不老不死のチートを持って異世界転移した俺が無双したい話   作:あま蛙ひき蛙

6 / 8
第6話

 ウォリオが両手に持った剣を一本地面に刺し、空いた右腕を振りかぶった瞬間に飛んできた剣群を叩き落とす。

 その頃には目の前のウォリオは消え、疑問を浮かべた俺は焼かれたのだろう、全身に感じる痛みに対する悲鳴も吐き出せずにいた。

 地面に倒れてミミズみたいに暴れる、なんとか火を打ち消せた。

 次の攻撃に備えようと立ち上がり周りを見渡すと、こちらを観察するウォリオを見つけた。

 

「全身を消し炭にしても再生するなんてねぇ、一体どんなスキルなんだい?見当つかないなぁ」 

 

 こいつ、正攻法で俺を殺しにきたのか。てっきり頭の中の核だけになったところを土魔法かなんかで固めて再生できなくしてくると思っていたが……これなら楽勝だな。

 まあ俺も馬鹿じゃない。例えば俺と同じ様に神様からチート貰ってる奴とか破壊に特化したスキルや魔法、それに惑星破壊できるぐらいの攻撃にも耐えられるか分からない。

 鉄で固めて海に落としたり宇宙に吹っ飛ばされたら死んでる様な物だ。

 

 だがこいつは全身を消し飛ばしたり首と心臓を同時に攻撃すれば俺を殺せると思っている。チートスキル持ちを見た事ないんだろう、俺も自分以外知らないけど。

 つまり常識で俺を測っている、これなら行けると高を括っているんだ。それが致命的な致命傷だとすぐに教えてやるよ。

 

 気を良くして剣を振り、目の前に突っ立っているウォリオに向かって襲い掛かる。

 上から剣を振り落とすも避けられた、それならばと横に一閃。危なげなく後方に跳んで避けたウォリオがチッと舌打ちを鳴らした。

 

「なんだそれ?まるで児戯だ……君は剣を習ったことがあるのかぁ!?」

 

 なに怒ってんだよ、迷惑かけたか?笑えばいいのに最後ぐらい。

 怒りの意味が分からず困惑している俺に、気を悪くしたのかさらに怒りを大きくするウォリオ。左手に持つ赤い剣が共鳴したのか火を噴いた。

 

「つまり、お前はっ、相応しくないんだよ!その剣に!」

 

 言葉を紡ぐというよりは自分の中に浮かんだことを整理している感じだ。そして途切れ途切れに口に出した。

 

「俺がっ……俺の方が、剣を……自分を献げてっ成れなくて……これがあれば、俺はっ!俺は!?……剣、剣なら。でも?」

 

 息を荒げ、感情をない混ぜにされて放り出された情緒ぐちゃぐちゃのウォリオが、吸い尽くされたかの如く無表情になる。

 そして笑った。

 くだらない笑い話が心に刺さった様な大笑い。目に涙を浮かべて心底幸せだと分かるくらいゲラゲラと笑う。

 

 ?

 なんなのこの人?怒ったと思ったら無になるしすぐ急に爆笑するしで怖い。

 通学中に一度だけ見た事がある、信号待ちの時にノリノリでダンスする人を彷彿とさせる怖さなんだけど……。

 いや最後くらい笑えって言ったけどさぁ……それはレント様に歯向かったことを心底後悔するかの様に狂い笑う哀れな男ぐらいが限度なんだよ、こんな理解不能な笑いじゃないんだよ。

 

 よし殺そう、無防備な時に殺さないって馬鹿だろって画面の前でいつも思ってたからな、これでやらなきゃ大馬鹿だ。

 距離を詰めて両手で剣を握り切りつける、だがこれは盾に防がれた。剣と一体化している形の盾が砕かれ散らばる。この残骸はさっきまで影も形も無かっのに。仕切り直しのために後退したウォリオが大きく凹んだ籠手を見て苦笑する。さっきまで持っていた炎の剣は持っていない、盾剣と入れ替えたのだろう。

 

 ここまで来れば大体分かる、ウォリオにはスキル……魔法では再現できない異能を持っている。能力は剣限定のアイテムボックスか?ブラフの可能性もあるが今のままでは分からない、攻撃を続けよう。

 

 考えている間もウォリオは動かない。そのまま叩き切ってやろうと一歩踏み出しかけた時、唐突に喋った。

 

「この剣はAランクモンスター、ブレードザウルスの魔石を使っているんだよ。Aランクでは弱い方だけど、体に生えてる剣の様な棘は格上の魔物にすら傷をつける。だからこの剣も鋭くて頑丈でよぉ……ルールロックの殻を貫いたこともあったんだぁ」

 

 白一色の剣を見せ解説するウォリオ、今度は前動作も無く姿を見せた赤い剣を掲げて言う。

 

「こっちは白火山の溶岩を固めて作った剣でさぁ、火精霊の魔石を入れて魔力を注げばBランクの奴らも燃やせるんだぜぇ」

 

 ……遺言?墓石代わりにして欲しいってこと?表面上は穏やかだけど命乞いとかちゃんと考えてる?聞かないけど最後まで諦めちゃ駄目よ。最期まで一生懸命生き抜いてやるって奴を殺さないと殺した気にならないんだよなぁ。その点ゴブリンは合格だけどあれ半分野生動物だからなぁ……?何かおかしい。

 俺ってこんな蛮族的思考だったけ?もしかして魔剣のデメリットとか?困るわぁ……

 ウォリオの解説を聞き流しながら疑問に耽る。危険視されて地下深く埋められたら嫌だなぁとか体が勝手に動く感覚ってどんなんだろと考えているうちに解説は終わった様だ。

 

 デザインが同じの緑色の双剣をブレードザウルスの剣と溶岩の剣に入れ替えたウォリオが説明を全く聞いていないことに気づいたらしい。呆れ笑いを浮かべ2刀を構えた

 

「やっと気づいたけどさぁ……俺、剣が好きなんだ。剣をかっこ良く魅せたくて、強くなろうとして……パルロイや君が羨ましかったんだな」

 

 自分に酔ってるのだろう、うっとりとしている。怒ったと思えば急に笑って、求めてないのに説明もしてくる。悪質な酔っ払いだ。

 

「中途半端だよなぁ。スキルを剣に極めて、変わったつもりだったけど、変わってなかった」

 

 だろうな。さっき見たけどなんだよ盾って。剣に極めたとか言ってるけど普通に剣以外も使ってくるじゃん。

 

「悪いなぁ。その剣、俺だったら使いこなせるって思ってたんだよ……でも鞘に入れられなかった。俺が使っても暴走するだけだな」

 

 鞘、スキルの名前か?あっと、まだ何か言うようだ。

 

「自分の血を流せば呪いで暴走もしなくなるが、使えば使うほど流す血を増やさないといけないらしいねえ。だから君たちは相性抜群ってところだなぁ」

 

 また急に説明してくる、ありがたいけどね。というか血を流せば大丈夫なのか、俺と相性いいなやっぱり。運命感じちゃうわ。

 

 そろそろ良いだろう。リュックは焼かれて今日の報酬はパーだ、さっき買ったコンパスも原型を失っている、迷子は確実だ。トレントもまた探す羽目になった、ささっと終わらせよう。

 

 ぶん投げてきた溶岩剣を避けたと同時に剣が俺を狙わずに飛んでいった。危険を感じ前に走る。背後から感じた熱にさすがは俺だと自賛しつつ突きを放つ。

 頬を掠めたが薄皮一枚、ほぼ完璧に避けたウォリオが同じように剣で貫いてくる。

 痛みを我慢しながら腕を掴み頭突きをする、対して効いた様子もない。

 ウォリオが掴まれた手を剣で切ろうとするが切られた側から再生させる、まるで水でも切っている様な気になるだろう。

 その隙に肩へ攻撃する。鎧諸共貫通し、肉にたどり着いた感触がした。

 

 苦悶の声を上げるウォリオが暴れ、無理やり脱出した。追撃するべく剣を逆手に持ち顔に振りかざす。

 植物の様な剣を取り出したウォリオがそれを振った瞬間弾幕の如く棘が襲ってかかる。

 避けずに突進、だが痛みで怯んだ一瞬の隙に横に逃げられた様だ、木だけを粉砕した結果になる。

 

 どこだっっ後ろか!闇雲に勢いよく剣を振り鉄を砕いた音が聞こえるって当たった!?

 見るも姿は無い、囮か?それとも偶然飛ばしたのに当たっただけ?

 血反吐を吐き出しながら探すと堂々と目の前に立っていた。というか苦しい、痛い。血の原因はなんだ、毒か?

 

「さっきは紹介していなかったけど、これはオオクロムラサキの鱗から作った剣でぇ、剣の形してるけど使い物にはならない。けど出してるだけで毒を流してくれるんだぜぇ」

 

 そう言ってる割には苦しんでる様子はない。抗体か薬でも飲んでるんだろうか。死にはしないが苦しい、くそっなんでもありだな。

 蛇腹剣を避けずに進み首から透明の剣を引き抜いた。まだ在庫はあるようだが所詮は一発芸、俺には効かないが説明をちゃんと聞いてたらよかった。

 30本は壊した気がする、名前の通りなら後70本ぐらいだがそんなシステム的な数字では無い筈、常識で考えるなら重さか大きさが関係してるだろう。まあ時間は俺の味方だ、傷から流れる血も短期間では塞がらない。どうするつもりだ?

 

 ウォリオが一本の剣を取り出した。鍔もないシンプルなそれを大量に取り出し浮かべ合体させ、巨大な剣にして空に留め、片腕を指揮者の様に振り下ろす。目一杯に広がる白銀にどう対処すれば良いか分からず勢い任せに剣を叩きつけた。

 

「くそがぁああああああ!!」

 

 毒と衝撃の痛みに絶叫して誤魔化す、大きさと速さはあったが耐久に難があったのか呆気なく見えなくなっていった。

 目を大きく見開いているウォリオには恐怖がなく、ただクリスマスプレゼントを見つけた子供の様に破顔一笑しているのが刹那の中でもはっきり認識できた、腹立つ。

 

 勝った!死ねぇ!

 痛みで怒りが込み上がる、1人だけ楽しんでいる姿にもだ。それを剣に込め額に振り落とすも止められた、真剣白刃取りだと!?

 

 だがもう剣は取り出せない、両手は今空いてない。このまま体力勝負に持ち込んでも良いが力を込め続けるのも面倒だ、首を絞めて殺してやろう。

 鎧の隙間に空いた手を無理矢理入れるも首が太くて絞めきれない、だったら抉ろう。

 喉仏らしき物を掴んで抉った、生暖かい肉は確実にダメージを与えたと実感できる。そして体力も尽きたのだろう剣を掴んでいる力が弱くなる、そのまま額のど真ん中、脳味噌を確実に貫いた。

 

 体の強化に使った魔力は本人が死んでも少しの間残る。魔力は使い手の願いや想いを実現する力、その願いや想いが強ければ死んだ後も叶えようとするだろう、こんな風に。

 よほど死にたくなかったのか白刃取り中の手の力が勢いを盛り返し離れない。まあ時間が経ったらそのうち止まる、セミファイナルみたいな物だ。

 剣を生やした亡人ウォリオを見守る。ここからどうするのだろう、まさかずっと抑え続けるのか?意味ないのに。まるで首無しで走り回る鶏だ。

 

 だが予想は斜め上を行く。

 自ら剣を更に押し込んで頭が完全に両断した、首の半ばまで裂けている。固定したのが分かったのか両手を離し自分の頭を殴りつけた。

 肉と骨と脳が混ざり合ったトリコロールのネギトロめいたそれを剣に塗りたくる。揺れた剣がポトリと落ちた。追いかけるウォリオが這いつくばり触れなかった先端方向にも塗る。冒涜的な仕上がりに満足したのかそのまま動かなくなった。

 後には首無し死体と肉の剣が残る。戦闘の余波で周りには何も無い。堂々と居座るそれが森の主の様にも見えた。

 

 

……なんなのこの人?

 

 疑問と絶句はトレントを狩った時、迷子になった時、なんとか町にたどり着いた時、Dランクになった時には赤い葉っぱを眺めながら、予想より多く貰えた報酬で興味本位に買った果実水の前に溶けていった。

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。