もんむす・くえすと! 勇者ルカと仲間たち   作:J・チェプナクル

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第22話 大盗賊グラン・ド・モノクロ

道中で1日野宿して、サン・イリアについた。

早速、例の幽霊屋敷に向かいたい所だが……

サン・イリアで一泊するというのが予定だ。

これは、最近移動や戦闘ばかりだったので、消耗した英気を養うということも込めてある。

ルカ「出発は明日にしよう。各自、準備時間にするということで解散っ!」

 

ラクト「最悪だぜ…ホントに幽霊屋敷に出向くつもりかよっ……」

アリス「おいラクト。道具屋で聖水買いに行くぞ。業務用。」

ラクト「言われなくても行きますよ行きますっ……はい?業務用?」

マモル「あっ、道具屋行くんですかい?アッシも紙欲しいとこだったんでサァ。」

 

ルカ「僕は市場に行かないとな……食糧を補充しなきゃ。そういや保存食も足りなかったな。干し肉も新しいのを作って置かないと。」

パヲラ「あららー!だったらこのア・タ・シがエスコートしてあげるわールカちゃーん!」

ルカ「え、来てくれるのか?ちょうど買うものが多くて………__」

 

 

カムロウ「__……………」

チリ「……………」

ジョージ「…………」

 

そうして広場に残された3人。

 

カムロウ「あー……さては俺たちは余り組か?」

チリ「そーみたいですー。」

ジョージ「……共に鍛錬でも……励むか?」

カムロウ「あぁー……お願いします。」

 

フラドリカ「___ゼェ……ゼェ……」

 

3人は、遠くにいるフラドリカに気付く。

フラドリカどうにも様子がおかしかった。

背に余る大きなリュックをゆらして、息切れをしながらヨロヨロと走っている。

走るペースはとても遅く、顔中汗だらけだった。

 

カムロウ「あれ。フラドリカじゃん。」

ジョージ「重量付加鍛錬(ウェイトトレーニング)は流行物なのか?」

チリ「いや、それは違うと思いますっ。」

 

カムロウ「何があったんだ?」

あまりにも異様な雰囲気なことが気になる。

カムロウは思い切って話しかけてみた。

 

カムロウ「フラドリカー。一体どうしたんだ?」

フラドリカ「ハァ…ハァ……お、おぉ…カムロウ殿ではありませんか……」

 

フラドリカ「じ…実は……ヴェニア殿が攫われてしまいまして……」

「「「ええっ!?」」」

3人はフラドリカの背荷物に目を向ける。

以前出会った時、確かにそこに有ったはずの……

ヴェニアが入った宝箱が忽然とない!

フラドリカ「あまりの速さに、ワガハイは追いつけなかったであります。」

カムロウ「その背荷物下せばよかったんじゃ追いつけたんじゃ……」

フラドリカ「それこそ盗まれるでありましょうがっ!!」

 

フラドリカ「我が探検隊の財産は全部ヴェニア殿に預けてるので……今のワガハイは間違いなく無一文なのであります。」

フラドリカ「なので、今すぐにでも救出しなければ…ワガハイはヴェニア殿と離れ離れになり…二度と再会することも敵わず、路上で一夜を越えなければならず…!」

ジョージ「なんと無情なことか…!!」

チリ「ちょっ…!それ急がないとマズくない!?」

カムロウ「どこに向かった!?盗んだヤツ!!」

フラドリカ「ハァ…フゥ……正門のほうに行ったのだけは目視できたであります……ハァ……」

ジョージ「フラドリカ殿は私がおぶろう!先を急ぐぞ!」

 

4人は駆け足で、サン・イリアの正門に向う。

 

カムロウ「い…いやでも、魔物を攫うってのもおかしな話じゃないソレ?」

フラドリカ「多分でありますが……箱に閉じこもったヴェニア殿を宝箱と勘違いしたと思うのであります……」

チリ「だからって背負ってたモノ盗むだなんて非常識じゃない……」

ジョージ「……賊であるか?」

フラドリカ「で、ありますね。明らかに盗賊みたいな恰好していたであります。」

 

カムロウ「……なんか変なこと言うけどさ……盗まれた、いや、攫われた割には冷静だね。フラドリカ。」

フラドリカ「ワガハイ。イリアス大陸から出たことが無かったので知らなかったであります。セントラ大陸や地方でこういった盗難というのは、日常茶飯事に近いみたいであります。」

チリ「それって、イリアスポートから船に乗って、私たちと一緒にこっちに来たその後に……」

フラドリカ「恥ずかしながら……財布を盗まれそうになったり、言いくるめられて人気のない路地に誘導されそうになったりと……何度か危ない目に遭ったのであります。その時はヴェニア殿が目を光らせてくれていたので、未遂で済んだのであります………」

 

フラドリカ「……ワガハイ。不甲斐ないであります。」

 

フラドリカ「自分1人だと何もできなくて……旅に出る時も、親にも心配されたであります。1人じゃ危ないって。夢と期待と自信だけに動かされて…身の程を知らずに飛び出して……」

フラドリカ「あの日ルカ殿が偶然来なければあっけなく死んでいたでありますし……今でもヴェニア殿に助けられてばっかりで……」

 

フラドリカ「……自分どころか、同志も守れないであります。」

 

フラドリカ「…………どうしようもないであります。」

カムロウ「…………………」

 

カムロウ「………イヤイヤ、イヤイヤイヤ。」

 

カムロウ「……そんなに気に病むことはないんじゃあ~ねぇの?」

フラドリカ「……そうでありますか?」

カムロウ「うん。」

 

カムロウ「諦めないで走り続けて。追いつかなくても走り続けて。諦めないことって、俺は凄いことだと思うよ。」

カムロウ「本当に途中で折れたってんなら。あの日イリアスポートにまで来て、俺たちと一緒にセントラ大陸に渡って来てないだろ。それでもこうしてここにいるってことは……」

 

カムロウ「諦めたくない【何か】を今でも抱いているからだろ?」

フラドリカ「……………」

カムロウ「君はやれることを精一杯やった。だから、後は俺たちに任せてくれればいいよ。」

 

カムロウ「…ってな!言うよなルカは!」

チリ「言う言う!ゼッタイ言う!」

ジョージ「うむ!」

フラドリカ「…………」

 

泣きそうな表情をグッと堪えて、フラドリカは叫んだ。

 

フラドリカ「…では。ワガハイ、フラット・フラドリカ!お言葉に甘えて、ヴェニア殿の救出をお願いするであります!__」

 

 

正門をくぐり、街の外にまで飛び出す一同。

カムロウ「とりあえずここまで来たけど……街の外にまで出られたら、もうどうにも追いつけないんじゃないか…!?」

行き交うのは行商人に旅人たち。

こんな中に紛れたりしていたら見つけるのも一苦労だ。

 

ジョージ「む……皆の者。これを見よ。」

背の低い草を搔き分けるジョージ。そこにあったのは、人の足跡だった。

ジョージ「足跡だ。街道方面から道を逸れているうえに、歩幅と踏み込みの深さからして走っているように感じる。」

ジョージ「これを辿って行けば追いつけるかもしれん。」

 

チリ「えぇ…良く分かりましたね……」

ジョージ「獣を探すのは昔から得意でな。」

 

足跡を辿って、茂みを通って森の中に入った。

しばらく進むと、ジョージが制止して歩みを止めた。

ジョージ「……そこにいるな!出てこい!隠れていても分かるぞ!

そう叫んで暫くすると、奥の茂みがガサガサと動き始めた。

???「……ケッ。なんだぁ。手慣れを連れてくるたぁ。えらいひっつき虫を連れてきやがったな。」

 

カムロウ達の前に姿を現したのは、髭面の中年だった。

暗闇で目立たないような…盗賊のような恰好をしていた。

 

カムロウ「フラドリカ!この人か!?」

フラドリカ「この人であります!ワガハイから盗んだのは!」

???「盗んだぁ?あぁ、コレのことか?」

 

盗人が脇に抱えていたのは、ヴェニアが入っている宝箱だった!

 

ジョージ「そのまま大人しく盗んだモノを返せば見逃す。」

???「やなこった。なにせ俺様は盗賊だからな。」

カムロウ「盗賊…?何者なんだ!」

???「へへへっ。知りてぇんなら耳の穴かっぽじってよ~く聞くんだなぁ!」

 

???「俺様の名は大盗賊グラン・ド・モノクロ!!!」

するとその男は何やら、決めポーズをし始める。

モノクロ「この世の財宝は俺のモノッ!」

 

「「「「「……………」」」」」

 

チリ「……ダサっ!」

 

モノクロ「まぁともかく…俺サマ大盗賊なんだから宝箱狙うのは言うこと無しだろ。」

カムロウ「人のモノを盗むこともか!」

モノクロ「あったりめぇよぉ。なんてったって、この世の全ては盗まれるためにあるッ!!!」

ジョージ「屁理屈を!」

モノクロ「いいや、屁理屈じゃねぇな!盗まれるから盗品って呼ばれんのと一緒だぜ!」

ジョージ「それを屁理屈と言うのだ!」

モノクロ「あーあーうるせぇなぁ。正義だとか善も似たようなもんだろ。」

 

カムロウ「その宝箱はフラドリカが大切にしているんだ!返すんだ!」

モノクロ「そら無理な話だなぁ。俺は根っからの悪人なんだよ。」

 

モノクロ「等価交換って言葉知ってんだろ!この宝箱と同じ価値の物でもくれるってんなら返してやっても良いぞ。用意出来んのか!」

カムロウ「出来ない!」

モノクロ「思いのほか素直だなっ!」

 

カムロウ「どうして盗みなんて働くんだ!」

モノクロ「ま、簡単な話ってことよ。」

 

モノクロ「宝を盗むことで富を手に入れ!宝を盗むことで力を示し!!宝を盗むことで名が知れ渡る!!!」

チリ「悪名じゃない!」

モノクロ「悪名かぁ、気にするところでもねぇだろ。悪名だろうが何だろうが広まってんだから。」

ジョージ「なんだ、ただの承認欲求か。」

モノクロ「ウ゛ッ゛!イタイとこ突くねアンタ……」

 

モノクロ「先に言っとくけどよ!俺ァ、ガキだろうが女だろうが問答無用で乱暴するぜ!痛い目見たくねぇならとっとと諦めてん帰んだな!」

モノクロは懐から何かを取り出して突き付けてきた!

カムロウ「(あれは…………)」

見たことある形をしていた。

確かに知っている。身近で見ていた。

その名前も………

 

カムロウ「(……魔導銃!?)」

ラクトが使っている武器。魔法を発射する武器に似ていた。

引き金を引かれる瞬間、カムロウは咄嗟に叫んだ!

カムロウ「あぶないッ!」

すぐさまみんなをかばうように前へ飛び出し、盾を構えて受け身の姿勢をした。

そうして正解だった。

予想通り発砲音が聞こえると、構えた盾から衝撃が響いた!

 

モノクロ「なんだぁ。反応良いな!」

向けられた銃口からは煙が昇っていた。

 

カムロウ「撃ってきたな…!!」

ジョージ「チリ殿!フラドリカ殿!下がるのだ!」

チリ「うん!わかった!」

フラドリカ「じゃ、邪魔にならないよう避難するでありますー!」

 

ジョージ「逃がしはせんぞッ!」

モノクロ「おうおうっと!」

逃げようとしたモノクロは、迫るジョージに魔導銃を構えて連射する!

ジョージ「ぬぅんっ!」

刀を抜刀し、飛ぶ魔弾を次々と斬り払うジョージ。

 

モノクロ「あァ…!?お前ェもしかして侍か!?俺様も同郷なモンだけどよぉ!普通に考えて飛んでる弾ぶった切るってありえねぇだろお前ェ!」

ジョージ「そう言われても斬れるものは斬れるゆえ……」

モノクロ「えぇ…頭おかしいんじゃねぇの……?」

 

ジョージ「カムロウ殿!全力で戦えばヴェニア殿が負傷するかもしれん!手加減を!」

カムロウ「わかってます!」

カムロウ「(このままグラディリオンを放つと、背中にいるヴェニアにまで被害が及ぶ……)

カムロウ「(だからこの技で!)」

剣の刀身に風を纏う!

モノクロ「あのガキ…いや、ありゃァ…!?」

カムロウ「風薙ぎ(かぜなぎ)!!!」

風の衝撃波を放つッ!!!

 

衝撃波の塊はモノクロに向かって真っすぐ飛んでいく!

しかしッ!

モノクロはダイナミックに身を翻して避けた!

モノクロ「へっ……なんだよ。思ったより遅いなぁ。見え見えの軌道だったぜ。」

ジョージ「空身(うつせみ)……」

その瞬間に、ジョージは高速で接近していた!

モノクロは目を飛び出させて驚いた表情をしている。

モノクロ「どわあっ!!!」

ジョージ「年貢の納め時ぞ!観念せいっ!」

 

モノクロ「___パンクナックラー!!!」

 

ブォオオオオォォォゥゥゥッ!!!

急な爆発音と共に、ジョージの腹部に衝撃が走った!

ジョージ「ウオッ……!?」

猛烈に吹き飛ばされ、木に激突するジョージ。

 

カムロウ「立てますか!?ジョージさん!」

ジョージ「あぁ……受け身は出来た……」

カムロウ「アイツは一体、何をしたんですか…!?」

ジョージ「何かは分からん……だが見るからに、()()()()()()()()()にカラクリがある……」

 

プシュウウウゥゥゥ………

モノクロの腕から、水蒸気のようなものが吹き出ていた。

ジョージ「腹部に衝撃が走った……正拳突きのようだったが、威力が違う!何かが要因で強化されていたように思える!」

 

ジョージ「まだ何か隠し持っているかもしれぬ!気を付けよ!」

カムロウ「はい!」

 

モノクロ「へぇ…耐えたか!なかなかやるじゃねぇか……だったらこういうのはどうでぃ!?」

 

再び魔導銃を構えて発砲してくるモノクロ。

それに備えて、盾で迎撃の構えをとったカムロウだったが………

 

カムロウ「イ゛ッ゛…!?」

 

腹部に痛みが走った!

なんと放たれた魔力の弾丸が、軌道を曲げてカムロウに命中した!

 

カムロウ「軌道が曲がった…!?」

モノクロ「曲がるさ。弾丸は魔力だからな。頼むから曲がってくだせぇ~って願えば、曲がってくれる良い子ちゃんなのよ。」

ジョージ「曲射というモノか。それも弓よりも細かい軌道で撃てるとなると、障害物による防御は意味を成さなくなるな……」

 

モノクロ「さーて、それじゃここいらでおいとまとさせていただきましょうかね。んじゃ!あば__」

チリ「__逃がすか!天誅(てんちゅう)!!!」

モノクロ「うがあっ!?」

チリの大きなハンマーが、モノクロの頭部に命中した!

 

カムロウ「今だ…風薙ぎ(かぜなぎ)!!!」

追撃で、風の衝撃波を命中させる!

モノクロの「うごおっ!!」

 

ジョージ「禍津暴圧波(まがつぼうあつは)!!!」

モノクロ「ほげー!!!」

さらに追撃で、衝撃波を食らうモノクロだったが…これだけを食らっても、土煙の中から立ち上がる。

 

モノクロ「いててて……あっタンコブ出来たかも……くそ!このガキ共!ちったぁやるじゃねぇか…!」

モノクロ「あぁわかったよ!逃げるのは止めだ!止めだ!俺様も!大盗賊の名は伊達じゃねぇのさ!きちんと戦う準備だってしてるもんね!」

 

モノクロ「じゃじゃーん!」

ガサゴソと懐を探ると、鉄の人形のようなモノを取り出した!

チリ「なにあれ?」

ジョージ「そんなモノでどうしようというのだ?」

モノクロ「コイツはな。ただの人形(ゴーレム)じゃあねぇぞ。魔力をちょちょいと注ぐことでデッカくなる、持ち運びの便利な人形(ゴーレム)なのさ。」

 

モノクロ「あと俺様の手作り。褒めて。」

チリ「褒めて……?」

 

モノクロ「そーれブスリと!」

注射器のようなモノを鉄人形に刺すと………

なんと、鉄人形はみるみる巨大化し………

鉄のゴーレムに姿を変えた!!!

 

カムロウ「なんだこれ…!?デカい…!?」

ジョージ「マモルの式神と似たようなモノか…?」

 

モノクロは鉄のゴーレムの頭部に入っていた。

モノクロ「行くぜ!マシンゴーレム!!!」

鉄のゴーレムは大きな駆動音を鳴らしながら、動きを始める…!

 

カムロウ「このっ!グラディリオン(勇者ノ風)!!!」

カムロウの攻撃!

カキンッ!

しかし、攻撃が弾かれてしまった…!

 

カムロウ「硬い…!」

それに重くてビクともしない!

この鉄の巨人…まるで、ドラゴンに変身した俺みたいだ……

 

チリ「魔法でどうにかできるかな…魔力多球流落(レインフォール)!!!」

チリは、大量の魔力球を打ち上げた!!!

空から雨のように、魔力球が降り注いだ!

モノクロ「はい全然効きませーん!頑丈さが取り柄なんですからねぇー!」

 

カムロウ「効かないなら…これならどうだ!カミナリ落とし(落雷魔法)!!!」

鉄の巨人に、一筋の落雷が落とされる!!!

モノクロ「ビリビリビリ……き、効かねぇなぁ!」

カムロウ「効きはするけど……決定打にならないか……」

 

ジョージ「禍津一閃(まがついっせん)!!!」

鉄巨人の腕を斬り落とそうと、ジョージは一閃した!

しかし……腕に切り傷を付けただけだった!

ジョージ「斬れぬ!?いや、耐えたか!!」

モノクロ「褒めたいところだぜ!ちょっとキモが冷えたもんだからよ!」

 

モノクロ「悪いがな!俺の人形(ゴーレム)は全身ブリキ製のフルボディブリキってもんよ!鉄よりも硬ェんだぞお前ェ!」

モノクロ「どうせ鉄だったら斬れるとかそんなとこだろ!そう簡単にぶった斬られちゃあ!せっかくブリキを使った意味が無ェってもんよぉ!」

ジョージとカムロウに向けて、巨大な鉄の腕が振り下ろされる!

 

ジョージ「な…!?禍津(まがつ)!!!」

カムロウはジョージと、潰れまいと必死に踏ん張る……

ジョージ「くうっ…!禍津(まがつ)で力を高めてもこれが精一杯とは…!」

カムロウ「お……重い……!!!」

 

モノクロ「いやー魔導科学ってのは便利なモンだよなぁ。若ェ頃に技術を盗んでおいてつくづく正解だったと思うぜ。」

モノクロ「ほらほらぁ?潰れる前に早ェとこ降参でもしといた方がいいんじゃあねぇのぉ~?命までは取らねぇからさ~。」

 

モノクロ「おっとそこのお嬢さん方。妙な動きはするなよぉ?」

頭部から銃口をちらつかせて、チリ達の動きを牽制・制限する。

フラドリカ「な…なにもできないでありますよー!」

チリ「ごめん助けに行こうにも…!」

 

モノクロ「ていうかさァ。この宝箱だってェ。別にそこのガキが最初から持ってたモノじゃねぇだろ?」

カムロウ「……ん?」

モノクロ「遺品だろうが何だろうがよ、元々誰かのモンを奪ってんだから実質盗賊と同じなんじゃァねーの?」

ジョージ「また屁理屈を述べるか。」

モノクロ「おっと?今のは屁理屈じゃあねぇと思うんだけどなぁ?」

フラドリカ「……………」

 

フラドリカ「そ……それは…違うであります!」

モノクロ「…ん?違うのか?」

フラドリカ「そうであります…!!!」

モノクロ「……どう違うんだ?」

 

フラドリカ「確かに元は誰かのモノ……盗んでいることに変わりはないであります……ですが!ワガハイは私利私欲のためにしているのではないであります!!」

フラドリカ「ワガハイがしているのは!そこに実在したモノを次に伝えるための保全活動、文明の保守であります!!!」

モノクロ「あぁそうかい。……んー。まぁあんま興味ねぇけど。」

 

カムロウ「うう…!ドラゴンに変身しようにも…!こんな時じゃあ…!」

モノクロ「……なんでぃ!まだ粘るのかよ!!たかが箱一つでやけになりやがって!!」

カムロウ「そりゃあそうだ!人のモノなんだから!」

モノクロ「良い加減諦めろ!!!」

カムロウ「やなこった!!!」

ジョージ「くっ…!」

ジョージ「(考えろジョージ…!何のために培った武術だ!!強いて願いたいなら…あともう一人分、禍津(まがつ)と同等の力があれば押し返せるというのに……!)」

 

カムロウ「ジョ…ジョージさん……ちょっと良いですか……」

ジョージ「む?」

カムロウ「俺……あんまりジョージさんと交流ないもんですから、今ここで聞くのもアレなんですけど……」

 

カムロウ「ジョージさんのそのマガツって技、どうやって扱ってるんですか!?」

ジョージ「えっ今!?今でないと駄目なのか!?」

カムロウ「むしろ今だからこそです!今、俺が必要としているんです!」

ジョージ「や…やむなし!では教えよう!」

 

ジョージ「パヲラ殿から話は聞いている…!カムロウ殿はおそらく、切り替えが上手く出来ていないのだと思う!!」

カムロウ「切り替えですか!?」

ジョージ「言葉で具体化するというのは難しい話だが……私の術は、切り替え先の一つと言っておこう。」

ジョージ「飛び上がる際に足に力を入れるように、噛むときに顎に力を入れるように。呼吸するように、無意識に扱う!行動を目的別の道具のように扱うのだ!カムロウ殿は、その切り替えに、意識を集中しすぎているかもしれん!」

 

ジョージ「カムロウ殿!まずは力むのだ!」

カムロウ「いや俺、そこが出来ないんです!」

ジョージ「なぬッ!?」

カムロウ「教えてもらってアレですけど…今この状況でソレこそ難しい……」

ジョージ「窮地だからこそ、この経験は良き礎になる!!!」

 

ジョージ「おぬしは!自身の力の特別視に重きを置くことに偏りすぎである!」

カムロウ「……!」

 

ジョージ「人並み外れた超人的な力。被害を想定するうえ、奥手となるのは私にも経験がある。しかしそれでは経験にならぬ!」

ジョージ「我が師は説いた。基本にして奥義……それは、川の流れである。一連の動作を流れるよう自然体で扱うことだ。川の道を作り出すには、自らの手で道を開拓し、そこに水を流さねばならない!」

 

ジョージ「想像訓練(イメージトレーニング)の仕方は、すでにパヲラ殿から習っておるだろう!」

ジョージ「まずはやれることをやるのみだ!カムロウ殿!」

カムロウ「………………」

 

以前、ラクトから魔法の扱い方のコツを教わった時を思い出す。

魔法は体内の魔力を練り上げて放つから、調節が効く。

そして、頭のイメージで形作れる。

あの時の経験が活きる。どこか通じるところがある!

 

カムロウ「イメージは下書き……だから身体で……!」

 

…………………………

 

カムロウ「くそっ!だめだ、どうにもできない……!」

ジョージ「(それもそうか…!もし出来ていようなら、苦労はしていない……)」

モノクロ「ええい、めんどくせぇ!もうこのままひと暴れしてから去ってやらぁ!」

鉄巨人はガチャガチャと動き出すと、地団駄を踏み始める!

ドンドンと地響きが鳴り響く!

 

カムロウ「くそっ…!こんな時に暴れられたら…!!!」

ジョージ「ぬおおおおおぉぉぉぉ……!!!」

 

カムロウ「チリ!フラドリカ!!危険だ!離れるんだ!__」

そうしてチリ達のほうを見た時。

既にチリ達の真上に、鉄巨人のもう片方の腕があって、地面に叩きつけられそうな瞬間だった。

チリ「カムロウッ!!!」

カムロウ「…!!!」

 

__その時の俺は、腕に力を入れるとかは特に意識してはいなかった。

あれは多分………無意識で………無自覚で………

いわゆる……()()()()()()()()()()()()()んだろう。

 

____【どうしようもない時】ではなく、【誰かを守りたい時】に使う__

 

 

パヲラ「___古龍族の力をどうにかして扱いたい?龍変身とは別で?」

カムロウ「はい!」

 

パヲラ「……この前、ドラゴンの腕になっていたじゃない。あれよりも?」

カムロウ「むしろ、()()()()()()()()んです!出来ないことを分かった上で、もっと出来るようになりたいんです!」

パヲラ「深く、細かく、研鑽したい…か。」

 

パヲラ「……カムロウ君。クィーンハーピーとの戦いを覚えているか。」

カムロウ「(うわっ急に口調変わった。)」

パヲラ「あの時、君が見せた超人的な力……今、君が古龍族であることが判明したから言える!あの時の力は!人の身にドラゴンの力を宿したということだ!」

 

パヲラ「私は!君のその力に!!無限の可能性を感じた!!!」

 

パヲラ「戦いは、如何に自分の長所を押し付けれるかだ。苦手を固めるのは当たり前だが、それだけに視野を狭めて、決定打に欠けるのは良くない!長所こそ欠けた決定打だ!」

 

カムロウ「…………えーと。つまり?」

パヲラ「カムロウちゃんの長所は、そのドラゴンの力ってことよん。」

 

パヲラ「以前約束した武術の指導はね。そのドラゴンの力を人の身に宿して扱えるようにしようって考えなんだけどね……」

カムロウ「うーん……この人間の身体でドラゴンの力をかぁ……まだその入り口にも立ててないと思うなぁ……」

 

パヲラ「んまっ!兎にも角にも名前があった方がしっくりくるわね!どうしようかしら……」

カムロウ「はい!ドラゴニックパワー!!!」

パヲラ「却下。なんだか安直っぽいわね。」

カムロウ「ケェーッ………」

パヲラ「けど、ドラゴンの力というのは良い線ね。」

 

パヲラ「生ける龍の力をその身に宿すということで……__」

 

パヲラ「__ドラゴニックライブってのはどう?」

 

 

 

カムロウ「(身体に龍を宿すイメージ…!!!そこからさらに、腕の内側に力を集中させる!!!)」

 

カムロウ「筋力龍化(ドラゴニックライブ)!!!」

腕部の筋線維だけを、ドラゴン由来に変化させる!

なんだか腕が、筋肉質になって太くなった気がした!

カムロウ「うおおおおおおおぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

ジョージ「む…!?」

ジョージ「(急にカムロウ殿の力が強まった!?火事場の力のように、無意識に成功させたのか…!?)」

ジョージ「(好機!この機に乗じて……!!!)」

 

ジョージ「ぬおおおおおぉぉぉぉ……!!!」

 

2人は力を合わせて、鉄の巨人の腕を振り飛ばす!!!

モノクロ「うおおっ!?振り回される!?」

鉄巨人は体勢を崩して、地面に倒れる!!!

 

さらに!ドラゴニックライブで変化させた腕力!

その力で放たれる拳!!!

それを鉄巨人に叩き込むッ!!!

 

カムロウ「ドラゴニックブローオオオォォォ!!!」

 

巨大な衝突音!!!

そして!!!鉄巨人の胴体は潰れたように凹んでいた!!!

 

その時になって、ようやく俺は我に返った。

カムロウ「で…できた…!!!」

自覚した。自分が今やった行動を。

カムロウ「やっとできた……【ドラゴニックライブ】!!!」

これを礎にここから伸ばすんだ……俺自身の戦い方を!!!

 

しかし、感激してる間もなく___

 

鉄巨人は突如、大爆発を起こした!!!

さらには炎が燃え上がっている……

 

フラドリカ「な…なんで燃えているでありますか!?」

チリ「分かんないけど……魔力が何かに反応して誘爆したんだと思う。」

 

モノクロ「燃えてる!燃えてるぅぅぅ!!!あちぃよぉぉぉぉ!!!」

燃える鉄残骸の中から、悲鳴が聞こえる……

ジョージ「馬鹿者……しかしこうでは、鎮火を優先しなければ救出は……!」

 

カムロウは燃え盛る火炎の中に飛び入った!!

ジョージ「カムロウ殿!?」

カムロウ「ブリザード(氷風魔法)…!」

ブリザード(氷風魔法)で回りの温度を冷やす!

そして、恐らくモノクロが中に入っているであろうブリキの壁をこじ開けようとする……

カムロウ「ア゛チ゛ッ゛!!!」

ジュワッてした!冷やしたのにそれでもまだ熱い…!

カムロウ「ドラゴニックライブ…筋力龍化!!!」

なんとかブリキの壁をこじ開ける!

 

カムロウ「手を!!!」

モノクロ「………!!!」

 

 

___それからして。

 

ジョージが木を斬り倒したり、チリが水魔法で鎮火を試み……

森火事になるということは防ぐことができた。

フラドリカ「な、なんとかなったでありますな……」

カムロウ「うん。大事にならなくて良かったよ……」

チリ「カムロウ!手、出して!治すから!」

血相を変えたチリが、カムロウの手を無理矢理にでも引っ張り出して、回復魔法で治癒をしようとする。

 

チリ「なんであんな無茶を…!他にも方法はあったでしょ!?」

カムロウ「いやだってぇ__」

 

モノクロ「__……なんで助けた?」

 

そこには、やや黒焦げながらも、ふんぞり返るモノクロの姿があった。

カムロウ「……………」

モノクロ「俺ァ、悪人だぜ。」

カムロウ「確かにそうですけど……」

 

カムロウ「……見殺しにしたくなかった。」

モノクロ「ハァ……?」

カムロウ「俺の仲間(ルカ)はそう言って、同じことをすると思う。」

 

カムロウ「盗賊としてのお前は許せないけど、人として殺すつもりはない。…ってことです。」

ジョージ「悪を憎んで人を憎まず…か。」

カムロウ「あっ!そうそう!それです!」

モノクロ「へぇ…あぁ、そう。」

 

モノクロ「おい、侍。」

ジョージ「ん?」

 

ジョージの手に、乱暴に突き出されたモノ。

ヴェニアが入っている宝箱だった。

 

モノクロ「ほらよ。返す。」

チリ「えっ………?」

モノクロ「助けてくれたお礼ってモンだよ。人として当たり前だろ。」

カムロウ「あぁ……いや……そうですけど………」

こんなあっさり返してくれるものなのか……?

 

モノクロ「なんか豆鉄砲喰らった顔してっけどな。俺ァ悪人だけどよ、根っこまで腐ったわけじゃねぇんだ。」

モノクロ「確かにお前の言う通り、悪を憎んで人を憎まずと似たようなモンだ。人からモノ盗むけどな、俺だって人を死なせたくはねぇのさ。後味悪いし。」

モノクロ「やってることが人から嫌われるだけでさ、イタイとこ突かれたりしたら結構ヘコむんだぜぇ?俺様。」

 

モノクロ「んでどうするよ?俺を衛兵にでも突き出すか?悪あがきはするぜ?」

カムロウ「えぇ~どうしようか。」

チリ「いや悩むところ?」

ジョージ「この者は悪事を働いた。突き出そうぞ。」

フラドリカ「……このまま逃がしても良いと思います。」

間を入れる隙もなく、フラドリカが即答した。

 

チリ「ホントに良いの?」

フラドリカ「はい。盗まれたコレも無事みたいであります。」

 

フラドリカ「現場を衛兵に確認されてないので、身柄を差し出したとしても受け取ってくれそうにないであります。それに、これ以上被害を出すのも控えたいので。」

モノクロ「……おいおい、良いのかよ。」

ジョージ「フラドリカ殿がそうおっしゃる以上、我々も手出しは出来ん。」

 

モノクロ「へへっ。なんだよ甘いな嬢ちゃん。甘い甘い。良いのかよ?だったらまーた盗もうかな!今度はそのリュックも丸ごとなぁ!」

フラドリカ「……次は無いです。絶対に。」

フラドリカの目には、決意が宿っていた。

モノクロ「……あぁ………そう。」

 

モノクロ「ま、それなりに頑張んだな。」

どっこいしょ…と、立ち上がると、ズカズカと歩いてモノクロは去ろうとする。

モノクロ「………そんじゃあな。」

 

カムロウ「……グラン・モノクロ。」

モノクロ「いや、ドを入れろっ!ドをっ!」

 

モノクロ「……んだよ。小僧。」

カムロウ「小僧じゃないです。」

 

カムロウ「俺はカムロウって言います。次やったら、本当に捕まえますからね。」

モノクロ「あぁそうかい。」

モノクロ「ケッ。最悪だなぁ。ブリキを曲げたりできる変なガキに、変に名前を覚えられるってのはよぉ。」

 

モノクロ「耳かっぽじってよーく聞きやがれ!俺様の名は大盗賊グラン・ド・モノクロ!誰に何と言われようと、この世のお宝は俺様のモンだってんだ!」

 

モノクロ「あばよっ!バカロウ!次会う時ァ覚えとけよォ!」

カムロウ「誰がバカロウだーッ!!!」

 

最後に捨て台詞を吐いたモノクロはそのまま森の奥へと、姿を消していった……

 

チリ「バカロウ……」

カムロウ「やめろ。言うな言うな。」

チリ「………バカロウ。」

カムロウ「やめろ!」

 

チリ「それにしてもなーんかあのおじさん……どこかで見たことあるような気がするんだよね……」

カムロウ「そう?」

 

 

こうして、昼間に起きた一件は幕を閉じ、カムロウ達はサン・イリアに帰った。

最後にフラドリカとヴェニアから再度猛烈な感謝をされ……

そうして何事もなかったかのように、カムロウ達はルカ達と合流した__

 

 

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