もんむす・くえすと! 勇者ルカと仲間たち 作:J・チェプナクル
ルカの救助に向かった3人と別れたパヲラ、マモル、チリの3人は……
こちらに向かって来た、半透明のモンスターと対峙した!
クラゲ娘が現れた!
クラゲ娘「海の中を歩く人間……?ふしぎ……」
ふよふよと漂うその魔物は、不思議そうにこちらをみている。
チリ「私たち、海底神殿に用があるの。だから、危害を加えるようなことは……」
対話による交渉を試みたが……
クラゲ娘「おいしそう……食べてあげる……」
向こうは交渉するつもりはないようだ!
マモル「チリの姉さん下がるんだ!こいつは敵だ!」
3人は戦う姿勢に入った!
クラゲ娘は触手を伸ばしてきた!
マモル「クラゲといえば…触れちゃいかんってなぁ。」
クラゲという動物は、刺胞動物に分類される。
触手に刺胞と呼ばれる毒液を注入する針を持つ細胞があり、これによって獲物を捕らえる。
この刺胞というのは種類によって様々だが、簡単に言えば外的衝撃で針が突き出て作動するゼンマイ式のトラップのようなモノである。
マモル「そりゃああああ!!!」
マモルは鉄の槍を振り回した!
迫る触手を一本一本丁寧に、身体に寄り付かせまいと対処しながら捌く。
しかし一本の触手が、腕に引っ付いた!
そこから痺れるような痛みが広がる……
マモルの身体が麻痺した!
マモル「いってぇ…!」
麻痺した身体は言うことを聞いてくれない。
そこに、クラゲ娘は追撃を仕掛けた!
クラゲ娘「
クラゲ娘は傘から猛烈な水流を放出した__
チリ「
チリはハンマーを横にぶん回して投げ飛ばし、迫る水流と相殺させた!
チリ「待っててください!今、行きます!」
マモル「ダメだ姉さん!今、近寄るのはマズイ!」
マモル「
クラゲ娘はチリ目掛けて、再び触手を伸ばしていた!
何本もの触手を広げ、チリを掴めんとうようよと近寄る!__
__そのクラゲの触手を、パヲラはまとめて掴んで止めた!
マモル「ダンナ!?素手で触って大丈夫なんで!?」
パヲラ「ノープロブレムよん、素手で触ってないわ。」
よく目を凝らしてみると…パヲラの腕に、淡い光が膜のように包んでいる。
パヲラ「練った魔力を手から滲むように放出すれば、ミトンのように手を保護してくれるグローブと化する!」
パヲラ「魔力でグローブを作ったぞ!!!」
パヲラはラッシュ攻撃を仕掛けた!
パヲラ「
凄まじい勢いで拳を何度も突き出す。
突き出された腕は残像を生み、何本もの腕が生えているように見える。
ラッシュ攻撃を食らったクラゲ娘は、ボヨンボヨンと伸び縮みをしていた。
クラゲ娘「ぽよんぽよんするの……」
パヲラ「そういえばクラゲって身体のほとんどが水だったわね…これ痛がってるのかしら?」
マモル「身体のほとんどが水ってことは…きゅうりと同等か。」
パヲラ「どうしようかしら。どうやって無力化するべきかしら……」
チリ「私、眠らせてみます!」
チリは、大きなハンマーを振り下ろした!
チリ「
まだ体がボヨンボヨンとしているクラゲ娘に、魔力を込めたハンマーでポカッと叩いた!
クラゲ娘「………?」
叩かれたクラゲ娘は、目をパチパチと何度も瞬きをした。
そして、大きなあくびをすると……
クラゲ娘「……眠いの………」
クラゲ娘は眠ってしった。
そのままクラゲ娘は、どこかへ流されていった……
クラゲ娘を退けた!
パヲラ「眠らせて無力化は得策ね。チリちゃん。」
チリ「あまり時間かける場合じゃないですしね。眠らせるくらいなら魔物でも問題ないと思いますし。」
チリ「
チリは、マモルの麻痺状態を治した。
戦いで負った傷を治し、万全の状態にした。
パヲラ「よし…みんなを追いましょう!「導きの玉」の光で位置もわかるはずよ!」
そして3人は仲間と合流するため、暗い海底に向かって潜って行った……
海底に引き込まれていくルカは……
上から注ぐ光が細く感じるほど深く暗い底にいた。
足に絡みつくイソギンチャク娘の触手を解こうと必死にもがいている。
徐々に海底が見え始め、そして触手の主が姿を現した!
イソギンチャク娘が現れた!
イソギンチャク娘「あら……若い男が引っ掛かるなんて。ちょうどいいわ……お腹が減っていたし。」
イソギンチャク娘の触手は足ばかりか、体にまで絡みついてくる。
イソギンチャク娘「何も出なくなるまで搾り尽くしたら、私の口盤に咥え込んで、丸呑みにして食べてあげるわ。とっても気持ち良いわよ、ふふふっ……」
ルカ「くっ…!」
身体に絡まる触手は離れる様子はない。
どうやら、このまま戦わなければいけないようだ。
しかし、今の僕は劣勢だ。触手の拘束のせいで腕が封じられ、剣を抜くことすらできないのだ。
ルカ「くそっ…!この触手さえどうにかすれば…!」
ルカは激しくもがいたが、触手を振りほどくことは出来なかった。
僕の体は、イソギンチャク娘の触手に絡め取られている……
すると目の前には、イソギンチャク娘の口盤が迫ってきていた。
イソギンチャク娘「じゃあ、そろそろ口盤に咥え込んであげるわ……」
イソギンチャク娘の触手が、ルカをじわじわ口盤へと引き込んでいく……!
ルカ「ひぃぃ……!」
ぱっくりと口を開けた、ピンク色の淫らな肉洞。
思わず、包み込まれてみたいという欲望が沸き上がってしまう。
ルカ「だ、だめだ……!そんなの……!」
同時に身の危険を感じて、なんとか僕は、誘惑を振り切ろうとする。
抵抗しなければ、このまま中に引き込まれてしまうのだ__
__同時刻、カムロウ、ジョージ、ラクトの3人は、ルカの救助に向かっていた。
カムロウ「見えた!アレだ!!」
そして、3人はイソギンチャク娘の触手に絡め捕られているルカの姿を目視した!
ラクト「このまま突っ込むか?」
ジョージ「そうするべきだ。こちらに注意を向かせよう。」
このままではルカがどうなってしまうか分からない。
奇襲してやられてしまうのなら、一気に仕掛けて救出するのが最短だろう。
イソギンチャク娘「あら…?」
イソギンチャク娘も、向かってくる3人に気が付いたようだ。
イソギンチャク娘「今日は大漁日なのかしら…?」
カムロウ「悪いんだけど、その人を離してくれないか?そうしてくれれば、俺たちは攻撃はしない。」
イソギンチャク娘「代わりにあなたたちが捕まってくれるのなら、離してもいいけど。」
ラクト「ああ、そうかい。離す気が無いってのだけはわかったよ。」
イソギンチャク娘は触手を伸ばしてきた!
ジョージ「気を付けよ!毒を持っているかもしれぬ!」
カムロウ「触れちゃマズいなら切り捨てるまで!」
カムロウは抜刀した!
カムロウ「うおりゃあっ!」
そして向かってくる触手を斬り伏せた!
カムロウ「よし…今の内に距離を詰めるぞ__」
__その直後、唐突にやってきた海流に3人は飛ばされてしまう!
ラクト「どわあああああッ!?」
3人はぐるんぐるんと水中を舞う。
この海域では、突風のように海流はなびいているようだ。
ここは水中だ。
地面のような踏ん張れる場所はない。あっても連なるよう盛り上がる岩盤だけだ。
進もうにも、激しい海流が絶えず動く。
ラクト「やべぇな…ここの海流は流れが速いのか?」
カムロウ「これじゃいつまで経っても進めないな……」
カムロウ「ラクト!俺に【魔導砲】を撃つんだ。」
ラクト「まさか、【魔導砲】で推進力を得ようって話か?」
カムロウ「そのまさかだよ。」
ラクト「だったら話が早い!」
ラクト「いくぜぇ、相棒!」
ラクト「魔導砲…発射!!!」
ラクトは魔導銃を取り出し、魔力の光線を放った!
カムロウは盾を構えて魔導砲を受け止めた。
そして、その威力を推進力に変え、イソギンチャク娘との距離を詰めた!
イソギンチャク娘「っ!」
イソギンチャク娘は触手をさらに伸ばし、カムロウを捕らえようとするも……
加速する直進に追いつけず、捕らえることができなさそうだ。
カムロウ「このままぶつかってやる!」
なんとカムロウは構えた盾の角度を変え、縦に回転し始めた!
そのまま回転しながら、イソギンチャク娘に直進した!
イソギンチャク娘「速っ…!」
そして、イソギンチャク娘に勢いよく体当たりをした!
怯んだ隙を見逃さず、カムロウは剣を振り回した!
カムロウ「
狙ったのはイソギンチャク娘の触手。
ルカの拘束を解くのが、カムロウの狙いだ。
ズバズバと触手が切れる。次々と切れていく。
触手が切れてルカの拘束が解けた!
ルカ「よし…これでようやく戦える!」
僕はすぐさま剣を抜いて、イソギンチャク娘に斬りつけた!
ルカ「うおぉぉっ!」
イソギンチャク娘「この……調子に乗らないで!」
イソギンチャク娘「
本来であれば大波を浴びせる魔法だが、水中では周囲に激しい海流を発生させるようだ。
僕とカムロウは、魔法で呼び出された激しい海流に揉まれる!
カムロウ「うおお………」
ルカ「目が回る………」
ラクト「
近くの岩盤にしがみついていたラクトが、魔導銃から大量に魔力の糸を発射した!
僕とカムロウは、何とかそれにしがみついて荒波の渦から脱出した!
ラクト「どうだ、まだ戦えそうか?」
ルカ「ああ!このまま反撃に……」
反撃に出るぞと言いかけたとき…
ルカはあることに気が付いた。
ルカ「あれ…ジョージは?」
「「……え?」」
ラクト「は!?あいつ、ドコ行きやがった!?」
カムロウ「さっきまで一緒にいたよな!?」
カムロウ「まさか…さっきの海流にのまれてどこかに飛ばされたんじゃ…!」
そう心配していると……なんと、岩陰からジョージが飛び出てきた!」
ジョージ「すまぬ、皆の者!海流に飛ばされ、遅れをとってしまった!」
ジョージ「しかし、我らに加勢してくれると名乗りを上げた者がいて、連れて来たのだ!」
ルカ「え…助っ人!?誰なんだ!?」
こんな海の底に協力者なんているのか…?
ジョージ「ウミウシ娘の海兵だ。」
ウミウシ海兵「どうもですぅ。」
ルカ「いや、誰だよ。」
ホントに誰だよ。しかも魔物じゃないか。
何がどういう経緯で連れて来たんだよホントに。
イソギンチャク娘「__イヤアアアアアァァァ!!!」
しかしイソギンチャク娘は、ウミウシ海兵の姿を見るや否やヒステリックな、事件性を感じさせる悲鳴を出していた。
ルカ「えっ…?なんでこいつ………」
いきなり悲鳴なんて……?
さっきまでの様子とは打って変わって、まるで怯えるような仕草をしている……
捕食者から被食者になったかのような……
ルカ「そういえば………」
以前、パヲラの談笑でウミウシの話題になったときに聞いたことがある。
イソギンチャクには天敵がいて、ヒトデやウミウシがそうらしい。
と、すれば………
ウミウシ海兵「わぁ♪ホントに美味しそうな匂いがしますぅ♪」
イソギンチャク娘「いやァァァ!来ないでえええェェェ!!!」
なんとイソギンチャク娘は岩盤から離れ、触手をワシワシと動かしながら泳ぎはじめた!
イソギンチャク娘「わっせ!わっせ!」
イソギンチャク娘は逃げ出した!
ウミウシ海兵「待ってくださぁい♪」
わっせわっせと逃げるイソギンチャク娘を追って、ウミウシ海兵も姿を消した……
イソギンチャク娘をやっつけた…でいいのかな?
ルカ「しかし、海にも魔物は多いんだなぁ。」
ラクト「だ~か~ら~言ったろ?海ってのはあぶねぇって……」
アリス「しかし、食べるものも多い……なかなかに良い所だ、余は気に入ったぞ。」
アリスは、捕まえた魚を生のまま食べている。
本当に、いつも何か食べている奴だ……
__その後、僕は後から来た仲間たちと合流した。
そして、海底の岩場に移動していた。
まだ上の浅い場所にいた時は穏やかな波だったが……
暗い海の底に来ると状況が違った。まるで海流が突風のように押し寄せてくるのだ。
流石にさっきの場所で、のんきに立ち話なんてしていたらあっという間に飛ばされてしまう。
なので、海流の流れが遅い岩場に避難したのだ。
カムロウ「ほえー凄い海流だ……嵐が来た時と同じ感覚だ。」
ルカ「ともかく、底にまで着いちゃったな。海底神殿とやらは、どこにあるんだ……?」
ジョージ「【海底】という名だけあって、海底にあることは確実だと思うが……」
マモル「遠くまで探してぇけど、ここじゃあ【紙式神】も使えねぇしな。」
他のみんなも、周囲を見渡して探している。
チリ「暗くて見えないよ……」
ラクト「
パヲラ「目視での確認は難しいわね。」
ルカ「そうだ。「導きの玉」はどこを示してるんだろう……」
カバンから「導きの玉」を取り出し、放たれる光を頼りに周囲を探索すると……
少し離れたところに、そう大きくない神殿がうっすら見えた。
ルカ「あれかな。」
パヲラ「明らかにアーティファクトっぽいわよね。」
おそらく、あれが海底神殿だろう。
岩盤を歩くように進んでいけば、海流に吹き飛ばされることもないだろう。
移動しようとしたとき……
ふと見れば、アリスは海底の岩をじろじろ眺めている。
アリス「あのイソギンチャク、美味いのかどうか気になってな……」
カムロウ「食べれるモノなんですか…?」
ルカ「焼きイソギンチャクに目もくれなかったヤツが何言ってんだ。置いていくぞ、アリス。」
僕は呆れながら、海底神殿の方へと進んでいったのだった。__
カムロウ「__イソギンチャクって食べれるんですか?」
パヲラ「珍味扱いね。食べれる種類もいるみたい。」
アリス「だから食おうとしていたのに……無視をしおって。ドアホめ。このドアホめ。」
ルカ「二回も言わないでくれよ……」
ルカ「__ここが、海底神殿か……」
カムロウ「おっきいなぁ!イリアス神殿と同じくらいかなぁ!?」
中の構造は、普通の神殿とそう変わらない。
ただ異なるのは、それが海の中にあるという点だけだ。
チリ「中は思ったより綺麗みたいだね。」
ジョージ「少々、肌寒いな……」
マモル「そら海底だからよ。」
ドーム型の天井には色彩豊かな壁画が描かれている。
ラクト「こりゃあ…星座の壁画か?」
パヲラ「凝ってるわねぇ……」
ルカ「南海の女王って、どんな魔物なんだろうな……」
アリス「南の海を治めているのは、クラーケン族の女王だったか。該当海域の統治は、すっかり奴に任せておったな……」
そう言いながら、アリスは貝を殻ごとバリバリと食べていた。
ラクト「殻ごと食うなよ……」
こいつは魔王だから、南海の女王とやらも部下にあたるわけか。
そしてしばらく進んでいると……
ルカ「あれ、何だろ……」
薄暗い神殿内部に、ぼんやりと光が見えた。
ルカ「目の錯覚か…?」
カムロウ「いや、俺にも見えるぞ。なんだろな、アレ。」
ランプか何かのような感じだが、こんな海中に照明というのも変だ。
アリス「ふむ、面白い魔物がいるな。」
ルカ「え……?魔物……?」
僕が眉をひそめていると、その灯りはふよふよと接近してきた。
アンコウ娘が現れた!
アンコウ娘「…………」
アンコウ娘は、こちらにふよふよと近寄ってくる。
人間3人分はありそうなほどの巨体。
非常にゆっくりした動作の、大型で鈍そうなモンスターだ。
アリス「こいつは、海底付近に生息する魔物だな。頭に吊り下げた発光器官で海棲生物をおびき寄せ、取り込んでしまうのだ。相手が人間だろうが何だろうが関係なく同化させられ、養分にされてしまうぞ。」
ジョージ「ふむ…疑似餌であったか。」
ルカ「…あれ、アリス……いつもみたいに逃げないのか?」
アリス「こいつは目が見えておらん、視覚も聴覚も退化した魔物だからな。取り立てて、急いで逃げる必要もあるまい。」
そう言いながら、アリスはゆっくりと離れていき…
そして、ひとつ言い残していった。
アリス「……ひとつ忠告してやろう。そいつは、体温を感知して襲ってくるモンスターなのだ。有利に戦いたければ、水温と同じ程度まで体温を下げるがいい。」
そう言うと姿を消してしまった。
ラクト「いや出来るかアホっ!」
ルカ「僕は人間だ!さっきの時といい、役に立たないアドバイスばかり…!」
アンコウ娘「………」
念のため、僕は剣を抜いた。
アンコウ娘は、無言かつ無表情のままこちらに近寄ってくる。
その動作は、驚くほどスローモー。
接近してくるのを待たなければいけないほどだ。
ルカ「……遅いなこいつ…これは、そう苦労せずに片が付くか?」
カムロウ「油断は禁物じゃないか?まだこいつが何をしてくるかも分からないんだ……」
ルカ「どうだか……」
僕は近づき、アンコウ娘に突きを繰り出した__
__その直後、アンコウ娘の腹部に突き入れた剣先から、異様な感触が伝わってきた。
まるで、半粘状の物体を斬りつけたような感覚だ。
ルカ「うぇっ!?」
さらに突き入れた剣が、ずぶずぶとアンコウ娘の身体に沈んでいく。
まるで……自分の体に取り込んでいくかのように……
ルカ「う、うわぁっ……!」
僕は慌てて剣を引き抜き、そして距離を取っていた。
よくは分からないが、アンコウ娘の体はとても危険だ。
おまけに、ダメージは全く受けていないらしい。
ルカ「なら、これならどうだ!魔剣・首刈り!」
ルカは素早く踏み込み、アンコウ娘の喉元に突きを繰り出した!
しかし、剣先がずぶずぶとアンコウ娘の体に沈んでいく!
ルカ「うあっ……!」
僕はもう一度剣を引き抜いて、再び距離を取った。
ルカ「剣技も通用しないのか……!?」
アンコウ娘「………」
するとアンコウ娘は、体当たりするように、物凄い勢いでルカに迫ってきた!
ルカ「うわぁ!?」
あまりにも急に動くから、僕は尻もちをついてしまった。
そしてすぐさま、アンコウ娘の体当たりを食らったが……
予想していた衝撃とは真逆の、変な感触に違和感を覚えた。
ルカ「え…?」
見れば、アンコウ娘の中に沈み込んだ両足に、温かで半粘状の柔肉が巻き付いてくる。
ルカ「な…なんだこれ…!?」
そのぬるやかな感触は、安らぎに満ちた柔らかな快感を与えてきた。
取り込まれながら、安らかな快感を与えられる……
その事実に、僕は生理的な嫌悪を感じてしまう。
ルカ「ひぃっ……!?」
カムロウ「だから言ったじゃないか!油断禁物だって!!」
カムロウは抜刀した!
ラクト「お前、この距離からどうする気だ!」
カムロウ「
ラクト「それ、水中でも使えんのか!?」
カムロウ「俺の風は、正確に言えば【風】じゃない。生命エネルギーを風の力に変えてるだけだ。だから……」
カムロウ「水流を風の代わりに使えば問題ない!」
引き抜かれた剣に水流が纏い始め、輝き始めた!
カムロウ「
光る水流の一枚刃が放たれた!
それはアンコウ娘の身体に命中こそしたが……
アンコウ娘は依然として、ルカを取り込もうとするのを止めなかった。
カムロウ「だ、だめだ!体がデカすぎて怯んでくれない!」
ラクト「んにゃろ!」
ラクトは発砲した!
銀色の魔弾を数発放ったが……
アンコウ娘には全く効いていない様子だった。
ラクト「くそっ、弾かれたのか……!?それとも、巨体ゆえの重さだからか!?」
そうこうしているうちに、ルカの身体は、アンコウ娘に取り込まれていく……
ルカ「うわわ……!」
引き剝がそうにも、もがけばさらに沈むように感じる!
マモル「これちょっとまずいんじゃあないかい!?」
マモル「姉サン、眠らせることって出来ますかい!?」
チリ「ずっとやってるんだけど…全然眠ってくれそうにない!」
チリが魔力を込めたハンマーでガンガンと叩いている。
チリ「眠らせるには疲労させないと意味がないの!多分この子、体力が有り余ってるんだよ!」
ジョージ「もはや、無理矢理にでも引き剥がす他ない!」
パヲラ「となればアレ…やるしかないわね!」
ジョージ「うむ!」
パヲラとジョージは互いの足を両手で掴むと、車輪のように丸くなった!
「「アクションボール!!!」
ラクト「ふざけんてんのか?」
パヲラ「回転ッ!!!」
ジョージ「承知ッ!!!」
その場で車輪の如く回転し始めた!
徐々に回転速度を上げていき……
高速回転しながら、アンコウ娘に突撃した!
「「大車輪撃!!!」」
回転による体当たりを、アンコウ娘に食らわせる。
かなりの威力だったようだ。
アンコウ娘は体当たりを食らうと、そのまま壁に激突した!
その余力でルカの身体を、アンコウ娘の腹部から引き剝がすことができた!
ルカ「なんでこいつ…僕に向かって来たんだ!?」
突然起きた出来事に、僕の頭は回答を出すべく動いていた。
そして、アリスが言っていたことを思い出す……
_相手が人間だろうが何だろうが関係なく同化させられ、養分にされてしまうぞ。
_視覚も聴覚も退化した魔物だからな。
_そいつは、体温を感知して襲ってくるモンスターなのだ。有利に戦いたければ、水温と同じ程度まで体温を下げるがいい。
ルカ「そういうことか…!」
同化捕食、体温感知。
それがこのアンコウ娘という魔物か。
しかも、視覚も聴覚もないとなると、交渉することはおろか、意思疎通さえできやしない。
ルカ「逃げるか、このまま戦うしかないのか…!」
僕は再び剣を握った。
なんとか倒して、この先に進まなければならない!
しかし…このまま正面から斬りかかっても、また取り込まれるだけだ。
ルカ「正面で駄目なら、後ろからならどうだ……!?」
僕は素早く身を翻し、アンコウ娘の背後を取った!
ルカ「でやっ!」
ルカの攻撃!
アンコウ娘にダメージを与えることができた!
ルカ「よし……!背中側からなら、攻撃は普通に通じる!」
確かな手ごたえを実感していると……
すぐさま、アンコウ娘は僕の方に向き直った!
ルカ「あっ……!」
おそらく、僕の体温を感知したんだ。
またさっきと同じように、突進してくる…!__
しかし、アンコウ娘は途中であらぬ方向に突進していった。
ルカ「…?」
目で行方を追ってみると……
その先には、横にスピンするパヲラがいた。
パヲラ「回して!もっと回してカムロウちゃん!」
カムロウ「はい、はい、はい、はい!」
回転するのを、カムロウが手伝っているようだ。
ルカ「何やってんだアイツら……待てよ。」
アンコウ娘が僕を標的にしなくなった理由……
まさかとは思うが、今回転しているパヲラの方が体温が高いとかじゃないだろうか。
だとしたら納得がいくが…だとしても危険だ!
ルカ「2人とも避けろ!おとりになったところでどうにかなる相手じゃないんだ!」
そう叫んだが…もう間に合わない。
アンコウ娘は2人に向かって突進していく__
カムロウ「__いや!俺たちはこれを狙ってたんだ!」
ルカ「なんだって!?」
アンコウ娘に取り込まれたかのように見えた2人だが、まったく取り込まれていなかった!
良く見ると、2人はアンコウ娘の腹部端を掴んで、アンコウ娘の体当たりを止めていた!
ルカ「あれは…!?」
そして2人の腕は、淡い光のようなものが膜のように纏わりついていた!
パヲラ「私の魔力で!!!」
カムロウ「俺の風で!!!」
「「ファイトグローブを作ったぞ!!!」」
2人はアンコウ娘の腹部に、ラッシュ攻撃を仕掛けた!
カムロウ「
パヲラ「
しかし、腹部の半粘状の柔肉はブヨブヨとするだけで、まったくダメージを与えているようには見えなかったが……
ただ単に攻撃をすることが目的じゃないようだ。
むしろ押し広げるように、攻撃の手を続けている!!
パヲラ「ここでコレよ!」
パヲラは手から圧縮した魔力の球を放出した!!
パヲラ「
それがアンコウ娘の腹部に入っていくと……
アンコウ娘の体内で大爆発を引き起こした!!!
カムロウ「今だルカーッ!とどめをさせーッ!」
さっきの攻撃でかなりのダメージを与えたのなら、そろそろ封印できる頃合いだろう!
ルカ「よし…!いくぞ!!」
ルカ「うおおおおっ!!」
ルカは雷鳴のように踏み込み、すれ違いざまに斬りつけた!
ルカ「どうだ…!?」
アンコウ娘「…………」
アンコウ娘は、アンコウの姿になった!
アンコウ娘をやっつけた!
ルカ「な、なんとか倒せたな……」
カムロウ「ああ………」
アンコウ「………」
アンコウ娘は、自分が封印された事にさえ気付いてないかのようだ。
カムロウ「なんか…こうしてみるとムカつく顔してんなぁ……さっきまでエグイ暴れっぷりだったってのに。のんきな顔しやがって……」
そのままアンコウは、マイペースでどこかに泳いでいった。
アリス「ふむ、片付いたか。少し先へ行ってみたが、女王のいる奥の間まではあと少しだ。」
ラクト「先に行って探索してくれるだなんて、お前にしては珍しいな。」
アリス「魚もさすがに食い飽きた。とっとと行って、とっとと終わらせるぞ。」
ラクト「お前帰りてぇだけか!!!」
ルカ「よし、行こうか。」
この奥に、南海を統べる女王がいるのだという。
ルカ「まさか、戦いにはならないだろうとは思うけれど……」
カムロウ「おいおい…縁起でもないことを言うなよ……」
僕は少しばかり緊張しながら、足を進めたのだった。__