多数のモンスターが出没し、極めて危険で……」

メイア「私はそれなりに魔術の心得もありますが、旦那様は私よりか弱いお体。そのような試練の道、通る力などありはしないのです。」

 

ようやく話が見えてきた。

ルカ「つまり……代わりに、海底神殿に誓書を捧げに行ってほしいということですか?」

メイア「ええ、その通りです。失礼を承知でお願いします。どうか、私達の代わりに誓書を捧げに行って下さらないでしょうか。」

マモル「……えっ?それ、代理の人間でもいいんですか?」

ルカ「当事者の男女が行かないと、試練の意味がないんじゃあ……」

メイア「海の掟に、「本人でなければいけない」とは伝わっておりません。禁じられてはいない以上、問題ないとは思いますけど。」

マモル「規則の穴突いてない?」

 

メイアに聞こえないように、僕とマモルは耳打ちをする。

マモル「若…どう思います?」

ルカ「いやいやいや……普通、そんなの暗黙の了解だろ……」

代理人が試練を受けたって、何の意味もないはずだ。

 

そんな事を考えていると、玄関のドアが元気良く開いた。

少年「ただいまー!」

メイア「あら……お帰りなさい♪」

元気よく家に入ってきたのは、可愛らしい男の子だった。

ルカ「え……?まさか、もう子供が……?」

マモル「まさか…もう行くとこまで行ってる…?」

 

メイア「いえいえ……この人が、私の旦那様なのですよ。」

マモル「はぁっ!?」

ルカ「えええ……!?」

それは……少々ながら、相手が小さすぎないか!?

 

少年「ねぇメイア。この人達、だぁれ?」

メイア「とっても頼りになる冒険者のお方ですよ。結婚の誓書を届けて下さるよう、お頼みしているんです。」

少年「そうなんだー。お願いします、旅の方。僕とメイアを、けっこんさせて下さいー」

少年は、ぺこりと頭を下げた。

マモル「……確かにコレじゃあ、試練なんて無理ですよねぇ…」

ルカ「その、メイアさん……もう少し、彼が大きくなるのを待ってからの方がいいんじゃあ?」

成長を待ってからにした方が良いと思うのだが__

メイア「でも……旦那様、今年で25ですよ。」

マモル「はぁぁ……!?」

ルカ「うぇぇ……!?」

……嘘だろ?どう見ても、少年にしか見えないが……

少年?「僕、もうおとなだよ。けっこんできるよ。」

マモル「嘘だぁ……」

 

メイア「少しばかり、人魚の秘術で年を取らないようにさせて頂いていますから……」

マモル「嘘だぁ……!」

ルカ「なんで、そんな事を……?」

メイア「だって……この方が、可愛いじゃありませんか♪」

少年「そうだったのかー!おかしいと思ってたんだー!メイアー!ひどいよ、メイアー!」

メイア「うふふふふ……」

ぷんぷん膨れる少年?と、くすくす笑うメイア。

 

メイア「そういうわけで、あらためてお願いします。海底神殿まで赴き、南海の女王に誓書を渡して下さらないでしょうか。」

少年?「おねがいします!」

ルカ「……………」

少々悩んだが、僕の答えは変わることはなかった。

 

ルカ「……分かりました。その依頼、受けましょう。」

2人の顔が、ぱっと晴れやかになる。

メイア「ありがとうございます!」

少年?「ありがとう、お兄ちゃん!」

 

そこにマモルが耳打ちをしてくる。

マモル「良いんですか、若…!」

ルカ「え?なんかダメなことでも……」

マモル「いや、お嬢が……」

横を見ると、昆布をかじっているアリスの眼が、僕をじっとりと睨む。

アリス「……………」

面倒な事を引き受けるな__その顔に、そう書いてあった。

 

メイア「ささやかながら、お礼は致します。旅のお方には、満足されないかもしれませんが……」

ルカ「いえいえ、お礼なんていりませんよ。」

人間と魔物の共存する世界が、僕の理想なのだ。

愛し合う人間と魔物の絆を繫ぎ止めるためなら、報酬なんていらない!

メイア「では、これをお受け取り下さい。南海の女王に届ける誓書と、そして「導きの玉」です。」

メイアは一枚の書面と、そして透明な水晶のアイテムを手渡してきた。

 

「導きの玉」と「誓いの誓書」を手に入れた!

 

メイアから透明な水晶のようなアイテムを受け取り、僕は首を傾げる。

ルカ「これは……?」

メイア「この地域の砂浜で、その宝玉を掲げて下さい。そうすると、海底神殿への道ができるはずです。」

ルカ「なるほど……その道を進めば、海底神殿に辿り着けるんですね。」

 

メイア「はい、お願いします……なにとぞ、無事に辿り着かんことを祈っております。」

少年?「がんばってね、お兄ちゃん!」

ルカ「任せて下さい、では!」

こうして僕たちは、メイアの家を後にしたのだった__

 

 

__しばらくして、僕は仲間のみんなと合流していた。

事情を説明し…早速、海底神殿に向けて出発する予定だ。

パヲラ「つまり、依頼主は少年愛好者だったと……!」

チリ「いや、違うと思います……」

マモル「しっかし…あの身振り手振りは明らかに、幼い子供そのものでしたよ。」

アリス「あれは、精神が肉体に引っ張られているだけだ。」

チリ「そうなんですか?」

アリス「知力や理解力が年相応であっても…器である肉体が影響するのだ。」

 

ラクト「そんで…?これから俺らは海底神殿とやらに行くと?」

ルカ「ああ、そうだよ。」

ラクト「なぁルカ。結局よぉ、その依頼ってなんだったっけ?」

ルカ「え?聞いてなかったのか?「誓いの聖書」を海底神殿に届けるんだよ。」

ラクト「そうだよ。俺らは配達を頼まれたんだよ!白ヤギさんじゃあるめぇし。」

 

カムロウ「けど、いいじゃん!海だよ!海!」

ジョージ「陸地を歩む以上、そうそう無い機会ではないか!」

ラクト「なんではしゃいでんだよお前らは……」

 

ラクト「いいか!?海ってのはよぉ…危険な魔物がうじゃうじゃいんだよ!」

チリ「それはそうだけど……」

カムロウ「じゃあ、船はどうなのさ。」

ラクト「あれは定期的に聖水を海に放り投げてっから寄って来ないんだよ!」

 

ラクト「おいルカ!どうしてお前はそう面倒事を引き受けようとすんだ!」

アリス「全くだ。貴様は、つくづく他人に利用されるのが好きな奴だな。あんな個人的な頼み、貴様が引き受ける必要などないだろう。」

ルカ「そう言うなよ。種族の壁を乗り越えて愛を育むなんて、素晴らしいじゃないか。」

アリス「それは、貴様の言う魔姦の禁を犯していることになるのだぞ。イリアス信奉者として、その点は構わないのか……?」

ルカ「ううっ、痛いところを突くね……」

 

ルカ「とにかく!僕は人間と魔物の架け橋になれれば十分なんだ!」

 

ルカ「じゃあ行くぞ!南海の女王に会いに行くんだ!」

ラクト「結局行かなきゃなんねぇのかよ……」

アリス「海底神殿か……大した料理もなさそうだな。」

ラクト「むしろ何の料理があると思ったんだよ…」

……こいつの頭には、メシの事しかないのか。

呆れながらも、僕達は町を出たのだった。

 

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