俺こと、五反田弾は現在……
「今までどこほっつき歩いてた!?」
祖父の五反田厳から拳骨を頂戴している。
それもそうだろう二年ほども行方をくらませていたのだから。
何故そうなったのか、それは二年前に遡る。
___________________
「何処だ此処ーーーーーーーーーーーーー!!!!!?」
用事で家に俺以外誰もいない時、差出人不明の小包が家に届いた。
開けてみると、[アリアンロッド]というタイトルの
もう何十年も前に書かれたと言われても信じられるほど古い本があった。
そして興味本位にページをめくると、突如光りだした。
で、気付けば全く知らない場所に一人立っていた。
なんか、お寺のど真ん中だ。
「何奴じゃ?」
いつの間にか、俺の後ろには髭をたっぷりと伸ばした、
どこぞの仙人のような爺さんがいた。
その老人、ワンロン老師から
ここがエリンと呼ばれる別世界の、セーリアと呼ばれる国だと知った。
帰ろうにも方法は不明、まあ簡単に分かったら苦労しないよな。
探しに行こうにも今の俺じゃ三日と持たないらしい。
結果、俺は老師にこの世界で生きる技術・知識を教わり、
ついでに最低限生きていける実力をつけるために鍛えてもらった。
すごいものだ、家のじいちゃんより年取ってるみたいだが、
素手のパンチ一つで岩を粉々に砕き、蹴り一つで大木を吹っ飛ばす。
「お世話になりました、老師」
「うむ、気を付けてな
お前はこれから様々な壁にぶつかるであろう
しかし立ち止まってはならない、生きるとは前進と同意
どれほど無様であろうと前を目指すのだ
忘れるでないぞ、我が弟子ダンよ」
「はっ!」
それから本当にいろんなことがあった。
ある時は底なしの食欲を持つ人食い魔獣[マンティコア]の頭蓋骨を粉砕し、
またある時は岩の体を持つ巨大蜘蛛[ロックスパイダー]を粉砕し、
そしてまたある時は怪力と防御の技を併せ持つ妖魔[オウガガーディアン]を粉砕し、
………俺粉砕しかやってないな。
[冒険者]という生き方に染まりきってるし。
しかし、一番印象に残っているのはこの娘だ。
とある町で孤児になっていたエルダーナンの
どうも放っておけなかったので連れていくことにした。
幸い、俺には懐いてくれたし、俺自身もロリコンじゃないからどうとも思わないし。
しかし、その子は喋れない様なので、俺が[
それから立ち寄った神殿で短期間だけ勉強した結果、回復魔法を身に着けた。
で、とある遺跡でやけに古びたブローチを見つけると、
突然光だし、いつの間にか実家の前に居て冒頭に至る。
_____________________
「で、その子はどうすんだ?」
本当のことを言っても信じてもらえないだろうし、
俺は適当にぼやかしながら事情を説明した。
「俺が育てるさ」
俺は今、何時にもまして真剣な表情をしているのだろう。
「……いいだろう、投げ出したら承知しないからな」
_____________________
俺こと御手洗数馬は魔法使いだ。
別に妄想でもなければ童貞歴30年以上でもない。
散歩中に拾った古びた本がきっかけで異世界[エリン]に迷い込んだ。
何故か才能があったので俺はそのまま魔法使いとなり、
そのまま元の世界に戻る術を求めて旅をつづけたのだが、
いつの間にか心身共に[冒険者]という生き方に染まってしまい、
俺はいつの間にか帰還を望まなくなっていた。
なのだが、とあるブレスレットを拾った途端、元の世界に戻って来た。
何故か覚えた魔法も問題無く使えるし。
そして両親にしこたま叱られるおまけつき、自業自得だが。
……さて、親友二人はどうしてるかね?
_______________________
俺の携帯電話に呼び出しのメールがあった。
文面は………何ともふざけた内容だ、子供染みてる。
こんなメールを送ってくる奴に、俺の心当たりは一人だけだ。
指定された場所に夜間、俺は冒険者としての装備で向かう。
制服の上に皮ジャケット、ブーツ、手甲付の指出しグローブ、
魔導銃、ベルトポーチ、そして多数のナイフ。
黒に近い色で統一されているので、案外目立たない物だ。
そして、指定された川原に到着する。
「さて、何が出るやら」
魔導銃に弾丸を、それも殺傷力が高いのと戦車にも有効な物を装填しておく。
そして約束の時間、俺は思わず絶句した。
「………」
人間よりデカイ人参状の物がドンブラコドンブラコと流れて来た。
桃太郎か!?桃太郎の真似事か!?なら桃にしろ!
なんでわざわざ人参なんだよ!?それよりなんで流れてくる!?
「なんで流れてくんだよ?」
そして人参が割れ、メカメカしいウサ耳と青いエプロンドレス、
まるで[
「やあやあいっくん、おひさだね」
花が咲いたような笑顔浮かべるこの女は[篠ノ之束]、そう……
ISを開発し、今なお世界中を好き勝手に引っ掻き回す[天災]だ。
おれはそのまま………
「へぶぅ!!?」
「確かに久しぶりだな、糞兎」
むかついたので殴り飛ばした。
ついでに頭を踏みつける、このブーツ金属板が仕込まれてるから
重さも頑丈さも半端な物じゃない。
このブーツを履いていれば、俺は
「えっと……なんで?」
「黙れ、貴様のせいで迷惑この上ないんだ
死ね、死んでわびろ、脳天ぶちまけて死にやがれ」
「さすがにちょっと……ていっくん!?その物騒なの何!?」
今すぐぶっぱなしたい衝動に襲われる。
「うっさい、世界のこと考えろとか、物作るのやめろとか言わない
だがな、お前のせいで碌な目に合わない人間が身近にいるってことを忘れるな
身内に活躍してほしいとか、気持ちはわからんでもないけどよ
自分の勝手だけを押し付けるようなのは唯のクズだ、ふざけるな
俺が体験することになった辛い境遇も半分は貴様の撒いた種なんだからさ」
元々俺の境遇は酷かった。
両親のいない子子家庭だったから、何かとあや付けられてたし、
糞姉外見的には優秀だからしょっちゅう比べられて嘲笑われたし。
だがそれでもマシではあった、ISが出た後に比べれば。
俺を[出来損ない]と見下す存在が、ISによって[身の回り]から
[全世界]に変わった、何をしても何処に行こうと、それは
まるで呪いの様に俺に付きまとってくる。
何の関係もない事だって、[織斑千冬の弟]という身分のせいで
下らない偏見をされ、優秀な結果を出しても褒められもしなければ喜びも無い。
そして結果が出なければ[弟の癖に]と嘲笑われる。
誰も助けてはくれないし、見てくれる人間もいない。
それが、[冒険者]になる前の俺の現状だった。
「だから下らない演出をしてみろ、直ぐに探し出して惨たらしく殺してやる」
「ヒッ!!」
だから周りの評価など一切関係が無い[冒険者]になるのは当然だった。
フィーネを、ロアさんを、明久さんを、アリテさんを、アイリスさんを、
ナデシコさんを、テテニスさんを、ムサシを、イナホを、アルクを、
[師匠]と[仲間]を選ぶのは当然だった。
俺は[エリン]に行ったことを後悔してないし、
[冒険者]を辞める気も黙祷無い。
「……ねぇ、どうすればいい?」
「元々何故ISを作った?」
「宇宙に行きたかったから」
「ならそうなる様にしろ、違う使われ方を許すなよ
どうせ[作った物が認められればそれでいい]とか思ってたんだろ?
馬鹿が、好き勝手が許される子供じゃねぇんだからよ」
とは言っても、この糞兎は[子供]なんだよな。
[出会い]と[経験]、この二つが人間を成長させる最大の要素、
それが俺の持論であり、経験談だ。
だが首が座りだしたころにはペラペラ喋りだしたこの糞兎は
両親にも腫れ物扱い、学校でも不気味な存在として遠ざけられたそうだ。
人と関わりながら成長していくはずの時期にそうなれば、
当然精神面は育たなくなる、だから幼子と大差のない人格が出来る。
つまり[愛情]が欲しい[子供]のまま成熟してしまった人間。
それが篠ノ之束という人間なのだろう、何もわかってないのだ。
「後女尊男卑もどうにかしろよ、ますます宇宙から遠ざかるからな」