オラリオの商業系ファミリアを代表するものの一つ、契約を重んじる事で信頼を得ているファミリアがある。
契約を破ることは決して許されず、その代わり契約は必ず平等の元に公平な内容を確約される。破った対価は大きく、守っている限りは安全を絶対に保証される。
そのファミリアの名を「モラクス・ファミリア」という。
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「では、我らが主神モラクスの名の下にこの契約を締結しましょう。破れば岩喰いの刑…要は痛いしっぺ返しを受けます。決して契約を違えぬように」
「えぇ。しっかりとお守りします」
「はい、必ず」
モラクス・ファミリアの仕事の中には、ファミリア同士の契約を第三者として行うことがある。契約する双方はモラクス・ファミリアの元で契約を行ったという保証を得られ、外聞からしてもこれは大丈夫であるという信頼を得られる。
契約に携わるのは基本的にモラクス・ファミリアの幹部である「七星」と呼ばれる冒険者達。その中でも重要な契約には団長である凝光と、法に関することを担当している煙緋の2人で見守ることとなっている。
この日もオラリオの物流に関する重要な契約が終わり、契約した両者が去った後。一仕事を終えたにも関わらず凝光はすぐに別の仕事へと取り掛かる。煙緋はその様子を見て呆れた声を出した。
「幾ら『
「あら、あの程度の契約見守りを仕事と言うには軽いわよ。場合によっては暴力沙汰に出会うこともあるから、今回は楽な方だったわ」
「私が居ない時の契約、やけに荒っぽいのが多いのかい!?幾ら団長と言えどそれは危ないだろう…」
「その辺は大丈夫よ。いざとなったら
「降魔大聖まで…はぁ。私が法に関する事を確認に来なければ危険なことばかりなのか」
予想外に荒っぽいことが多いと判明した事に、煙緋は頭を抱える。普段は法律家としてオラリオのありとあらゆる裁判沙汰を受け持っている以上、ファミリアの契約に関わる数は少ない。自分の想定以上に荒っぽい事になっていると知り、頭を抱えるのは法律家としてどの法に抵触するか考えてしまったからである。
「今日の契約も無事終わったようだな。ご苦労」
「あら、先生。今日はバアル様達の所に行っているはずでは?」
「つい先ほど帰ってきた所だ。…ふむ、契約違反をした様子がないな。いい事だ、今の俺では岩喰いの刑を執行できないからな」
「岩王帝君の岩喰いの刑は洒落にならないんだが」
「それを模倣したあなたの炎喰いの刑も十分危険よ」
「契約違反はしっかり罰するべきだ。あの程度じゃあ帝君より軽いさ」
煙緋も煙緋で契約違反には敏感である。その為の対処は自分で行うし、冒険者としても上位にいる以上、普通の相手ではまず違反しないのだが。
凝光と煙緋の元にやってきたのは主神であるモラクス、鍾離と名乗る自称凡人は別のファミリアから貰った土産を片手にやって来た。
主神ではあるが、何故か神である事を隠して出歩き、そして
「バアルから貰った茶菓子があるが、ちょうどいい。俺が茶を入れてこよう」
「帝君のお茶をいただけるとは、光栄ですわ。ではその間に私は雑事を終わらせておきます。煙緋は…このあとガネーシャ・ファミリアに呼ばれていたわね?」
「あぁ。これからガネーシャ様の所で裁判があるから、その立ち合いになる。おそらく長引くから、帰りは夜になると思うよ」
「了解よ。あなたの事だからそこまで心配しなくてもいいだろうけど、気を付けてね」
「煙緋、何かあれば魈を呼ぶことだ。すぐに駆け付けるだろう」
「そうさせてもらうよ。それでは行ってくる」
煙緋は鈍器と言ってもおかしくない法典を持ってガネーシャ・ファミリアの所へと出張にいった。凝光と
鍾離が持ってきた茶菓子を見てみた凝光は、袋に入っていた団子を見て悪くないな、と思ったのであった。
▽▽▽
人気のない裏通り、入り組んだ地上迷宮ともいわれるダイダロス通り。そこで人知れず行われていたのは一方的な鬼ごっこである。狩人は優雅に、そしてゆっくりと獲物を追い詰め、追われる獲物は得体の知れぬ狩人にただただ恐怖する。
とあるファミリアがモラクス・ファミリアの名の下で行われた契約を反故にしようと暗躍し、しかしそれは未然に防がれた。暗躍していたファミリアは失敗したことに苛立ち、実力行使に出ようと画策した。だが、それはファミリアの幹部が何者かによって行方不明にされたことで一変する。最初は一人、集合時間になっても現れなかった。次は三人、ホームの中で意識不明の状態にされた。ここでおかしいと気付いたが、憎き敵を陥れることを優先していたが故に強硬に出た。それまでが警告であったと気付かずに。
襲撃を仕掛ける前日、ファミリアの団員の半数がたった一人の冒険者にやられた。そう報告が上がった次の瞬間、報告をしていた団員が倒れた。突然の出来事に報告を受けていた団長は恐怖し、ホームから逃げ出した。逃げ回る前、ホームの中には団員がいるはずなのに誰もいないかのように静まり返り、底知れぬ恐怖を駆り立てる。
やがて、外に出たところで自分が何者かに付けられていると感じ、自然と撒くためにダイダロス通りへと足が進んだ。これが、追い立てる狩人の狙い通りだと知らずに。
人気のない裏通りに入っても追跡してくる気配は消えず、それどころかつかず離れずの間合いを保たれている。歩きから早歩きへ、そしてそれは自然と速くなり走り出す。それでも消えない気配にじわじわと恐怖し、思考がおぼつかなくなる。ただひたすら、自分を追い回す何者かから逃げるために必死になって知らない場所を走り回り、そして獲物は道を失って行き止まりへとたどり着いてしまう。
荒く息をつき、未だ消えない気配と恐怖に恐慌状態へと陥る。行き止まりの壁へと背中を押し付け、ずるずるとしゃがみ込む。そこにカツン、コツンと何者かの足音が響き始める。段々と近づいてくる足音は死神のように感じ、団長は情けなく震える。
月明かりは雲によって隠され、辺りは暗くなっていく。そして聞こえてきた足音が途切れ、目の前に一人の人間が立った。
「モラクスの名の元に締結された契約を違反し、無辜の民すら巻き込もうとした事。それが重大な契約違反と知っての行為かしら?」
「な、なんなんだよお前は…!」
「警告はしたわ。それでもやめなかったのはあなた達、それもファミリアの団員を動員してまで。なら、契約に則り契約者を守るのもまた、我々のやるべきこと」
暗い中でも青く輝く腕輪が更に強く光る。そこから紡がれる糸は、命を繋ぐ蜘蛛の糸だったもの。そしてそれは今、契約者を守るために使われる。
「岩王帝君の岩喰いの刑に代わり、違反者には罰を」
ダイダロス通りに、一つの悲鳴が響き渡った。
「──違反したファミリアへの罰則は無事終わったわ。全員ガネーシャ・ファミリアへと移送済み、後はこちらが受け持つことはないはずよ」
「ご苦労様、夜蘭。暫くは何も無い筈だからゆっくりして頂戴」
「そうさせてもらうわ。凝光、貴方も休んだらどう?」
「私はやることがたくさんあるもの、そのうちね」
思い浮かべるのは、常に最強の自分…!(教令院を壊すイメージ)
凝光
→レベル5 団長
やっぱ手腕のやべーやつ
煙緋
→レベル4
法律家。オラリオの法律全部覚えてる。あちこち引っ張りだこの法律家
夜蘭
→レベル6
団長よりレベルが高い裏方。情報収集と契約違反者への罰則を担当。普段はどっかにいる。団のホームにいることが珍しいレベル。でも「こんな人がいる」って感じで認識はされてる
モラクス(鍾離)
→主神。よくテイワット産神様とお茶会してる。お茶いれると相変わらず時間かかる。岩喰いの刑はできないけど槍捌きは十分強い。凡人ってなんだよ。
お金はやっぱり持ち歩かない。よくツケる。支払い担当は胡桃なんだよなぁ…