俺が考えた 仮面ライダーBLACK SUN 作:井上ああああ
闘いから数日後
光太郎は、葵と信彦の墓をたてて彼らの遺体を埋葬した。
シンディとレックスはアメリカに帰っていった。
ゴルゴム地下神殿はアメリカ政府が管理することとなった。
彼女の計らいで、赤い石は彼が所有することとなった。
葵の遺品ということで、所持は許された。
やがて、世界平和ゴルゴム連合ビルの捜査で、葵の両親を殺したのがホエール教授を殺したトゲウオと同じということがわかった。
かくして、全ては元通りに戻っていった。
東京。
警視庁関東方面総本部。
黒川は南にホットコーヒーを手渡した。
黒川は知っていた。
再び南は寡黙になっていた。
「……。」
沈黙。
重い沈黙があたりを包んだ。
すると、沈黙を破るように黒川はコーヒーを飲みながら、ふと声を出した。
「なあ、南。」
黒川はテーブルにコーヒーを置きながら話を始めた。
「人間は、大事な人が死ぬとな‥‥その人間の魂と記憶が自分の中で永遠に残ると言われているんだ。」
「ゴルゴムもそうだと?」
「そうだ。」
黒川は即答した。
南は彼の話を黙って聞いた。
「きっと、あの娘はお前の心の中で生きている。お前が生きている限り、正気を失わない限り、彼女は永遠にお前と一緒にいるんだ。」
南は黙っていた。
黒川は彼をみつめた。
涙も出ていない。
もうショックを通り越しているんだろう。
「まあ、これは妻が死んだ時にいった坊さんの受け売りだがな。」
黒川は苦笑いをした。
なんかへんなこといったかな。
頭をポリポリとかいた。
「そうですね、警視総監。その通りだと思います。」
南の反応に黒川は驚いた。
彼をみつめると、南はその首に赤い首飾りをしていた。
黒川はそれに見覚えがあった。
「お前、それは…。」
「彼女の残したものですよ。」
南にもわかっていた。
黒川の言っていることは恐らく正しいだろう。
自分の中に本当に彼女は生きている。
赤いキングストーンはドクドクと反応していた。
彼女は死んだわけではない、自分と一つになりそれは今でも生きている。
「彼女は僕の中で生きている、彼女はずっと僕をみつめている。彼女に恥じない生き方をしていきます。それが残された僕の生きる道です。違いますか?」
黒川はうなづいた。
ようやく大人になったようだな、こいつも。
「そうだ、お前の言う通りだ。」
南は警視総監公務室を去った。
「あれが仮面ライダーか‥」
「パっと観普通の人間なのにな…」
「怪人なのかよ。」
「何も言わない方がいいよ、殺されるよ。」
周囲の恐れる目が南に焼き付いた。
これが俺が、葵が死をかけて守った世界なのか。
結局、俺は差別される身。
それは変わらない。
結局は、人とゴルゴムの和平と共存の道を探し、人間に忠誠をささげたところで待つのは…こんなものなのか。
南の中で自分のやっていることへの不信感が湧いたそんな時だった。
社会見学中の小学生だろうか。
数人の子供がよってきた。
その中には、人と違うモノの臭いがした。
「あ、仮面ライダーだ。」
「え!?ホント!?」
「マジだ。」
「すげえ!」
子供は無邪気によってきた。
その中に臭いが違う子供が寄ってきた。
「あ、あの…。」
南は立ち止まり、首を傾げた。
「お、俺の父ちゃん…言ってたんです。あなたはゴルゴムの鑑だって。犯罪者ばかりじゃない、平和に生きているゴルゴムもいるけど理解されないって。だけどあなたのような存在がいるからゴルゴムも理解されるって。」
南は微笑みと、少し涙が漏れた。
同じ怪人の同胞から感謝されているのか。
そして、照れ臭そうに頭をかくと子供の背中を優しく撫でた。
「ありがとう…。」
「俺は将来警官になりたいんです、人間じゃないけど…なれますかね。」
「その内多くなるだろうね。きっと。だから、君もがんばるんだ。何があっても絶対にその夢を大事にしろ。」
警官のゴルゴムか。
増えればいいな。
そうなると、社会は変わっていくだろう。
変化は徐々にくればいい、そうすればきっと見る目が変わる人が多くなるはずだ。
少年は仲間に声をかけられた。
それに応じると、一礼をして去っていった。
南は少し感動を覚えた。
怪人と人間が共存し、わかりあい寄りあう。
そこで社会が形成される。
ゴルゴム神官も、シャドームーンも、恐れられる現状をなんとかしたかったのだろう。
世紀王を産み、社会を盤石なものに変え世界を支配しようとした。
だが、力による支配は、それ以上の力で押さえつけられる。
それは無意味なものだ。
南は少しプライドが戻ってきたような気がした。
彼は外に出ると、バトルホッパーに乗り込んだ。
相変わらず外では、反ゴルゴムとそれに対するカウンターがデモを行っている。
彼らの双方は無関係な市民からは白い眼でみられている。
どちらにしろ、同じことをいってるのだから。
街を抜け、高速道路に出る。
風と音だけが彼を包む。
この瞬間が大好きだった。
そして、バトルホッパーをふかしながらどことなく走っていった。
風が南を優しく包み込んだ。
ふと背中に暖かいものを感じ止まった。
これは人の温かみ。
「葵?」
彼は振り向いた。
そこには誰もいない。
だが、彼にはわかっていた。
葵は生きている。
俺の心の中で。
バイクを走らせるときにきっとこっちにくるんだろう。
南は優しそうに微笑んだ。
その時だった。
パトカー数台が彼の逆方向を走っているのがみえた。
そして、同じ頃合いに先ほどの黒川から電話がかかってきた。
「南、ゴリラ型ゴルゴムの猿渡という男が暴れている。普通の警官隊ではかなわない。手伝ってくれ!!!!」
また始まった。
南は決意した。
例え、どうなろうと自分が必要とされるまで自分は仮面ライダーとして生き続ける。
葵はかつて「自分はゴルゴムの敵なのか、人類の味方なのか」と聞いた。
南は「どちらの味方でもない」といった。
「俺は誰の敵でもない、葵…。」
南は口に出し呟いた。
それが答えだ。
人類であれ、ゴルゴムであれ、悪を許さない。
この地上に住む無実の人々を守るため、世界に行きるすべての生命のために俺は戦う。
それが君が世紀王として選んだ資格なのだから。
この地球の全ての生命のために戦う。
それが仮面ライダーであるからだ。
南はバトルホッパーを走らせるとパトカーを追いかけ始めた。
今日も、夜は長そうだ。
fin
これでおしまいです
今まで読んできてくださりありがとうございました。