糞兎に説教した後、俺は部屋に戻り
ドアを開けると、山田先生に呼び止められた。
「何か?」
「部屋割りの調整が済んだので、篠ノ之さんの引っ越しをお願いしに」
するとモップが驚きの表情を浮かべる。
「それ、すぐじゃないと駄目ですか?」
「馬鹿言え、夫婦でも恋人でもない男女が同居なんて問題ありだろ」
俺はバッサリと切り捨てる。
せっかくこの腐れモップとの同居から解放される。
だからさっさと消えやがれ。
荷物を纏める間、モップは何度も懇願の表情を浮かべるが、
俺は背を向けたまま[あっち行け]のジェスチャーをする。
貴様なんぞに付き合いきれない。
余談だが、モップはあの一件で反省文100枚と、一週間の自室謹慎を言い渡された。
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「驚いた、まさか二人とも同じとは」
「俺もびっくりだ」
「出会わなかったのは不思議だけどな」
数日後、俺は親友である
五反田弾と御手洗数馬と一同に集っていた。
驚いたことに、二人とも[エリン]で冒険者となっていたそうだ。
まあ、弾に義理の娘が出来てることが一番の驚きだが。
弾は体術を駆使して戦う[モンク]、
数馬は魔法使いの[ウィザード]だが、ナイフ二刀流と両立しているらしい。
弾の義娘[パス]はエルダーナンとヒューリンのハーフブラッドで、
光沢を放つ銀髪とスカイブルーの碧眼を持つ、将来性たっぷりの美少女だ。
なんでも回復魔法の使い出である聖職者[アコライト]としても実力者らしい。
まあ、まだまだ一人前にも届かないみたいだが。
「で、なんでデパートに来たんだ?」
「いい加減パスの服を買いたいと思ってな」
パスはこっちに来てからもフード付きローブを着用し続けてるらしい。
尖った耳はマジックアイテムでごまかせるが、服は現状では怪しまれる。
弾の妹蘭のお古でごまかしてるが、サイズが若干あわないそうだ。
なので四人でデパートに来ている。
しかしパスは人見知りが激しいらしいが、俺と数馬は警戒されない、何故だ?
「さて、平和に買い物を楽しみますか」
笑顔のパスと手をつなぐ弾の姿は親子にも、年の離れた兄妹にも見える。
「弾さ、言いたくなるのはわかるけど」
途端、すぐ近くで爆音が響く。
「それフラグだから」
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素早くダクトから天井裏に侵入した俺達は、そこから様子を伺う。
女ばっかりの強盗団が合計三十人、内ISは8機
よくもまあこれだけ集めた物だ、逆に感心する。
ハイパーセンサーはあくまで[視覚]を強化する物。
だから天井裏で音を立てなければ気付かれない、温度感知があれば別だが。
「いくぞ」
立聞き等で得た情報では、この階の大型ステージと
最上階ボーリング場に人質となった買い物客等が集められている。
内、この階にはIS二機と10人が見張りとなっている。
俺達は天井沿いにステージ近くに移動し、無音で降りて辺りをうかがう。
MP5(ドイツの大手銃器メーカーH&K社の傑作サブマシンガン)で武装した面々も全員居る。
完全に相手をなめているな。
「今!」
俺と数馬が同時に走り、注意を向けさせる。
俺は魔導銃で非殺傷無音弾[
数馬は投げナイフで銃口を正確に詰まらせる。
「はぁ!」
弾が注意が向かないうちにIS二機に接近、拳を突き出す。
普通ならシールドバリアに阻まれて終わる。
しかしモンクは自分よりはるかに巨大な敵相手でさえ、素手で効果的な攻撃を行う。
そんな弾の拳をたかがISが防げるか、答えは否だ。
「ぐっはぁ!」
シールドバリアに阻まれることなく命中し、片方が吹っ飛んで壁にめり込む。
吐血していたから、内臓に損傷を負ったかもしれない。
「貴様!」
もう片方が弾に銃口を向けるが、俺は絶対防御発動よりも早く蹴りを顔面に叩き込む。
これまた吹っ飛び、壁にめり込んだ。
そして、残った連中は簡単に気絶させ、売り場にあった毛布等で縛っておく。
ISからコアを抉りだしておくことも忘れない。
コアの無いISなどただの
「パス、皆と一緒に避難してろ」
弾がそういい、パスは大人しく従う。
一応知られる前に潰しておいたが、人質が解放されたと知られれば厄介だ。
だからパスの防御魔法[プロテクション]が必要になる。
襲い掛かられたら水の泡だしな。
最上階に移動し、俺は気づかれないように接近する。
その後ろを、数馬が付いてくる。
現在俺の次に隠密性が高い、襲撃にはもってこいの人材だ。
人質を盾にされる前に制圧する、それが要だからな。
IS以外は数馬の魔法でまとめて倒せるだろうが、記録が残ったら面倒この上ない。
ここは俺の手榴弾でうまく誤魔化すのがいいだろう。
「じゃ、行くぜ」
俺はエリンでよく使っていた手榴弾を投げる。
殺傷力は無いスモークグレネードだ、これだけでは制圧など出来ない。
しかし、この手榴弾で焚かれた煙幕には面白い効果がある。
「な、なんだこれは!?」
「ハイパーセンサーが効かない!?」
ありとあらゆる[感知]を阻害するのだ。
前に実験した結果、ハイパーセンサーから赤外線等、あらゆるセンサーを無力化する。
現状頼りになるのは、生身である己の五感のみである。
混乱している隙にIS以外をさっさと制圧し、人質を逃がす。
これで残ったのはIS六機のみ、ここからが本番だ。
そして煙が晴れる、こうか時間が結構短いんだよな。
その後、弾が一機を殴って壁にめり込ませ、
俺が一機を蹴り飛ばして壁にめり込ませ、
最後に数馬が一機からISコアを抉り出す。
この間わずか0.5秒、凄いのかどうかは知らないが。
「な、あ…」
リーダー格らしい女が呆然とする。
取り巻き二人は完全に腰を抜かしている。
まあ、生身の人間がISを易々と倒すなど夢にも思わないよな。
「そういやさ」
「なんだ?」
数馬が声をかけてくる。
「お前あの[黒き疾風]ロアの弟子なんだよな」
「そうだぞ、正確にはロアさんと[自在の刻み手]明久さんの弟子だけどな」
二つ名が中二病臭いのはご愛嬌だ、本人がつけた物じゃないし。
「ならさ、それっぽく決めないか?」
「面白そうだな、どうだ一夏?」
「そうだな、俺も言い損ねたし」
俺達は横一列に並ぶ、俺は真ん中で何時もの構え、
弾は左側で半身になり、左手を引いて腰に当て、右手を掌底の形で突き出す構え、
数馬は右側で両手に大ぶりなダガーを持ち、胸の前で腕を交差させる構え。
そして、異口同音に宣言する。
「「「さあ!死神が呼んでるぜ!」」」
リーダー格は慌てて武器を構えるが、取り巻きはISを解除して逃走した。
どうやら、俺達が相当怖くなったらしい。
「この!男風情が!」
リーダー格がアサルトライフルを連射するが、その銃弾を俺がすべて魔導銃で弾く。
その間に数馬が高速で接近し、ダガーでISコアを抉り取る。
そして、止めに弾が軽く本気の右ストレートを叩き込む。
リーダー格は吹っ飛んで壁にめり込み、血を吐いて気絶した。
何ともあっけない終わりだ、所詮は時代の尻馬に乗ってるだけの雌豚か。
「皆さんご覧になったでしょうか!?私も今見た物が信じられません!」
いつの間にかTV局のカメラとリポーターが来ていた。
早めにとんずらした方がいいだろうな。
「あけなかったな」
「もう少し苦戦するかと思ったんだが」
弾と数馬が取り巻きの残したISに触れる、その時。
「な!?」
「え!?」
何と、二人ともISを起動させていた。
「ど、どうしんだこれ」
「予想外すぎるぜ」
同感だ、見るとカメラマン・リポーター共に絶句している。
「こんな時にやることなんて決まってるだろ」
「「だな」」
皆揃って武器をしまい、
「「「逃げるんだよぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」」」
その場から全力で逃走した。
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「で、要件は何だ糞兎」
「うう、相変わらず毒舌全開(涙目)」
あの後屋根沿いに逃走していたら、いきなり人参型の物体から
糞兎が出てきて、俺達を人参型潜水艦に連れて来た。
「まず、私はダンダンとかっ君を守るのが目的だよ」
「「馴れ馴れしいぞ糞馬鹿」」
「うわ~~~ん!二人とも毒舌だよ~~!」
呆れて何も言えなくなった。
「と、兎に角、二人には私が立ち上げた会社
そうすれば政府もIS委員会も下手に手出しは出来なくなるから」
[不思議の国にアリス]の作者じゃねぇか。
「二人には私御手製の専用機を用意するからIS学園に転入してね
一番安全なのはここだけど、世間を黙らせるにはそれが一番だから
後、更に手出しさせないために商品を同時販売するから」