まあ、風邪で仕事を休んでいたのが一番の要因ですが。
「…なんだと?」
うわ~、千冬さんが今までで一番険悪な表情になってる。
すぐにでも逃げ出したいよこれ。
でもフィーネは相変わらず笑ってる、ホントに怖くないらしい。
いや、むしろバカにしてるっと言った方がいいかもしれない。
「当然でしょ、なんでわからないのかしらね」
訂正、間違いなく馬鹿にしてる。
「そもそも、何を根拠にイチカが大会に出ると思うわけ?
言っとくけど、自分の弟だからなんておふざけは無しよ
第一、今のイチカは[そんなこと]に何の興味もないしね」
「そんなこと、だと!?」
千冬さんが動揺してる、まあモンド・グロッソを
まるで下らない余興みたいに言い切ったのは信じられないのかもしれないけど。
「そんなことはそんなことよ、百万歩譲ってイチカが
大会に出てブリュンヒルデになったとしても、
せいぜい『流石織斑千冬の弟だ』の一言で終わる
つまり、イチカにとっては何の喜びも達成感もやりがいも無いわ
当然ね、ブリュンヒルデの[付属品]としか見られないのだから
それが本当にイチカの望みだと思うわけ?」
とうとう黙り込んじゃったよ
「第一、イチカが目指してるのは宇宙開発部門よ
その一件だって歴史に名を残す偉業でしょ?、まだ誰もやってないのだから
ISは元々それを目的とした代物なんだし、不満なんかないはずよ
なのに何故反対するのかしら?」
笑ってる、まるで獲物をしとめた野獣だ。
「結局、離れ離れになるのが嫌だから手元に置いときたい、それだけでしょ?」
「……そうだ」
千冬さんが怒りを顕わにした表情でフィーネを睨みつける。
「やっと帰ってきてくれたんだ!死んだと……死んだといわれて
捜索を打ち切られた時の絶望がお前にわかるか!?
それで生きて帰ってきてくれた時の喜びがお前にわかるか!?
ずっと一緒に居たいと思って何が「悪いわよ」!?」
今度は冷めた表情で、フィーネは千冬さんを見た。
「どうあがいたってね、[別れ]は必ず来るのよ
形は様々だけどね、仕方ないわよ……私達は限りある時間しか生きられないし
当然物事には終わりがあるのよ、ずっと一緒なんてできるわけがないわ
だからこそ、傍に居られる今を大切にしないといけない
それを貴女は何?籠に閉じ込めて満足してるだけじゃない
イチカのことを何も見ず、自分の中の幻想だけで決めていいと?
自分を一人にしない、自分から離れない、自分と同じ道を行く
……馬鹿馬鹿しい限りね、弟が大事なんてよく言える
貴女が欲しがってるのは弟じゃない、自分の思いどうりになる人形よ」
どこから取り出したのか、フィーネがお茶らしき物を一口飲む。
「貴女は結局その程度の存在でしかなかったってことね」
「そうゆう事だ」
いつの間にか、部屋の中に一夏がいた、何時の間に!?
「俺は帰ってきた覚えはかけらもない、本当に自力でどうしようもない
事情があったから仕方なく戻ってきただけさ」
冷たく突き放すように、一夏は言った。
「[織斑家]はとっくに巣立った場所なんだ、戻ってきてそれが実感できた
ただ懐かしかったから、ふと立ち寄ってみた……それだけの事さ
そのせいで厄介ごとに巻き込まれたがな」
これまたいつの間にか、フィーネが一夏の隣にいた。
「私達は、企み云々で一緒になったわけじゃないわ
元々生まれも考えも違うんだから」
「そう、ただ行きたい方向が運命みたいに、重なってただけさ
そして、俺の行きたい方向にモンド・グロッソは無い」
そのまま二人は寄り添って部屋を出て行った。
絶縁状を足元に残して。
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「さっさと突き出しときゃ良かった」
「そういわないの、一応情はあったんでしょ?」
まあ、あれでも世話になった姉だからな。
例え何の自覚も無いダメな大人だとしても、あれが本来の姿なのだ。
否定するわけにはいかない。
「と言うより、眼中に無かった…だな」
俺が憧れた背中の持ち主はロアさんと明久さんであって
姉ではなかった、いや……なくなっただな。
あの世界で二人に出会い、冒険者という道を選んだその時から
俺と姉の道は大きく分かれていたんだ。
姉は自分のちっぽけな世界を守ることに腐心し、
俺はまだ見ぬ壁の向こう側を目指して我武者羅に突き進んだ。
そんなことやってるなら、当然道は重ならない。
巣立った場所には戻らない、飛べない鳥は地に落ちるしかないから、
俺は前だけを見て突き進んでいた、そのために過去を捨てた
だから、俺は[ただいま]を言わなかった。
「旅を初めて時は流れ、いつの間にか故郷は遥か
帰り道はとうになく、家族の温もりも過去に消えた
故に振り返ることなどない、ただ前へ前へと歩を進めん
我が墓石に名は要らぬ、我が墓前には名は要らぬ
我が歩いた道全て、続く者への
冒険者が時折口ずさむ
勿論後悔なんざしないが。
「ついでだし、一緒に温泉入る?」
「いいね」
というか、フィーネを選んだ時点で決まっていたことか。
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(貴女が欲しがってるのは弟じゃない、自分の思いどうりになる人形よ)
違う……そんなはずは無い、確かに傍にいてほしいと願った。
だから一夏を国家代表にしようとした。
遊びみたいな冒険者より、そのほうが一夏の為になると信じたから!
(ブリュンヒルデの[付属品]としか見られないのだから
それが本当にイチカの望みだと思うわけ?)
付属品?一夏が私の付属品にしかならない?
(籠に閉じ込めて満足してるだけじゃない)
それが私の望みだったのか?
(イチカのことを何も見ず、自分の中の幻想だけで決めていいと?)
そういえば、最後に一夏と話をしたのは何時だ?
下手すると何年も前だったような気がする。
(「[織斑家]はとっくに巣立った場所なんだ、
ただ懐かしかったから、ふと立ち寄ってみた……それだけの事さ)
私はもう必要ないのか?
あの女と比べれば無価値なのか?。
(ただ行きたい方向が運命みたいに、重なってただけさ)
私は……何を望んでいたんだ?
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(ふざけるな)
私ははらわたが煮えくり返る思いだった。
運命だと!?行先だと!?寝言を言うな!
一夏にふさわしいのは私だ!隣に立つべきなのは私だ!
ぽっと出の泥棒猫なんぞに一夏を渡すものか!
既に姉さんに専用機を頼んでいる、
一夏の周りにいる女達にあって私にには無い[力]が手に入る!
そうなれば一夏は私以外は目に入らなくなるに違いない!
その為に真っ先にあの女を排除してやる!
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時間は少し遡る
「あるにはあるんだけどね」
IS学園でトーナメントがあった数日後、
箒ちゃんから専用機が欲しいと言われた。
以前の私なら一二も無く渡しただろう。
でもいっ君達と短いながらも接することで、私は考え方が変わった。
だから男でもISを扱えるようにしたのだ。
(ただの依存か独占欲……か)
箒ちゃんはいっ君に振り向いてほしいだけなんだろうけど、
間違いなく無意味だ。
今の箒ちゃんはその場から動こうともせず、わがままを言ってるだけ。
私もかつては似たようなものだった、
親からも同級生からも[人間じゃない]たいな視線を浴びせられ、
ちーちゃん等一部の以外の人間からは理解してもらえず寂しかった。
それをどうにかしたくて色々やって、ISを作って発表した。
だけど「子供の戯言」だとか「SF映画の見すぎ」だとかって
馬鹿にされて、私は溜まっていたものが爆発、白騎士事件を起こした。
結局、私は構ってほしくていたずらをする子供と同じだったんだろうな。
(まあ、今はこっちだね)
例え箒ちゃんが専用機を手に入れてフィーちゃんより強くなったとしても、
いっ君が箒ちゃんを見ることは無いだろう。
何故なら冒険者のいっ君はひたすら前に進み続けることを選び続けるから、
その場から動こうとしない箒ちゃんは間違いなく置いて行かれる。
そこにフィーちゃんは関係ない、たまたま行先が一緒になっただけ。
そして自分達で道を切り開く事を何よりも尊ぶから、
我儘を言って当たり散らすだけの存在なんて邪魔なだけ、
だから箒ちゃんは見てもらえない、それがわかってない。
(たぶんちーちゃんも同じなんだろうね)
早くそのことに気づくことを願うしかない。
そう思いながら、私は目の前の機体の整備を続けた。
実はこの作品、この臨海学校の一件で終わってしまいそうなんです。
ネタばれですがこの一件では[福音]は登場しないオリジナル展開の為、
その後どうするかが思いつかないんです。
私はこのアリアンを大抵一話完結オンリーでGMをしていたせいか、
話が短くなりやすいんですよね