まあ、出来は良くありませんが(汗)
余裕綽々でボーデヴィッヒが降りてくる。
どっからその自信が湧いてくるのか聞かせてもらいたいぐらいだ。
「織斑一夏、貴様の存在は教官を弱くする! あの方は最強のブリュンヒルデだ!
お前の存在など必要の無い絶対の存在だ! 多少腕が立つからと調子に乗り
弱者となれ合い、教官の弱さを引き出すような真似をするなど!」
お前はイスラム教徒かと言いたくなるほどの盲信具合だ。
心底呆れてくるし、係わりたくない人種だ。
というか、糞姉はコイツにどんな教育したんだ?。
「私は認めない! 織斑一夏! 貴様の存在を!」
溜息をした後、俺は呆れの笑みを浮かべる。
「何がおかしい!」
「散々敵視されるからどんな恨み買ってるのかと思えば
全然大したことなくてな、呆れて笑うしかないぜ」
「なんだと?」
「じゃあ聞くけどさ、糞姉が一度でも俺を不要だと言ったか?」
「え……」
「俺にとってはもう糞姉は邪魔な障害物程度にしか思ってない
だから糞姉が俺を不要だって言うなら、これ幸いと居なくなってるさ
だが現実はどうだ、お前はそれを聞いたことがあるのか?違うだろ
俺が居なくなったら糞姉は必至こいて探すさ、迷惑だけどな」
「違う!貴様が教官を完璧な存在から」
「完璧な存在なんざ居るわけないだろ、保育園児の勘違いだぞそれ
それに、お前は糞姉に幸福になる権利は無いって言ってるようなものだぞ」
「な!……ち、違う!」
「どこが?お前の理屈でいえば、糞姉は家族も恋人も友人も持たずに
死ぬまで戦い続けなければならないってことだ
それに人間はいろんな一面を持ってるもんだ
当然、糞姉は強くて凛々しいだけじゃない
なんでそれも[尊敬する人の一面]と受け入れない?」
「わ、私は教官の為に……」
「そんなに認めたくないか、ならハッキリ言ってやる」
俺は嘲笑って、口を開いた。
「要は糞姉にとっての良し悪しなど関係ない、
違う一面を引き出すのが自分じゃなくて俺、
というか、俺が糞姉の家族だって事実が気に食わないから潰したい
それだけの話だろ、馬鹿馬鹿しいぜ全く」
「……まれ」
「早い話、子供染みた嫉妬だ
それを御尤もらしい理由並べて正当化してるだけ
下らない、実に下らない、やれやれだぜ」
「黙れ」
「結局お前は特別なんかじゃない
自分自身からさえも目を背けてるだけの臆病者じゃねぇか
それで俺を潰したいだ?糞餓鬼の逆恨みなんぞに付き合いきれるか」
「黙れぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」
大型キャノンを連射しながら両手のプラズマブレードを展開して
突っ込んでくるボーデヴィッヒに飽きれながら、俺はカウンターの
キックを顔面に叩き込む。
「暫くは俺が相手をする、二人は雌豚共の片づけを頼む」
「「わかった」」
シャルロットのついでに、ボーデヴィッヒのことも犯罪的なルートで調べた。
ボーデヴィッヒの専用機、[シュヴァルツェア・レーゲン《黒い雨》]のデータは入手済み。
慣性を操作できるISの真骨頂の一つPICを応用し、
相手の動きを止めることが出来る
1対1が原則のIS公式試合では反則級の兵装だろう。
一見無敵に目るが、発動には対象に意識を集中させなければならない。
つまり、フェイントやトリッキーな動きは苦手。
それと止められる対象は一つだけ、万能な物など存在しないのだ。
表情からボーデヴィッヒがAICを使おうとしたのを感じ、
俺は滑る様に横へ移動する。
音も無く、ゆっくりながらも早い故に
ボーデヴィッヒは見事に空ぶりしてしまう。
「な!?」
躱されるとは思っていなかったのだろう、驚愕の声を上げる。
その後もボーデヴィッヒはAICで俺を捕えようとするが、
俺は似たような動きで右へ左へと回避する。
元々俺の様な
素早さを重視するため重い防具を嫌い、防御力は低い。
なのでメイジ系同様、一撃でも致命傷になりかねないのだ。
そこで考案されたのがこの動き、[
重力や風、水の流れに合わせて体をずらすことで、
滑る様に相手の攻撃を回避することが出来る、シーフ系の必須技能だ。
勿論攻撃手段、特に暗殺などでも効果を発揮する
そこに居るのに、居ない。
そこに居ないのに、居る。
相手はまるで幻影を相手にしているような錯覚を覚えるだろう。
ダイワ、セーリアでは[流水]とも呼ばれてるな。
俺はこの動きを使い、回避と攻撃を同時に繰り出す。
ロアさんにも、「お前のは俺以上だな、アキヒサに並ぶぞ」と褒められたほど、
ボーデヴィッヒに俺を捕えることなど、よっぽど俺が油断してない限り不可能だろう。
「何だその動きは!」
「何の問題がある?」
「愚かだな!教官なら真正面からぶつかって勝利を得た!」
「それがどうした?俺は糞姉じゃないんだ
違う戦法使って何が悪い?脳みそ腐ってるのか?」
「ほざけぇぇぇぇぇ!」
プラズマブレードを展開して斬りかかって来たので、
俺はロアさんと明久さん直伝のキックで碗部を破壊する。
ついでに、リフティングの要領で蹴り続ける。
この状態では自慢のAICも使えないようだ。
「パス」
「はいよ!」
高めに蹴り上げ、戻ってきた弾が自慢の右ストレートを打ち込む。
落ちてきたところで、数馬が魔法を叩き込む。
シュヴァルツェア・レーゲンはもうボロボロ、もう戦えまい。
「誰も信じず、自分自身とさえ向き合えない臆病者が
俺達に勝てるわけないだろ、出直しやがれ」
それでも、ボーデヴィッヒは親の仇を見るような眼で睨み、
よよろよと立ち上がる。
「ふざけるな……私は強者だ!
誰も信じてない!?ほざけ、弱者など信じてなんになる!
自分と向き合えない!?どこを見ている!
私は十分自分の力と向き合っている!お前達のやり方は
単なる弱い者同士の馴れ合いだ!そんな雑魚のお前に!
私が負けるはずがない!あってたまるか!!」
するとどうだろう、シュヴァルツェア・レーゲンが粘土のように形を変え、
そしてボーデヴィッヒを包み込んで異形のISに変わる。
その姿に、俺は見覚えがあった。
「……暮桜、か」
選手として現役時代の糞姉そっくり。
さしずめ偽ブリュンヒルデと言ったところか。
異常を感じ取ったらしい、簪達もISを展開してやってくる。
「あれ、何かわかるか?」
「おそらく、
俺の問いに、セシリアが答えてくれる。
「見るからにヤバそうだな」
「その通りだよ、モンド・グロッソ優秀賞である
ヴァルキリーの称号を授かった選手の動きを再現するんだ
でも、使用者の心身に大きな負担をかけ、最悪死亡してしまうから
現在では使用開発研究全てが禁止されてるんだ」
「どんだけだよ」
調べてなかった故に、シャルロットの解説はありがたい。
となると、早く何とかしなけりゃボーデヴィッヒがお陀仏ってわけだな。
別のあの糞餓鬼が死んだところで、どうとも思わないが、
まあ、目の前だと夢見が悪くなるからな。
「一夏、弾、アイツを助けたいんだ、手を貸してくれるか?」
「俺はいいぜ、流石に夢見が悪い」
「俺もかまわないけどさ、何で助けたいんだ?」
「なんとなくだけどさ……似てるんだよ、昔の俺と」
ふぅむ、昔の数馬と似てる、か。
まあいい、仲間は助けるのは当然だしな。
俺達が武器を構えると、VTシステムこと
偽ブリュンヒルデが雪片もどきを構えて襲い掛かってくる。
さっきとは比べ物にならないほど早い。
「うぐ!」
「お、重い!?」
俺と弾の二人係で受け止めるが、それでも競り負けてる。
こっちはパワー重視型二台だと言うのに、だ。
これなら確かに心身に負担がかかるな。
エリンで鍛え上げた俺達なら、車に轢かれても死ぬかどうかわからないから
耐えられるかもしれないが、この世界の人間では恐ろしく負担だろう。
何とか斬撃をそらし、蹴り飛ばして距離を取るが、
再度恐ろしいスピードで斬りかかってくる。
不味い、生身なら互角以上で戦えるが、この場で
ISを脱ぐわけにはいかない、人目が多すぎる。
いつの間にか見物の野次馬が増えてるしな。
だが、このままだとジリ貧だ、アイコンタクトをすると、
弾と数馬も同じことを考えてるようだ。
生身になるしかないか、そう結論しようとした時、
突如俺の視界が光に包まれた。
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気が付くと、俺は冒険者としての格好で
花畑の中に立っていた。
周りに咲いているの全て、夏に咲く種類ばかりだ。
気温も、心なしか暑く感じる。
「ここは?」
「私の中です」
振り向くと、一人の少女が立っていた。
年齢は14歳ほど、腰まで届く灰に近い銀髪に
赤のメッシュがあり、瞳は空色、灰色の袖なしワンピースを纏う、
モデルとしても文句なしでやっていけそうな美少女だった。
そして、直感というか本能的に、俺は彼女の正体に気が付いた。
「夏風か」
「はい」
ISコアには意志が存在する、しかし
人の姿だとは思ってもいなかった。
「雪片が装備から除外された結果、演算処理も速やかになり
結果、これまでの戦闘データの解析に成功、
「早すぎないか?」
専用機がそれまでの運用データを糧に成長する、
それが
なんせ、俺と夏風の付き合いはまだ2ヶ月ちょいだからな。
というか、IS本人(?)でさえも雪片が邪魔って(汗)、
どうやら、思考回路や好みは俺に似ている様だ。
「これまでのオーバーホール回数は覚えてますか?」
「たしか、15回超えてたな」
「正確には17回です、これは他の専用機の平均5年分になります」
「なんか、すまん」
「いえ、それなので必要データが多く、すぐに移行に移れたんです」
それを聞いた後、俺は思っていた疑問をぶつけてみることにした。
「…なあ、何で俺はお前達を動かせるんだ?」
「マザーの親友である千冬様と、ほぼ同じ遺伝子構造だったために
貴方に触れられた
結局糞姉がらみ…ん?切っ掛け?
「まだあるのか?」
「はい、最初は勘違いでした
しかし私達は貴方から感じたのです、マザーが目指したものに
届くであろう可能性を、それを実現できるであろう力を」
元々ISは糞兎が宇宙を目指すために作った物、
宇宙にだって行くだろう無限の冒険心を持つ
冒険者、その一人である俺に反応するのは当然だったのか。
弾と数馬も、同じ理由なのだろうな。
「いいさ、宇宙に行けるなんざ願ってもない
幾らでも付き合ってやるよ、行くぞ夏風」
「はい我が主
我汝の足、汝の翼、汝の旅の傍にある者
汝と共にどこまでも、いざ行かん
汝の永遠の旅の共として」
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絆の色を例えるなら、それは赤であろう。
絆は血よりも暖かく、絆は血の繋がりよりも強固で、
そして何よりも美しい。
故に絆の色は赤と言える。
血の色よりも赤く魂から滲み出る熱い鼓動。
絆の赤、クリムゾン。