もんむす・くえすと! 勇者ルカと仲間たち 作:J・チェプナクル
そして、最初に入った二階の部屋で僕を迎えたのは……
壁際に縮こまり、震えているアリスだった。
ルカ「……何してるんだ?」
アリス「………」
どうやら、恐怖のあまり動けなくなってしまったらしい。
カムロウ「どこにいったと思ったら…こんなトコに。」
ルカ「おい、アリス。何かあったのか……?」
アリスにそう呼び掛けた時だった。
「ううう……」
廊下の方から、妙な呻き声が聞こえてきた。
アリス「ひゃぁぁぁぁぁ……」
アリスは腰を上げ、よたとたとその場から逃げ出そうとする。
次の瞬間、尻尾が絡んでつまずいてしまった。
アリス「あぶっ。」
そのままアリスは棚に突っ込み、ランプや書物を床にぶち撒けてしまう。
ジョージ「ぬおっ。」
ルカ「おい大丈夫か……?」
すると突然、血相を変えるアリス。
アリス「ひゃぁっ!こ、この子!この子が……」
床に撒き散らされたモノの中に、少女の肖像画があった。
ルカ「この子がどうしたんだ……?」
肖像画に描かれていたのは、いかにも品の良さそうなお嬢様。
マモル「そういや若。屋敷に入る前に少女を見たって言ってやしたね。」
ルカ「そうだけど……この人じゃなかった。」
屋敷に入る前、二階から覗いていた少女とは明らかに別人である。
この肖像画の少女は、いったい何者なのだろう。
ルカ「もしかしてこの少女こそが、病気で死んだっていう娘なのか……?」
アリス「ひぁぁぁ……」
アリスは掠れた悲鳴を上げ、ふらふらとその場から逃げ出そうとするが……
次の瞬間、部屋の入り口から現れた人影とぶち当たってしまった!
__ゾンビ娘が現れた!
アリス「ひゃぁぁぁぁぁ…!!」
ゾンビ娘「おぉぉぉぉぉぉ…!」
「「「「うわあああああああああ!!?」」」」
廊下から聞こえた妙な呻き声の主はこいつか!?
耳が尖っている事からしてエルフだと思われるが……
ゾンビ娘「ぁぁぁ……」
言葉も発さず呻き声ばかりだし…肌も青白く、生気を感じさせない様子だ。
ルカ「こいつ…ゾンビか!?」
アリス「……って、ただのゾンビか!」
アリスの拳がゾンビの顔面にヒットし、一撃で吹っ飛ばしてしまった!
ゾンビ娘「おぉぉぉぉ………」
「「「「うおおおおおおおおおお!!?」」」」
ゾンビ娘をぶっ飛ばした!
アリス「まったく、驚かせおって……」
カムロウ「……ゾンビなら平気なのか。」
ルカ「ゾンビといい、アリスが恐れている幽霊といい、いったいどこが違うんだ?」
アリス「む……?」
思いっきり力を振るった衝撃のせいか、アリスの足下の床に亀裂が入る。
そのまま床が抜けてしまい……
アリス「あ……うわぁぁぁ……!」
そのままアリスは、階下へと落下してしまった!
カムロウ「えぇ………」
ルカ「さっきから怯えたり逃げたり暴れたり落ちたり……騒がしい奴だなぁ。」
まあ、魔王なんだから一人で放っておいても大丈夫だろう。
ひた………ひた…………
ルカ「ん……?」
廊下を進む、ひたひたという足音。
おぉぉぉぉぉぉ………
そして、さっき聞いたのと似た呻き声。
また別のアンデッドモンスターが、この部屋に姿を見せた!
__ゾンビ娘が現れた!
ゾンビ娘「う、ぅぅぅ……」
ルカ「もう一体いたのか……!」
どうやら、冒険半ばで果てた女剣士のゾンビらしい。
ゾンビ娘「あぁぁぁ……」
ゾンビ娘は不意に、ルカにすがりついてきた!
ルカ「うわあっ!?」
すかさずゾンビ娘を突き飛ばし体勢を立て直した!
ルカ「…動きも鈍いし、力も弱い。どうやら、力も大したことないな……」
付き飛ばされたゾンビ娘は、カムロウに向かって行く!
カムロウ「ぎゃあああ!こっちに飛ばすなあっ!!!」
カムロウは盾を構えて受け止める!
ゾンビ娘「あぁぁ…!」
盾越しに、ゾンビ娘はカムロウにすがりつこうとしている…!
カムロウは引き剥がそうと、ガスガスと叩いているが一向に剥せる気配がしない……
カムロウ「おいこいつ力強ェじゃねぇかッ!!!」
ジョージ「ふむ。腰に剣をさげているのに使おうとしないとは……どうやら知性が無いと見受けれるな。」
マモル「だな。生命の反応に魅かれて、衝動のままに襲う感じかね。」
ルカ「いや冷静に状況分析してないで助けろよ!」
ゾンビ娘「おぉぉ…!」
カムロウ「ひぃぃ!ドラゴニックブローぉ!」
カムロウは龍の力を腕に込めてぶん殴った!
ゾンビ娘は吹っ飛ばされ壁に激突する!さらに壁を突き抜け、廊下に飛び出す!
ルカ「おぉ……」
カムロウから新しい力を得たとは聞いていたが、こういうのだとは……
あんなパンチ受けたら、骨が折れてとんでもないことになりそうだな……
ゾンビ娘「うぅ、あぁぁぁ……」
ゾンビ娘は虚ろな表情を浮かべている……
ルカ「うわっ!タフなヤツ!」
生命力以外は、大した脅威ではないようだ。
しかし、今の攻撃で足が折れたのか、片足を引きずりながらこちらににじり寄って来る。
ジョージ「ふむ。知性が無ければ、痛覚も認識できないのか?」
マモル「あぁ~久々に
ルカ「だから冷静に分析するなよ……」
ゾンビ娘も虫の息っぽい。あと一発、剣で軽く叩くだけでも倒せそうだ。
ルカ「この様子なら…もう封印できるか?」
距離を測りつつ、剣を構えて間合いを詰め……
ゾンビ娘「あぁ……おぉ……」
ルカ「せい……せい……」
ルカ「やあっ!」
ルカの攻撃!
ゾンビ娘「うぁぁぁ……」
斬りつけた箇所から粒子のようなものが消散し……
そして残されたゾンビ娘の肉体は、床の上に倒れ伏した!
__ゾンビ娘をやっつけた!
マモル「(今の粒子は一体なんでぃ…?)」
ルカ「ふぅ………」
剣を納め、一息吐いた時だった。
__ぅぅぅ……ぁぁぁ………
「「「「……え?」」」」
ずるずると足を引きずるような音と、呻き声。
カムロウ「い、今の声って……」
ルカ「ま、まさか……まだ……」
それも、今度は1体ではないようだ。
そいつらは、この部屋へとなだれ込んできた!
ゾンビ娘達が現れた!
「「「「ぎゃあああああああああ!!?」」」」
ドアから!穴の開いた壁から!天井から!
大量のゾンビ娘がなだれ込んでくる!!!
カムロウ「うわあああ!?なんだよコレ!?多勢に無勢ってヤツだろこういうの!?」
カムロウは盾や剣を使ってなんとかいなしているが、ゾンビ娘はどんどん部屋に溜まって来る…!
ルカ「どれだけゾンビがいるんだ!?どうなってるんだ、この屋敷…!!」
ルカ「これじゃ幽霊屋敷じゃなく、ゾンビ屋敷じゃないか!」
カムロウ「んなこと言ってる場合かーッ!」
ルカ「……まてよ……そもそも……そんなに様々なゾンビが、自然発生するものなのか……?」
ゾンビ娘は、人間の死体に魔素が取り憑き、アンデッド化したモンスターという。
元が死体のため知性は無く、生命の温もりを求めて彷徨う。
とはいえ、そもそも元となる死体も無ければ、大量の魔素も無ければ、ここまで大量のゾンビが現れるはずなど……
ルカ「こんなにたくさんのゾンビが発生するというのは、どう考えてもおかしい……!」
色々と思考を張り巡らせる。
この幽霊屋敷の噂……かつて処刑場だったとか、昔は墓場だったとか……
では魔素は?一体どこから発生した?
そもそも何故アンデッド化した?
ジョージ「どうにか……仮説を立てたいところではあるが……!」
マモル「今は考える暇も無ェーッ!」
2人はドアの扉を閉じようとしているが、押し返されている…!
ルカ「くっ、考えている場合じゃないな……!」
そうこう思考しても、ゾンビ娘はどんどん部屋になだれ込んでくる!
一体一体はそう強くはないが、相手は多勢。
心してかからなければ……!__
__一方……屋敷の一階、エントランス。
チリ「今、凄い音したよね……」
ラクト「ん?ルカたちがタンスでも倒したんじゃねぇの?」
パヲラ「…みんな、ちょっといい?」
チリ「はい?」
ラクト「んぁ?」
ひた…ひた……ぺた、ぺた………
パヲラ「……何か、聞こえるわね。」
先の暗い廊下の奥から聞こえる、無数の呻き声……
3人が目を凝らして注視すると……
「あぁぁ……」「おぉぉ……」「うぅ、うぅ。」
這い出るように現れる、死体の群像であった!!!
「「ぎゃああああああああああ!!?」」
チリ「え…なに…こ、これ、これって…あ、あれだよね…!?」
ラクト「ゾ、ゾ…ゾゾ、ゾゾゾゾゾゾ……」
「「ゾンビだああああああああああああ!!!」」
チリ「ほら!こういうのなんて言うんだっけ!?えっと、えっと…なんとかザードって言うよね!?」
ラクト「は!?今聞く!?いや、知らねぇよ!何ザードだよ!」
パヲラ「パイオツハザード!」
ラクト「テメェは黙ってろッ!」
パヲラ「だって見なさいよ!皆ノーブラよん!?おっぱいぷるんぷるんよ!?」
チリ「そりゃあ死体ですから!…いやそれはおかしいかも!」
パヲラ「でもね!おっぱいはあたしの方が大きんだからッ!!!」
ラクト「うるせぇッ!!!どうでもいいよッ!!!」
パヲラ「……もしかして、こういうゾンビが、ルカちゃん達の前にも現れたんじゃないのかしら?」
ラクト「んなバカなぁ!?」
チリ「や、やっぱりこの屋敷、色々とおかしい……!私、悪夢でも見てるのかな……!?ゾンビが大量に出るし……ハーブ食べて回復するし……」
ラクト「いやハーブは正常だろ?」
チリ「異常だよ!?」
ラクト「おいおいおいおい待ってくれよ…!俺今
パヲラ「全く…じゃあさっき拾ったこれ使いなさい。」
ラクト「…なにコレ?」
パヲラ「錆びてて良く分からないけど、たぶんバールのようなモノ。」
ラクト「じゃあバールでいいだろ。」
群れるゾンビ娘を前に、3人は立ち向かう!
パヲラ「他のみんなが戻って来てもいいように、ここの安全を確保するわよっ!」
ラクト「いいよなーチリ、お前は。デケェハンマーで……」
チリ「私だって怖いの!!!」
ゾンビ娘はゆっくりと、ルカたちに近づいてくる…
カムロウ「
ジョージ「
カムロウの腕の筋肉が隆起し、ジョージは体中から赤い蒸気が噴き出す!
カムロウ「ドラゴニックブロー!!!」
ジョージ「
2人は力任せに、ゾンビ娘を殴り飛ばす!
しかし生命力が強いのか……ゾンビ娘はこれだけでやられてくれない。
この魔物を倒すには、僕の剣で攻撃しなければならない!
ルカ「きょえぇぇぇぇっ!!!」
やたらめったに剣を振り回し、ゾンビ娘たちに斬撃を浴びせる!
「うおぉぉぉ……」「はあぁぁぁ……」
斬られたゾンビ娘は、粒子を出しながら次々と倒れていく。
ルカ「はぁ…はぁ……よし、次!」
ゾンビ娘はこちらに、にじり寄ってくる…
ジョージ「こやつら…生命力が強い故に打たれ強い!!一体一体を相手していると、こちらが消耗するのみ!まとめて片づけるべき!」
ジョージ「火はどうだ!?」
ルカ「効きそうではあるけど……」
マモル「お前さんここ木造ですぜ。火事にする気かぁ?」
ジョージ「ダメか!」
カムロウ「なら凍らせる!」
カムロウ「
カムロウの両手から、冷気が放たれる!
ゾンビ娘たちの身体が凍り付き、身動きを封じた!
カムロウ「とりあえず身体は凍らせました!どうします!?」
ジョージ「この数、悠長に相手はしていられん!今の内に窓から放り出す!」
ジョージ「手荒になるが御免こうむる!」
ゾンビ娘を抱きかかえ、2階の窓から投げ飛ばす!
パリンパリンとガラスが割れる音が響きながら、ドスドスと落ちる音が下から聞こえる。
ジョージ「む?この穴……さっきアリス殿が落ちた穴では?」
マモル「丁度いいや。ここにも詰め落とそうぜ。」
ルカ「おいおい…落ちた先のアリスはどうなるんだ……」
……まぁ。アイツのことだし死にはしないだろう。
ゾンビ娘はすがりついてくる……
ゾンビ娘「う……ぁぁ……」
ルカ「うわあっ!?びっくりした!」
ルカはゾンビ娘を蹴飛ばした!
マモル「
マモルは槍を振り回した!!!
床に開いた穴に、ゾンビ娘をどんどん突き落とす。
倒せる奴は、片っ端から倒し、相手に出来ないゾンビ娘は床の穴に突き落としたり、壁から外に放り出す。
そうでもしないと、この量はさばききれない!!!
ゾンビ娘「あぁぁ……ぅぅ……」
ルカ「よし、次で最後だ!」
ルカ「魔剣・首刈りッ!!!」
ゾンビ娘たちの懐に入り、首を狙って突きを放った!
動きが鈍い分、流れるように魔剣・首刈りが命中する。
__そうしてやっと、最後のゾンビ娘を倒した。
ゾンビ娘「ぅぅ……ぁぁぁ……」
ゾンビ娘の体から、粒子のようなものが解き放たれていく!
ゾンビ娘達をやっつけた!
カムロウ「も、もういないか…?」
廊下を出てみたが、もうゾンビ娘の姿はない。
ルカ「はぁはぁ……なんなんだ、このゾンビの群れは?」
ジョージ「湧いてくるように現れたな……何故?」
息を切らせながら、剣を納めた時だった。
???「あ~!儂の実験体達が~!!」
そう叫んだのは、廊下の奥に立っていた、謎の少女。
ルカ「お前は……!?」
???「わわわっ……!」
僕を見るなり、少女は脱兎のごとく逃げ出してしまった。
ルカ「待てっ!!」
僕は部屋を飛び出し、謎の少女を追いかける。
カムロウ「えっ!?追いかけんの!?」
マモル「ほれっ!」
マモルが紙式神を放り投げると、少女の後を追うように追跡を始めた。
紙の式神を追って、僕たちは屋敷内を駆けた。
ジョージ「ルカ殿、あの女子がどうしたというのだ!?」
ルカ「間違いない!さっきの少女は、二階の窓から僕達を見下ろしていた少女だ!」
ジョージ「なぬっ!?」
ルカ「どう見ても、病気で死んだという少女は違う!あの雰囲気……おそらく人間ではなく妖魔だと思う!」
ルカ「それにゾンビの事を実験体と呼んでいた……」
ルカ「何故か知らないけど、嫌な予感がする…!」
紙式神着いたのは、さっき僕たちが通った階段。
ルカ「階段を下りていったのか…?」
そうなるとこの先は……
ルカ「……エントランスか…!?___」
一方、エントランスでは……
パヲラ、チリ、ラクトの3人。
群れ成すゾンビ娘の対応に追われていたが、それも終わりつつあった。
チリ「えーいっ!」
群がるゾンビを大きなハンマーで打ち飛ばし、壁を突き抜け外に放り出す。
パヲラ「お待ちなサマーソルトッ!!」
バック転をしながら、蹴り技をぶつけて蹴り飛ばす。
パヲラ「さち……」
バールのようなモノを構えたラクト。
ラクト「このッ!」
脳天目掛けてバールを振り下ろすと、ゾンビ娘の頭から血が噴き出す。
ゾンビ娘「ぉぁぁ…!!」
ラクト「ひぃっ!おっかねェッ!」
ラクト「ほいっ!ほいっ!聖水浴びて大人しくなってくれ!」
ゾンビ娘の身体にバシャバシャと聖水を浴びせる。
すると身体から粒子が飛んでいく……
こうやって、ラクト達はゾンビ娘を浄化していたようだ。
ラクト「ヒィ…ヒィ………もうこれで終わりか?もう終わってほしい……」
パヲラ「ん~……もういないみたいわね。」
両手を耳に当てて耳を澄ますパヲラがそう言った。
ラクト「聖水無くなっちまったわ……そっちは?」
チリ「こっちもカラっぽ。使いきっちゃったよ。」
ラクト「まさかヤケクソで買った業務用聖水がこんな風に役に立つとはな。」
チリ「ラクト結構腕っぷしあるんだね……」
ラクト「だろ?街じゃあ、よく喧嘩はしたモンだよ。酒場の酔っぱらい相手のストリートファイトじゃ、負けナシだったんだぜ。」
チリ「…の、割に臆病で逃げ腰なんだね……」
ラクト「お前ェなァ!魔物と人間は違ェだろ!人間と!!驚異の度合ェっつーもんがあんだろーがおめーよ!__」
???「__のわっ!こんなところにもおるのかっ!!」
突如パヲラ達の前に現れたのは、謎の少女。
パヲラ「…あら?」
ラクト「なんだコイツ。」
3人の頭の上には?が浮かぶばかり。
???「ええい!来い!フレデリカ!!!___」
なんと、巨躯の身体を持つゾンビが……屋敷のドアを突き破って現れた!!!
巨躯のゾンビ「……………」
人の数倍も大きな図体。
生気のない瞳が、パヲラ達を見下ろしている……!
それに対し、身構えるパヲラと、恐怖におののくラクトとチリ。
パヲラ「これは…ゾンビなのか……!?」
「「うわあああ!!!絶対に危険なヤツーゥゥゥッ!!!」」