不老不死のチートを持って異世界転移した俺が無双したい話   作:あま蛙ひき蛙

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第8話

「ニカルフィはすごく好きだ。一目見ただけでこれまでとは違うと分かるデザインは海賊とは方向性が違う畏怖を印象付ける、それでいてルフィの奔放な所が強調されてよりルフィらしいというか……」

 

 なぜか着いてくる機械頭が一人でペチャクチャ喋っている。テレパシーか何かで誰かと喋ってるんだろう。というかニカって何だ?ニカルフィ、ルフィの新形態か?聞いてみても「ひ、み、つ」とうざったく返される、異世界に住んでるのに何故ワンピースの展開に悩まなければいけないのか。

 

 ヘッドの頭を見た、森の中には似つかわしくない、ビームが煌めく戦場でサンライズ立ちしてそうな顔だ。分解したらスマホとか無いかな、異世界パワーで電源無限のどこでも使えるすごいスマホ。無駄な情報を無駄に集めて人生を無駄にするあの時間が恋しい。

 

 後ろの2人はどう思っているのか、振り返ったら黙々と歩いている金髪の方と目が合った。

 特に何も話す事は無い、数十秒後に視線を前に戻してまた無駄話を聞き流しながら歩く、後ろを向きながら進むのは危険だからな、この謎の敗北感も大人故の仕方無いものだ。

 

 王都に向かう途中で知り合った2人……見た目は俺よりすこし下のアギンとそれより一回り小さいメアリア。

 進む途中で出会い一緒に旅をしている。夜が近くなる度に寝たり旅の途中で休んだりして時間が掛かるが1人でヘッドの戯言を受け止めるのはキツい、誰か道連れが欲しかった。今では3人仲良し旅、アギンは冒険者になりたいらしく色々と教えている。バアス先輩に習った事をそのまま教えて少しは仲良くなったと思うが今は皆無言、でかい声で独り言を話すこのロボットポンコッツのせいだ。

 

 アギンは冒険者志望の為かめちゃくちゃ強い、鉄の剣を軽々と振り回してモンスターを一刀両断する姿はBランク、下手したらAランクになれるかもしれないとすら思える。まだ若いのに何故ここまで強いのか、草食系男子みたいな感じなのに実は戦闘狂だったりするのだろうか、最近の若者の人間離れがすごい。

 

 そしてメアリア、この子はよく分からない。アギンの兄弟なのだろうか?それとも幼馴染?にしてはアギンのメアリアに対する態度はいささか冷たい、関係が謎だ。

 

 まあそれを聞くつもりは無い、2人とも俺とこの似非ロボットの関係を問いただして来ないしな、どう考えてもおかしいのはこっちの方だ。それを無視してこっちが逆に聞くのはカッコ悪い気がする。

 

 歩いていると隣へアギンがやって来た、金色の髪から覗かせる群青色の眼にハッとする。もしかしたらこの妙なカリスマに逆張って色々と教えていたのかも知れないと唐突に思ったが消した。子供に対抗するって想像以上に恥ずかしいな、俺は優しいから知識を分け与える事に喜びを感じる人間だと思っとこう。

 

「あともう少しで王都に着きますね、レントさんには択山教わりました。今はまだ若輩の身ですがいつかこの恩は返します。それに困った事が有ったら教えて下さい、何が出来るかは分かりませんが……1人よりは2人や3人の方が良いとは思います」

「いやいや、気にしなくて良いよそんな事。冒険者は助け合いさ、そっちも困った事が有ったら相談しろよ、俺も困ったらノリノリで相談するぜ」

 

 そんな事は勿論しない。日本人だからな、こういう当たり障りのない会話をしないといけない気になる。まあ王都は広い、一度別れてまた会うなんてのはそうそうないしもし再開してもその時には他の冒険者やらと親密になっているだろう、アギンは才能があるっぽいしな、坊ちゃんとどっこいどっこいくらいか?あの人も親やら部下やらに猛絶賛されてたしなぁ。うん、今考えてもあの年であの強さはヤバかった、結構簡単に殺せたけど序盤の意外な強キャラみたいなものか。

 

 雑談しながら森を歩く。王都の情報や美味しい食べ物に魔物の話や面白いスキル、電子音に負けじと声を出すので会話も一々めんどくさい、だから時々気まずくなるんだよなぁ、汚い語録や意味不明なネットのネタを耳に流しながらの進行は地味にキツい、というか俺が死んだ後に生まれた日本のネットミームだとは思うが「ちよ」って何だよ、いきなり叫ぶからビックリしたわ、内臓撒き散らして走る二足豚を見た後だしさぁ、気持ち悪って言いかけた時に後ろから耳が痛くなるくらいのデカさで叩き込まれて心臓がキュっとなったわ。

 

 景色を見ながら歩んでいくと伐採された木々が見えた、真ん中辺りですっぱり切られている物もあれば削られて年輪がひしゃげているのもある。そして丸木は回収されずに辺り一面に散らばっていた。戦いがあったのだとは簡単に推測できる、数が多いから分かりにくいがよく見ればどれも一直線にやられている、中には半ばから切られたり半円形に削れている木もあった。

 死体は無い、此処では決着が付かなかったか別の所で未だに戦っているかそれとも隠れているかだが……

 

 何かが近づいて来る、この音は……プロペラ音か?段々と大きくなって来るっというかすぐに来た!

 

「レントさん!」

 

 かろうじて聞き取れたそれを置き去りに身体中をぶつけられて連れて行かれる、剣を盾にしたのは失敗だった。まともに受け止めたら体がちぎれると確信できるが俺なら平気だ、下手に反応したせいで迷子になるかも知れない。

 

 なんとか地に着いた、足が反対に曲がりながらバランスを崩す。やっと解放され立ち上がって襲撃者を見る、見た目は角に大嵐を纏ったヘラクレスオオカブトだ。

 日本では中々見られないエメラルドグリーンの装甲、カナブンを彷彿とさせるが間違いなくヘラクレス、下にある角や各所にある謎の棘がただの虫けらでは無いと雄弁に語っている。

 

「カイトツカブト、どりるむしバケモン たかさ 2.4m おもさ 360.0kg かぜをまとわせて かいてんするつのは ちょくごうきんでできた かべもかるがると かんつうできるぞ。」

 

 かいとつかぶと、回突兜か?たしかに風を回転させて突撃して来た、鉄もあの迫力ならぶっちぎるな。

 いきなり出てきたヘッドの説明を聞いて対峙する、あちらも俺の事を敵と認識したそうだ。更に風を大きく鋭くする、虫の癖に賢そうだった。

 だが所詮は虫、すぐに突っ込んで来た。さっきは咄嗟の事だったのでつい防御をしたが俺は肉を切らせて骨を断つ戦法の方が得意だ、こっちも馬鹿正直に正面から受けて立とう。

 

 タイミングよく剣を角を避けて頭に叩きつけられると思ったが長い角から吹く風に巻き込まれて顔面がぐしゃぐしゃになる、当たった感触はしたが浅かった、戦果はキラリと輝く目を一つ。

 眼の残骸から血とは到底思えない液体を流出させながら猛進する回突兜、地面ギリギリを攻める突撃は避けられそうに無い、それに横に避けられても何か策がありそうだ、風の神器を持っていたリグジェイル人が最後に使っていた魔法を思い出す。

 

 そんな事をぐずぐずと考えていたせいで普通に当たった、体が粉々になり空に散らばる奇妙な感覚に急かされて再生。傷一つない魔剣士レント様が帰ってきたぞ。

 そのまま剣を逆手に掴んでボーっとしているカブトムシの背に差し込む。賢く見えても所詮は虫けら、やったと勘違いして油断したらしい。中途半端に知能をつけた結果の浅慮を恨むがいい。

 

 いい具合に首の関節に当たったようだ、暫く暴れたがその結果傷が広がったようでポロリと首が落ちる。空で暴れている体もそのうち止まるだろう。

 

「回突カブトはこの森には生息していない種類の魔物だ、おそらくライバルの円刃クワガタと争っているうちにこの森までやって来たのだろう、相変わらず運が悪いな。もう少しあの町で地盤を固めた方がいいんじゃないか?」

 

 余計なお世話だクソロボットと口に出しかけながら振り返る、やはりそこには世界の意志とやらのヘッドがいた。何故か麦わら帽子を被っている。

 毎回これだ、何度も撒こうとしたが気を抜いた隙に近くに現れる。やってしまうか?だが実力は未知数、どうしたものか……

 

「まあほのぼの系とかどうすれば良いか分からないしこれぐらいがちょうど良いか?痛めつけられてもあまり気にならない性格だが……」

 

 相変わらず馬鹿みたいな事言ってるなぁこいつ、頭が沸いているのだろうか。それともバグった?昔のパソコンに虫が入り込む本来のバグみたいに頭の中を齧られてダメになったとか……

 

「まぁ頑張れ、私も頑張る。このぐちゃぐちゃで適当な馬鹿みたいなゴミ溜め話を最後まで、閃光のようにまぶしく燃えて書き抜きたいなぁ」

「何でダイ大?ポップの話は好きだけど急に出て来るのは何なの?」

 

 串焼きを食べた時の感想として絞り出したけどなんつーか連続で出て来るとワンパターンみたいで自分にムカついて来るわ、不朽の最高傑作を汚す者にはなりたく無い。

 

「アニメが最高のクオリティで出て来たからな、あの名シーンが期待以上に動いた感動と言ったら……」

「マジで!?」

 マジで!?

 ダイ大がアニメ化!?最後まで!?いつだ?いつアニメ化した?異世界行ってる場合じゃねえ!

 

「どうやって見た!?教えてくれ!?」

「ふっふっふ、私を倒したら……」

 

 死ねえ!

 剣で首を刎ねようと振り回す前に逃げやがった!意外と速い!?ゴキブリみたいだ!

 

 壊れる足を無視して追いかける、どこだ!どこ行きやがったあのロボ頭!

 

「腕を囮に下からザシュッと」

 

 頭に衝撃がっそこぉ!外れた!

 腕を囮に下からザシュッと?裏技?やったら神様からスマホ貰えんの!?くそっ逃げるな!

 耳元で囁きやがって気色悪い……頭のこれ何?ザラザラしてるけど帽子?被ってた麦わら帽子か?っ待てっ逃げんな!

 

 追いかけ続けると広場に出た、隠れる場所はないがどこ行った?

 

「レントさん!?」

 

 声の主はアギン、ボロボロだ。その後ろの木にはメアリアが隠れている、そしてさっき倒したカブトムシに似たプロペラ音がぁっ!

 腕を囮に下からザシュッとぉ!切られた腕をちゃっちゃと再生っするな!止まれ!よしっ痛みは続いている、幻痛じゃない、何とか間に合った。 

 じゃないっ、嵌められた、これは罠だ。どうする、どうすれば良い。クソっもうダメか?迷った時点で終わったか?

 あ〜ちくしょう、くそっっダイ大が、ダイ大のアニメがぁ、メドローアがぁ……

 

 切り替えよう、そうだ切り替えよう。いや痛い、こんなに痛みが続くのは久しぶりだ、涙が出る。止まれ、男は涙を見せぬもの、此処で出したら格好がつかない、踏ん張れ、余裕を見せるんだ。

 

「失せろ」

 

 遅いか?いやまだ行ける、まだ言えるはず。

 続けろ、此処で泣いたらみっともないんだ、無視するんだ。

 振り返ってアギンの方を見る、身体中傷だらけだ。だが重い傷は見えない、これなら行けるぞ。

 

「無事だったんだなアギン、メアリアを守りながら戦っていたのか。すごいよお前は」

「えっ……アギンさん、いやっ腕、腕が……」

 

 はえーよ畜生、少しぐらい待てよ。いや、むしろ良いんじゃないのかこれ?呆然としてるけど涙は流していない、いや何なのこいつ?チート貰ってない頃の俺だったら痛みでギャン泣きしてたぞ。これだから異世界人はよぉ……まあ良い軌道修正だ、気を付けて噛まずに……言う!

 

「安いもんだ、腕の一本ぐらい……無事でよかった」

 

 頭から帽子を外す、やはり麦わら帽子だった。

 

「この帽子をお前に預ける、俺の大切な帽子だ。いつかきっと返しに来い、立派な冒険者になってな」

 

 アギンは虚をつかれた様だ、「えっ」と溢して固まっている。まあこんなもんだろ。

 シャンクスは偉大な男だ、友達のルフィの為に喧嘩を買い腕を失ってでも助ける、かっこいいよなぁ。

 

 真似したってシャンクスみたいにかっこよくなれないが俺は竜の民、ドラゴンソードキーホルダーにいつまでも心惹かれる者。傘でアバンストラッシュや月牙天衝を幾つになってもやる幼稚な人間だ。人生が薄いから何かを真似して成長した気になりたい、ヒーローみたいにカッコ良くなりたい、でも人は助けない。面倒だから。

 そんな俺がついに、シャンクスっぽい事が出来た、超気持ちいい〜。

 

 腕を再生して振り回す、かめはめ波やドルオーラのポーズをしてみたが何も出なかった。やっぱ無理か。

 

「それじゃそろそろ行くか?いや傷があるな……行ける?」

「あっはい、何とか……」

 

 嘘だろ?ダメ元で聞いて見たけど行けるのか、自分で聞いといてあれだけどドン引きだわ、日本という名の温室育ちでは計れなかったな。

 

 メアリアには傷一つない、こっちも無事なのが異世界クオリティだなと納得して王都の道へ戻る。

 先程の戦闘が嘘の様に静かな森、クワガタの頭を片手で抱えながら踏破した。

 

 アギンの足取りはしっかりしている、全身切傷で血だらけなので最初は背負うかと提案したが断られた。これぐらいなら屁でもないのかグングン歩く、守っていたメアリアとの会話は今も無い。やっぱり不思議な関係だ。

 

 少し進むだけで見えてくる、巨大な街に集う人々。遠くからでも見える城を優に超える巨大樹はネット上でも見たことがない。

 異世界だ、異世界なんだ。

 やっぱりこういうのでいいんだよ、モンスターも見る分には良いけど戦うとなるとふざけんなってなるし魔法も少しも使えない。だが景色、この想像だけの景色が現実にある。

 これでダイ大の傷は防げる、防げたんだ。そうさ、異世界へ行く方法があったら地球へ行く方法も必ず有る。俺は絶対に見るからな、それと覚えていろよあの鉄屑が……

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