ご注意ください。
まんまとしてやられた。
やる気が皆無にも係わらず糞姉がトントン拍子に話を進め、
一週間後にクラス代表を掛けてオルコットと戦うことになった。
ちくしょう、こうもあっさりと流されては話にならない。
俺もまだまだ未熟だな、一流には届かない。
「一夏、オルコットとの試合だが、勝算はあるのか?」
「ISは生身とある程度同じ動きができる、十分勝算はあるさ」
現在は昼休みで食堂。
俺の隣には箒が平然と座っている。
許可した覚えはないぞ。
「だが相手は代表候補生だぞ、こちらも何か対策を立てた方がいいだろう」
「ちょっと待て、対策云々はいいとしてこちらって何だ?お前は俺の仲間か?」
「当たり前だろう、私はお前の幼馴染だぞ」
「はぁ?」
俺は呆れ顔を浮かべた。
幼馴染=仲間何て方程式は存在しない。
幼馴染とはあくまで昔からある程度親しいだけだ。
それを仲間などと思うのは単なる過大解釈だ。
俺がそれを言おうとした時。
「ねえ、ちょっといいかな?」
「…なにか?」
俺の前に一人の生徒が立っていた。
リボンの色からして、上級生だな。
「君が例の男の子だよね?イギリスの候補生と戦うことになったっていう」
「そうですが、それが?」
「君ってISの稼働時間ってどのくらい?」
「ISに乗ったのは2回だけですね、時間で言うと30分程度かと」
「それじゃ候補生には勝てないよ、候補生はどの国でも最低3桁は乗っているはずだから」
時間はある程度重要だ、長ければそれだけ学ぶことが多いからな。
しかし、一番重要なのは質だ、同じ時間練習したとして
質の違いはかなり明確に出てくる。
それと覚悟も重要だ、俺にとって戦いは
二択しかなかった経験上、いかに効率良く戦い方を組めるかが重要だったからな。
「確かに時間は重要ですけど、それだけじゃ決まりませんよ」
「それもそうね、失礼したわ……お詫びと言ってはなんだけど
私がISについて教えてあげようか?」
ふむ、純粋に親切心からの提案みたいだな。
こちらを見下している面があるのは気に入らないが、
上級生だからある程度は搭乗時間を持ってるだろう。
その時に俺の戦闘プランを試せばいいか。
「結構です、私が教えることになっていますから」
いきなり箒が口をはさむ。
何でお前が決めてんだよ。
「でも、あなたも1年生でしょ?そしたら上級生の私が教えたほうが
「私は!篠ノ之束の妹ですから」っ!?」
篠ノ之束の名が出た瞬間、上級生は驚いた顔をしていた。
ISの生みの親の妹が入学しているとは知らなかったのだろう。
分が悪いと判断したのか上級生は去っていった。
「さて、早速放課後…」
「待ちやがれ」
「なんだ?」
「何故お前は今篠ノ之束の名前を口にした?」
「何を言っているのだ?」
「お前は前の時間、自分と姉は関係ないと言った
なのに今、自分は篠ノ之束の妹だと言い、あの上級生の邪魔をした
ずいぶん都合がいいんだな」
前の時間、箒はISの生みの篠ノ之束の妹だとばれた。
しかし箒は「あの人は関係ない!」と怒鳴り散らした。
姉がISを作ったせいで保護プログラムに基づき彼方此方に転校させられたのだから、
嫌いになる気持ちは十分わかる、むしろならないほうがおかしい。
しかし自分の都合が悪い時は妹であることを否定し、
都合のいい時は妹であることを利用する。
あまりにも自分勝手だ、子供じゃあるまいし。
俺は絶対にそんなことはしない。
ずっと己と、信頼できる仲間と力を合わせて道を切り開いてきた手前、
都合のいい時だけ頼るなど恥知らず以外の何でもない。
俺は絶対にお断りだ、頼まれてもやらん。
「う、うるさい!貴様には関係ないだろう!?」
「あるか無いかなら関係あるだろう、当事者なんだから」
「くっ!そ、そんなことより貴様の腕が鈍っていないか見てやる、放課後剣道場まで来い」
「剣道の腕か?それなら結構だ、もうやめたから」
「なんだと!?」
途端に掴み掛って来るので、俺は片手でいなす。
遅い、まるでゴブリンの下っ端だ、話にならない。
「避けるな!!」
「断る、大体何で剣道やめただけで掴まれなきゃいけない?」
鬱陶しい、殴り飛ばしてやろうか。
「理由を言え!何故剣道をやめた!?」
俺の非難を無視して箒は噛み付かんばかりに問いただしてくる。
おいおいおい、なんでそこまで怒るんだよ、ふざけてるのか?。
「最初は俺も剣術を磨いてたよ、だがどこまでいっても姉の物真似でしかなかった
だから頭打ちを感じていたところを自分に合うのがあったから乗り換えた
自分に合うのを選ぶのは万事において基本中の基本だろう?」
箒の態度に多少理不尽さを感じながらも、俺は淡々と戦闘スタイルを変えた理由を説明する。
「納得出来ん!!一夏、お前は今すぐ剣道部に入れ!!」
「はぁ?何でそうなるんだよ」
どうやら、相当思考回路がショートしているらしい。
そろそろ本気で殴ってやろうかと思えてくる。
「大体剣道は無駄だとは言わないが、あまり役に立たないぞ」
お互いに地に足を付けて、決まった場所しか攻撃できず、
武器も剣のみの剣道はISと違いすぎる。
常に浮いてるから足捌きは役に立たないし、
足を狙っても後ろから攻撃してもルール違反にならない、
おまけに飛び道具はあって当たり前だからな。
「いいから来い!!剣道を勝手にやめるような性根を叩き直してやる!!」
挙句の果てに今の俺の考えを否定することまで言って、俺を強引に
引っ張ていこうとする箒に、俺はとうとう切れた。
「ふざけるのも大概にしろ」
俺は掴み掛ってきた箒の手首を掴み、握りしめる。
俺の握力なら人間の骨ぐらい、そう苦労せず砕ける。
当然、箒は激痛で叫びをあげる。
「箒……お前が剣道に思い入れを持つのは勝手だ、
だが俺が選んだ道を否定するような権利は無いぞ」
そのまま放り投げ、床に叩き付ける。
「そこまでふざけたことをするならいいだろう
お望みどおり戦ってやる、剣道場でな」
俺はトレーを戻し、教室に向かった。
___________________
「織斑、お前には政府から専用機が用意されることになった」
5時間目が終わってすぐ、糞姉がそう言ってきた。
ISをそうたらしめる心臓部ISコアは世界に475個しかない。
開発者の糞兎しか作り方がわからず、おまけに475目を残して失踪したからだ。
そしてISはたった一機で小国程度なら滅ぼせると言われてる。
そんなものを私物化できるのは相当なエリートだろう。
しかし、実績も何もない俺に専用機が与えられる理由は当然
「モルモット、か」
入学前にデータ取がされたのだが、あまりに長いわ
レポートの要求提出量が多いわで口と拳で担当者面々を黙らせて
以降の協力を拒否したからな、専用機なら問題無くデータを取れるだろうと踏んだのか。
「どんな機体なんですか?」
「近接戦闘型だそうだ」
俺の戦い方は近距離寄りのオールランダー。
だから近距離型でも別に問題はない。
問題は防御力重視か機動性重視かだな。
俺の戦い方だと防御力を重視できない、機動性を重視した
戦いが得意だったからな。
魔導銃という遠近両方に対応できる武器と、鍛えて身に着けた
チーター並のスピードと、アクロバットな動きができる身軽さ、
飛んでる鳥も捕まえられる跳躍力によって生まれる柔軟な三次元起動能力。
この二つを揃えてことによってできる読まれにくいトリッキーな戦い方なのだ。
だから、どんな機体か詳しく確かめないといけない。
「機動性重視ですか?それとも防御力重視?」
「機動性重視らしい」
それならまだ何とかなるかな、あとは武装だ。
「武装は?」
「何?」
「だから武装です、何が搭載される予定なんですか?」
それを聞くと、糞姉が笑って見せる。
もの凄くいやない予感がした。
「まさがブレード一本何て言う悪ふざけとしか思えない
トチ狂った機体なんて言うんじゃ?」
糞姉は刀一本で優勝した、しかし俺にはできない芸当だ。
家族と言ったって、所詮は血縁があるだけの他人、本人ではない。
同じことを要求されたとしてもできるわけがない。
「そうだぞ、一つのことを極める方が向いている、私のおと「黙れ」!」
俺は恐ろしく冷たい視線と殺意を向けた。
何が弟だ、俺の気持ちを知ろうともしない癖に。
俺が比べられてどんな思いをしてきたかわからないだろう?
努力しても「織斑千冬の弟だからできて当然」と片付けられた気持が、
ひたすら姉の付属品としか扱われなかった気持ちが、お前にわかるのか!?
「何が弟だ、何も知ろうとしない癖にほざくな」
「い……一夏?」
帰って来たのは間違いだった、これは確信だ。
「用意してくれる場所の住所と電話番号教えてください」
俺は隣に居る山田先生に問いただした。