不老不死のチートを持って異世界転移した俺が無双したい話   作:あま蛙ひき蛙

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第7話

 ギルドの木椅子に座って果実水をちびちび飲んで人を待つ、待っているのはバアスさんだ。

 壁に立てかけている純白の剣を眺める。幾らぐらいになるんだろうか?まあ見た目高級そうだしラストダンジョン行く時のメイン武器に3歩ぐらい劣る雰囲気も感じる、Bランクの冒険者が使っていたし二刀流で戦ってみた時もかなり使えた、飽きたしこれで恩を返そう。

 

 注文したモウシとやらの串焼きを食べる。硬い、久しぶりに物を噛んだからなのかそれとも地球人では歯が立たないのか知らないが第一印象はそれだった。

 だが悪くない、生を実感できる、自分が捕食者だと納得できる硬さだ。奥歯でゴリゴリ噛み潰すと血と塩味、そしてそれを塗り変える肉本来の味が、この肉は野に生まれ閃光のようにまぶしく燃えて生き抜いてきた事を叩き込んで教えてくれた。

 うん、美味しいですこれ……いや本当に美味しいのか?いやでも……一口で満足する味だけど異世界っぽい?

 周りの人達もガシガシ食ってるしよく飽きないな。

 

 寂しくなった鉄串を返却して次は酒を頼んだ。今は腹八分目くらいで重そうな肉串を食べても一瞬満足するだけだった、酒はどうなるんだろう。飲んだ事ないから楽しみだ。

 

「自分はテランタ焼きで。バアスさんも何か頼みますか?」

「じゃあ酒で、貴方は?」

「ありがとう、私は食物を摂取しなくても大丈夫だから気にしないでくれ」

 

 俺の隣に座った機械頭が手を振って断りこっちを見た。ホビーアニメの主役機さながらの飾りや造形が洒落ている工場服とやけに合っている。サウンドエフェクト、SEと共に目を光らせ開口一番に発した。

 

「我々は世界の意志、ファンタジーな世界観を壊して申し訳ないが言いたいことがあってね、来たんだ」

「あ〜、はい、どうも。俺は三波鳴蓮都って言います、こんにちは」

 

 自己紹介を聞いた世界の意志の2名さまがそれぞれキュピーンと目を光らせたり腕の火を黄色く染めたりした。

 

「ああ、忘れてた、すまない。私の名前はヘッド、こんにちは。向こうの彼は……」

「自分はハンドって言います、よろしくお願いします」

「「「よろしくお願いします」」」

 

 俺とバアスさんとレッグも揃って挨拶した。席はまだ余っているがレッグに座るつもりは無いらしい、所在なげに立っている。

 

「言いたいことって何ですか?」

 

 世界の意志が何なのかは知らないが見るからに只者では無い、大人しく話を聞こう。

 

「私達は世界の危険に対してやって来る。とは言ってもこの世界に魔王が復活するとか巨大隕石が降って来るとかじゃ無いんだ……世界が行き詰まる時、漫画や小説で例えるとネタがない時だね」

 

ヘッドが申し訳なさそうにして言った。向こうの席のハンドは手から生やした針でピンク色の果肉を突いている、最初は勢い良かったがすぐに止まり、モソモソと謎の料理を食べている。

 バアスさんは酒を飲みながらそれを手伝っていた、直接手で掴み酒で流しているようだ。

 突っ立っているレッグが頭を抱えている、いつもの事だ。無難な性格をしてるけどすぐに落ち込むのが彼の悪い癖、まあそれ程気にする物じゃない。

 

「我々はやはり生まれるべきではなかった、これではくぅ疲コピペを笑えんぞっ……このまま続いてしまったら間違いなく黒歴史になる!わかっているのか!?」

 

 物凄く焦っている、汗でピエロのメイクが酷いことになっているな。こんな状態になるのは初めて見た、彼とは初対面だが。 

 バアスさんと協力して料理を片付けたハンドが同調している。頷きながら提案した。  

 

「もういいんじゃない?最初は楽に考えてたけどさぁ……めっちゃくちゃ厳しいじゃん。計画も立てて無いしここまで来たんだからいい方ですよ。それに最初は途中で終わっても良いように打ち切り風に締めてたじゃないですかぁ」

「いや……それは……」

 

 レッグがさらに動揺した。してはいけないと思いながらも心は屈服している、あっ……座った。

 折り紙で出来たバネ足を体に巻き付けて体育座りしたレッグが目を瞑りながらコロコロ転がっている、小学生の頃におもちゃにしていたダンゴムシを今さら思い出した。

 だが今のレッグは虫以下だ、生きる気力が微塵も無い。ダンゴムシだって体が半分になっても這う這うの体で歩いて行ったぞ。

 

「私は……小説が完結するのが嫌いだった」

 

 目の光を消したヘッドが突然ポツンと呟いた。

 

「番外編や、続編が出たりする分にはまだ良いが、完結したら急に寂しくなる。自分でも我儘だと思うが、物語が終わったらみんなが死んだ……というのは酷いな、ダメな表現だ。つまり、思い出の中で消え褪せていく……上手く言い表せないが、嫌だった。永遠に続いて行ってほしいと思っている」

 

 今度は赤く光った、残響するSEも重厚感たっぷりだ。

 

「そして途中で止まるのはもっと嫌だ。寂しさと悲しみがずっと残る、墓参りしているみたいだ、生き返る可能性がある分余計に悪質だな。そして理不尽にも怒りが起こる、そんな権利無いのにね」

「……それで?」

 

 みんな黙っているので仕方なく返事をした、バアスさんはおかわりを頼んでいるしハンドも火で出来た両手を青く燃やしている。床のダンゴムシも目は開けたがまだ立ち上がらない。周りの人達がゲラゲラ笑ってもまるで気にしてはいない、丸まったから防御力も上がったのだろうか?

 

「自分だったら絶対に最後までやり切る、毎日必ず投稿すると意気込んでいたが……まるでダメだった。何時間も書いて少ししか出来なかった、心が折れそうだった」

「それで我々が登場したのか、思春期の子供が考えたようなふざけた住人が……!」

「何事も挑戦だ、それに初めてだからこそ出来る事もある。失敗しても次に活かせば良い」

 

 何の前動作もなくサッと立ち上がったレッグが机を勢いよく叩きつけた、総統閣下の様にブルブルと震えながら怒りやら恥やらを表現している。

 

「最初は良かった、悩みながら添削するのは。だがすぐに苦痛になった……克己心や逆張りで何とか凌いでも続かない。上達しているのかも分からないし何が面白いのかも分からない。あとタイミングも失った、冒頭なに言えば良いんだよ……いきなり喋って何こいつって思われないのか?」

 

 知るかよ、喋るのも黙るのも自由だろ。面倒くせえなこいつ。

 

「そもそも失敗は消えない!一生残るっ、我々はそういう人種だ!それはお前もそうだろう!?」

「止まるよりはマシだ。未完の良作より完結した駄作の方が良いとは思わないが……出来るならちゃんと終わりたい。今までなぜ完結させないのかと思っていたからな。自分がしないのはカッコ悪い」

 

 バアスさんもモウシの串焼きを頼んだ様だ、真似してハンドも頼んでいる。さっきの謎料理食べれば良かったな、味が気になる。だが残すのは嫌だ、お酒の方にするか?

 

「カッコ悪い?だったら我々はなんだ?迷走の、人形遊び……耐えられない、異世界の物語なのに急に異物が出しゃばってどう思う!?ジャンルが違いすぎる!ハンドが言ったように出さない方が良い!大体なんだこの名前はっ!世界の意志?寒いんだよ!斬新な設定だかなんだか知らないが王道によれ!素人がやって良い事じゃ無い!」

「良いじゃないか、駄作を作る勇気は名言だ。寒くてもつまらなくてもとりあえずは完結させよう、出来なければ一生心に残る」

 

 ハンドは串焼きに苦戦してる、まあゴムより硬そうだからな。俺も魔剣で強化して無かったら食えなかったと思う。

 

「ああそうか、馬鹿馬鹿しい。どうせ無理なんだ、これは。一生後悔してるんだな陶酔野郎」

 

 話が終わったらしい、レッグが出て行った。それを見送ってからヘッドがこっちの方を見た。目が合う、人と正面から向き合っている気まずさは一欠片も無い。

 

「待たせて悪かった、彼も中途半端に終わらせたくないが……親しい人には態度が悪いんだ、天邪鬼になったんだろう」

 

 そうか?レッグとは親友だがそういう所は見た事ない……まあ友情の片思いも有るには有る、気にしないでおこう。

 

「もう一つ言いたいことがあってね、バックからなんだがもう少し熱くなれと……あと引き摺って欲しいようだ、人も殺しすぎだし、仲間の死をもっと悲しめと。全然魅力がない、なんでこんな奴を……と言っていたよ」

 

 散々な言われようだ。というか仲間?……トーマス達のことか?暗黒何ちゃら団の。あれは無理だろ、防ぎようが無い。というか何故バレたんだ?今でもさっぱり分からない。

 

「まあ前向きに検討しますよ、他には何か?」

「頑張れ。世界の危機やピンチな時には出来るだけ助けたいがご都合主義みたいでモヤるからな、出来るだけ自力で何とかして欲しい」

 

 何だそれ、神様気取りか?まあ確かに神様からチート貰って生き返ったけどこの人達も神様関連なの?色々と不思議な人達だ。

 

「全体の構想が無いからな、王にのし上がるかもしれないし英雄として活躍する事も続けられたら出来るかも知れない。まあその前に大変な事が沢山有るが、そもそも続けられるかも怪しい」

 

 また訳の分からない話をしている、付き合うのも面倒だが……。

 

「これで会うのが最後かも知れないって事ですか?だったら最後はこうなってますよ。空前絶後の超天才レント様が問題を全て解決して皆が涙を流しながら連載終了ってね」

 

 ハッピーエンド、めでたしめでたしはいつまでもだ。未来なんて誰にも分からないからどんな空想をしたって良い。まあ俺なら万事順調に出来ると良いなあ。

 

 残ったバアスさんが食べ終わった、やっと今日の目的を果たせる。

 

「これ幾らぐらいになりますか?」

 

 ほったらかしにしていた剣を見せる、刃の真ん中を掴んで握る部分を渡した。ハサミのマナーだ。

 

「これウォリオさんの?て事は……まあ正当防衛になるか、うん。これなら…金貨3000枚だな」

「あげます」

「え?」

「俺使わないんで、売るのもめんどくさいしとっとと王都に行きたいんですよ。金もそんなに使わないし」

 

 慌てて返そうとする先輩から逃げてギルドから出た、荷物も準備し終わったし早速行こう。

 走りながら王都の道とは違う門に向かう、これならバレないだろ。

 赤いギルド章を見せて町の外へ、壁沿いにぐるりと移動して道なき道を進む。

 バアス先輩も大変だろう、金の問題は大きくて複雑だ。悪かったかな?まあもう町には戻らないしあの人なら何とかなるだろう。

 世界の意志とかいう変な人達にも絡まれたが友好的だったしな、まあ良い日になった。

 

 それなりに進んで道に向かった。この距離なら大丈夫、ゆっくり進んで行こう。

 流れていく雲を見上げながら王都へ向かう、空気が美味しい。

 首を下げて正面を向くと美人さんがいた、背中から多種類な翼を生やしている、あんなにデカくて大きいと私生活が大変そうだ。

 

「うぇ?」

 

 見惚れていると肩を掴まれた、片手を離して頬を引っ張られる、何なの?

 と思ったら離してくれた、デコピンを残して……。

 

 結構痛い、前よりは丈夫になった筈なのに痛い……まあこれぐらいならご褒美だな。

 やっぱり今日は良い日だ、借りは返せたしDランクに成れた。それに美人さんと親交を深められたからな。

 この調子なら本当にできるかも知れない、涙の連載終了が。何の連載かは知らないがあれだな、名付けるなら……

 不老不死のチートを持って異世界転移した俺が無双したい話?

 あれだな、気取ったタイトルを付けるのが恥ずかしいからチョイ流行りに乗っかって本当にこれで良いのかって後悔する感じのタイトルだな。やっぱいっときの感情に流されるのは良く無い、次があったらもうちょい捻った名前を付けよう。

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