相変わらず執筆途中で寝てしまうことが多々。
面目ない。
光が収まると、俺は元の場所に居た。
だが、纏っているISが明らかに別だ。
全体的にさらにスリムで尖ったデザインになり、
ブレードの刃に見える部分が赤く染まっている。
[
ホログラムディスプレイに、この文章が浮かぶ。
試しに、俺は何時もの要領で移動し、偽ブリュンヒルデを殴り飛ばす。
鈍い音が響き、偽ブリュンヒルデはアリーナの壁に衝突する。
軽い……俺の動きに問題無く追従できている。
今までの鈍さを全く感じない、駆動系が強化されたのか。
俺はガンブレードを構え、いつもの感覚で連射する。
全く違和感が無い、まるで自分の一部になったようだ。
そして、新たに文章が浮かぶ。
[
俺は直感的に、その効果を理解した。
「弾!数馬!受け取れ!」
俺が単一仕様を起動させると、夏風・金剛・韋駄天が紅い光に包まれる。
「な!?」
「こりゃすげぇ!」
赤き絆、その効果は僚機の性能を一定時間強化する。
まあ、その時間は1分間だけのかなり短い物だが。
「さあ!ショータイムだ!」
真っ先に俺が偽ブリュンヒルデに近づき、ロアさん・明久さん
直伝の足技で動きを止める。
「おぉぉぉぉぉ!大・切・断!」
掛け声と共に弾が手刀を振り下ろし、切れ目を入れる。
「今だ!」
「おう!」
合図と共に数馬がボーデヴィッヒを掴み、引きずり出す。
普通ならこれで終わるのだが、どうやらそうでもないらしい。
「……第三ラウンドってか?」
残った残骸はさらに形を変えた。
虎の様な大型捕食獣を思わせる形状に、
刃を束ねて作ったような翼。
エリンで何度か戦ったことのある自立機動兵器、
[マシンビースト]そっくりの姿だった。
どこでデータ取った?。
「もう加減する必要なんざねぇ!吹き飛びな!」
数馬がナノマシ……ちょっとまて!炎の爆発って、
それ完全に魔法じゃねぇか!人前で使うなよ!
幸い、気付かれていないみたいだけどよ。
「ぜりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
最後は弾が飛び蹴りをブチ当て、
シュバルツァ・レーゲンだった物はコアを残して粉々になった。
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兵士とするための遺伝子強化クローン人間の一人。
それが私、ラウラ・ボーデヴィッヒだった。
おもちゃの代わりに武器を持たされ、遊びの代わりに戦い方を教えられた。
私はそれまで、間違いなく優秀だった。
しかし、それは一変した。
ISが登場したからだ。
私達はISとの適合率を上げるために、ある処置を施された。
[
脳への視覚信号伝達の爆発的な速度向上と超高速戦闘下における動体反射の強化を目的とした処置。
だが、それ故に私は変わってしまった。
危険性も不適合も無いと言われたそれは、私には適合しなかった。
私の右眼は金色に変色し、常に起動状態、制御など不可能だった。
トップからあっという間に転がり落ちた私は出来損ないの烙印を押され、
嘲笑と侮蔑の対象に成り下がった。
そんな時だ、あの人に出会ったのは。
ドイツ軍に私達の教官としてやってきたブリュンヒルデ、
織斑千冬、彼女指導により私は再びトップに返り咲いた。
私はその強さに憧れた、こうなりたいと思えた。
だから一片でもその強さの秘訣を知りたくて、その理由を聞いた。
「私は強くなどないさ」
「え?」
「私には弟がいた、たった一人の肉親だ
だが、そいつは誘拐されてそのまま行方不明だ」
その悲しげな表情を見ていると、
私の何かに亀裂が走るのを感じた。
(違う……私が憧れたのは、そんな貴女じゃない!)
この時は尊敬する人物を汚されたと感じて怒った。
だが今思えば、再び現れた教官の弟、織斑一夏の言ったとおりだ。
「要は糞姉にとっての良し悪しなど関係ない、
違う一面を引き出すのが自分じゃなくて俺、というか、
俺が糞姉の家族だって事実が気に食わないから潰したい、それだけの話だろ」
そのとおりだ、私は気に食わなかった。
いや、羨ましかった。
教官にここまで思ってもらえることが、
憧れる人の家族だということが。
だから排除したかった、そうすれば私はその場所に居られると思った。
だが私は負けた、織斑一夏は想像を遥かに超える強者だった。
私など容易く足蹴にできるほどに。
「誰も信じず、自分自身とさえ向き合えない臆病者が
俺達に勝てるわけないだろ、出直しやがれ」
確かにそうだ、私は心のどこかで教官を信じていなかった。
だから違う一面を見て気に食わないと思った。
それを理由を並べて正当化して自分を偽った臆病者。
私は負けた、心身共に。
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「寝顔は可愛いもんだ」
保健室のベットに横たわる銀髪少女を見ながら、俺は林檎を
冒険者を始めた時から愛用しているサバイバルナイフで切る。
一夏は糞兎に呼ばれていないし、弾も一緒
俺の韋駄天も今は糞兎の手元にある、生身でもIS部隊など怖くないが。
しかし、糞兎が「金剛と韋駄天を改造するよ!」とかどうとか
妙なテンションで言っていたが、どうなるんだ?。
「ん………!」
「よお、おはようさん……食うか?」
兎型、熊型、蝶型に切った林檎を差し出す。
「いただこう……随分器用だな」
「慣れだ」
俺は横笛を取り出して吹き始める。
一夏はハッカパイプを吸い、弾はリュートを奏でるのが
普段の暇つぶし兼嗜好品だ。
俺はそれがお師匠様から教わった横笛になる。
腕前はまあ、そこそこだろうな。
「私は、何処で間違ったのだろうな」
ポツリポツリと、ボーデヴィッヒが事情を語りだす。
というか、ドイツって随分真黒な国だなおい。
一夏の誘拐事件もドイツが一枚噛んでるみたいだし。
だが、コイツの話を聞いてるうちに、俺は一つの確信を得た。
どん底に居た時に見えた光。
例え針の孔ほどの小さな光でも、眩しく映る物だ。
そして千冬さんは精神面の教育をしてなかった故に、
ボーデヴィッヒが抱いていた憧れは肥大化し、
「こうなりたい」という気持ちが進みすぎて、
結果、「本人になりたい」という願いにすり替わったのだろう。
あの人は精神面は何もできないだろうしな。
「俺にも憧れてる人がいる」
俺は自分の体験談を聞かせることにした。
「でもな、目指して頑張ってる内に気づいたんだ
俺は俺でしかない、あの人にはなれないってな」
「何?」
俺のお師匠様、エルダーナンの
ヒューリンの
お師匠様が魔法一本だったのに対して、俺は近接戦もできた、
水を得意としたお師匠様に対して、俺は風と炎が得意だった。
何処でか重なるの言えるのだろう、明らかに違いすぎる。
そもそも自分は自分、他の誰かになることなど不可能でしかない。
「憧れは持たないほうがいい、自分の個性を伸ばして
自分だけの何かを築き上げるもんなんだ」
「………だが、私は」
「一度間違えたぐらいで、お前の人生は終わったのか? 間違えたのなら正せ
罪を犯したなら償え、何が間違っていたのかは、もう分かっている筈だ
一杯地に塗れた今からこそが、お前の本当の人生だぜ」
「…………」
「お前はほんの少し、手を伸ばす勇気が足りないだけだ
崖を登ろうと足掻く奴には、決まって手を伸ばす奴がいる
居ただろう?お前を見捨てなかった連中が」
「そう、だな」
迷い立ちすくみ、それでも前に進む者であれ。
そうですよね、お師匠様。
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「うーむ、どうなってるんだろうね」
セカンドシフトした[夏風]のデータを基に、
ヴァージョンアップした[金剛]と[韋駄天]の
データを見ながら、私は唸った。
あ、実物は返品済み。
それよりもこの駆動系は凄すぎる。
一般人がこの駆動系を搭載したIS等のパワードスーツを使えば、
間違いなく捻挫や脱臼、最悪骨折するだろう。
私はもちろん、ちーちゃんだってもて余すだろうし。
これほどの駆動系でなければいっくん達に対応できないなんて、
正直、本当に人間なのかどうか疑うよ。
「いなくなってた間、何かがあったのかな?」
そのことを考えてた私は、すぐ後ろで起こったことに気付かなかった。