テイワット産神様のファミリア   作:影元冬華

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ナヒーダ2凸強すぎてゲラゲラ笑ってます。週ボスのスカラマシュが溶けるの楽しすぎる。


4.草神様の場合

 オラリオの文化形態において決して外すことのできないファミリアがある。暗黒期、オラリオに降りかかった厄災を自らの犠牲を持って相殺し、数多の人々を救った神がいた。その神は下界で神の権能を使ったことですでに追放されている。しかし、その神が残した「子」がそのファミリアを継いでいる。

 また、様々な知識に関することを司り、オラリオにおいても教育や研究分野において並ぶファミリアは存在せず、そのファミリアで研究をすることを目的にオラリオにやってくる者までいる。

 

 そのファミリアの名を「ブエル・ファミリア」という。

 

 

▽▽▽

 

「──よって、ダンジョン中層で取れる植物の中には取り方や時期によって毒になるものがあるんだ。普段は薬草として有用だけど、採取の際は気を付ける事。毒と言っても多少しびれる程度でそこまで重くはないけど、薬としての効果は皆無だからね」

 

 

 ブエル・ファミリアの講堂にて。長い耳とふわりとした尻尾を持つ亜人(デミヒューマン)の青年、若くして団長を務めるティナリがファミリアの団員たちにダンジョンにおける植物についての講義を行っていた。ティナリはオラリオの外から来た身であるため、森を守るレンジャーとして勤めてきたこともあり、冒険者としてダンジョンに入るようになってからもダンジョン内で取れる植物についても詳しかった。

 講義を聞いている団員たちは皆、真剣な顔でノートを取り、ティナリはそれを確認しつつ次の項目へと移る。

 

 

「それじゃあさっきのことを踏まえて、今度は毒になったこの植物の有効活用の仕方について。毒になった状態の場合、少し鼻に来る臭いを出すようになるから一部の魔物はこれを嫌って寄り付かなくなる。逆に引き寄せられる魔物は──」

 

 

 ブエル・ファミリアにおける教育はギルドで行われる新人指導よりも細かい説明が多く、またそれらはオラリオ各地にあるブエル・ファミリアの教育院と呼ばれる育成施設で自由に閲覧できるようになっている。

 ダンジョンでの知識はファミリアにおける財産とされることが多い中、惜しげもなく公開することはファミリアの収益を投げ捨てるようなものに近い。しかしそれ以上にブエル・ファミリアでは研究が盛んであり、その勢いは追随を許さない。公開されている知識をさらに知りたい、そう言った上位ファミリアはブエル・ファミリアへと「教育」を依頼する。そうしてブエル・ファミリアは収益を得ているのだ。

 

 

「今の君たちがいける範囲の植物はここまで。この後はディシアとの訓練があるだろうし、少し早いけど講義はここまでにしよう。それじゃあ、復習をしっかりして忘れないように。以上」

 

 

 ティナリは時計を見て少し早いが切り上げる判断をして、手元に置いてある資料をまとめる。講義を受けていた団員たちは次に受けるディシアの体術訓練に若干怯えを含んだ顔になりながらも、今しがた受けた講義の内容をまとめたノートを閉じて講堂からぞろぞろと出ていった。

 団員たちが出て行ったあと、入り口からティナリに声をかけてくる人物が一人来た。

 

 

「今日は中層に行ける団員たちの指導か?」

「うん。そっちは…その様子だと、うちの「知識」を悪用した奴らを断罪した後かな」

「ああ。と言っても、マハマトラの見習い卒業試験を兼ねていたから俺はほとんど手を出していないがな」

 

 

 ティナリの元にやって来たのは同じファミリアのセノだった。セノはブエル・ファミリアが公開している情報を悪用し、他の冒険者に被害が出るような事態を引き起こす人物などを取り締まる「マハマトラ」のトップである。頭には断罪を司るアヌビスを模した被り物をしている。

 セノは自分の仕事が一段落したこともあり、ティナリの様子を見に来たようだった。

 

 

「丁度いい、これから昼を食べに出るところなんだが一緒にどうだ?」

「いいね。今日のお昼の担当はキャンディスだったはずだからアアルコシャリ*1のアレンジが食べれるんじゃないかな」

 

 

 ピコピコと耳を動かして楽しそうにしているティナリと、キャンディスの料理が食べれると聞いて楽しみにしているセノの2人は並んでファミリアの食堂へと行くのであった。

 

 

 

▽▽▽

 

「キャンディス、アアルコシャリはまだあるか?」

「いらっしゃい、セノ、ティナリ。もちろんありますよ。少し待っていてくださいね」

「──(わたくし)も頂こうかしら」

「ナヒーダ様!えぇ、もちろんです。用意しますのでお待ちください」

 

 

 食堂にやってくればお昼時と言うこともあり、多数の団員たちが昼食を食べている。本日の昼食担当のキャンディスは忙しなく動いてる中、主神であるブエル(ナヒーダ)が来たことにうれしそうにしていた。ナヒーダは幼子のような見た目であるためか、小食であまり食堂に顔を出すことがない。そのため、顔を出したこの日は珍しかったのだ。

 

 

「やぁ。今日は外に出てきたんだね」

「こんにちわ、ティナリ。偶には日の光を浴びないと植物も枯れてしまうもの。私にとって知恵をまとめるのも重要ではあるけど、自分の民を蔑ろにするほど愚かではないわ。セノ、貴方もお勤めご苦労様」

「お褒め頂き光栄です。大マハマトラとしての責務を全うするのが自分の使命ですので」

「あまり根を詰めないでね。あなたはやせ我慢も隠し通してしまうから、少し心配なの」

「そうだね、セノは気が付けば一人でダンジョンに罪人を追いかけて連れ帰ってくるから」

「──セノ、あなた無茶をしてるのかしら?」

「待て、誤解だキャンディス。罪人が逃げた先がダンジョンだっただけだ!」

 

 

 料理を持ってやってきたキャンディスは耳に入った話を聞いて笑顔になる。しかしそれは恐怖を連想させる笑顔であり、セノは慌てて弁明する。その様子を見てティナリとナヒーダは笑っており、止める気はないようであった。少しして、キャンディスはため息とともにセノをじとっと睨む。

 

 

「マハマトラの責務を全うするのはいいですが、あまり無茶はしないでください」

「無論分かっている。だがまぁ、この程度であれば砂漠と比べれば全然厳しくはないのだがな」

「はぁ…セノ、君本当に理解してるのかい?」

「何が言いたい、ティナリ」

 

 

 セノの言葉にティナリも呆れた。唯一笑っているのはこのやり取りを面白いと思っているナヒーダだけである。

 

 

「その話は一回終わりにして、今は料理を食べましょう?」

 

 

 

 ナヒーダのその一言により、ティナリとセノの痴話喧嘩は一度終戦したのであった。

 

 

▽▽▽

 

『クラクサナリデビ、世界樹の純粋な枝であり、輪廻の私。どうか、(ルッカデヴァータ)(団員)をお願い』

「──母様!」

 

 

 それは夢。クラクサナリデビ(ナヒーダ)がファミリアの主神となり、自らの母が天界へと還った時の記憶。暗黒期というオラリオに災厄が降りかかったあの時、マハールッカデヴァータは闇派閥によって呼び出された次元の獣(獣域ウルフズ)を封じるために神の権能を行使した。下界のルールによって神は権能を使用することを禁じられている。それを破った対価は下界からの追放、天界への強制送還。二度と自らの民の声を聞くことも、見ることも叶わない。それでも愛する民の為に自らを犠牲にした。

 小さな草神は大切な()との別れに涙を流し、しかし残された民の為に立ち上がった。

 

 厄災に立ち向かう為に知恵を集約し、民の力で厄災を祓う。それが、大切な者から託されたことだから。

 

 

 厄災は一つではない。未だ残る黒の災禍が目覚める前に、知恵の神は役割を全うし続ける。一刻でも多く学び、一刻も早く育つ事が、いずれ来る驚異に立ち向かうために必要であり、そして己こそがその責務を担う者であると理解しているからだ。

 

 

 故に知恵の神は、惜しむことなくそれを民に教える。本当に笑えるその時まで。

 

*1
米・小麦・豆・トマトで作られた料理




ここではマハールッカデヴァータが母、娘がクラクサナリデビと言うことにしてます。
原神だとルッカデヴァータ=クラクサナリデビなんですけどね…


ティナリ
→レベル5 団長
 みんな大好きレンジャー長。気づいたら団長にされてた。ナヒーダに「あまり畏まって相手しないで欲しいわ」と言われたので気軽にナヒーダって呼んでる。植物知識が多くて遠征時の非常食や薬草の調達に便利。

セノ
→レベル5 副団長
大マハマトラ。罪人は絶対断罪するマン。どこに逃げても追いかけてくるので獣人疑惑があるがそんなことはない。子供たちには大人気「ジャッカルヘッド」と呼ばれてる。

キャンディス
→レベル3
厨房班に入ったりするけどシールド持って前線で盾になるめちゃつよガーディアン。その説教は大マハマトラすら正座する。絶対に怒らせてはいけない。料理はおいしいし量が多いので、キャンディスが担当する日は大食いが多く食堂に来る。


ナヒーダ(ブエル)
→呼び方がいっぱいあるけど呼びやすい「ナヒーダ」で通してる。知ってる人とか敬ってる人たちからは「クラクサナリデビ様」って呼ばれてるけど。
母上が目の前で権能使ってハウンド封印して送還されちゃって泣いてた。でももうファミリアの神様だから頑張ってる。
 普段は自分の部屋で母上が残したものを見て勉強してる。あとはファミリアの書類関係も担当する。

完全な余談だが、雷電姉妹によく膝に乗せられて撫でられている。
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