アリアンロッド~ISを駆る冒険者~   作:アルシェス

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だいぶんお待たせしました。


後始末はしっかりするべし

セシリアとの試合でも感じたことだが、

IS装着時の俺の動きは鈍い。

[この世界の(ことわり)]の範疇で作られた物である以上、

[違う世界の(ことわり)]の中で鍛えられた

俺の動きにはついてこれないのだろう。

一般自動車より速く走れるし、小型ならパワーショベルと

力比べしても勝てる自信があるし。

要するに人の[枠]からはずれちまった俺に

ISはついてくることが出来ずに、俺の動きを阻害してしまうのだろう。

ハッキリ言って、今のままだと飛べることを除けば

俺は生身で戦った方がはるかに強い。

しかし、それをするわけにはいかない。

やったら今度こそ研究所に連れていかれるだろうからな。

まあ、大人しく引っ張られるつもりは一切無いが。

つまり能力が制限された状態で、避難の時間を稼がないといけないわけだが、

見てる面子が多かったから避難は遅々として進まない。

おまけに次の発射までの間隔が長いとはいえ、

スティールゴーレムの放つビームはアリーナの遮断バリアを

一撃で貫通する威力を持ってるから本当に大変だ。

 

「鈴!」

「え?んっなぁ!?」

 

鈴を小脇に抱えて、横に飛ぶ。

直後元居た場所にスティ-ルゴーレムが突っ込み、壁の一部を破壊した。

 

「何アイツ!メチャクチャ速かったわよ!」

「そういうもんだからな」

 

スティールゴーレムは下級ゴーレムの中でも最も強い。

そのパワーはブルドーザーに匹敵し、錬金術等で強化された

鋼鉄の外殻は生半可な攻撃を受け付けず、

そして突進時のスピードは自動車もかくやの速さ。

そしてさっきのビーム。

 

「まあ、それでもマシな方なんだがな」

「何の話!?」

「独り言だ」

 

上位版であるクリスタルゴーレムは飛行能力を持ち、

ダイヤモンドゴーレムは更に出力が上のビームをマシンガンのように連射し、

ゴールデンゴーレムは持ったハンマーで叩いた物を金貨に変えてしまう。

ゴーレムには知能が無く、命令に従うだけの機能があるだけだから

パターンを読んでしまえば楽なんだが、それは周りを気にしなければの話だ。

 

「避難は?」

「今半分くらい……てゆうか、いい加減下しなさい!」

「アレをかわせるのか?」

「うう……」

 

鈴を小脇に抱えながら、突進や格闘攻撃を躱し、

銃弾で注意を引き、ビームを撃とうとしたら蹴り上げる。

それを繰り返し、避難の時間を稼ぐ。

……鈴を小脇に抱えたまま。

 

「後どれぐらいで終わる?」

「もう少し!」

 

気を引き締め、再度銃弾を撃とうとしたその時。

 

『一夏ァ!男なら……それぐらいの敵に勝てんでなんとする!』

「何やってんのよ!」

「あのバカが!」

 

モップが放送室から叫び、それに反応してゴーレムがビームを放とうとする。

俺は鈴を抱えたまま走り寄って足払いをして体勢を崩させ、更に足を斬り落とす。

始めからこうすればよかったなんて考えはない。

あくまで注意がモップに集中したからだ。

俺はハイパーセンサーを使って放送室の中を覗く。

 

「おいおいおい………」

 

思わず頭を抱えた。

腰を抜かしたモップの傍で、気絶している上級生らしき生徒が何人か居た。

おそらくモップを止めようとして気絶させられたのだろう。

 

「言いたいことはあるがさっさと避難しろ」

『何を言う!』

 

その返しに、俺は切れた。

銃弾を一発放つ、勿論遮断シールドで防がれるが、

顔面直撃コースで撃ったので、黙らせるには十分だった。

 

「さっさと消えろ」

 

俺はそう言い残し、再度ゴーレムと対峙する。

同時に、避難が終了した。

 

「やっとか」

 

何時もの構えをし、俺は一言呟く。

ロアさんと同じことをする。

師匠と、父親の様に慕うあの人と同じことを。

 

「さあ、地獄を楽しみな!」

 

一気に近づき、蹴り上げる。

そのまま二度三度同じ事をし、フェイスガードを砕いて

ビーム発射口を露出させ、そこに向かって連射する。

エネルギーを発射できる場所、つまり集まる場所なので

当然、その部分を潰されたので爆発を起こす。

 

「セイヤァァァァァァァ!!」

 

そして、踵落としで地面に叩き付けた。

 

「やべぇ……まあいいや」

 

踏みつぶした空き缶の様に潰れたゴーレムを見ながら、俺は呟いた。

 

_________________________

 

あの後俺と鈴は管制室に集められ、事情聴取を受けた。

質問に対して、俺は適当に答える。

本当のことを言ったところで信じてもらえないだろうし、

信じたとしても面倒だけだ。

なので、思ったより早く終わった。

 

「ああ、それとモップ」

「なんだ?」

 

俺は何故か居るモップに向き直る。

 

「何故あんな真似をした?」

「何を言ってるんだ?」

「貴様が放送席を占領して一体何人が危険にさらされたと思う?

遮断シールドをぶち抜くほどの攻撃を受けて無事なわけはない

貴様が一人で勝手に突っ走って自滅するのは勝手だが

それで周りの人間まで巻き込んでお咎め無しなわけないだろ」

 

これはあくまで正論だ、反論のしようなどない。

だが、それで納得するほどモップはできた人間ではなかったようだ。

 

「納得いかない!元はといえば一夏と鳳があんな連中に苦戦してもたもたしていたのが原因ではないか!

だから私は活を入れてやったんだ!!それの何が間違っているというんだ!?」

 

呆れるほどの暴論だ。

何をどうすればこんな言葉が出てくるのだろうか?

俺は切れた、それも本気で。

 

「ふざけるな」

「ゴァ」

 

俺はモップの首を掴んで持ち上げた。

俺の腕力なら人間一人を持ち上げるなど簡単だし、握力は骨を砕ける。

人一人を殺すのは小枝を折るくらい簡単だ。

 

「俺達は避難の時間を稼ぐために加減していただけだ

それを苦戦したから活を入れるだと?寝言は寝て言え」

「だ……だったら」

「さっさと倒せばいいか?

ほざけ、奴は遮断シールドを貫通できる武装を持ってたんだぞ

下手に破壊して暴発したらどうすんだよ、何処に飛ぶかわかんないんだぞ」

 

このまま殺してしまおうか。

そんな誘惑が鎌首をもたげるが、今やるのはリスクが高すぎる。

俺はモップをゴミの様に放り捨てた。

 

「貴様がやったのは応援でも活でもない

ただの薄汚い自己満足だ、それに他人を巻き込むな」

 

俺はそのまま管制室を去った。

 

_______________________

 

あの後、アタシは一夏を探した。

確か、自然がある場所が好きだと言っていたので、中庭辺りを探してみる。

案の定、木に登って太い枝に寝そべりながらパイプを吸っていた。

一度同じ物をもらって吸ったことがある。

安眠できそうなリラックスできるいい香りのハーブを使ってるらしい。

 

「一夏」

「どうした?」

「聞きたいことがあるんだけど」

 

できればうやむやにしたいけど、アタシの中に芽生えた

何故か確信のある疑問を確かめたかった。

 

「アンタ、好きな人がいるの?」

 

言ってしまえば[女の勘]、根拠などない。

でも、何故かそう思えた。

 

「………やっぱ女の勘は怖いね、そうだ」

 

真剣に向き合えば真剣に答えてくれる。

それが今の、[冒険者一夏]という人物らしい。

 

「正直、また会える可能性は0に近い

でも、俺は探し続けるさ………何時だって、繋がってるから」

「そう……わかった」

 

私はその場を離れ、校舎にもたれ掛った。

何があったのかはわからない、でも一夏はかっこよく成長していた。

いきなり篠ノ之の首を絞めたのは驚きだけど、理由は理解できた。

そして好きな人……

旅の途中であったのか、それとも仲間だったのか。

でも、諦める気にはならなかった。

今の一夏は努力している人間が好き、ならアタシも努力すればいい。

 

「見てなさい、必ず振り向かせてやるんだから」

 

_____________________

 

学園の地下にある特殊な施設、そこに襲撃機は運び込まれた。

頭部は破壊され、踏みつぶされた空き缶の様に無残にひしゃげたその様は

一夏の攻撃がどれだけ強力かを示していた。

 

「この襲撃機は無人で……その、信じられないんですが」

「どうした?」

 

何故山田先生が言いよどむのだろうか。

 

「ISコアがありませんでした」

「なんだと!?」

 

この時、それが一夏の秘密に係わることだと、

私はまだ気づいていなかった。




次回は話がかなり変わります
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