不老不死のチートを持って異世界転移した俺が無双したい話   作:あま蛙ひき蛙

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第2話

 森の中を10日間飲まず食わずで全力疾走、地面を踏みつける度に足が砕け血が躍る。これであの街からもおさらばだ。10年以上住んでいた街だ、寂しさも不安もたくさん出てくるがそれも久しぶりの自由とこれからの旅への期待感と比べればちっぽけな物。

 そう、俺はついに旅に出れたのだ。転移初日はだだっ広い草原に出ていきなりゴブリンに殴られスライムに溶かされ何とか脱出して街に着くも冷たい目を人々に向けられそしてペットとして毎日殺される。

 今では懐かしい思い出だ。殺されてばっかりだけど魔剣は手に入れられたし魔法の知識も知れた。それに今の俺は1人じゃない。勢いで殺したが俺は坊ちゃんのことが嫌いでは無かった。坊ちゃんは確かにクソガキで傲慢不遜だったが失敗しても諦めずに努力し、常に前を向いていた。街の人々の評判は少し悪かったがそれも理解して乗り越えようと頑張っていた。それを知るのはもう俺だけだ。

 人間は忘れられない限り死なない、そして俺も忘れない、坊ちゃんの死を通じて人間的に成長しよう、それが人間の強さなのだから……。

 

 そんな事を考えながら走っているが、うーむ弱い。確かに魔剣を手にする前の俺より劇的に強いが坊ちゃんほどの速さは出ていない、何がダメなのだろうか?基礎ステータスが足りないから強化も少ないとかそういうアレなのだろうか?だとしたら使えねーな。

 確かにこれぐらいの強さなら町のチンピラとかを一方的に倒せそうだが昔見た聖騎士とかAランクの冒険者とかは倒せそうに無い。それじゃまずい。

 俺の頭の中には脳みその代わりに丸い円形の宝石があるらしい。そこを中心に頭から再生しているのだという。そしてその強度は山すら切断する聖騎士ですら破壊できなかった。だが破壊できなくとも無力化する方法なら幾らでもある。

 全身を消し飛ばした後に土魔法で固めて再生できなくするとかマグマの中に沈めて再生してもすぐに溶かされる様にするとか、宇宙に追放して考えるのをやめたみたいなのも最悪だ。なので人に見つからない様に生きていこうと思っていたがこの世界の自然は厳しすぎる。街にひっそりと住もうとしても俺の事を薄汚れたカライカル人めと追い立ててくるしで詰んでいた。

 それで魔剣を手に入れたがまだ弱い。なので別の国……カライカルへ行こうと思ったのだ。

 この国の名前はリグジェイル。リグジェイル人は陽に当たらなくても光る髪に目の中に輝く輪っかがある人種だ。

 他にも身体能力が高いとか魔力が多いとかでほぼ普通の人の上位互換だ。情に厚いのが玉に瑕だが……。

 

 おっと、これは?

 馬車だ、馬車を推定盗賊が襲っている!すげえ!初めて見た! 

 崖の下を首を伸ばして見る。落ちそうだが落ちても俺なら大丈夫だ。それに斬首や圧死に比べて転落死はすぐに死ねるからまだ楽だ。坊ちゃんに投げられてよく死んでたがスカイダイビングみたいな物だと考えれば気も楽だった。ほぼボーナスタイムだな、今考えると。

 襲っているのは汚れた衣を身に纏い、下卑た笑いを浮かべるカライカル人、つまり俺みたいな光らない髪に普通の目を持っているリグジェイルの下位互換。親近感が湧くね。一方囲まれているのはリグジェイル人だ。

 不意打ちを受けて動揺している隙にかなりやられていたが馬車の中からイケメン登場、周りに風の刃を放ち盗賊たちが怯んだ隙に一気に体勢を立て直し形成逆転だ。

 見える、見えるぞ。

 今までは戦闘が速すぎて首をぐんぐん回していたが今ならイケメンが盗賊を汚物を見るかの様に睨みつけながら抜刀し、剣を上に掲げて風を放つのもバッチリ見えた。

 腕や脚を押さえつけながら呻いている仲間を見て他の盗賊が怖気付いている。あたりに散らばった手足や頭は虫の死骸の様だ。

 ほとんどの奴が戦意喪失している。数名イケメン君を睨みつけている根性ある奴らもいるが、馬車の護衛達は逆に戦意を高揚し陣形を立て直した。

 これは決まったな。

 もう逆転は起こらない、観る物も無くなったしさっさと進もうと思い最後にイケメンをちらりと見た。

 

 「あれは、神器か?」

 

 イケメン君が手に掲げている剣の周りには星屑の様な粒子が漂っていた。神器の特徴だ。

 魔力を注ぎ、認められたら持ち主に超常の力を与える最高峰のアイテム。それが神器だ。俺の持つ魔剣と違い魔力を必要とするが魔剣や呪いのアイテムと違い明確なデメリットが存在し無い。見るのは初めてだ。ふつくしい。

 ほぉ、と息を吐き見つめていると目があった。宝石の様な輪の中に宿る色彩は金、力強い意志を感じる、美しい瞳だった。

 

 「そこだ!!」

 

 風の魔法の特徴は速い事だ。特にこの風魔法、風刺は風魔法の中でもトップクラスの速さを誇る。今までの俺なら避けられなかったが今は違う。ドヤ顔を浮かべ右に避ける。足が滑って崖から落ちた。

 落ちるのはいい。だがこいつ避ける時に足を滑らして間抜けに落ちたのか……みたいに思われるのは嫌だ。

 ドヤ顔継続、そのままぐしゃり。土埃で見えない間に即座に再生。完璧だ。

 

 「やあ、どうも。なかなかの使い手の様ですね」

 

 クールに笑い敬語を使う。今の俺はまさに強キャラ、今まで相手にしていた盗賊とは格が違うという事を知らしめればならない。

 

 「先ほどまでの戦い、拝見していましたよ。神器に認められるとはかなりの魔法の使い手の様ですね」

 

 余裕を保ちながら相手を褒める。だがまだだ。ここまでだと追い詰められた時に敬語を崩して無様に叫んで死に、他の幹部達に所詮奴は我らの中でも最弱、あんな奴らにやられるとはチート持ちの面汚しと罵られる中ボスだ。ここからさらにコンボを繋げる!

 

 「ボス!助けてくれ!このままだと全滅する!」

 

 口を開こうとする前にイケメンを睨んでいた髭面の男が叫んだ。

 

 こいつ……!俺を巻き込む気だな……!

 クソ!やられた!だがまだだ、まだ巻き返せる!

 否定の言葉を吐き出そうとする前にイケメンが俺を指差し、言った。

 

 「貴様が持っているその剣、まさか魔剣グリム……!」

 

 クソ!バレてる!

 鞘が無いし背負えないしで俺は剣を片手に走っていた。水晶の様な刀身と金の装飾は特徴的で、更にはどこか禍々しい気配を孕んでいたこの剣は“あっこれ魔剣じゃね?”と誰もが思うだろう。

 

 「街が1つ魔剣グリムによって消えたと聞いたが、本当だったのか!」 

 

 消してねーよ尾ひれ話を信じるなよクソが。

 

 「そうさ!団長は魔剣で街の奴らを皆殺しにしてやったのさ!これでてめえらもお終いだぜ!」

 

 調子に乗るなよ髭面、こいつらを殺したら次はお前だからな?わかってんのか、この……

 

「団長!後は任せたぜ!俺たちは先に逃げるからな!」

 

 あっこら待て逃げるな

 

 「貴様、何が目的だ!呪われた魔剣を手に、何をするつもりだ!」

 

 イケメン君がすごい剣幕で怒鳴る。俺が盗賊とは無関係だと分かっても戦闘は避けられないだろう、こうなったらっ……

 

 「ヒヒヒャハハハハァ!目的ぃ?そんなのは一つですよおっ、俺達は暗黒処刑団!てめえらリグジェイル人を憎む者っ!てめえらの目を引き裂き遺体を燃やし、そしてカライカルを世界の覇者にするのだぁ!」

 

 「おっおおっ?そうだ!俺たちは暗黒処刑団!団長の下に集まったカライカルの精鋭よぉ!」

 

 髭面が基盤を固めてくる。そっちがその気なら俺もそうさせてもらうぞ……

 

「そしてぇっ!俺達にはこの国をひっくり返す秘策が有る!アイツらが逃げる先には伝説の魔獣ドライバンがいるのだ!封印を解けばこの国もテメェらもお終いだぁ!」

 

 クソっチンピラ三下中ボスムーブになってしまった!つーかテキトーに考えたから色々あやふやで信憑性が低いっ!いけるか?

 

 「何っ!そうだったのか!だがそんな事はさせん!ここは私に任せてお前達は手下どもを追え!」

 

 いけた。馬車の護衛を離れてイケメンぐんぐんの部下達が盗賊どもを追う。これでお前らも道連れだ。

 

 「ええっいやちょっと話が違うっ」

 

 何の話だよ。まあ俺の嘘が無くてもこうなっていたか。

 この世界の戦士の強さの幅は大きい、坊ちゃんに一方的に殺されていた護衛達も馬車を守っていた奴らやあの盗賊達も傷1つ無く殺せるだろう。そして今の俺は魔剣によって強化され坊ちゃんの護衛以上の身体能力を持っている、戦いになれば彼らは役に立たない。

 だから盗賊達を追わせる、さっきの風魔法で盗賊達の数は半分以下に減った。そして馬車の中の荷物は食料か何かだ。要人が居るのなら盗賊達とは逆方向に馬車と一緒に逃しただろう。

 逃げる盗賊を追う馬車の護衛、彼らを後めにイケメン君が問う。

 

 「貴様が盗賊だろうが何だろうが関係ない。貴様はこの私、アウテーラー・ゴードル・フライシュルが始末する」

 

 「やってみろよ、俺は不死身だ」

 

 バレてた。つーかお貴族様だったか、まあ負けは無いと思うが。

 

 降り注ぐ風の刃を真っ向に浴びながら接近、体を再生しながら驚愕を受けるアウテーラーに剣を振り下ろすも避けられた。不自然な動き、風の魔法で自分の体を押したのだろう。ククク、どんどん魔法を使え、最終的に勝つのは俺だ。 

 話は変わるがソシャゲーではパーティコストという物がある。チームに入れられる仲間にはコストという数字が有り、それがパーティコストを超えるとパーティに入れられなくなるのだ。

 魔力がパーティコスト、神器が仲間と考えると分かりやすい。神器に魔力を注ぎ、それが満タンになると神器は魔力を注いだ者に尽くす。そして使用者は神器の中に有る魔力は使えず残った魔力を使うしか無い。代わりに神器の中に有る魔力は使用者が神器を手放すか、または使用者が死なない限り無くならない。

 強い神器ほど魔力を使う。そしてあの剣の神器はかなり強力な者だと見た。決着はすぐにつくだろう。

 

 「幻術か?」

 

 アウテーラーが思わず溢した。 

 

 「何だと思う?アウテボーイ」

 

 「幻術ならば……纏めて吹き飛ばす!!!」

 

 アウテーラーが叫び、魔力を込める。それに共鳴したかの様に剣に光が纏わりつき、嵐が吹き荒れた。

 

 

 

 風によって辺りのものが全て消滅していた。岩も死体も馬車も全部風によって吹き飛ばされたのだろう。

 

 「すげえな神器、いや、お前もすごいのか」

 

 剣の効果はおそらく風の魔法を強化したり補助したりするものだろう。答えを知りたくなりアウテーラーに問いかけるも彼は既に事切れていた。

 吹き飛ばされた後に大魔法で疲労した彼の背後に忍び寄り、不意打ちをしようとしたが気づいていた様で心臓をざっくりと貫かれた。だが俺は不死身、心臓を失っても少しは動ける。お返しに彼の心臓を貫いたが即死した様だ。

 魔力によって体を強化すれば心臓を貫かれようが頭を失いようが少しは動ける。どうやら彼はさっきの魔法で魔力が尽きた様だ。

 心臓を貫いていた神器を抜き取り盗賊達の方へ走る。

 

 「だ、団長〜」

 

 違うと言ってやりたかったが俺も用があるので助けに行く

 こちらに気が付き手をブンブンと振る髭面、生きていたのか。

 

 「う、嘘だ。アウテーラー様が負けるわけ……」

 

 アウテーラーの部下達は目の前の光景を信じてない様だ、首でも持ってくればよかっただろうか。いやそれは嫌だなぁと思っていた時に彼らがこちらに向かって武器や魔法を使う。

 それらを全部避けたり撃ち落としたり被弾したりしながら殺して回る。彼らは全員逃げずに向かってきた、よほどイケメン君を慕っていたのだろう。本当は殺さずに故郷とかに帰してやりたいがそれも面倒なので斬り殺す。数分もかからずに彼らは全滅した。

 

 「集合!」

 

 聞きつけた生き残りの盗賊達が集まってくる。

 

 「リーダーは誰だ!」

 

 「お、俺です」

 

 前にいた髭面が返事を返した。

 

 「これからは俺がリーダーだ。俺の目的はカライカルに入国する事、その為に道を知りたい!お前ら誰か道は分かるか!?」

 

 「はい!俺は知ってるぜ!」

  

 髭面だけが元気よく応えた、運がいい奴め……。まあいい

 

 「これから俺は国境を抜ける!この国はカライカルと戦争をしていた!国境付近には兵も居るだろう!着いてくるやつは着いてこい!」

  

 「全員行くに決まってるぜ、俺たちは戦争奴隷だからな!村を抜け出して盗賊で食ってたんだ!こんな国とっとと出て行きたかったんだ!もちろんあんたに着いてくさ!」

 

 「では出発!」

 

 こうして俺は8人の部下を連れて髭面……ジョンジの案内に沿って国境を目指していった。

 旅の途中は様々なトラブルがあった。戦いの傷で死んだ奴や俺を殺そうとしたので粛清した奴にモンスターにやられて死んだ奴……そして国境が見えてきた時には部下の数は3人になっていた。

 

 「来たっ来たっここまで来れた!」

 

 髭がさらに濃くなったジョンジが興奮した。

 

 「ここを越えれば、母さんの故郷に……」

 

 一番若いステュルルが眩しげに目を細めながら景色を眺める。

 

 「暮らしが楽になるかなぁ」

 

 影が薄いトーマスがボソリと呟く。

 

 だがまだ1番の難関が目の前にそびえ立っている、気を抜くのはまだ早い。発破をかける様に残った精鋭に向かって叫ぶ。

 

 「目の前にある壁は俺たちより遥かに大きい!だが俺たちなら超えられる!俺を信じろ!自分を信じろ!仲間を信じろ!絶対に乗り越えてやると闘志を絞り出せ!」

 

 「そしてこれは忘れるな!生きている限り俺たちは負けない!俺たちが諦めない限り!戦いは終わらない!そう……」

 

 「俺たちの戦いはこれからだ!!!」

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