商会人の聖騎士と流れ者の魔獣使い   作:一一生寝てたい一

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既プレイ推奨です。原作の違和感のあった場所などなど、細部が細かく違っていたりします。


エドワード商会

「あっつ……」

 

この国では年がら年中日が照り続け、長らく水不足に困らされていた。

 

「あっっつ……」

 

それが突如として原因不明の水害に襲われ始めたのが一昨年のこと。巷ではバーナード評議員が掘り当てた水脈が原因との話だが、どうもこれはきな臭いと俺の感は告げている。なにせあのバーナード評議員自体がここ数年で突如としてのし上がってきた人物だ。彼の運営する遊技場はこの国に新たな娯楽をもたらしたが、同時にがらの悪い連中が入り込んだり、借金をしてまでのめりこむ輩が出たりといった問題も引き起こしている。到底信用できない。

しかしそれにしても、

 

「今日も暑いな……!」

 

―――ここは渇水の国『サヴァロン』。照り付ける日差しから逃れるためのオアシス。渇水の名の通りかつては水不足に悩まされ、今では水害による水過多に悩まされる国。土地の三分の一が既に水に沈んだ今もなお、水害は収まりを見せない。

その国で俺はある店の店先で番をやっていた。窓の外を買い物に来た人々が忙しそうに動き回っている。

さんさんと蒸すような熱気に焼かれていると、見知った顔が店に顔を出した。

 

「……おつかれさまエド」

「ニハル、お前も暑い中お疲れさん。今日もいつものか?」

「うん。これお代」

「はいよ。おい!」

 

店の奥に声をかけ、いつものやつを持ってこさせる。ニハルの飼う魔獣用に調理された魔獣の餌だ。

ニハルはこの『エドワード商会』のお得意さんの一人である。まだまだ小さいこの商会だが、今までなんとかやってきて、今ではある程度安定した顧客を得ることに成功した。先にあった商会の多くがこの水害で店の位置を移動させる必要に追われ、新しい店舗の確保に手間取ったところに付け込めたのもでかかっただろう。キャッチコピーは『いつもあなたの隣に』だ。

 

「……うん。いつもありがと」

「なーにこれくらい。お客さんは大事にするのがうちのモットーだ」

「餌が切れたらまた来るね」

「あいよ。……なぁ」

「どうしたの?」

 

立ち去ろうとしたニハルに思うところがあってつい声をかけてしまった。反応して立ち止まったニハルに言葉をかける。

 

「まだバーナードのところに世話になってるのか?」

「うん。……彼は私の恩人だから」

「そうか」

「……それじゃ」

「あぁ。また」

 

それを最後に今度こそ別れる。

ニハルはバーナード評議員の元で働いているが、その関係は決して健全とは言い難いということを以前彼女から聞いたことがある。ニハルとバーナード評議員の関係に思うところはあるし、ニハルがその気ならいつでもうちの商会に迎え入れる準備は出来ているのだが、彼女自身がそれを望んでいない。

 

「世の中うまくいかんもんだよなぁ」

 

周りで商会の奴らがばたばた走り回るのを聞きながら独りごちる。

 

 

 

日は変わって翌日。天候は変わることなく快晴である。

 

「たまには曇れよ。たまには」

 

今日も商店の店先に座って窓の外を眺めたりお客さんの相手をしたりと、いつも通りの業務に精を出す。俺ことエドワードはこのエドワード商会の会長であるにも関わらずわざわざ店先に座っている。理由はただ人手不足だからという訳でなく、ここの方がお客の噂話や窓から覗ける市場からその傾向というものがより多く読み取れるからだ。最悪俺がいなくても商会が回るように部下の教育には力を入れているので、こうして店先に俺が顔を出せる余裕くらいはある。

 

「エドワードちゃん、今日も精が出るわねぇ」

「おばあさんこそ。今日は何を買いに?」

「そうねぇ。果物をいくつか貰おうかしら」

「あいよ。おまけつけときますね」

「いつもありがとうねぇ」

「いえいえ。お客さまあっての俺たちですから」

 

お代を受け取り、またどうぞーとお見送りの言葉を立ち去っていく後ろ姿にかける。今のばあさんもお得意様の一人だ。この暑い中わざわざ足を運んで買いに来てくれるというのは素直に嬉しい。

いつもと変わらない日常を過ごしながら、次に手を出す商売について考える。今の市場でよく売れているものを観察し、商品を運んでくる輸送業の奴らから聞いた話や巷に広がる噂話などから次に売れそうなものを考える。

 

「やっぱり水害関連かね。……ん?」

 

考え事をしながら市場を眺めていると、とある四人組が目に留まる。見るからにこの暑い中重厚な鎧やロープを纏っている姿……間違いなくこの街の住人じゃない。姿からすると旅人だろうか。ふと思いついたことがあって窓から声をかける。

 

「ちょっと!そこの方たち!」

「ん?」

「私たちの事でしょうか?」

「そうそう。ちょっと話を聞いていかないか?」

「なんでしょ?」

 

呼びとどめられた四人は素直にこっちに寄って来る。よく見ると腰に剣や杖を吊っており、旅人であるという確信を深める。

 

「あんた方、ついさっきこの街に来たばかりだね?まだ宿も確保していない」

「まぁ、そうだな」

「どうしてわかったのですか?」

「そりゃこの暑い中町の中でわざわざあっつい鎧やらロープやら着こんで、腰に剣やら杖やらぶら下げてる上、重苦しい荷物も持ってるときたらな」

「あぁ、それはわかるか」

「こんな目立つ格好してたらね」

「それで、吾輩たちになんの用だ?」

「なに、あんた方にとってもいい話だ」

 

この四人組に声をかけたのはなにも興味本位ではない。ここからは商談の時間だ。

 

「ここまで来る道中魔物も多く倒したと思うんだが、そいつらから収集品が取れることは知ってるね?」

「ああ、角とか売れるしな」

「路銀稼ぎにはちょうどいいしね」

「それを今度からはうちに優先して持ってきてくれないか?代わりにいくらか買値に色を付けよう。特にボムの右腕なんかの道具は大歓迎だ。いくらでも持ってきてくれ」

「それは構わないけど……いいわよね?」

「ええ。ですが理由をお聞きしても?」

「こっちで加工して売ったり、行商人に自衛用として売ったり、まぁそんなところだよ」

 

ここで一旦話を止め、反応を見る。男組は特に何の反応も示していないが、女性組の反応は大きかった。金髪長髪の方は興味深げに話を聞いているし、後ろで髪をまとめた方は思慮深げに何か考え込んでいる。

考えがまとまったのか、髪をまとめた方が話しかけて来る。

 

「具体的にどれくらいの値で買い取ってくれるの?」

「そうだなぁ……」

 

近場に置いてあった紙を手元に引き寄せ、一通り適当な値段を書き込んで見せる。

 

「こんなもんでどうだ?ここに書かれてないやつはまた持ってきたときに決めよう」

「……うん、妥当な値段ね」

「んじゃ、交渉成立だな。名前を教えてくれ。店の奴らに言い含めておく」

「ええ」

 

四人の名前はそれぞれ、セス、エルヴィン、グローリア、アデルと言うらしい。店の中に声をかけ、彼らが来たら個別に対応するよう言い含めておく。これで俺がいないときでも問題ない。

その後、交渉成立の祝いに俺の知る限り最もコストパフォーマンスの高い宿を教えておいた。値段の割に部屋の質がよく、気がよく利く宿屋だ。きっと満足していただけるだろう。

四人組と別れたところで店じまいにはちょうどいい時間になっていたので、奥に声をかけようとして後ろに立っていた男に気づく。

 

「うわっ……なんだバスか」

「……」

 

この無口な男、バスと言うのだが、こんなでもこのエドワード商会の副会長である。読み書き計算はもちろんのこと、商売におけるイロハも俺が直々に叩き込んだ逸材だ。ゆくゆくは独り立ちして自分の商会を立てても驚かない。それくらいには優秀だ。

 

「……さっきの人たち」

「どうした?見知った顔でもいたか?」

「……いやなんでも」

「? そうか」

 

こういう、言いこもった時のバスは問い詰めても何も言わない。よって俺も何も聞かずに流す。

 

「そうだ、このあと俺抜けるな」

「……なにか?」

「少し飲みに行こうかと思ってな」

「……わかりました」

 

この商会ではローテーションで店番をやらせているので、明日俺は休みである。商会の仕事は基本部下で回るし、こっそり飲みに行くことにする。今夜はお楽しみだ。

 

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