ぜったいに許さんぞ、ペイル・テクノロジーズども!
じわじわとなぶり殺しにしてくれる!!!
以上、この作品でのペイル社の扱いでした。
地球から離れて数日が経った。民間船で月のコロニーから別のコロニーへ、そしてまた別のコロニーへ。
地球というゆりかごから出ていた者達によって、作られた土地に住むのには最初は抵抗があったに違いない。
だけど、今の宇宙移民者達は不自由なく暮らしている。理由は宇宙には資源があるから。
地球の資源は枯渇寸前に対し、宇宙は探せば無限にあると言ってもいい。そうなれば地球と宇宙では経済がガラリと変わる。
そして宇宙に住む人達は自らを「スペーシアン」、地球に住む人を「アーシアン」と呼んだ。区別された時から経済格差による差別が始まったのは言うまでもない。
お陰でスペーシアンにとってアーシアンは奴隷と同じ扱いになってしまい、不平等な生活を強いられている。
だが、アナハイム・エレクトロニクスが設立されてからは、少しずつだけどアーシアンの見方は変わってきている。
アナハイムは他社にはない強みや資源を無駄なく使用する工法を獲得し、今や三大企業の業績に少しづつ近づいていた。
その社長が・・・
「Zzz。ヤッテミセロヨ・・・マフ、Zzz」
私の目の前で気持ち良さそうに寝ている人だと、誰も気づかないんだろうな。
今、私達は民間船の個室の中、それも利用料金が一番高い部屋にいる。
アルマは事前に席を予約する際「一般席でいいでしょ」と聞いてきた時、私もその事に同意したのだが、管理部長が変な手回しをして、最高級の部屋を手配したのだ。
私が部長に問い詰めた所、仮にも社長なのだから見栄を張らせた方がいい、長旅で疲れると悪い等の返答とニカちゃんとアルマ君の為だよ♥️と
余計なお世話だ、と思った矢先、急に真面目な声で「アルマの行動を抑制できるのはニカちゃんしかいないでしょ」と
そう、その通りだ。アルマには放浪癖があり小さい時からどこかに行ってしまう、超が付くほどの問題児。
私も最初の頃は泣くほど心配したのだが、だんだん数をこなしていくと心配するより、彼の冒険を聞くのが楽しみになっていた。
そしてあるきっかけでアルマが社長になった時、彼の放浪は更に多くなった。それも多くの結果を伴って
断れ続けられた融資の問題を解決したり、他社の重鎮や社長と偶然仲良くなった挙げ句、その相手の方から会社を合併したいと申し出があったり、人が入らないジャングルにある村から逸材を発掘したり等々
次第にアルマは会社内で『歩くまねきねこ』の異名を得てしまい、社長の威厳を見せるより先に、完全にマスコットキャラクターとして愛されてしまう一面が多かった。
「本当、アルマといて退屈する暇がないよ」
そう言いながら、アルマのぷにぷにほっぺを指で突っつくと、アルマから情けないけど可愛らしい小さな声が漏れていた。
「で?折角のルームサービスを台無しにした理由を述べよ。ニカちゃん」
「えっと・・・ごめん!寝てました・・・」
あの後、私は睡魔に襲われてしまい、ルームサービスが来ても起きなかった。結果、二人分の食事を逃してしまったのだ。
今はやむを得ず食事ができる共用スペースに向かっているのだが、アルマは高級料理が食べられず、不機嫌になっていた。
「最高級の部屋に最高級の食事がないのは悲しいと思いませんか?僕は悲しいです!」
「別に一回逃しても・・・」
「僕は!ステーキを食べたかったんや!今までの航路で肉料理にありつけたことはなかったやろ!」
「そうだけど・・・」
「肉~、久々の肉~・・・」
情緒不安定になっている、駄々っ子アルマを見て、めんどくさいと感じてしまうが原因は私にある。仕方なく私は妥協案を出す。
「わかった。次のコロニーが最後だから、入学記念にお肉屋さん探そ。だから機嫌直して、ね?」
「ほんま?」
「うん。約束」
「・・・じゃあ、我慢する。でも、ここのレストラン、ハズレ多そう」
どうにか機嫌が治り、いつものアルマが戻ってきた矢先に今度は船内のレストランに文句を言う。普通ならまだ駄々をこねていると他人は思うかもしれないが、今のアルマは正常なので違う。
アルマの勘は昔からよく当たるから
「そう?レパートリーが多くていいと思うんだけどな」
「そうかもしれないけど・・・。行くなら、この狭いところの店がいいと思う」
「じゃあ、そこにしよっか」
アルマが選んだ店にハズレはない。そこに行こうと再び足を動かした時、向こうの方から船のスタッフ達が慌てながらこちらにきた。
「じゃあ、お前はここを捜索してくれ。申し訳ありませんお客様。こちらにお客様と同い年の女性は来ませんでしたでしょうか?」
「いえ・・・。そんな人は見ませんでした。何かありましたか?」
スタッフは人を探しているようで、私は事件でも起きたのかと不安になった。
「ふー・・・お客様に相談することではないと思うのですが・・・実はデリング総裁がこの船に乗っていまして」
私は耳を疑った。あのベネリットグループの総裁がこの船に乗っていたとは
「その娘である、ミオリネ・レンブラン様がいなくなってしまったのです。デリング総裁は探さなくてもよいとおっしゃいましたが・・・」
「もし何かがあってしまった場合、我々の責任に変わりないので。会社は・・・」
スタッフは言葉をつぐんでしまった。確かに総裁の娘に何かあったらこの運送会社はあっという間に潰されてしまうだろう
「あの~。もし、そのクリオネ?「いや、ミオリネ!」・・・ミオリネさんを見つけることができたら、ルームサービスの食事って用意できますか?」
アルマ、それは軟体動物の名前だよ。よりによって総裁の娘の名前と間違わないで!私の寿命が縮まるから!あと、まだ諦めてなかったの?
「え、ええ!勿論です!むしろ、それ以上の物を御用意させていただきます!」
スタッフは九死に一生を得たようにその提案を受け入れた。アルマは「最高のご飯を僕とニカにお願いします」と笑顔で言うと
「とりあえず、船内図面を見せていただいてよろしいですか?」
自信に満ちた顔でスタッフに図面を要求した。
「死ね、死ね、死ね、死ね」
私は携帯端末でシューティングゲームをしながら呪詛を吐いていた。あのクソ親父、娘の私をグループの業績を上げるための起爆剤として入学させて、おまけに決闘の勝者を結婚相手にする?
どこまでもふざけた親父だ。私を勝者のトロフィーにして、私が幸せだと思うのか?私はそんなこと思わない!!
そんな奴らのいいなりになるなんて、まっぴらごめんだ。私は地球に行く、どんな手段を使ってでも絶対に行ってやる。
その為にこの船で
「そう思っているとこ悪いんだけど、君の逃避行はここで終わりだよ」
突然の声に私は硬直する。誰、誰かいるの?
「出てこないなら・・・。すみません、このコンテナ開けてもらってもいいですか?」
私はハッとなり、急いで隠れようとしたが遅かった。コンテナが開き、照明が私の目を眩ませる。
眩んだ目が治った時、目の前にはクソ親父と取り巻きがいて、その後ろには船のスタッフが数名。
そして、何故か赤毛の少年と青毛の少女がスタッフの隣に立っていた。
「お待たせしました。船内の図面です」
スタッフが私達の部屋に図面を持ってきて机の上に広げた。アルマは自分の荷物から小さな袋を取り出して、広げられた図面を見た。
「ありがとうございます。・・・うん。これなら時間も掛からないと思います」
「掛からない・・・とは?」
「私は占いの知識がありまして、なので占いを応用して人を探そうかと。ちなみにミオリネさんの髪の色は知っていますか?」
普通の人なら、この時点でアルマを小馬鹿にする。だけど、アルマは今までできないと思ったことをやってのけてきた。
その事を誰よりも近くで見ていた私はそんな彼を信じている。
「髪の色ですか?確か、白だったような」
「ありがとうございます。あとは石が導くだけです、よ!」
アルマが投げた白石は天井すれすれまで近づくと、石は図面に吸い寄せられたように落ちていき、何回か跳ねた後、ある区画を示した。
「ここは?」
「次のコロニーに送る輸送コンテナを保管する区画です。でも、ここは乗客が来れる場所では」
「ちなみにミオリネさんが最後に目撃されたのはどこですか?」
「え?最後に目撃されたのはここだと聞いていますが・・・」
「じゃあ、ルートを辿ってみましょうか。そうすれば答えは出てくるはずですよ」
「凄い。本当に当たってた・・・」
スタッフが狐につままれたような顔をしながら、アルマを見ていた。肝心の彼は食事の事しか頭になく、完全に浮かれていた。
「じゃあ、約束通り『パシッ』?」
乾いた音が区画内に響いた。私とアルマは何事かと思い、音が聞こえた方を見るとミオリネさんが左頬を抑えながら、父親であるデリング総裁を睨み付けていた。
「私に面倒をかけさせるな、ミオリネ。お前はグループの発展に必要不可欠の存在だ。勝手な行動をするのはやめろ」
「何が必要不可欠よ!娘の私を意思を尊重しないくせに、偉そうに私に説教すんじゃないわよ!!」
「何を言っても無駄のようだな。つれていけ」
「気安く私に触らないで!!」
ミオリネさんは取り巻きが腕を掴むと暴れだした。総裁の娘も色々大変なんだなと思いながら見ていると、何故かアルマが騒動のど真ん中目指して歩きだしていた。
私はヤバいと思い、急いで止めようとしたが遅かった。
「申し訳ありません。ベネリットグループのデリング総裁でお間違いありませんでしょうか?」
「なんだ、貴様は」
私は聞いてドキッとした。丁寧な喋り方をする時のアルマは相手が格上だったり、状況が一番ヤバいと思った時しか見たことがない。つまり、デリング総裁は相当ヤバい案件だと私は受け取った。
「私はアナハイム・エレクトロニクスから推薦され、デリング総裁が理事を務めます、アスティカシア高等専門学園に入学させて頂く、パイロット科アルマ・カーストンと申します。お会いできて光栄に思います」
「その小僧が私に何のようだ」
「失礼ながらご息女様に提案させて頂きます。ご息女様は大層デリング総裁に苛立ちを感じている様子。これでは次のコロニーまで気分良く航海ができないと思います。なので、これは提案なのですが、ご息女様がよろしければ、私共がいるお部屋で大半の時間を過ごさせるのはいかがでしょうか?」
ちょっと待て、今なんと言った。デリング総裁の娘を私達の部屋で?そんな恐れ多いことをする必要があるのだろうか。
「就寝するときは勿論、ご自身のお部屋で寝ていただきます。そして私共の部屋にいるときはご自身の安全を確保する為に出入口付近に見張りを1人配置しても構いません。いかがでしょうか?ミオリネ・レンブラン様」
「くだらん。そんな提案を飲む価値もない。連れていけ」
案の定、デリング総裁は娘を連れていこうとするが、アルマはデリング総裁の前に立ち、更なる爆弾発言をした。
「申し訳ございません。私はデリング総裁に意見を打診しているのではありません。ミオリネ・レンブラン様にお尋ねしているのです」
「貴様。たかがアーシアンの学生、いや、ただの一般市民が、私より娘の意見を尊重するのか」
アルマはあろうことかデリング総裁に喧嘩を売った。総裁の威圧感は増し、私やスタッフ、そして取り巻き達もハラハラしながら二人を見ていた
「はい。私はあくまでミオリネ・レンブラン様に聞いております。その提案を受諾する、拒否する判断をするのは彼女次第でございます」
しかし、アルマはデリング総裁に屈することはなく言い放った。格上相手いや、この世の絶対権力を前にしているというのに、彼の目は真っ直ぐに相手を見ている。
しかし、デリング総裁も負けじとアルマを睨み付けていた。両者共に譲らない圧から生じた沈黙を破ったのはミオリネさんだった。
「行くわよ、あんた達の部屋に。こんな奴の近くにいるより数倍ましよ」
部屋はどこ?と言ってアルマの隣を通って行く彼女に対し、アルマはデリング総裁に一礼して、彼女の後を追った。私もついていこうとした時、デリング総裁の顔をチラッと見てしまった。
目はアルマを睨んだままだった。だけど・・・私の見間違いだったかもしれないが僅かに笑っていたように見えた。